12月号 目次

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閻魔帳 池田氏の「病状」を公にできない学会事情/段 勲 特集/

乙骨が控訴審でも全面勝訴――問われる創価学会の反人権体質 創価学会の謀略体質が露わになった乙骨訴訟/

柿田睦夫 「創価新報」名誉毀損事件控訴審 東京高裁判決要旨 会長・理事長から末端幹部まで 司法で反人権体質認定される創価学会/

本誌編集部 トピックス 週刊朝日が垂れ流す「池田大作ヨイショ記事」の怪/

古川利明 トピックス 「焼け太り」狙って仕掛けを繰り出す創価学会・公明党の思惑/

山村明義 ●連載 信濃町探偵団――創価学会最新動向 ヨーロッパ・カルト事情(172)

日蓮仏教の名のもとに「復権」進むフランスの創価学会セクト(有害カルト)における情報操作――創価学会フランスの例(1)/

広岡裕児 戦後保守運動とカルト問題(7) 保守運動の背景に「生長の家」が存在/平田文昭 執筆者紹介 

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編集後記 編集後記から  小誌の発行人兼編集人の乙骨正生が、創価学会青年部の機関誌「創価新報」に掲載された青年部最高幹部らの座談会記事で名誉を毀損されたとして提訴していた事件の控訴審判決が、11月30日に東京高等裁判所で言い渡され、乙骨が全面勝訴しました。12月2日に創価学会側は、最高裁への上告を断念し損害賠償を支払う旨、乙骨の代理人弁護士に通知してきたことから、乙骨の勝訴は確定します。  判決内容は、小誌今号の特集で詳報している通りですが、その中で東京高裁は、創価学会による「ガセネタ屋」「犬畜生にも劣るやつ」などの乙骨に対する攻撃は、「(乙骨の)人格に対して極めて低俗的な表現で攻撃を加える」ものであり、「言論の自由の範ちゅうにあるものとして許容されるものではないことは明らかである」と断じました。  創価学会は乙骨に限らず、創価学会に批判的な人物や団体を文字通り口を極めて誹謗中傷していますが、それらの発言は、この東京高裁判決に照らすならば、すべて「言論の自由」として許容することすらできない名誉毀損を伴う「極めて低俗的な表現」ということになります。  公益法人たる宗教法人として税制上の優遇措置を受けるなどしている創価学会ですが、過去の言論出版妨害事件や盗聴事件、さらには矢野絢也元公明党委員長が明らかにした国税庁の税務調査妨害に加えて、日蓮正宗僧侶に対する名誉毀損や乙骨に対する名誉毀損など各種の訴訟で、宗教法人創価学会そのものと会長・理事長をはじめ副会長や青年部最高幹部、さらには末端の地域幹部までもが、創価学会的表現を使うならば「名誉毀損で断罪」されている事実は、創価学会が公益法人たる宗教法人の適格性を欠くことを明示しているといえましょう。

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特集/乙骨が控訴審でも全面勝訴――問われる創価学会の反人権体質

特集/乙骨が控訴審でも全面勝訴――問われる創価学会の反人権体質

「創価新報」名誉毀損事件控訴審 東京高裁判決要旨

解説・本誌編集部

 創価学会青年部機関紙「創価新報」平成18年2月1日号掲載の「青年部座談会」で、名誉を毀損されたとして、本誌発行人兼編集人の乙骨正生が、宗教法人・創価学会(代表役員・正木正明)と、「創価新報」発行人の本多正紀(副会長)・座談会発言者の竹内一彦(青年部長)・佐藤芳宣(男子部長)・笠原康紀(副男子部長・創価班委員長)・奥村孝史(副男子部長・牙城会委員長)・森山城昌(学生部長)を被告として、1100万円の損害賠償と「創価新報」への謝罪広告の掲載を求めて提訴した事件は、今年の3月24日、東京地方裁判所民事49部が原告・乙骨の主張を認め、被告・創価学会側の不法行為責任を認定し、被告らに55万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を言い渡した。
 被告らはこの判決を不服として東京高等裁判所に控訴。その控訴審判決が11月30日に言い渡され、東京高裁民事15部(井上繁規裁判長)は、一審の東京地裁同様、乙骨の主張を全面的に認め、創価学会側の控訴を棄却する乙骨勝訴・創価学会敗訴の判決を言い渡した(乙骨の損害賠償の増額を求める付帯控訴も棄却)。同判決は、12月2日に創価学会側が最高裁への上告を断念したことから、確定する。
 判決では、一審同様に「創価新報」記事の名誉毀損性を全面的に認め、記事は真実もしくは真実と信じる相当の理由があったとする創価学会側の主張や、記事は論評や意見であるとする創価学会側の主張を、「本件各発言部分が、被控訴人(注・乙骨)の社会的評価を低下させ、かつ、名誉を毀損する摘示事実の重要な部分について真実であると認められず、また、控訴人ら(注・創価学会側)において、上記摘示事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由がない」と斥けるとともに、「本件各発言部分は、被控訴人について、『ガセネタ屋』、『いつもどっかに卑しくしがみついて汚れ仕事にありつく。要するに「ヒモつき」だ。』、『金のため、自分の損得だけで平気で裏切る。』、『カメレオンだ。』、『恩を知らない。畜生にも劣るやつだ。』、『幼稚なやつだ』、『「ガセネタ屋」の分際で身のほど知らずも、いいところだ(爆笑)』。などと、被控訴人の人格に対して極めて低俗的な表現で攻撃を加えるもの」であり、「本件各発言部分が言論の自由の範ちゅうにあるものとして許容されるものでないことは明らかである」と、創価学会が乙骨に対して加えた口汚い誹謗中傷の類は、「言論の自由」の範疇にすら入らない、低俗で悪質な表現であると厳しく認定した。
 周知のよう創価学会は、平成18年に東京地裁判決で日蓮正宗僧侶の樽澤道広本妙坊住職に対する名誉毀損事件で、東京地裁から宗教法人・創価学会そのものと秋谷栄之助会長(当時)・青木亨理事長(宗教法人・創価学会代表役員・当時)、原田稔副理事長(当時・現会長)などの最高首脳らの不法行為責任を認定され、同判決が確定している事実があるが、今回の乙骨に対する名誉毀損事件でも、宗教法人・創価学会と創価学会の文芸部長を務める副会長の本多や青年部長の竹内や男子部長の佐藤など、青年部最高幹部の不法行為責任が認定された。
 また去る11月17日には、別掲特集記事で詳報するように、学会員ライター柳原滋雄が、朝木明代東村山市議の転落死事件に関連して、朝木市議の同僚だった矢野穂積東村山市議を、自身が主宰するホームページで誹謗中傷した名誉毀損事件の控訴審判決で、東京高裁によって不法行為責任を認定され、20万円の損害賠償の支払いを命じられてもいる。
 一連の事実と判決は、公益法人たる宗教法人として税制上の優遇措置を受けている創価学会の反人権体質が重層的なものであることを明示しており、創価学会が公益法人たる宗教法人の適格性を欠くことが司法判断の上でも明確になったといえるだろう。以下に「創価新報」による乙骨に対する名誉毀損事件の控訴審判決の要旨を紹介する。

平成23年11月30日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官吉田真佐人
平成23年(ネ)第2688号,同第4525号 損害賠償等請求控訴,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成20年(ワ)第17676号)
口頭弁論の終結の日平成23年9月26日
     判  決
  当事者の表示
   東京都新宿区信濃町32番地
       控訴人兼附帯被控訴人   創価学会
       同代表者代表役員     正木正明
   東京都荒川区……
       控訴人兼附帯被控訴人   竹内一彦
   東京都杉並区……
       控訴人兼附帯被控訴人   佐藤芳宣
   東京都葛飾区……
       控訴人兼附帯被控訴人   奥村孝史
   東京都荒川区……
       控訴人兼附帯被控訴人   笠原康紀
   高松市……
       控訴人兼附帯被控訴人   森山城昌
   東京都新宿区……
       控訴人兼附帯被控訴人   本多正紀
       上記7名訴訟代理人弁護士 新堀富士夫
       同            若井広光
       同            新名広宣
       同            中村秀一
       同            桝井眞二
       同            井田吉則
       同            西口仲良

   埼玉県狭山市……
       被控訴人兼附帯控訴人   乙骨正生
       同訴訟代理人弁護士    菊池紘
       同            田見高秀
       同            松井繁明

      主  文
  1 本件控訴について
   (1) 本件控訴を棄却する。
   (2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。
  2 本件附帯控訴について
   (1) 本件附帯控訴を棄却する。
   (2) 附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。

     事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 本件控訴の趣旨
(1) 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。
(2) 上記部分に係る被控訴人の請求をいずれも棄却する。

2 本件附帯控訴の趣旨
(1) 原判決を次のとおり変更する。
ア 控訴人らは,被控訴人に対し,連帯して1100万円及びこれに対する平成20年7月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 控訴人らは,被控訴人に対し,控訴人学会発行の「創価新報」に原判決別紙1記載の謝罪広告を原判決別紙2記載の条件で1回掲載せよ。
(2)(1)アにつき,仮執行宣言

 第2 事案の概要
1 略

2(1)原審は,被控訴人(注・乙骨)の請求を原判決主文1項の限度(被控訴人の控訴人らに対する,共同不法行為による損害賠償請求権に基づく慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円の合計1100万円及びこれに対する不法行為の後である平成20年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払請求並びに謝罪文の掲載請求につき,慰謝料50万円及び弁護士費用5万円の合計55万円及びこれに対する不法行為の後である平成20年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払請求の限度)で認容し,その余の請求を棄却した。
(2) 控訴人(注・創価学会)らは,本件控訴により,原判決中の被控訴人の請求の一部を認容した部分の取消しとその部分の請求棄却を求めた。
(3) 被控訴人は,本件附帯控訴により,原判決を変更して,被控訴人の請求を全部認容することを求めた。

