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2023年 8月号 創価の洗脳教育と宗教二世問題

8月号目次

 

閻魔帳

東京20区・木原誠二衆院議員に「好奇心」を持つ/段 勲 2 

 

特集/創価の洗脳教育と宗教二世問題

「法難80年&宗教2世」をテコに態勢の立て直しに余念がない「創価学会=公明党」/古川利明

宗教2世に信仰や出身団体の否定を求めるべきではない/藤倉善郎

 

トピックス

民主国家におけるあるべき宗教と政治の関係とは/橋本征雄

トピックス

創価学会による名誉棄損訴訟の口頭弁論で長井秀和氏が意見陳述/本誌編集部

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「公明党と創価学会」を考える(第46回)

「平成の政治改革」を考える(3)/平野貞夫

ナニワの虫眼鏡(第50回)

維新に連敗中の自民党大阪 “劇薬”の改革案は同党を再生させるのか/吉富有治

ヨーロッパ・カルト事情(300)

ケニアでカルト集団「虐殺」事件/広岡裕児

執筆者紹介&バックナンバー一覧 編集後記

 

 

編集後記から

猛暑お見舞い申し上げます。

異常な猛暑が続くこの夏ですが、世界気象機関(WMO)と欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス(CS3)」やドイツのライプチヒ大学などの分析によると、地球がこれほどの暑さになるのは12万年ぶりだということです(7月27日付『毎日新聞』)。

これを受けて国連のグテレス事務総長は、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した」と警鐘を鳴らし、再生可能エネルギーの導入目標を引き上げるよう強調しました。

12万年ぶりといわれても実感がありませんが、この酷暑が異常であることは皮膚感覚からも分かります。この地球的・人類的危機に日本も真剣に取り組むべきでしょうが、残念ながら日本は、地球温暖化対策に前向きな姿勢を見せない国に対して、皮肉を込めて授与される「化石賞」の常連国となっており、その対応の遅れに国際社会から厳しい非難の声が寄せられています。

この地球温暖化ならぬ地球沸騰化と並ぶ人類的危機に核兵器の問題がありますが、唯一の戦争被爆国でありながら、日本政府は核兵器禁止条約に参加せず、むしろ5月に被爆地・広島で開催されたG7サミットでは、核抑止力の有効性を認める「広島ビジョン」をまとめる体たらく。おそらく8月6日の広島原爆忌、そして9日の長崎原爆忌における広島出身の岸田文雄首相の挨拶では、このG7サミットでの「広島ビジョン」の意義を喧伝したことでしょう。

そんな日本政府を支えているのが自公政権の当事者である公明党・創価学会です。創価学会は戸田城聖会長の「原水爆禁止宣言」を、創価学会の反核平和運動の原点だと強調。池田大作名誉会長も同宣言を「恩師の遺訓」として、核兵器廃絶を自らの平和活動の一丁目一番地だと主張しています。

しかし日本政府が核兵器禁止条約を批准しないにもかかわらず、公明党・創価学会は連立を離脱することもなく、信頼関係が崩れたと批判することもありません。その一方で、衆院の定数是正で「10増」となる小選挙区に、公明党が候補を立てることに自民党が難色を示すと、「信頼関係は地に落ちた」と猛反発。マスコミは連立の危機だと騒ぎ立てました。平和と福祉を旗印としながら保身と組織防衛に汲々とする公明党・創価学会の欺瞞は明らかです。

宗教と政治の歪んだ関係を、小誌は今後とも厳しく追及する所存です。

特集/創価の洗脳教育と宗教二世問題

「法難80年&宗教2世」をテコに態勢の立て直しに余念がない「創価学会=公明党」

古川利明

ジャーナリスト

 

池田神格化に利用した「牧口・戸田の法難」

創価学会は、この7月6日で初代会長・牧口常三郎と第2代会長・戸田城聖が、1943(昭和18)年の同じ日に治安維持法違反と不敬罪で逮捕、投獄されてから、まる80年というキリのいい年を迎えたことを受け、「今年は牧口、戸田両先生の法難から80年」と同日付の聖教新聞では1面トップでデカデカと載せていることに象徴されるように、いつものことではあるが、「これ」をダシにして、座談会であり、聖教新聞の拡張や新規会員の獲得といった日常の活動に学会員を駆り立てることで、「信心のパワー」を溜めることに余念がない。

