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2023年6月号 特集/自公に亀裂──混乱・混迷する政治と宗教

6月号目次

閻魔帳

広島サミットと「池田提言」の落差/柿田睦夫 

 

特集/自公に亀裂──混乱・混迷する政治と宗教

 

G7広島サミットを横目に今度は「足立ショック」を回避した「公明党=創価学会」/古川利明

票の切れ目が縁の切れ目──自公野合体制崩壊のプロローグ/乙骨正生

 

トピックス

ジェンダー論争とカルト問題の交錯/藤倉善郎

トピックス

神社本庁評議員会が、二人の総長承認を求めて紛糾/橋本征雄

 

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「公明党と創価学会」を考える(第44回)

「平成の政治改革」を考える/平野貞夫

ナニワの虫眼鏡(第48回)

大阪市議会で進む議員定数の削減 維新の“独裁化”はいずれ国政にも/吉富有治

ヨーロッパ・カルト事情(298)

セクト(破壊的カルト)対策の再出発/広岡裕児

執筆者紹介 編集後記

 

 

編集後記から

被爆地・広島で開催されたG7サミットは、被曝者をはじめとする多くの人々の核廃絶の願いもむなしく、「広島ビジョン」と広島の名を冠した首脳声明において、核抑止力の有効性と核抑止政策の正当性を認めるという全くの期待外れに終わりました。

小誌今号の「閻魔帳」でも触れていますが、カナダに住む被爆者のサーロー節子さんが、「(G7首脳が)広島まで来てこれだけしか書けないかと思うと、胸がつぶれそうな思い。死者に対して侮辱。死者に対して大きな罪だった」と落胆の思いを明らかにするのも当然でしょう。

この広島サミットを前に創価学会の池田大作名誉会長は、核抑止政策の危険性に言及した緊急提言を出しましたが、核抑止政策の正当性を認めたサミットへのコメントはありません。

創価学会が核廃絶運動のパートナーとする核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲・国際運営委員が「広島で開いたにもかかわらず、核軍縮の道を切り開けなかった残念なサミットと評価されると思う」とのコメントを出しているにもかかわらず、池田氏はなぜ沈黙したままなのでしょうか。

池田氏は常々、核廃絶は「原水爆禁止宣言」をした恩師・戸田城聖創価学会二代会長の遺訓であり、自らの行動原理の一丁目一番地だと主張していたにもかかわらず不可解なことです。

その池田氏が創立した公明党と自民党との軋轢が表面化しました。きっかけは衆院の定数是正をめぐる「10増・10減」で、公明党が小選挙区への候補擁立を強行したことに自民党が反発。両者の関係はついに「東京における自公の信頼関係は地に落ちたと言える。東京における自公間の協力関係は解消する」(石井公明党幹事長)という抜き差しならないところにまで至っています。

5月21日付「朝日新聞デジタル」は、「『軽く考えているのか』 創価学会幹部が自民に迫る衆院選候補者調整」と、その背景には自民党に妥協を迫る強気な創価学会の存在があることを指摘しています。

目下のところ自公の首脳は連立維持を最優先させ、東京での不協和を全国に拡大することを防ぐ姿勢を見せていますが、果たしてどうなることか。

1999年以来、20年以上にわたって票を紐帯とする野合を続けてきた創価学会・公明党と自民党の“蜜月”に終わりの時がくるのか、なりゆきが注目されます。

特集/自公に亀裂──混乱・混迷する政治と宗教

G7広島サミットを横目に今度は「足立ショック」を回避した「公明党=創価学会」

古川利明

ジャーナリスト

「失敗だった」G7サミットで支持率上昇の怪

首相・岸田文雄の地元である被爆地ヒロシマでG7サミット(主要7カ国首脳会議)が、5月19日から3日間の日程で開かれた。今やサミットというのは、年中行事の一つとして、「外交ショー」という名の見世物と化しており、とりわけ内政で失点を抱えている国のトップとしては、「これをテコに政権浮揚に利用する」との思惑があり、急遽、参加が決まったウクライナ大統領のゼレンスキーに政府専用機を用意したフランスの大統領・マクロンは、年金支給開始年齢を現行の62歳から2年繰り下げる法案を、今年3月16日に下院で強行採決したことで、スト頻発などの猛反発を国民から食らい、その後の支持率が28%にまで急落するという、まさに「カチカチ山のタヌキ」と化していたため、必死の巻き返しの一環だったようだが、岸田も同じようなものである。