3 当審における控訴人らの主張
(1) 本件発言部分1について
ア 本件発言部分1において,被控訴人の継命新聞社の勤務年数は重要部分に含まれないこと―略―
イ 被控訴人が正信会の代わりに日蓮正宗にすり寄った事実は明らかであること―略―
ウ 「いつもどっかに卑しくしがみついて汚れ仕事にありつく」との控訴人竹内の発言は,意見・論評であり,その前提事実の真実性は立証されていること―略―
(2) 本件発言部分2について
ア 立候補依頼話の重要部分の真実性の存在―略―
イ 「自分を売り込むとなると血眼だ。」,「民主党に必死でまとわりついていた時期もあった。」との控訴人奥村の発言は意見,論評であること―略―
(3) 本件発言部分3について
ア 本件発言部分3は,事実の摘示ではなく,意見・論評であること―略―
(4) 本件各発言部分は,言論の自由の範疇にあるものとして許容されるべきであること
  言論の自由は,民主主義社会を発展させるための生命線であることに鑑みれば,本件記事によって不法行為が成立するか否かについては,当事者間の対立の経過やその社会的地位,報道目的等をも踏まえつつ,控訴人学会の言論・表現の自由(批判・反論の自由)と被控訴人の名誉権の適切な比較衡量をした上で,慎重に判断されなければならない。
  そして,(ア)控訴人学会が被控訴人から長年にわたって誹謗中傷を加えられてきたこと,(イ)本件記事は,それに対する批判的・反論的言論であること,(ウ)本件記事は控訴人学会の機関紙に掲載されたもので,読者も限定されていること,(エ)本件各発言部分の摘示事実ないし前提事実は,いずれも一定の合理的根拠に基づくものであり,その真実性ないし相当性は優に立証されていることに照らせば,控訴人学会による被控訴人への反論的・批判的言論は,不法行為と認めなければならない程に合理的根拠を欠くとはいえないから,本件記事による不法行為は成立しない。

4 当審における被控訴人の主張―略―

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,被控訴人の控訴人らに対する請求は,原判決主文1項の限度で理由があり、その余は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,当審における当事者双方の主張に対する判断を後記2及び3のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中「第3当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)(2)(3)―略―

2 当審における控訴人らの主張に対する判断
(1) 本件発言部分1について
ア 被控訴人の継命新聞社の勤務年数は重要部分に含まれること
  控訴人らは,本件記事の主題等に照らせば,被控訴人の継命新聞社の勤務年数は重要部分に含まれない旨主張する(前記第2の3(1)ア)。
  しかし,前記補正の上で引用した原判決の「第3当裁判所の判断」中の3(2)アに説示のとおり,本件発言部分1は,被控訴人が,金銭のために他人の恩義をたやすく裏切るとともに,いつも誰かに卑しくしがみついて汚い仕事にありつく人物であるので,金銭のために被控訴人を雇ってくれた正信会の機関紙を発行する継命新聞社を僅か2年で辞め,正信会の代わりに正信会と対立関係にある日蓮正宗に取り入るようになったとの事実を摘示した上で,被控訴人が周囲に体の色を合わせる「カメレオン」であり,「恩を知らない。畜生にも劣るやつだ。」と論評するものである。
  そうすると,一般の読者にとって,被控訴人が継命新聞社を僅か2年で辞めたか否かは,被控訴人が金銭のために他人の恩義をたやすく裏切るとともに,誰かにしがみついて汚い仕事にありつく人物であるか否かを判断する上での重要部分に当たることは明らかである。
  したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができない。
イ 被控訴人が正信会の代わりに日蓮正宗にすり寄ったとの事実の真実性の不存在
  控訴人らは,被控訴人が正信会との関係を断ち切って日蓮正宗にすり寄ったか否かは,本件発言部分1の真実性の有無に影響を与えるものではない,被控訴人が正信会の代わりに日蓮正宗にすり寄った事実は明らかであるなどと主張する(前記第2の3(1)イの(ア),(イ)。
(ア)しかし,本件発言部分1中の「ところが乙骨は,たったの2年で,そこを辞めた。代わりに今度は日顕に擦り寄った。」,「正信会と日顕は,不倶戴天の敵同士じゃないか。自分を拾ってくれた正信会を裏切ったんだ,あいつは!」との発言は,被控訴人が,恩義があるはずの正信会の機関紙を発行する継命新聞社を2年で退社後,正信会と対立関係にある日蓮正宗にすり寄ったとの事実を摘示するものであるというべきであるから,本件発言部分1の真実性の有無の判断において,継命新聞社退社後,被控訴人が継命新聞社や正信会と仕事上の関係を有していたか否かは重要である。
  そして,前記補正の上で引用した原判決の「第3当裁判所の判断」中の3(2)アに説示のとおり,被控訴人は,継命新聞社を退社後も平成5年2月から平成7年8月まで「清水元春」とのペンネームで,複数回にわたって正信会の事実上の機関紙である継命新聞に記事を連載執筆し(甲4の1・2),正信会の南近畿教区の一日研修会に講師として招かれ,その模様が継命新聞に被控訴人の写真と講演要旨付きで大きく掲載されていること(甲5)に加え,上記連載執筆は,正信会執行部から選出された経営委員らの意向も踏まえ,継命新聞社編集部の方針として行われていたと認められること(甲59)に照らせば,被控訴人は継命新聞社退社後も継命新聞社と仕事上の関係を有していたものと認められ,被控訴人が正信会の代わりに日蓮正宗に取り入るようになったということができないことは明らかである。
(イ)また,前記アに説示のとおり,本件発言部分1は,被控訴人が,自分を雇ってくれた継命新聞社を僅か2年で辞め,正信会の代わりに正信会と対立関係にある日蓮正宗に取り入るようになったとの事実を摘示した上,「カメレオンだ。」,「恩を知らない。畜生にも劣るやつだ。」などと,被控訴人は金銭のために他人の恩義をたやすく裏切るとともに,いつも誰かに卑しくしがみついて汚い仕事にありつく人物である旨論評するものであることに照らせば,被控訴人が継命新聞社退社後,日蓮正宗と密接な協調関係を持ち,飛躍的に仕事量が増えたことが認められるとしても,これをもって被控訴人が日蓮正宗に卑しくしがみついて汚い仕事にありつくとの摘示事実が真実であると認めるには足りないし,他にこれを裏付けるに足りる客観的かつ的確な証拠もない。
(ウ)したがって,控訴人らの前記主張は,採用することができない。
ウ 「いつもどっかに卑しくしがみついて汚れ仕事にありつく」との控訴人竹内の発言が事実の摘示であること及びその真実性の不存在
(ア)控訴人らは,最高裁平成16年7月15日第一小法廷判決・民集58巻5号1615頁の判示する基準(以下「平成16年最高裁判決基準」という。)に照らせば,控訴人竹内の上記発言は,意見・論評であり,また,同発言を事実の摘示又は論評のいずれと解しても,被控訴人が長年にわたって控訴人学会攻撃を繰り返している事実の真実性は立証されている旨主張する(前記第2の3(1)ウのくア),(イ)。
(イ)しかし,平成16年最高裁判決基準は,問題とされている表現が,事実を摘示するものであるか,意見ないし論評の表明であるかについて,「当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるとき」は,事実を摘示するもの,「証拠等による証明になじまない物事の価値,善悪,優劣についての批評や論議など」は,意見ないし論評の表明に属するというべきである旨判示するところ,上記「いつもどっかに卑しくしがみついて汚れ仕事にありつく。要するに『ヒモつき』だ。」との発言は,証拠等をもってその存否を決することが可能であり,また,他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解できるから,事実を摘示するものというべきである。
(ウ)また,上記発言の真実性と被控訴人が長年控訴人学会攻撃をした事実の真実性とは別個の事柄であり,後者の事実について真実性が立証されているから,上記発言の真実性も立証されている旨の控訴人らの主張は,失当というべきである。そうすると,仮に後者の事実が真実であったとしても,上記発言の真実性を認めることはできず,他に上記発言の真実性を裏付けるに足りる客観的かつ的確な証拠はない。
(エ)したがって,控訴人らの前記主張は,採用することができない。
(2) 本件発言部分2について
ア 立候補事実の真実性の不存在
(ア)控訴人らは,本件発言部分2における立侯補依頼話の重要部分の真実性は立証されている旨主張する(前記第2の3(2)ア)。
(イ)確かに,前記補正の上で引用した原判決の「第3当裁判所の判断」中の3〈2)イに認定のとおり,平成12年総選挙の際,民主党所属の国会議員を介して,熊谷に対し,被控訴人を民主党公認候補者として比例区から立候補させてはどうかという申出がされ,被控訴人も立候補することに消極的ではなかったが,被控訴人には,組織的基盤がないことなどを理由に立ち消えとなったことが認められる。
(ウ)しかし,民主党の幹部と認められる熊谷は,①被控訴人と会ったのは2回で,2回目は「党本部じゃないかなと。」と証言するものの,その時期や被控訴人と交わした会話について全く覚えておらず,被控訴人から頭を下げて立候補を頼まれたことや冗談じゃないなどとして拒絶したことなどの記憶はないこと,②被控訴人が立候補を依頼したかどうかについては,熊谷のポジションのところに立候補の意欲のない者は連れて来ないはずであるとの一般論に終始するだけであり,むしろ立候補を要望する者と面談した場合,熊谷の側から直接拒絶の態度を取ることはあり得ないことなどを証言していること,他方,被控訴人は平成12年6月の総選挙の前に立候補依頼に関連して熊谷と面会したことはなく,面会したのは,同選挙後の同年8月7日である旨供述し,当時の被控訴人の手帳を当審で証拠提出していること(甲58)に照らせば,熊谷の上記証言により,本件発言部分2のうちの立候補事実(被控訴人が,民主党の幹部に対し,平成12年総選挙に民主党の公認候補者として立候補させてほしいと頭を下げて依頼したが,同幹部から冗談じゃないと拒絶された事実)を認めることはできない。
(エ)また,矢部に対する照会書(乙77)における,熊谷と被控訴人との面談内容に関する部分は清水からの伝聞にすぎないし,矢部と被控訴人とが食事をした際に被控訴人が政治に関心があるという話をよくしていた部分についても,これをもって立候補事実を認めるには足りない。
(オ)したがって,控訴人らの前記主張は,採用することができない。
イ 「自分を売り込むとなると血眼だ。」,「民主党にまとわりついていた時期もあった。」との控訴人奥村の発言は,事実の摘示であること及び真実性の不存在
(ア)控訴人らは,控訴人奥村の上記発言につき,一般の読者は,立侯補依頼話を前提として,「自分を売り込む。」,「民主党にまとわりついていた時期もあった。」との意見・論評を行っているものと理解するのが通常である旨主張する(前記第2の3(2)イ)。
(イ)しかし,控訴人奥村の上記発言に続き,控訴人竹内が,被控訴人が「仏教タイムス」誌上に民主党幹部とのインタビューを何度か掲載した事実を挙げ,控訴人笠原の「民主党幹部も,いい迷惑だっただろうな。」と発言していることに照らせば,民主党にまとわりついていた事実と立候補事実は,別個の事実と理解できること,平成16年最高裁判決基準に照らせば,控訴人奥村の上記発言は,証拠等をもってその存否を決することが可能であり,また,他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解できることなどの諸点に鑑みれば,控訴人奥村の上記発言は,被控訴人が自分を売り込むとなると血眼になること及び民主党に付きまとっていたことなどの事実を摘示するものというべきである。そして,控訴人奥村の上記発言中のこれらの事実が真実であることを裏付ける客観的かつ的確な証拠はない。
(ウ)したがって,控訴人らの前記主張は,採用することができない。
(3) 本件発言部分3について
ア 控訴人らは,本件発言部分3は,事実の摘示ではなく,意見・論評である旨主張する(前記第2の3(3)ア)。
  しかし,前記補正の上で引用した原判決の「第3当裁判所の判断」中の2(2)ウに説示のとおり,本件発言部分3は,被控訴人が,かつては,民主党に抱え込んでもらっていたが,行き場をなくして共産党に抱え込んでもらっているように,いつも何らかの団体に抱え込んでもらっており,そのため,その行動を当該団体に制約されているとの事実を摘示したものである。
  そうすると,本件発言部分3をもって,被控訴人の背後に共産党が存在していることを比喩的に表現したものにすぎず,意見・論評であるとの控訴人らの主張は,失当であって,採用することができない。
イ 控訴人らは,本件発言部分3が事実の摘示であったとしても,共産党から仕事の場を与えてもらっている,共産党の党是からすれば,共産党と極めて友好的な関係を構築することは,同党のイデオロギーと相反する行動や批評は制約されてしまうことは想像に難くないなどとして,上記発言部分の真実性は立証されているなどと主張する(前記第2の3(3)イ)。
  しかし,共産党と極めて友好的な関係にあることと,同党に抱え込んでもらっており,その行動を共産党に制約されていることとは別個の事柄であることに照らせば,被控訴人が同党と極めて友好的な関係にあることをもって,本件発言部分3の摘示事実が真実であることを認めるには足りないし,他に控訴人らの上記主張を裏付ける客観的かつ的確な証拠はない。
ウ したがって,控訴人らの前記主張は,いずれも採用することができない。
(4) 言論の自由との関連における本件各発言部分の許容性の不存在
  控訴人らは,本件各発言部分は,言論の自由の範ちゅうにあるものとして許容されるべきである旨主張する(前記第2の3(4))。
ア しかし,本件各発言部分が,被控訴人の社会的評価を低下させ,かつ,名誉を毀損する摘示事実の重要な部分について真実であると認められず,また,控訴人らにおいて,上記摘示事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由がないことは,前記補正の上で引用した原判決の「第3当裁判所の判断」中の2及び3に加え,前記第3の2(1)~(3)に説示のとおりである。
イ そして,本件記事が,控訴人学会員に対して,控訴人学会に対する批判的な言動を行う人物や団体に関する情報を提供することを目的にし,特に,本件各発言部分が,これまでの被控訴人の控訴人学会批判に対する反論のためにされているとしても,本件各発言部分は,被控訴人について,「ガセネタ屋」,「いつもどっかに卑しくしがみついて汚れ仕事にありつく。要するに『ヒモつき』だ。」,「金のため,自分の損得だけで平気で裏切る。」,「カメレオンだ。」,「恩を知らない。畜生にも劣るやつだ。」,「幼稚なやつだ。」,「『ガセネタ屋』の分際で身のほど知らずも,いいところだ(爆笑)。」などと,被控訴人の人格に対して極めて低俗的な表現で攻撃を加えるものである。
ウ そうすると,控訴人らと被控訴人との間の対立の経過や社会的地位,報道目的等のほかに,本件記事が掲載された創価新報の読者が控訴人学会の男女青年部員であることを考慮したとしても,本件各発言部分が言論の自由の範ちゅうにあるものとして許容されるものでないことは明らかである。