以前にも指摘した通り、創価学会の第3代会長である池田大作が創立した公明党の議員というのは、自民党のように「国会議員が地方議員を系列下に収める」という関係がないため、「地方選をバネに、ホップ・ステップ・ジャンプで国政選に繋げる」という導線が、そもそも存在しない。タネを明かせば「選挙をすべて取り仕切っているのが創価学会だから」ということに他ならないが、それで言うと、信濃町としては大きなイベントである統一地方選が終わった時点で、完全にリセットになるため、彼らの生命線である「国政選比例計700万票」を取り戻すためには、こうした日常活動こそが、まさに「『票田』という田んぼを耕す」ことに相当する。外に向かって、非学会員であるF(フレンド)票を獲得していくに当たって、何よりもまず、こうやって内輪を固める必要があるわけで、スポーツ選手に例えるなら、下半身を鍛錬するための猛烈な走り込みである。

そこで、言うまでもないことだが、この「法難80年」というのは、「牧口常三郎─戸田城聖─池田大作」に連なる例の「三代会長」を構築するキモとなっている、あの「大阪事件」に紐付けられている。当時、青年部の参謀室長だった池田は、1957(昭和32)年4月23日投開票の参院選の補選(大阪地方区)で、落選した中尾辰義の選挙運動を仕切り、当時の新聞記事(57年7月29日付朝日新聞夕刊)によれば、池田は大阪を5つの支部に分け、府下約6万世帯の学会員のほとんどを戸別訪問に駆り出し、投票直前には“タバコ戦術”と称して、10数カ所の職安で、候補者名を書いたピースなど約4千個をばら撒き、ここに500円札が入っていたことが端緒となり、芋づる式に検挙されていった。奇しくも、戸田が服役先の豊多摩刑務所から出所したまる12年後の同年7月3日に、池田は任意出頭を求められ、公選法違反(戸別訪問)で逮捕されて全面自供し、起訴されるも、その後、無罪判決が確定したため、「投獄という法難を物ともせず、国家権力からの弾圧を戦い抜いた三代会長」というストーリーで神格化しているわけである。

 

「宗教二世」の囲い込みに腐心

そこで、聖教新聞(7月5、7日付)によれば、今回は池田大作の長男で主任副会長の1人でもある博正が「法難と大阪事件」ということで、「世界広布の源流 青年に語る創価の魂」の題で、男子部長の梁島英明ら若手幹部に講釈しており、要は士気を高めているわけである。とりわけ、「常勝関西」においては、既に報じられているように、維新が次期総選挙で公明6小選挙区に候補者を立てる方針を打ち出しているため、「これ」に対抗すべく組織を締めるという目的もあるだろう。

博正が喋っていた中身は、基本的にはこれまで通りだが、「おやっ」と思ったのは、牧口と戸田が投獄された理由として、従前は専ら「戦争に反対したから」としていたが、今回はその嘘を引っ込めて、「神札を受けるのを拒否したから」と事実に戻していた点である。理由はよく分からないが、その池田が創立した公明党が謳う第一の看板でもある「平和」の掛け声は、確かに相変わらずだが、その一方で「戦争反対」については前より、全然、トーンダウンしている。厳密に言うなら「戦争反対」と「平和」は決してイコールではなく、軍事や国際政治の専門家が言うように、実態としては「平和は戦争までの準備期間」に過ぎない。既に20年のSGI提言で、小見出しも含めた聖教新聞の見出しから「平和」の文字が忽然と消え、その牧口と戸田が受けた法難において「軍部に抵抗して最後まで転向を拒否し、反戦を貫いた」との言及がなかったこととも通底しており、筆者は「ひょっとして、これは池田死後の路線変更を示唆しているのか」とも訝っている。あと、博正は現在、70歳だが、最近の顔つきを見ると、若い頃の優男風から、本当に父親に似てきたと痛感する。今後は「生き仏である実父の語り部」たる、まさしく「池田大作2世」として、もっと表に出てくるということなのだろうか。