岸田の場合は、とにかく「被爆地ヒロシマから『核なき世界』をアピールする」というのが、議長国である日本の首相としての最大眼目で、サミット初日から原爆資料館に各国首脳を案内する一方、岸田の肝煎りによる首脳声明「広島ビジョン」なるものを発表したことに集約されていたと言える。しかし、その原爆資料館における首脳らの視察や、そこでの被爆者との面会の様子は完全非公開で、メディアの同行取材も禁じられた。というのは、とりわけ核保有国の米仏が「これ」に難色を示したためで、米国は「戦争終結のために原爆投下は必要だった」との世論が根強くあり、もし、大統領のバイデンが念入りに視察する姿が公開されると、国内では反省していると受け止められかねないからで、東京新聞(5月20日付朝刊)は「米側は見学の様子は見せたくない。センシティブな問題だ」との外務省幹部の話を紹介している。フランスは今年1月、核を「防衛の要」と位置付けた中期国防計画の骨格を発表し、マクロンは「抑止力がこれほど必要と思われたことは、かつてない」と言及しており、これもまた「原爆被害」という負の側面に焦点が当てられると、「抑止力強化」と矛盾してくるため、米国に追随したものとみられる。

で、その「広島ビジョン」も、テーマはそもそも「核軍縮」であって、「核廃絶」ではなく、G7自身の核保有を正当化している。ゼレンスキーを招いたことと辻褄を合わせるべく、ロシアによる核の威嚇を「危険であり、受け入れられない」と盛り込んだことから、「G7のウクライナに対する全面支援」を主張した極めて政治色の強いメッセージとなっている。このため、カナダを拠点に核兵器廃絶を訴えている被爆者のサーロー節子さん(91)は「(今回の)サミットは大きな失敗だった。首脳たちの声明からは体温や脈拍を感じなかった。原爆資料館で何を感じ、何を考えたのか。その声を聞きたかった」と批判しているが、しかし、メディアはこの茶番を極めた外交ショーを、基本的には専ら持ち上げる形で大々的に報じたことから、サミット期間中に行った世論調査では、内閣支持率は読売新聞が56%、毎日新聞が45%と、いずれも前月より9ポイントも上昇している。

 

公明「練馬ショック」に続く自民「足立ショック」

さて、そこで、公明党、そして、「これ」を完全に支配している創価学会である。

この統一地方選では、あの「練馬ショック」に象徴されるように、「全員当選神話」が完全に崩壊し、その立て直しが急務となっていたが、奇しくも、このサミット開催と同時並行で5月14日告示、同21日投開票の東京・足立区議選(定数45、同区長選とのダブル選)を迎え、公明党は13人の公認候補を立てて臨んだことから、その動向が注目された。というのは、練馬区は、例の衆院の10増10減に伴い選挙区が分割され、東部の新・東京28区から、自民党側の候補者選定の遅れを尻目に「東京で2人目」の候補者擁立を信濃町は目論む一方で、足立区は、その西部が荒川区全域と合体して新・東京29区となり、ここから自民党との根回しもないままに、公明党は現職の岡本三成(現・東京12区)の擁立を決め、既に今年1月に公認を出したことから、自公間の軋轢が表面化していたからである。そこで「練馬ショック」に続き、「足立ショック」に見舞われた日には、もう目も当てられないというのはもちろんだが、今後の自民党との最終的な候補者調整にも大きく影響してくるだけに、信濃町としては、まさに背水の陣だったと言えるだろう。