3 当審における被控訴人の主張に対する判断
 被控訴人は,本件各発言部分は,被控訴人のジャーナリストとしての根源的な社会的評価を損ない,その職業的地位(営業権)と生活権を脅かすものであるから,原判決の損害額の認定(50万円)は,過少である旨主張する(前記第2の4(2))。
 しかし,前記補正の上で引用した原判決の「第3当裁判所の判断」中の4の説示に加え,控訴人らが本件不法行為に至った控訴人学会と被控訴人との対立状況を含め,本件に現れた一切の事情を総合して判断すれば,被控訴人の損害については,被控訴人の被った精神的苦痛を50万円と評価し,控訴人らの本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用を5万円と認めることが相当である。
 したがって,被控訴人の上記主張は,採用することができない。
 
第4 結論
 よって,被控訴人の控訴人らに対する請求を原判決主文1項の限度(被控訴人の控訴人らに対する,共同不法行為による損害賠償請求権に基づく慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円の合計1100万円及びこれに対する不法行為の後である平成20年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払請求並びに謝罪文の掲載請求につき,慰謝料50万円及び弁護士費用5万円の合計55万円及びこれに対する不法行為の後である平成20年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払請求の限度)で認容し,その余を棄却した原判決は相当であり,本件控訴及び本件附帯控訴は理由がないから,いずれもこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
   東京高等裁判所第15民事部
        裁判長裁判官   井 上 繁 規
           裁判官   笠 井 勝 彦
           裁判官   菅 野 正 二 朗

これは正本である。
 平成23年11月30日
東京高等裁判所第15民事部  裁判所書記官 伊藤 聡

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信濃町探偵団――創価学会最新動向

信濃町探偵団――創価学会最新動向

●創立記念日&写真掲載
・11月13日付「聖教新聞」「大勝利の11・18『創価学会創立記念日』を祝賀し、池田名誉会長夫妻が原田会長ら代表と共に。婦人部をはじめ全国同志の奮闘をねぎらい、心から讃えた(今月、東京・新宿区内で)
・11月18日付「聖教新聞」「きょう11・18学会創立記念日 世界に正義の大城を」「81周年の『創立記念日』を迎え、池田名誉会長夫妻が晴れやかに(東京・新宿区内で)」
 「17日には、11・18記念の勤行会が、牧口初代会長の祥月命日(18日)の追善法要の意義を込めて行われた。名誉会長は、創価学会第2別館(東京・新宿区)で代表と共に厳粛に勤行。正義の信念に殉じた先師の遺徳を偲び、世界広宣流布のさらなる発展と全同志の健康・幸福・勝利を深く祈念した」
・11月15日~18日付「聖教新聞」「11・18創立記念日特集」「第1回 教育のための社会を」(15日付)「第2回 民衆の絆を強く」(16日付)「第3回 『対話への信念』と『青年育成』」(17日付)
 「第4回(完)平和の潮流を築く」(18日付)「一人の人間革命が世界を変える!」「SGI会長の思想と行動に五大州から顕彰」「23カ国から国家勲章」「信頼の証し717の名誉市民称号」「知性の宝冠318の名誉学術称号」

 ※毎年、毎年、よくも飽きずに続けるものと思うが、今年も創立記念日前後に池田大作礼賛のキャンペーンを張った創価学会。礼賛される主は、いつ撮ったのかよく分からない写真と、「第2別館で代表と共に勤行」との記事で登場したが、その健康状態は相変わらず不明。『人間革命』をはじめとする池田氏の著作物の大半が、「大作の代作」グループの手になるものであることは「代作」グループの責任者だった原島嵩元教学部長らの証言によって明白であり、池田氏の権威やカリスマは巧妙な仕掛けによって創作されたものであることが分かっている。
  そんな工作をいまだに続ける創価学会。こうして「愚者の船」(本誌172号での溝口敦氏の比喩)は沈み行く。