それと、もう一つ特筆されるのは、この「7・3」に合わせて、時期的には、子供が夏休みを迎えることから、大学生らが所属する学生部に加えて、高校生以下の未来部の若い学会員を活動に大きく駆り出していることである。池田大作が未来部歌「正義の走者」を作詞してから、まる45年を迎えたことを記念して、この7月8日から8月末までを「未来部活躍月間」と銘打って、翌7月9日の日曜日に巣鴨の東京戸田記念講堂で開かれた本部幹部会は、学生部・未来部大会と抱き合わせで行われ、制服姿の「宗教2世」が大勢、参加していた。会長の原田稔が聖教新聞(7月3日付)の座談会で明かしたように、初の試みとして「“未来”座談会」と称し、通常は座談会には出ることのない未来部員も今回は参加できるとのことで、とにかく、これも「票田を耕す」ことの一環だが、一つには、「学会員の高齢化による集票力の低下」が言われているだけに、世代交代へ向けたテコ入れであるのはもちろん、もっと言えば、「これ」はカルトの構成要件である「子供の囲い込み」である。軍隊のように外界から遮断して、子供の頃からじわじわとリーダーに対する絶対的な忠誠心を植え付けることで、「広宣流布を担う未来の創価戦士」を育成するための洗脳に他ならない。折しも、あの安倍晋三射殺事件の犯人である山上徹也が「統一教会の宗教2世」だったことが世間をお騒がせしているため、そうした動揺を組織に飛び火させないための防衛策としての意味も込めていると思われる。

 

公明の本音は「処理水放出は選挙ラッシュ後に」

そこで、本誌前号の信濃町探偵団でも触れている通り、6月6日発売の週刊SPA!(6月13日号)の連載コラム「倉山満の知性のリング 言論ストロングスタイル」で、「創価学会・公明党には『3か月ルール』がある」として、「俗に『選挙の前に創価学会員が住民票を移すので、選挙権が生じるまでの3か月は連続して選挙されては困る』と言われる」と書いたことに対し、6月8日に即、公明党が版元の扶桑社や記事を書いた憲政史研究家の倉山満に謝罪と訂正を求める抗議書を送り付けていたところ、相手方が何のリアクションもなかったからだろう、今度は創価学会本体がシャシャリ出て来て「事実無根の報道で名誉を著しく棄損した」として、6月20日に損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴訟を起こしたが、まさにこれは恫喝目的のスラップであり、言論出版妨害以外の何物でもない。

少なくとも、過去において、創価学会が選挙目的の住民票移動を行っていたことは動かし難く、例えば、85年の東京都議選前に中央区で創価学会員の集団移住が発覚したことを受け、居住実態のない20余人が選挙人名簿から抹消されており、その後、現在に至るまで、選挙のたび、こうした噂は絶えない。恐らく、記事を書いた倉山も版元の扶桑社も「何でこんなんで裁判沙汰を起こしてくるのか」と内心、訝っているのではないだろうか。恥ずかしながら、筆者は、この「3か月ルール」なるものについて、実は初めて耳にした次第で「へえー」だったのだが、とにかく、信濃町はこの「住民票移動」と「東村山市議転落死事件における他殺説」については、異様なまでに神経を尖らせ、それこそ、片っ端から恫喝抗議に提訴や告訴を繰り返しており、「これら」には徹底的に突かれて穿り出されたら困るツボが存在していることだけは、よく分かる。