で、投票箱の蓋を開けてみると、あに図らんや、今度は何と「全員当選」だった。信濃町の地方選は「串だんご」とも称されるように、複数の候補者の票割りをきっちりとやって、当選者を真ん中あたりにゾロゾロとくっつけて放り込むのが特徴だが、今回はその「串だんご」を見事なまでに復活させた形だった。その全員当選を成し遂げた理由だが、何よりもまずは、低投票率である。今回は前回19年を0・1ポイント下回る42・79%で、ちなみに、投票率が46・07%だった前々回15年は、公明党候補は1人落選しており、ゆえに「池の杭」は、水面がみるみると干上がった状態であるため、その存在をいかんなく発揮したと言える。

それと今回は、地方選であるにもかかわらず、告示日に代表の山口那津男が区内11カ所を回り、告示前を含めて計3回現地入りして、候補者全員と街頭に立ったほか、他の党幹部も徹底的に応援演説に投入し、物価高対策を始めとする、所謂「飴玉のバラ撒き」の訴えに余念がなかった。まさしく、これは「国政選挙並み」の体制だが、ということは、あの東京都議選と同様、今回はF(フレンド票)獲得にあたって、「全国の創価学会員」を総動員し、札幌でも大阪でも福岡の在住であっても、とにかく「足立区に知り合いがいれば、投票を依頼する」と、なりふり構わずの選挙戦を展開させた可能性がある。その甲斐あってか、今回は全員当選を果たし、むしろ、公認候補19人を立てながら7人も落選し、公明党に第1党の座を明け渡した自民党が「足立ショック」に陥った格好となった。

 

マイナ保険証推進にも加担する公明党

あと、同時並行でサミットが開催され、結局、その広島ビジョンには取り入れられなかったものの、公明党創立者である池田大作がSGI(創価学会インタナショナル)会長の肩書で聖教新聞(4月27日付)に掲載した「核の先制不使用の確立」などG7サミットへの提言を選挙期間中の5月16日、山口らが官邸に岸田を訪れ、手渡していたが、「平和の党」を掲げている手前、「これ」を集票活動のカンフル剤にしたと言える。彼らにとって、「選挙」とは広宣流布を実現するための飽くまで“宗教活動”であり、根っこのところで「『現代の生き仏』である池田先生」に対する創価学会員の信心のパワーをいかに醸成させ、引き出させるかは、戦略的に極めて重要で、そこらあたり会長の原田稔がいろいろと指示を出していたものと思われる。

これを受けて永田町の政局は「解散の時期」に焦点が当たっているが、本誌前号の拙稿でも触れた通り、信濃町としては、統一地方選が終わったばかりだし、何より「信心のパワー」を溜め込むためには、座談会や聖教新聞の拡張をテコにした新規会員の獲得によって、足腰を鍛え直すプロセスが大事なので、それも含めて、しばらく間を置きたいところだろう。そこで、5月25日の自公幹事長会談で公明党側は「次期衆院選で東京での選挙協力解消」を突き付けたが、これは「早期解散」に対する牽制、すなわち、恫喝である。また、産経新聞(5月12日付朝刊)が「次期衆院選で選挙区積極擁立で保険」として「公明、比例重複を検討」と報じていたが、要は「常勝関西」における「維新対策」に他ならない。もし、維新が6小選挙区でタマを立てた場合、「完敗関西」も視野に入るので、まさにそのための保険である。