●世襲への準備着々
・11月22日付「聖教新聞」「中国人民対外友好協会李会長を歓迎」「名誉会長が漢詩を贈る 池田副理事長らが会談」
 「中国人民対外友好協会の李小林会長、夏国珠理事ら一行が21日、東京・信濃町の学会本部を訪問。池田副理事長らが聖教新聞本社で歓迎した。―中略―(会談では)池田副理事長がこうした予定に触れると共に、『戦争を経験し、国交正常化に力を尽くした“親の世代”の思いを受け継ぎ、さらに次の世代に伝えていかなければなりません』と強調。国家や経済の交流を支える、民衆同士の交流の重要性を訴えた」
・12月号「大白蓮華」「ヨーロッパ広布新時代へ 池田先生とヨーロッパ 創価学会インタナショナル副会長 池田博正」
 「私は、何度か、欧州訪問に同行させていただいている。その折に激励してきた青年リーダーが、今は各国、そして欧州のリーダーとして活躍している。皆、口をそろえて言うことは、『先生の姿から、師弟の精神、仏法の偉大さを学んだ』ということである」
 「先生が50年にわたってまき続けてきた種が、友の笑顔となって見事に咲き誇っていると感じた欧州訪問であった」

 ※池田大作氏の健康状態の悪化が伝えられる中、ポスト池田大作体制の要となると思われる長男・池田博正氏の出番が増えている。来日した中国の人民対外友好協会の会長と会談したり、「ヨーロッパ広布50周年」ということでヨーロッパを回り、その手記を機関誌「大白蓮華」に載せたりと、SGI会長引き継ぎの布石と見られる動静が目立つ。
  早ければ来年の5月3日や11月18日に、SGI会長の交代ということになる可能性も否定できない。

●「乱脈経理」でも財務は強行
・11月11日付「聖教新聞」「新時代第53回本部幹部会・SGI総会から(要旨)原田稔会長」
 「現在、各地で広布部員会が開催されており、月末からは財務の振り込みが開始されます。仏意仏勅の広宣流布の一切の活動を支えるのが財務であり、広布部員の皆さまであります。その功徳が、いかに大きいか。―中略―学会の財務は、どこまでも自発・能動であります。“信心の志”を何よりも大切にすることこそ、財務の精神です。
 お一人お一人が無量無辺の功徳を積まれゆく、すがすがしい財務となるよう、私も真剣に祈念してまいります。何とぞ、よろしくお願い申し上げます」
・11月20日付「聖教新聞」「同志が喜び集う世界広布の本陣 総本部が晴れの起工式」
 「2013年11月18日の完成へ、『総本部』の建設が、いよいよ開始される。解体工事、基礎工事等が順調に進み、起工式が、学会創立記念日である18日午前、東京・信濃町の学会本部別館で行われた」

 ※矢野絢也元公明党委員長が明かした公益法人とは思えない悪質な税務調査妨害。文字通り創価学会の経理は「乱脈経理」だったのだが、そんな事実が暴露されても、まるで「蛙の面に小便」とばかりに今年も財務を強行する創価学会。
  学会本部関係者からの情報によれば、大震災・大津波そして原発の被害を受けている東北地方を除いては、今年も昨年並みを維持する目標で、自公政権の悪政の結果、社会的格差が拡大し、多くの学会員を含む庶民が困っている中でも、目標をクリアできそうとのこと。原田会長は、「無量無辺の功徳」などと煽りたてるが、潤うのは池田大作氏とその取り巻きのみ。創価学会員は矢野氏の『乱脈経理』を読んで、よく考えるべきだろう。

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2011年11月 特集/矢野絢也著『乱脈経理』が明かした創価学会の税務調査妨害

「宗政官」の醜悪な癒着構造 宗教界の共通利害と「公益性」

柿田睦夫
ジャーナリスト

 フル活用された大蔵省人脈

 矢野絢也元公明党委員長は新著『乱脈経理』で、創価学会に対する税務調査をめぐる国税当局との攻防劇を明るみにした。それは醜悪極まりない闇取引だった。
 発端は1989(平成元)年6月の「捨て金庫事件」だった。横浜市のゴミ処理場で見つかった現金1億7000万円入りの古金庫が、警察の捜査の結果、聖教新聞社の倉庫から搬出されていた事実が判明。池田大作創価学会名誉会長の腹心で、「池田大作の金庫番」「創価学会の大蔵大臣」などの異名を持っていた中西治雄氏(当時・創価学会総務)が「自分の金だ」と名乗り出た。
 中西氏は「(日蓮正宗総本山)大石寺境内の売店で売った金杯の収益」などと説明したが、1億7000万円の中には大蔵省印刷局の封緘(ふうかん)つきの「一度も市中に出回っていない新札」もあった。また1億7000万円を金庫に入れて保管していたことを忘れていたというが、中西氏の自宅には極度額350万円の根抵当権が設定されており、1億7000万円の存在を忘れて350万円の借金をしたということになる。そんな説明が通用するはずがないにもかかわらず、ことの真相は闇の中に消えてしまった。「金は中西氏のものではなく、中西氏が預かるか管理を委託されていたものだから、中の金に手を付けられなかったのだろう。これが大方の推理だった」「金は池田氏の裏金だと疑っていた」と矢野氏は言う。
 この事件のあと、国税庁が動く。「マルサより怖い」とされる東京国税局資料調査六課(料調)が90(平成2)年6月、創価学会の税務調査を公式に開始。調査は92(平成4)年まで2次にわたって実施される。このとき創価学会の懇請で国税当局との裏交渉に当たったのが矢野氏だった。当時、委員長を辞任して公明党常任顧問の職にあった(以下、カッコ内は『乱脈経理』からの引用)。
 公明党書記長・委員長としての20年余の間に、「私は大蔵省・国税庁の幹部級に旧知の人が大勢できた。そういう人たちと意見交換する会を私は定期的に開いてきた」。その人脈を駆使した。すべて水面下の交渉である。「この当時の官界では、『(議会で)キャスティングボートを握る公明党を敵に回すとどんな報復を受けるかわからない』という『永田町神話』が定着していて、大蔵省の高級官僚は常日頃、公明党を巧みに抱き込んできた。ときには公明党に妥協することもあった」。そういう関係を、創価学会と池田氏を守るためにフル活用した。
 大蔵省事務次官、国税庁長官ら幹部たちとの、水面下の交渉が頻繁に行われた。「後でバレたら重大なことになる。こちらもそちらも」。こんな場面が341ページの本書の、ほぼ2、3ページに1回は登場する。これに池田氏の「殿御乱心の表現も的外れではない」ヒステリー状態の様子や、資料の改ざんや破棄に走る学会幹部の狼狽と自己保身の様子が重なる。
 宗教法人創価学会には非課税の公益事業会計(会員の寄付)、墓苑事業会計と軽減税率が適用される収益事業会計(主に聖教新聞)の3つの会計帳簿があるが、そのすべてが「ブラックホールだらけ」だった。
 記帳漏れなどという単純なものだけではない。例えば特定金銭信託(営業特金)。聖教新聞社が学会マネー運用で投資していたものが億単位の損失を出した。「その巨額の損失を聖教新聞社で処理せず、(非公開の)公益事業会計に回して損失隠しをしていたのである。「学会の資金運用は秘中の秘で隠し通す必要があった」からだ。こんな手口が次から次と登場する。
 学会が最も恐れていたのは池田大作氏による学会財産の公私混同が暴かれることだった。学会内の池田専用施設や池田氏が本部職員らにバラ撒く「激励費」、池田氏や同夫人が私的に使う公用車…。いずれも個人所得などとして課税対象になる。
 象徴的なのが絵画だった。池田氏が買い漁る絵画の費用は「ほぼすべて学会持ちだった」。もし国税庁が学会の帳簿や財産目録をチェックすれば、「記載のない持ち主不明の美術品がゴロゴロ出てきて収拾がつかなくなっていただろう。帳簿にあっても現物が見当たらないということもあったはずだ」。これに「絵画取引で15億円不明」と騒がれたルノアール絵画事件の発覚が追い打ちをかけた。
 帳簿をどこまで出すか、どこで妥協するかの攻防。学会からの最終指示は「(1)池田名誉会長にさわらず、(2)第一庶務(池田秘書室)にさわらず、(3)絵画などは未整理で提出できない、という三原則」だった。
 国税庁は最終的にこれを受け入れた。墓苑会計のみを対象として申告漏れを認定し、学会は過去3年分の追加法人税と追徴課税として約7億円を納付。それ以前の申告漏れは不問になった。他の事業会計で認定した申告漏れは4000万円。「内心、私にとっては望外の少ない金額だった」。矢野氏はそう告白するが、さらにこのあと後述する政治工作により「事実上、税金をゼロにする」ことになる。「あとは重い宿題として次に残す」という国税庁の通告で2次にわたる税務調査は集結した。それから20年近く、国税は一切、創価学会に手をつけていない。「宿題」は残されたままである。
 矢野氏は本書で「国会議員が税務調査潰しに手をかすなどというのは言語道断の行為」だと認めている。創価学会なかんずく池田氏はその行為を指示し、矢野氏は実行したのだ。このあと、池田氏は矢野氏に特別製の「香合」を贈って矢野氏の尽力を慰労、矢野氏はこれを受領した。

 宗教法人の自浄作用蝕む「学会防波堤」

 「言語道断の行為」に手を染めたのは矢野氏だけではない。公明党それ自体もフル動員されていた。それは政権党との政策的取引にまでエスカレートする。
 公明党はまず湾岸戦争で90億ドルの追加支援賛成に回る。「『法案に反対して自民党から税務調査に妙に介入されたら困る』といった意識が公明党執行部に働いた」からだった。
 党執行部はさらに「ウルトラC」まで持ち出した。自衛隊初の海外派遣となるPKO協力法である。「国税問題に対処するためには(法案に)賛成し、官邸を味方にする必要がある」「ウルトラCをやると後々ツケが回る。…しかしやむを得ない」。税務調査が大詰めになった91(平成3)年11月、自公両党は衆議院の委員会で同法案を強行採決した。
 陰の功労者はもう一人いた。国税との攻防の終盤、本書にも頻繁に登場する。
 「私は大事な電話をした。相手は竹下登元首相である」「『尾崎(国税庁長官)には強く働きかける』と請け合ってくれた」…。そして「竹下氏は、事実上、税金をゼロにするよう国税庁首脳を説き伏せていたのだ」。攻防決着のとき、国税幹部は「今回は矢野さんや竹下さんの顔を立てて、この辺で納めた」と語っている。
 創価学会のためには政治取引をし、立法権をも行使し行政を動かす。そこに公明党の存在理由があるのだが、これは「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」という憲法20条に明白に違反する。つまり公明党という存在自体に憲法上の疑義が生じることになる。
 「政官癒着」という言葉があるけれど、本書の内容は「宗政官」の醜悪なまでの癒着構造である。
 もう一つ、重要な事実が本書にはあった。この当時、他の宗教団体も税務調査を受けていたのだ。
 「…別件だが、ある宗教団体についても教祖の自宅まで調査した」「竹下さんや、小沢さんなどに頼んでもムリだ。他の宗教団体もいろいろあった」は国税幹部の発言。「他の宗教団体の中には政治家を通じて国税庁に圧力をかけてきたところもあったというが、私自身も同じことをやっており、他の宗教団体のことをとやかく言う資格はなかった」は矢野氏の述懐である。
 教団の傭兵として動く政治家。その物量に違いはあっても宗教団体はそれぞれに矢野氏のような議員を抱えており、創価学会に似た手法で動いているということだろう。宗教団体はその代償に、選挙では教団あげて支援し、信者の票を提供する。「信仰」をしばりにして信者の政治的自由を奪っている。
 その背景には「学会がやっているのだから」という蕫学会防波堤﨟の意識がある。07(平成19)年に33年ぶりに選挙参画した浄土真宗本願寺派幹部は、内部の会合で「学会に負けてよいのか」と発言している。宗教界には宗教法人税制という共通利害があるが、宗教の公益性は権力から与えられるものではない。自浄努力と市民の共感によって獲得するものなのだ。
 宗教界だけのことではない。学会マネーは寄付金、協力費、研究補助、広告代と、形をかえて各方面にバラ撒かれる。その結果、学者・研究者の世界にも、マスコミの中にも“鶴タブー”が生まれる。これこそが問題なのだが…。

柿田睦夫(かきた・むつお)フリージャーナリスト。1944年生まれ。業界紙記者などを経て1979年から「しんぶん赤旗」社会部記者。2011年の退職までの間、「現代こころ模様」シリーズなどで「宗教と社会」の関わりを取材。葬儀や戦後遺族行政に関わるレポートも多い。著書に『霊・超能力と自己啓発―手さぐりする青年たち』(新日本新書、共著)『統一協会―集団結婚の裏側』(かもがわ出版)『現代葬儀考』(新日本出版社)『宗教のないお葬式』(文理閣、共著)など。

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2011年11月 信濃町探偵団―創価学会最新動向

●原田会長が再任

・10月22日付「聖教新聞」「学会の会長選出委員会行う 原田会長を再任」
 「創価学会の会長選出委員会(議長=山本武総務会議長)が、21日午前10時半から東京・信濃町の学会本部別館で行われ、全員の賛同で原田稔会長を再任した(2期目)。同委員会に引き続き行われた最高指導会議(秋谷栄之助議長)は、これを承認した。同委員会は、原田会長の任期(5年)が11月17日をもって満了となることから、創価学会会則に基づき次期会長選出のため行われた}

 ※創価学会会長の任期は、会則において5年と定められている。原田稔現会長が、秋谷栄之助前会長の後任として会長に就任したのは平成18年の11月。今年の11月で5年の任期が終了することから、原田会長が再任となるのか、あるいはポスト池田大作体制を視野に入れて、新体制となるのか、その帰趨が注目されていた。
  本誌の133号で紹介したように、平成13年に原田氏は参院選挙での惨敗などを背景に自己批判・自己総括を余儀なくされるなどしている。またそもそも昭和54年に池田大作会長が日蓮正宗との第一次の対立の結果、教義違背などの責任をとって辞任した際に、辞任に反対しなかったとして、山崎正友元創価学会顧問弁護士や原島嵩元教学部長、野崎勲青年部長などとともに、辞任を推進もしくは容認した人物であるとして、池田氏から「悪の4人組」などと非難されていた経緯もある。
  それだけにもともと学会本部の事務総長を長く務めるなど、どちらかといえば事務型の宗教官僚の原田氏はショートリリーフであり、本格的なポスト池田大作体制を構築するにあたっては、創価学園や創価大学出身である正木正明理事長や、谷川佳樹学会本部事務総長への交代も取り沙汰されていた。
  だが池田氏の健康状態の悪化や、矢野絢也元公明党委員長による創価学会の国税調査妨害問題の暴露などにより、創価学会は現在、組織の存亡にかかわる危機的状況にある。そうした状況下では冒険は許されない。結果的に堅実な事務型官僚の原田氏の続投に落ち着くこととなったものと見られる。
  もっとも秋谷前会長は平成18年の7月に5期目の続投となったが、わずか3カ月後に事実上更迭され、原田氏へと交代しているだけに、原田氏が5年の任期を全うできる保障はない。

●新環境対談……福島原発事故を受けて路線修正??

・10月30日付「聖教新聞」「ヨーロッパを代表するドイツの環境学者 E・ヴァイゼッカー博士と池田SGI会長の対談始まる」「月刊誌『潮』12月号から連載 『地球革命への挑戦』」
 「池田SGI会長と、欧州を代表する環境学者のエルンスト・フォン・ヴァイゼッカー博士の対談が、月刊誌『潮』の12月号から開始される。タイトルは『地球革命への挑戦――人類と環境を語る』(中略)折しも、福島の原発事故を受けて、人間と自然の関係、エネルギーの在り方に根本的な見直しが迫られる時だけに、注目すべき対談となろう」

 ※トインビー・池田大作対談で原子力の平和利用すなわち原発を推進・容認していた池田大作氏。そうした池田氏の意向を受けて公明党は、原発政策を推進し、プルトニウムを燃やすプルサーマル計画まで容認していた。また創価学会の外郭出版社である潮出版社の月刊誌「潮」が、原発を推進する電気事業連合会の広告を多年にわたって掲載していた事実も、すでに本誌は報じている。
  こうした不都合な事実を糊塗するために、おそらく「潮」における池田・ヴァイゼッカー対談では、原子力の平和利用に対する警鐘や抑制をアピールする可能性が高い。
  それにしても「週刊文春」で「脳梗塞」を発症したばかりか、「認知症」も進んで他者を認識できないとまで指摘されている池田氏に対談など可能なのか。「週刊文春」記事もその事実を指摘しているが、これに対して創価学会は「連載対談は近年の往復書簡をまとめたものです」と答えている。
  かつて「大作の代作グループ」である「特別書籍部」の責任者だった原島元教学部長は、池田氏と海外要人や学者などとの往復書簡も、「大作の代作グループ」がまとめたものであることを明らかにしているが、おそらく「潮」で始まる新連載対談もそうした類なのだろう。それにしても池田氏の名前で出すためには本人の了解が必要なはず。仮に「脳梗塞」や「認知症」の影響で、対談内容を把握・理解していないにもかかわらず池田大作名で出しているとすれば問題だ。羊頭狗肉どころか詐欺的行為という以外ない。

●またまた香峯子蘭を宣伝

・10月4日付「聖教新聞」「美しく咲き誇る香峯子蘭」
 「シンガポールで育てられている“香峯子蘭”が、美しい花を咲かせている。蕫香峯子蘭﨟は、『シンガポール国立植物園』が2007年、新種の蘭に、池田SGI会長夫人の名前を冠し、『デンドロビューム・カネコ・イケダ』と命名したもの。(中略)シンガポールの国花である『蘭』。同国には新種の蘭に国賓や著名人の名を付けて贈る伝統がある。これまで、南アフリカのマンデラ大統領などに贈られてきた。デンドロビュームの花言葉は『真心』『思いやり』である。いかなる困難があっても、友のために尽くし抜く創価の母たち。その気高き姿を映すかのように、“香峯子蘭”が可憐に咲き誇る」

 ※池田大作夫人というだけで宣揚に宣揚が続けられる池田かねさん。2007年以来、「聖教新聞」は「香峯子蘭」が咲く度に紹介記事を続けている。そういえばかの国にも「金正日花」というのがあり、「金正日花」が咲くとテレビで大々的に宣伝。「金正日花」のバッジや歌まで作られているという。そのうち信濃町の三色旗を掲げた売店でも、「香峯子蘭」の絵葉書やバッジが売られるかも。