折しも、マイナンバー(=国民総背番号)カードを使って、足立区でも起こっていたが、コンビニで住民票を発行するサービスで他人名義のものが交付されたり、さらにマイナカードを健康保険証として利用するマイナ保険証では、別人の個人情報がひも付けられ、閲覧されるといったトラブルが頻発し、混乱が広がっている。このマイナ保険証に関しては、デジタル担当大臣の河野太郎が昨年10月、突如、「24年秋までに現行の紙の保険証を廃止する」とブチ上げたが、背景にはこうしたマイナカードのシステムを受注するITゼネコンによる献金攻勢がある。一連のトラブルが発生した事業を請け負った親会社の富士通は、自民党の政治資金団体「国民政治協会」に、収支報告書に記載されている分だけでも08年から22年の15年間で、毎年1千万円から1800万円の計2億1600万円を献金しているが、もちろん、「これ」は挨拶代わりなので、関係する官庁の担当者や政治家にはピンポイントで「袖の下」が渡されていると見るべきである。少なくとも、マイナ保険証に関しては、認知症の始まった親を介護した経験を持つ筆者からすれば、こうした高齢者が2種類もの暗証番号を設定したうえで、自ら使用管理するのは、そもそも無理である。

ところが、「大衆の党」「福祉の党」を標榜する公明党(=創価学会)が、何食わぬ顔でこのマイナ保険証の義務化をデジタル庁と一体となって猛烈に推進しており、こうした欺瞞の極みを、我々心あるジャーナリズムは粘り強く剔抉する必要がある。(文中・敬称略)

 

古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』最新刊『「自民党“公明派”」20年目の大失敗』(いずれも第三書館刊)『核と原発 ヒロシマ・ナガサキ、ビキニ、そしてフクシマを繋ぐ悲劇の誕生』(アメージング出版)など著書多数。

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

  • 統一地方選総括&自公選挙協力の亀裂露呈

・5月3日付『聖教新聞』「県長・県女性部長会での原田会長の指導」

「はじめに、4月に行われた統一地方選挙につきまして、全国の同志の並々ならぬ大奮闘に、心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございました!

私たちが支援する公明党は、前半戦の道府県議選・政令市議選では、前回から2議席増の340議席を獲得、8年ぶりの議席増を果たし、自民党に次いで第2党を維持することができました。後半戦では、一般市議選において891議席を獲得、政党別当選者数の第1党の座を8回連続で堅持しました。また、東京特別区議選でも第2党を堅持し、町村議選では6回連続の全員当選を果たすことができました。

残念ながら捲土重来を期すことになったところも、新たな決意での前進を開始しています。ともあれ公明党の全議員には、同志の真心と献身的な支援を片時も忘れることなく、仕事で、政策実現で断固、応えていってもらいたい」

 

※5月2日の創価学会県長・県女性部長会の席上、原田稔会長が統一地方選の結果に言及した。その内容は、本誌5月号「信濃町探偵団」で紹介した4月27日付『聖教新聞』掲載の座談会記事とほぼ同じ。現職4人が落選した「練馬ショック」には一言も触れず、落選に言及したのは4月27日付の聖教座談会記事と同一の、「残念ながら捲土重来を期すことになったところ」というオブラートに包んだような一文のみであり、「8年ぶりの議席増」という文言が示すように、全体のトーンはあたかも統一地方選の結果は勝利だったかのような体裁となっている。

だが「全員当選」を目標に候補者調整をしていたにもかかわらず、擁立した候補者中12名が落選するとともに、得票数も東京の市区町議選だけで645524票から581278票へと64246票減、全国的には約50万票も減らした事実は、国政選挙ばかりか地方議会選挙でも、公明党の凋落=創価学会の勢力衰退が著しいことを示唆した。

その結果、自公連立政権下で強力に推し進められてきた自公間の選挙協力、すなわち権力維持と教団の権益維持と組織防衛という利害と打算に基づいた自民党と創価・公明の野合に、いま大きな亀裂が入り始めている。

具体的には衆院の定数是正に伴う小選挙区の「10増10減」で、公明党が新たに小選挙区の増える東京・埼玉・千葉・愛知などの4選挙区に候補擁立を模索したことに、自民党から反発の声があがり両党の調整が難航したことがきっかけ。5月25日の自民・公明両党の幹事長・選対委員長会談終了後、記者会見した石井啓一公明党幹事長は「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」と、さながら「縁切り宣言」のような啖呵を切った。5月26日付『聖教新聞』は、その顚末を次のように詳報している。