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2011年11月 目次

閻魔帳
池田時代の終焉告げるレクイエム/乙骨正生

特集/矢野絢也著『乱脈経理』が明かした創価学会の税務調査妨害

「黒い手帖」の核心部分だった「創価学会=池田大作」の『乱脈経理』/古川利明

「宗政官」の醜悪な癒着構造 宗教界の共通利害と「公益性」/柿田睦夫

『乱脈経理』が示すもの/浦野広明

国税庁、創価学会を震撼させた矢野絢也『乱脈経理』告白の衝撃/段 勲

トピックス/国立香川大学・高倉教授人権侵害事件
第二次の池田大作氏当事者照会を提出/本誌編集部

トピックス
池田大作は「脳梗塞」「認知症」と報じた「週刊文春」/本誌編集部

●連載

信濃町探偵団――創価学会最新動向

ヨーロッパ・カルト事情(171)
日蓮仏教の名のもとに「復権」進むフランスの創価学会/広岡裕児

戦後保守運動とカルト問題(6)
「元号法制化」運動の中核を占めた「生長の家」/平田文昭/平田文昭

執筆者紹介 バックナンバー一覧 編集後記

編集後記から

小誌の169号(平成22年2月号)は、「宗教法人の非課税問題と創価学会」を特集し、その中で矢野絢也元公明党委員長が『私の愛した池田大作『虚飾の王』との五〇年』において、平成2年から4年にかけて行われた東京国税局による創価学会に対する税務調査を、矢野氏が創価学会なかんずく池田大作氏の意向によって妨害した事実を告白したことを取り上げました。
 特集の執筆者の一人であるノンフィクション作家の溝口敦氏は、矢野氏の『私が愛した池田大作』での告白に一定の評価を与えつつも、中身が薄いとして「具体的事実の公表と開示」を求めました。この思いは一人溝口氏のみではなく、創価学会問題に関心を持つ多くの人々の共通認識だったといえましょう。
 そんな多くの人々の思いに応えるかのように、矢野氏が創価学会の国税庁の税務調査妨害の実態を、公明党国会議員OBらに奪い去られたいわゆる「黒い手帖」などに記載されていたメモや日記などに基づいて詳細に記述した『乱脈経理』を発表しました。
 そこには矢野氏をはじめとする公明党の政治力を駆使して、文字通り「乱脈」な「経理」なかんずく池田氏の金にまつわる問題を隠蔽しようとする創価学会の醜悪な実態が赤裸々に記載されています。
 小誌本号の特集記事は、その『乱脈経理』を取り上げました。また「週刊文春」10月27日号が、池田氏の「病状」について「二カ所の脳

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2011年10月 特集/島田紳助問題と創価学会

紳助どころではない 信濃町と暴力団の癒着

古川利明
ジャーナリスト

 学会と暴力団の仲は「完全にアウト」のレベル

 「暴力団関係者」との交際が発覚し、芸能界引退を表明した吉本興業所属の大物芸人・島田紳助を巡る騒動が、今なお、尾を引いている。
 発端は、8月23日夜、紳助本人が突如、記者会見を開き、「十数年前、自分で解決できない問題に直面し、昔からの友人に話したところ、(暴力団関係者に)頼んでくれた。直接会ったのは4、5回ほどだが、トラブルを解決してもらったので、深く感謝していた」と明かし、「自分の中では、セーフだと思っていた」と弁明していた。
 実際のところ、芸能界と暴力団というのは、興行開催をはじめとして、人気商売には付いて回る諸々のトラブルを、ウラで穏便に解決しようとし、その結果、双方が「もちつもたれつの仲」から、「構造的な癒着の関係」へと陥っているというのは、ある意味、「公知の事実」である。むしろ、「この程度のことで、紳助が自分のクビを差し出さなければならなかったとは、よっぽどオモテに出せないスキャンダルを握られていたのではないのか」と訝る声があったのも事実である。
 確かに、今度の紳助のケースは、決して褒められた話ではないが、しかし、本人はその責任を取る形で、芸人を辞めている。そして、もっと言うなら、スキャンダルに食らいついて、それを「マッチポンプ」の形でカネにすべく、暴力団が権力に対してタカり、脅し上げていく中で、両者が最終的に癒着していく構図は、ある種、この日本という国の「システムの一部」を形作っている、とすらいえるだろう。
 こうした「暴力団とのただならぬ仲」という点では、「信濃町」こと「創価学会・公明党=池田大作」に関していえば、そんな紳助問題の比ではない。特に、指定暴力団・山口組系後藤組との関係は、「完全にアウト」とも言うべきレベルに達しているにもかかわらず、例によってマスコミは、また、ダンマリを決め込み、国会で追及する動きすら出ていないのが、現状なのである。

 墓苑造成を巡り暴力団を使って反対派潰し

 創価学会(=池田大作)が、後藤組とのズブズブの関係を深めるきっかけになったのは、1965年、静岡県富士宮市の日蓮正宗総本山・大石寺に正本堂建立の御供養金として、公式発表で355億円(実際には、450億円前後だったといわれる)を集めたことだった。その際、正本堂建立の名目で、大石寺周辺の土地の買い占めに乗り出し、墓苑開発へと進めていったのである。
 ところが、約60万坪の農地の取得にあたって、農地法上の手続きをしていなかったり、農業従事者以外の所有を禁止されている土地を取得するなど、不正取得が発覚したのである。これを受けて、地元住民が73年、池田大作を刑事告発したため、池田は右腕の学会顧問弁護士だった山崎正友を現地に送り込み、トラブルのもみ消し工作を命じた。
 山崎は、当時の植松義忠・富士宮市長(革新系)に「社公協力」を持ちかけて、接近を図る一方で、76年の同市長選では、古くからの大石寺の檀徒だった保守系の山川斌にテコ入れし、約1万人の学会票を回すことで、市長当選をもぎ取り、農地の不正取得の証拠隠滅を図った結果、富士桜自然墓地公園の開発もスムーズに動き始めた。ところが、80年の同市長選で、前職の植松が返り咲きを果たしたことから、状況は一変。富士宮市議会には、一連の疑惑解明を求めて、百条委員会が設置され、池田大作の証人喚問を求めるなど、一挙に反対運動がヒートアップしたのである。
 そのため、池田大作は、当時、公明党書記長だった矢野絢也に命じ、田中角栄の側近・二階堂進を通じて、「百条委潰し」を依頼し、金丸信を現地に送り込んだ。さらに、反対派住民や百条委で疑惑解明に動いた市議に対しては、地元の富士宮市に本拠を置く暴力団・後藤組を使って脅迫し、自宅にブルドーザーで突っ込むなどした。
 この後藤組の組長を務める後藤忠政は、1942年の生まれで、60年代末、まだ、20代の若さで、富士宮市に進出し、山口組の「菱の代紋」を掲げ、静岡県内で勢力を伸ばしていった。このときの墓苑造成を巡る「反対派潰し」で、後藤組は、その暴力装置としての役目をいかんなく発揮した。ある意味、その後の後藤組の興隆は、このときの「池田大作=創価学会・公明党」との出会いがあったからこそ、ともいえるだろう。
 後藤忠政が、山口組本部の「直参」(=直系組長)に引き立てられるのは、四代目組長・竹中正久の時代の84年で、その後、02年には、組織中枢の最高幹部の職である「若頭補佐」に就いている(その後、08年に除籍処分を受け、引退)。つまり、池田大作(=創価学会・公明党)の天下取りと後藤忠政(=後藤組)の勢力拡大は、「クルマの両輪」の関係にあることが、見て取れる。

 組長との「密会ビデオ」が自公連立を後押し

 その後藤組は、92年には映画『ミンボーの女』を監督した伊丹十三への襲撃事件を引き起こすなど、平然とテロを行う「武闘派」としての名をほしいままにしていたが、その間、後藤組と信濃町との関係は、富士宮市の墓苑開発の反対運動潰しの報酬を巡って一時、関係がこじれたこともあった。83年に後藤忠政が、池田大作と竹入義勝(当時、公明党委員長)宛てに、対応を非難する内容証明付きの郵便を送りつける一方で、85年11月には、創価文化会館に拳銃が撃ち込まれる事件が発生し、後藤組組員が現行犯逮捕される一幕もあった。で、この前後から、都議会公明党のドンで、「池田大作のお庭番」とも言われていた藤井富雄が、後藤忠政との交渉相手となり、例の「密会ビデオ」へと繋がっていくのである。
 この後藤忠政と藤井富雄の密会ビデオが流出するのは、95年末ごろだが、これは後藤と藤井の会談を隠し撮りしていたものだ。時期ははっきりとしないが、藤井が学会に批判的な自民党国会議員ら4人、もしくは5人の名前を挙げ、「この人たちは、ためにならない」という意味のことを言ったとされる。受け取りようによっては、この名指しされた人に対する「襲撃の依頼」とも受け止められ、そのうちの一人が、当時、自民党で激しく創価学会攻撃を行っていた亀井静香(現・国民新党代表)といわれている。
 ところが、このとき、藤井富雄が挙げた4人、もしくは5人の中に、95年9月に転落死した朝木明代(当時、東村山市議)が含まれていたとの情報がある。これも未だに謎が多く、「未解決事件」といっていいものだが、じつは、映画監督の渡辺文樹がこの事件を徹底取材し、03年に『阿鼻叫喚』というタイトルで完成させている。この映画は、その朝木市議の転落死事件に、後藤組が関与していたとして、その内容もストーリーに組み込んでいるのだが、何と、上映できないまま「お蔵入り」となり、現在に至っているというのである。その理由について、渡辺監督は筆者の問い合わせに対して、こう答えている。
 「朝木明代を演じた主演女優が脅され、本人からも、所属事務所からも『(上映を)止めてくれ』と懇願されているので。私としては、早く上映したいのだが……」
 何とも、異常な状況が起こっているのだが、話を戻して、そのときの後藤忠政と藤井富雄の密会ビデオを使って、98年7月に発足した小渕内閣の官房長官に就いた野中広務は、執拗に「池田大作=創価学会・公明党」を脅し上げた結果、その後の「自公連立」(当初は自自公)へと繋がったといってもいいのである。
 事実、この密会ビデオの件を取り上げた魚住昭の『野中広務 差別と権力』(講談社)には、後藤組の内情をよく知る人物による「自公連立は後藤組がきっかけを作ってやったようなもんだ」との証言が紹介されている。つまり、「創価学会・公明党=池田大作」は、自らの天下取りにあたって、「後藤組」という非合法な暴力装置を使い切ったということである。
 あの「自公の10年」によってもたらされた日本のデタラメ状況を顧みるとき、その責任の深刻さにおいては、「紳助問題」など比較にならないことが、わかるだろう。それゆえ、我々ジャーナリズムは、こうした「反社会勢力=暴力団」と「権力」との癒着が生み出している腐敗と膿を、今後も徹底的に抉り出さなければならない。(文中・一部敬称略)