・5月26日付『聖教新聞』「東京での選挙協力解消 公明党方針決定、自民党に伝達」

「公明党の石井啓一幹事長と西田実仁選対委員長は25日、国会内で、自民党の茂木敏充幹事長、森山裕選対委員長と会談し、東京都における次期衆院選小選挙区の候補者を巡る交渉の経緯を踏まえ、公明党としての対応方針を伝えた。

この中で石井幹事長は『東京における自公の信頼関係は地に落ちた』と述べ、同日の党責任役員会で決定した方針を伝達した。

具体的には①『東京28区』で公明党として候補者を擁立しない②公明党が候補を公認した『東京29区』で自民党からの推薦は求めない③東京の小選挙区で公明党は自民党候補を推薦しない④今後の都議選や首長選などで自公の選挙協力をしない⑤都議会における自公の協力関係を解消する――とした。

自民党側は、党内で検討する考えを示したが、石井幹事長は『公明党の最終的な方針なので、この方針を変えることはない』と述べた。

一方で、石井幹事長は『この問題は、あくまでも東京に限定している話だ。自公連立政権に影響を及ぼすつもりはない』と述べた」

 

※同日付『公明新聞』記事とほとんど同一の『聖教新聞』記事は、これ以後も次期衆院小選挙区の候補者を巡る自公間の交渉経緯を詳述しているが、その内容は公明党善玉・自民党悪玉論に彩られており、公明党は丁寧かつ誠実に交渉を積み重ねたが、自民党が不誠実だったので決裂したとして、「半年近くに渡る交渉だったが、残念ながら、誠実な協議とは言えないことがあった。事ここに至って、自民党から応援できないと言われたことは大変心外だ」と結んでいる。

だが、こうした公明党の主張に対して、自民党内からは公明党そして創価学会の強気の姿勢に反発する声があがっており、公明党や創価学会の姿勢を批判的に報じるメディアも散見された。

これに対して公明党そして創価学会は猛反発。さっそく創価学会の外郭出版社である第三文明社の「言論サイト」が、5月29日付で「公明党が激怒した背景――自民党都連の不誠実と傲慢」なる記事をアップ、激しい批判を加えている。

そうした公明党・創価学会の意図を端的に示しているのが、西田実仁公明党選対委員長のツイッター。5月26日付で、「本日の公明新聞にも掲載されましたが、『10増10減』に伴うここ最近の報道やコメントを見ていると、わが党が『強引だ』とか、あたかも欲をかき、自民党を脅しているかのような表現は、甚だ心外なので、交渉に携わってきた当事者として、一言申し上げたい」と前置きした上で、「①東京29区は『国替え』ではなく『選択』、②交渉は『強引』ではなく『丁寧』、③『応援しない』と言われたので『推薦を求めない』、④現在、公明は『289選挙区』に対し『9選挙区』のみ、⑤『千葉を諦めれば東京でもう1つだったのでは』、⑥『不誠実な対応」はどっち?』などと、自民党に対する不信感を露わにするとともに、自己正当化を図っている。

このうち②では、「自民党議員が選挙区の『選択』をする際、こちらに相談されたことはないですし、それが自然だと思いますが、それでも、わが党としては『丁寧』に事を進めたい思いから、29区を『選択』することについて事前に萩生田都連会長と高島都連幹事長に説明し、茂木幹事長にも了解を得た上で、本年1月25日に公認を発表しました。『強引だ』と言われるのは甚だ心外です」と主張。

また⑤において、千葉での候補擁立をあきらめれば5月末までに東京28区での擁立を調整・説得するとしていたにもかかわらず、5月末をまたずに「容認できない」と公党間の約束が簡単に反故にされたとした上で、⑥として「『東京28区ではすでに都連が候補者を決定している』と初めて明かした上で、これまでわが党は自民党現職がいない選挙区で交渉してきたにもかかわらず、代替案として自民党現職がいる東京12区と15区を提示してきたことは、不誠実で、とても受け入れることはできません。残念ながら、交渉は打ち切ることとし、東京の自公協力を解消することを党として決定しました」と、萩生田光一自民党東京都連会長(政調会長)・高島直樹東京都連幹事長の実名をあげつつ、責任は自民党・東京都連にあると非難している。