古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。著書に『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』(いずれも第三書館刊)など。

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2011年10月 信濃町探偵団―創価学会最新動向

●健在を強調&相変わらずの称号報道

・9月24日付「聖教新聞」「全国で秋期彼岸勤行法要」「名誉会長は東京・新宿、原田会長は墨田で」
 「池田名誉会長は、東京・新宿区の創価学会第2別館で厳粛に勤行・唱題を行った」
・9月17日付「聖教新聞」「韓国 国立釜慶大学からSGI会長に名誉国際地域学博士号」「韓国・釜山広域市の国立釜慶大学から、創価大学創立者の池田SGI会長に『名誉国際地域学博士号』が贈られた。SGI会長の長年にわたる世界平和・人類文化の発展への貢献、韓日友好への尽力等を讃えたもの」
・9月18日付「聖教新聞」「南米ブラジルが池田SGI会長賞讃」「カンポス・ドス・ゴイタカゼス市から名誉市民証」「アチバイア市議会は顕彰状」
・9月19日付「聖教新聞」「台湾 歴史の都 宜蘭県から 池田SGI会長に感謝状」「芸術と文化を振興し人々の精神を高めた」
・9月23日付「聖教新聞」「中国 大連工業大学に池田思想研究所」「池田思想は巨大な精神的財産」
 「中国東北部の遼寧省に立つ名門学府・大連工業大学に、『池田大作思想研究所』が設立された。これは、池田名誉会長の思想・哲学研究を通した高い人格と国際的な視野を備えた人材の育成、人文科学の発展と研究協力の強化、さらに教育文化交流による日中両国の相互理解と世界平和の促進を目指すもの」
・9月26日付「聖教新聞」「国立ザンビア大学から池田SGI会長に名誉法学博士号」
 「アフリカ・ザンビア共和国の最高学府である国立『ザンビア大学』から創価大学の創立者の池田SGI会長に『名誉法学博士号』が贈られた(中略)『名誉法学博士』学位記が創大の池田博正理事に託された」

 ※昨年6月の本部幹部会を欠席して以来、公衆の前に姿を見せていない池田大作氏。彼岸の中日の翌24日付「聖教新聞」には、池田大作氏が「学会本部第2別館で厳粛に勤行・唱題を行った」とあるが、写真はない。そもそも第2別館は、池田氏が自宅代わりに使用し、東京国税局が創価学会への税務調査に入った際、慌てて数年分の家賃約2000万円を支払った場所。いわば公的な場というよりも自宅で勤行した(本当にしたかどうかはともかく)というに過ぎない。
  そんな不透明な健康状態にある池田氏に相変わらず各種の顕彰等が贈られたとして、健在を誇示する創価学会。ああ無惨。

●世襲への布石

・9月19日付「聖教新聞」「池田副理事長 和歌山日高川町で激励」
 「台風12号で甚大な被害に見舞われた和歌山、奈良で、学会の対策本部による救援・復旧活動が続いている。
 池田副理事長は18日、和歌山・御坊市の御坊会館を拠点にして救援活動に励む友らを激励した後、日高川町の被災者宅を訪問。困難に耐えてきた同志の状況にじっと耳を傾けながら、池田副理事長は、『これからがさらに大変になってくると思いますが、全力で応援していきます。この災害から立ち上がろうとされる一人一人の姿こそ、勝利の実証になります』と励ましの言葉を述べた」
・9月30日付「聖教新聞」「中国・国慶節のレセプション」「原田会長、池田副理事長が出席」
 「中華人民共和国の建国記念日『国慶節』(10月1日)を祝賀するレセプションが29日、都内で開かれ、原田会長、池田副理事長、谷川副会長ら学会代表が出席した。原田会長が、程永華駐日大使に池田名誉会長の祝辞を伝えると、程大使は『池田先生には、いつもお世話になっております。中日友好に尽力してくださり、ありがとうございます』と述べた」
 
 ※被災地を訪れ、創価学会員を激励するとともに、中国の国慶節のレセプションにも出席。9月26日に国立ザンビア大学から池田大作氏に授与された名誉学位の学位記も、父に代わって代理受賞している。世襲は目前に迫っているといえよう。

●迎合するマスコミ・学者・文化人

・9月17日付「聖教新聞」「BS放送のドキュメンタリー番組」「あす周恩来 日本を最も愛した中国人」「池田名誉会長との交流も描く」
 「明日の日中国交回復40周年を記念する特別番組、歴史ドキュメンタリー『周恩来――日本を最も愛した中国人』が18日午後3時45分から同4時50分まで、BSジャパン(BS7チャンネル)で放送される。―中略―番組の後半では、周総理と友情を結んできた5人の日本人の一人として、池田名誉会長が登場する。
 周総理の晩年、歴史的な一期一会の名誉会長との会談が実現する。その後、名誉会長は中国からの留学生を創価大学に受け入れ、周総理を偲んで『周桜』を留学生と共に植樹した。万代の友好の金の橋を、固い信念で築いてきた名誉会長の民間外交。その輝く軌跡が描かれる」
・9月21日付「聖教新聞」「2011 識者が語る 大阪府立大学秋葉裕教授」「蕫生きる価値﨟伝えるSGIの励ましの姿」「創価学会は日本の誇り」
 「私は日本社会に創価学会があることを誇るべきだと思います」

 ※池田大作氏が公衆の前に姿を見せられず、求心力の低下が否めない創価学会。たった10分程度の面談をあたかも世紀の邂逅であったかのようにアピールして池田大作氏の権威の維持に務める一方、「創価学会は日本の誇り」だとする学者の声を掲載して学会員の信頼を繋ぎ止めようと腐心する創価学会。
  それにしてもたった10分の面談しかしていない池田氏を「周総理と友情を結んできた5人の日本人」とは、この番組を流す放送局の見識を疑う。

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2011年10月 目次

閻魔帳
元「池田大作の金庫番」中西治雄氏の数奇な人生/段 勲

特集/島田紳助問題と創価学会

無数にある創価学会と暴力団との因縁話/溝口 敦

紳助どころではない 信濃町と暴力団の癒着/古川利明

外に暴力団、内に暴力装置 反社会勢力と繋がる創価学会の異常/野田峯雄

トピックス
東所沢小学校「母」の歌問題・続報/乙骨正生

トピックス
被災地で見た「葬送文化」 フル回転で対応する火葬場の現実/柿田睦夫

トピックス/国立香川大学・高倉教授人権侵害事件
新たに池田大作氏を提訴&当事者照会/本誌編集部

●連載
信濃町探偵団――創価学会最新動向

斎藤貴男の[キーワード漂流](33)
軽んじられる「タテマエ」の世界/斎藤貴男

ヨーロッパ・カルト事情(170)
アポカリプス信奉セクトの危険/広岡裕児

戦後保守運動とカルト問題(5)
リアリズムの欠如が招いた現状追認/平田文昭

執筆者紹介 バックナンバー一覧 編集後記

編集後記から

 小誌には時々、創価学会員からの手紙が届きます。過日も創価大学出身の現役の地域幹部から現在の心境を切々と綴る書簡が送られてきました。小誌の編集発行人の乙骨のことを、「多年にわたって私は、貴殿をガセネタ屋と教えられてきました」との書き出しで始まる書簡は、池田大作名誉会長を「お元気で執筆中」とする創価学会の各種幹部らの言動を通して、知る権利も言論の自由もない創価学会の異常な体質を批判していました。
 創価学会が言っていることと現実は違う、その事実に気付いたことが「ガセネタ屋」と洗脳されてきた小誌の編集発行人の乙骨に、手紙を出す動機となったのでしょう。
 10月1日、経済産業省原子力安全・保安院が、九州電力をはじめとする電力各社にやらせを指示していたとする問題を調査していた同省の第三者調査委員会は、玄海原発や女川原発・伊方原発・浜岡原発・泊原発などについての国主宰のシンポジウムなどで「やらせ質問」や「動員」があったとする最終報告書を公表しました。
 原子力発電という莫大な利権の分け前に与るために、政官業学が一体となって虚構の「安全神話」を構築し、「やらせ」まで行って国民を欺罔してきたことの一端が、ここでも明らかになりました。
 同様に、池田大作氏をヒエラルキーの頂点にして、創価学会員から吸い上げる年間数千億円規模の莫大な利権に群がっている、あるいはしがみついている創価学会の幹部と職員。虚構の「カリスマ」と「正義」を鼓吹して会員を欺く姿は、醜悪としか言いようがありません。小誌今号では、そうした創価学会の「素顔」の一端である暴力団との関係を特集しました。

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2011年9月 特集/政権交代と創価学会・公明党

暴力団との絶縁は芸能界より政界だ 紳助より創価学会の汚染が問題

川崎泰資
元・NHK記者

 民主党の代表選挙の直前にメディアを席巻したのは、吉本興業所属の芸人、島田紳助の突然の芸能界引退会見であった。
 その理由は暴力団との深い関係という事で、芸能界一番の売れっ子紳助はこの業界の常識であった「謹慎処分」を一気に突き抜け、「引退」という名の事実上の芸能界からの締め出しであった。これは吉本興業からの解雇である。民放各社に継続番組を持ち、突然の引退はスポンサーへの違約金や、常連の出演者への補償など金銭的にも吉本興業は大打撃であろう。
 それだけの犠牲を払ってでも解雇に踏み切ったのは、報道されている以上に紳助と暴力団の関係が深いもので庇い続ければ吉本興業はもとより、芸能界全体に問題が生じる事を恐れたものであろう。
 遅まきながら吉本興業、芸能界の英断を評価したい。
 それより問題にすべきなのは、暴力団と創価学会・公明党との抜き差しならない腐れ縁である。こちらの方はいまだ全容が定かでない紳助事件とは異なり、暴力団自体が創価学会公明党との関係を明らかにしているにも拘らず、当の学会・公明党が何ら経緯を釈明していない異常さがある。
 そればかりか国会や政界もこの問題を不問にし、新聞・放送の大手メディアが目を瞑るという状況が続いている。この問題を報じているのは、週刊誌や雑誌ばかりで、暴力団と政治の関係が政治記事、社会面の記事としてはきっちりと取り上げられていない。このことは日本の政界や大手メディアが何ものかを恐れている証拠であり、政界は芸能界以下の倫理感覚だ。

 暴力団組長と創価学会の攻防

 本誌読者でご存じない方は少ないと思うが(「フォーラム21」10年6月号「特集/暴かれた創価学会の暗部―後藤元組長が手記発刊」参照)、一応説明すれば、日本最大の暴力団「山口組」の武闘派組織で、08年に引退した後藤組の組長、後藤忠政が残した回想録に記されている事実である。この回想録は『憚りながら』と題して10年に出版されたもので、伝聞や噂としては知られていたが後藤組と創価学会・公明党の深い関係を当事者が克明に回想したもので、特に第四章の「創価学会との攻防」の証拠価値は高いと思われる。
 後藤組は本拠を静岡県富士宮市に置き、経済ヤクザとして知られていた。1970年時代、創価学会は富士宮市に正本堂の建設(300億円)、富士桜自然墓地公園で(200億円)、周辺の土地の買い占めで数百億円など合計1000億円近くをつぎ込む建設ブームを巻き起こしていた。この関連で学会はカネに明かして、強引な買収を進め、地元と軋轢を起こした。
 富士宮市民からも追及の火の手が上がり、同市に地方自治法100条に基づく特別調査委員会、いわゆる百条委員会が設けられた。これにあわてた学会・公明党は地元の公明党を通じて反対派を何とかして欲しいと後藤組に相談を持ちかけ百条委員会の活動を封じた。
 後藤はこの回想録で全ての悪事の総元締めの池田大作は、他人さまから褒められるような人物でないから自分で自分を褒める本をせっせと作って学会の信者に買わせている。ああいう見苦しい生き方もないものだと辛辣に批判する。
 これら一連の事件のあと後藤組との窓口になった創価学会最高幹部の藤井富雄(元東京都議)に関しては、後藤組長との(密会ビデオ)事件がある。この中身はいまだ明らかにされていないが、暴力団の組長と公明党の最高顧問が何回も密談して何を話していたのか。学会・公明党と暴力団をめぐる暗闇を放置してはならない。後藤元組長は「池田や学会、公明党がガタガタ言ってくるならいつでも相手になる。民主党も学会と反目し『黒い手帳』を出版した矢野元公明党委員長と俺を国会で証人喚問したらどうだ」とまで挑発している。
 島田紳助と暴力団より創価学会・公明党と暴力団の関係を正し、政治と暴力団の関係、政治と宗教,中でも政教分離の問題を追及することが肝要である。

 選挙制度改革で公明党の身勝手

 衆議院議員の1票の格差が違憲状態にあり、現行の制度のままでは解散総選挙はできない状況と言われ、国会では制度の改正が焦眉の急とされている。
 民主党と自民党は違憲状態を解消するために当面の制度改革では小選挙区の存続を前提としているのに対し、公明党は中選挙区制を主張してきた。具体的には全国を150の中選挙区に分け、1選挙区あたりの定数を3とする案を想定していた。これは衆参共に民主、公明に次ぐ第三党である公明党にとって、中選挙区を3人制にすれば3番目の議席を獲得できる可能性があると判断したことによる。
 しかしこのところ国政選挙で連敗を重ね、一時の選挙のたびに議席を増やすという上り坂は峠を越え、さらに民主、自民の批判層の票が「みんなの党」に集まり、公明が惨敗する恐れも無きにしも非ずの情勢が次第に現実味を帯びてきた。この結果、執行部は中選挙区の主張を取り下げ小選挙区比例代表「並立制」の現行制度を小選挙区比例代表「併用制」か「連用性」に改める事を主張し始めた。
 これは民主、自民の二大政党が制度改革の考え方として、比例代表の定数を現行より、民主が80、自民が30削減することを主張していることから、このままでは比例の大幅削減につながると危機意識を持ったためである。創価学会という堅い組織を持つ公明党は、民主・自民両党が否定する中選挙区に戻すという実現困難な改革より、小選挙区制を基本としながらも比例代表の議席をなるべく減らさない制度への転換である。
 先の衆院決算行政監視委員会で公明党は、小選挙区と比例代表の2票制を取り、各政党の議席は政党に投じられた得票に応じて比例配分され、小選挙区の当選者に優先的に議席を割り振る「併用制」を主張した。併用制は国民の政治意思を正確に反映する点では優れているが、小選挙区制で二大政党制を定着させ政権交代の可能な制度を目指した現行の制度の本旨とは異なる。
 公明党としては議席の大幅削減にならない比例代表を中心にした制度に抜本改革すべきだと主張している。
 ただ、公明党は現在の選挙制度の中で、小選挙区は自民党候補者に比例は公明党という、有権者の意思を無視した奇妙奇天烈な戦術を編み出し比例票を増やしてきた詐欺的な実態がある。それより何より前節に記した創価学会と暴力団の関係をどう断ち切るのかが問われる。

 大衆から逸脱した学会・公明の原発政策

 原発の大事故を契機に国民の原発に対する意識は大きく変わった。政権末期にあれだけ不評であった菅首相が、浜岡原発の停止を実現させたことだけは国民の大方の高い評価を受けた。自民・公明の連立政権が推し進めた原発推進政策が破綻したことは誰の目にも明らかである。各党のエネルギー政策が混乱している事は否めないが、中でも公明党は池田大作名誉会長の「原子力が新たな将来性のあるエネルギー源として平和的に利用されることは喜ばしいこと」というかつての原発称賛の呪文に縛られまともな対応ができていない。
 特に科学通を自称する斎藤政調会長の8月24日の日本記者クラブでの講演はお粗末の極みであった。斉藤は公明党独自のエネルギー政策を近くまとめるとして、運転停止中の日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」の廃止を盛り込むことを明らかにした。公明党は原子力発電を「過渡的エネルギー」と位置付け、核燃料サイクルについても容認してきた経緯があるが、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルの基礎的研究は続ける。これは「核融合」が実現するまでのつなぎの措置だと言いきった。しかし核融合が夢のまた夢という現実からすれば、牽強付会の発言である。
 これは創価学会・公明党の支持基盤である大衆が反原発に大きく動いているのに無頓着な発言だ。
 一体、公明党・創価学会は被災地の現場や、原発被害者の苦衷を分かっているのか。大衆と共に歩むはずの政党が、原発抜きの核兵器論議に与したり、逆に核兵器抜きの原発論議を行うこと自体が不謹慎である。今年の原爆の日に山口代表は広島で「脱原発は遠い将来の話」と逃げ、斉藤に至っては中国や韓国、インドなどが原発を利用としている中、新しい知恵を出さなければ日本は二流国、三流国になってしまうとさえ言うのだから始末に負えない。
 これが自公政権10年のもたらした政治の貧困の何よりの証拠である。公明党の竹入委員長が朝日新聞に連載した回顧録で公明党は完全に創価学会の言いなりであったという証言や、矢野委員長の手記に対して学会が激しい攻撃をし、学会の公明党支配が明確になっている。政教分離の約束を守れない学会・公明党に未来は無い。(文中・一部敬称略)
 
川崎泰資(かわさき・やすし)元NHK記者。1934年生まれ。東京大学文学部社会学科卒。NHK政治部、ボン支局長、放送文化研究所主任研究員、甲府放送局長、会長室審議委員、大谷女子短大教授、椙山女学園大学客員教授等を歴任。現在はNPO法人マスコミ市民フォーラム理事長も務めている。著書に『NHKと政治―蝕まれた公共放送』(朝日文庫)『組織ジャーナリズムの敗北―続・NHKと朝日新聞』(岩波書店)など。

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