マスコミ報道によれば、東京28区には萩生田都連会長の「タニマチ」「太客」などといわれる、萩生田氏の地元・八王子市で複数の病院を経営する安藤高夫前衆院議員の擁立がすでに内定しているという。また自民党が代替案として提示した15区は、萩生田氏と犬猿の間柄にある柿沢未途衆院議員の地盤であり、公明党候補の擁立は萩生田氏の政敵潰しに手を貸す形となるのだから、公明党が困惑するのも無理からぬところ。だが、河井案里買収事件で有罪となった河井克行元法相の選挙区だった広島3区に、創価学会が「三変土田(さんぺんどでん)(法華経に説かれた釈尊が三度にわたり国土を浄化したこと)」の原理の実践などと称して、公明党の斉藤鉄夫国交相を押し込んだことに象徴される創価学会・公明党のゴリ押しに、自民党内から反発が起こっていることもまた事実。

5月30日午前、岸田文雄首相と山口那津男代表は党首会談を行い、衆院選の候補者調整について、「連立政権はしっかり保つ」と沈静化を図った。

「岸田文雄首相は30日、公明党の山口那津男代表と首相官邸で会談した。衆院小選挙区定数の『10増10減』に伴う候補者調整を巡り、公明が東京の各小選挙区の自民党候補に推薦を出さないと決めたことを踏まえ、山口氏は『自公の連立政権はしっかり保って、政治を揺るがすことがないように継続していこうとお互いに確認し合った』と述べた。会談後、記者団に語った。

首相は会談で、候補者調整も念頭に「幹事長たちに丁寧に対応するように言ってある」と山口氏に伝えた。

山口氏は記者団に『自公の結束と連立政権の意義を踏まえて、絆をしっかり保っていこうというのが私の考えだ』と強調した」(5月30日付『毎日新聞』)

だがその直後に柴山昌彦自民党埼玉県連会長(元文科相)が「公明党が次期衆院選で候補者擁立を決めた衆院埼玉14区、愛知16区を巡り、自民側が公明の要望に沿った調整を進めると伝えたことについて『地域事情があるので丁寧な形を取っていただかないと、われわれは(容認は)厳しい』と述べ、慎重な姿勢を示した」(5月30日付産経)と報じられるように、両者のわだかまりは解消していない。

東京で燃え上がった不信の火の手が燎原の火のように広がらないように防火に努める自公首脳だが、所詮、野合は野合であり、金の切れ目ならぬ票の切れ目が縁の切れ目。創価学会の勢力衰退が、自公連立崩壊の引き金となるであろうことは想像に難くない。その意味で、今回の「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」なる石井幹事長の“啖呵”は、そのプロローグを告げる“迷セリフ”だったと記憶されることになるのでは。

 

  • 関係改善に便乗――原田会長らが韓国訪問

・5月20日付『聖教新聞』「池田先生の韓国SGI本部訪問25周年を祝賀」「『創価大光』の碑を序幕、記念展示が開幕」「原田会長ら訪韓団が出席」

・5月21日付『韓国外国語大学が授与』池田先生に名誉哲学博士号」「世界市民の育成 韓日友好の促進に貢献」

「推挙の辞 慮宅善大学院長 (池田)会長は韓国においても2009年に『花冠文化勲章』を受章され、京畿道、釜山、済州島など80以上の地方自治団体から名誉道民、名誉市民称号等が贈られています。

池田会長の韓国に対する愛情は非常によく知られており、日本の人々に、韓日関係の適切な歴史観を絶えず訴え続け、在日韓国人の権利向上にも声を上げてこられました。こうした情熱的な活動は、生命尊重の仏教思想と人間の創造的な力を信じ、人類の連帯を可能にする交流と対話の力を確信したからこそ、実現できたと言えます」

・5月22日付『聖教新聞』韓国京畿道城南市から池田先生ご夫妻に名誉市民称号」「先生の韓国SGI本部訪問25周年を記念 韓国本部幹部会の席上で授与式」

・5月25日付『聖教新聞』「広宣流布大誓堂完成10周年 創価の凱歌を轟かせ 座談会」

「原田(会長)このたび、池田先生の韓国SGI本部訪問25周年を祝賀する本部幹部会や記念碑除幕式などに参加するため、同国を訪問しました。おかげさまで全ての行事を大成功で終えることができました。

田島(学生部長)大躍進を続ける韓国の同志の姿が連日、聖教新聞や電子版の動画で紹介されていました。世界宗教へ飛翔する学会と共に前進する誇りと喜びを改めて深くかみ締め、決意を新たにする日々でした。

原田 現地では、世界市民を育成し、日韓友好に貢献されてきた先生に対し、韓国外国語大学から名誉哲学博士号が授与されました。さらに、先生の『思想と精神を世界が模範とすべき』とたたえ、京畿道城南市から先生ご夫妻へ名誉市民称号が贈られました。

永石(女性部長)これほどうれしいことはありません。私たちは、誇りと希望を胸に、さらに広布の道を走っていきたいと思います。

原田 韓国の同志は本年、師弟凱歌の新たな歴史を築こうと、弘教拡大に挑み、1万5000人の新入会員が誕生。全国1万9000会場で、師弟共戦の誓いみなぎる座談会を開催してきました。私たちも『11・18』へ向け、勇躍の前進をしていきましょう」

 

※反韓・反日と対立する政治姿勢に立っていた安倍政権と文在寅政権。反目する両政権下で人的交流も途絶え、冷え切っていた日韓関係は、懸案の徴用工問題の早期解決に動いた尹錫悦大統領と岸田文雄首相による首脳会談やシャトル外交の再開などで、ようやく関係改善が本格化している。

そうした最中、広島サミットで韓国の尹大統領が来日している最中の5月20日前後、創価学会の原田稔会長らが訪韓し、本部幹部会をはじめとする各種会合や名誉称号の授与式などに参加した。

このうち韓国外国語大学からの名誉哲学博士号の授与ならびに京畿道・城南市からの名誉市民称号の授与理由は、池田氏の韓日友好促進への評価。名誉市民称号を授与した城南市の申相珍市長は、「(池田氏が)韓国を『文化大恩の国』とたたえられ、在日韓国人の人権擁護に努められるなど、韓日両国間の友好を促進するための架け橋として尽力されました」と褒め讃えるなどしている。

ところで池田氏に名誉哲学博士号を授与した韓国外国語大学の慮大学院長は、「推挙の辞」の中で、池田氏が韓国から「花冠文化勲章」を2009年に受章していることに言及しているが、日韓関係が急速に悪化したのは、2012年に嫌韓・反韓のネトウヨや岩盤右派に熱烈に支持された第二次安倍政権が発足して以降のことである。

しかし09年に「花冠文化勲章」を受けた「韓日友好を促進した架け橋」であるはずの池田氏は、第二次安倍政権発足以来、悪化する日韓関係を改善させるために尽力した形跡は見当たらない。そもそも10年以降、池田氏は公の場にまったく姿を見せていないのである。

にもかかわらず日韓の関係改善が動き始めるや創価学会はさっそく原田会長を中心とする訪韓団を韓国に派遣し、あたかも池田氏が日韓関係の改善に寄与していたかのごとく大喧伝。あげく『聖教新聞』の座談会記事では、韓国では今年1万5000人もの弘教拡大を実現したとして、韓国に負けるなと日本の会員にハッパをかける有様。

統一地方選での敗北に象徴される組織の衰退を誤魔化し、総本部大誓堂10周年に向けて虚構の上げ潮を演出しようとの創価学会の目論見。その厚顔無恥さには呆れるばかり。

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