折しも、公明党代表の山口那津男は、選挙応援で訪れた福島市で7月2日、福島第1原発の汚染処理水の海洋放出について、「海水浴シーズン中は避けた方がよい」と口を滑らせたことで、物議を醸したが、敷地内のタンクが満杯(計137万t)に近づくことから、既に政府は21年4月の時点で「23年をメドに海洋放出を始める」との方針を打ち出しており、この7月4日にIAEA(国際原子力機関)が「安全性が担保された」との報告書を出したことで、「今夏ごろに放出を始める」と囁かれている。しかし、風評被害を懸念する地元漁協はもとより、全漁連も断固反対の姿勢を崩しておらず、さらに、この「海洋放出」に理解を示した韓国大統領の尹錫悦に対する支持率が、1週間で6ポイントも下落して32%(韓国ギャラップ7月14日発表)と、来春の総選挙に向けて争点に浮上している。国内でも、あの「3・11」の東日本大震災で統一地方選を延期した東北では、今夏から秋にかけて選挙ラッシュを迎えるため、諸々、政局の動向に影響を与えかねず、恐らく、公明党(=創価学会)の本音は「放出は、東北での選挙ラッシュ後にしろ」だろうが、こうした無責任極まりない彼らの言動についても、引き続き、厳しく監視する必要がある。  (文中・敬称略)

 

古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』最新刊『「自民党“公明派”」20年目の大失敗』(いずれも第三書館刊)『核と原発 ヒロシマ・ナガサキ、ビキニ、そしてフクシマを繋ぐ悲劇の誕生』(アメージング出版)など著書多数。

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

  • 原田会長・谷川主任副会長が相次ぎ南米訪問=ブラジル・アルゼンチン

・6月6日付『聖教新聞』「ブラジル中央会議を開催」

「ブラジルSGIの中央会議が3日午後、ブラジル池田文化会館で開かれた。(中略)原田会長は御聖訓『大悪は大善の来るべき瑞相なり』を拝読。世界宗教として大きく飛躍するときは今であると確信し、ブラジルに幸福の大連

 

 

  • 「維新」の台頭に危機感丸出し!

――会員煽る創価学会‼

・7月17日付『聖教新聞』「『常勝の空』発表45周年記念総会 原田会長、永石女性部長が出席」「池田先生がメッセージ 民衆凱歌の偉大なる劇を」

「『7・17』は大関西の友にとって忘れ得ぬ日。池田大作先生が『大阪大会』で正義の獅子吼を轟かせた常勝不敗の原点、そして関西の歌『常勝の空』が発表された日である。(中略)池田先生はメッセージを贈り、烈風があろうとも師弟不二の題目の獅子吼と異体同心の団結で、明るく朗らかに民衆常勝の大行進をと強調。今世の偉大な人間革命・宿命転換の劇を飾ろうと訴え、『愛する関西、わが命の常勝大関西、いざや前進 恐れなく!』と期待を寄せた。(中略)原田会長は『断じて勝つ』との常勝不敗の揺るぎない一念こそ、関西魂であると強調。異体同心の団結固く、猛然と祈り、勇気と智慧と執念で師弟凱歌の金字塔を打ち立てようと呼びかけた」

・7月27日付『聖教新聞』「広宣流布大誓堂完成10周年 創価の凱歌を轟かせ 座談会」「関西が民衆常勝の大行進 さあ、福運錦州城の建設を」「大阪 兵庫 題目の獅子吼を轟かす」

「山内(関西長)2026年には、常勝関西の新たな大殿堂である『関西池田記念大講堂』が完成します。池田先生は『いやまして赫々と、常勝大関西から、さらに日本全国、そして全世界の国土世間を太陽の仏法で照らし、立正安国の大福運に包みゆく時代に入っております。いよいよ建設が進められる関西の大講堂は、まさしく、その象徴と聳え立つ「福運錦州城」なのであります』と呼びかけられました。(中略)

原田(会長)全ては強盛な祈りから始まります。『なにの兵法よりも法華経の兵法をもちい給うべし』です。広宣流布と立正安国の旗頭である関西は、どこまでも明るく朗らかに、題目の獅子吼を轟かせながら、『いざや前進 恐れなく!』と勝ち進んでいきましょう」

 

※地域政党・大阪維新の会と、これを母体とする国政政党・日本維新の台頭に、創価学会が危機意識を露わにしている。

今春の統一地方選挙の結果、大阪府議会・大阪市議会でともに過半数を獲得したのをはじめ、全国各地で勢力を伸ばした維新は、大阪都構想実現のために大阪市議会で協力を得ていた公明党に忖度する必要がなくなったことから、6月25日にこれまで公明党に遠慮して候補擁立を見送ってきた衆院の大阪・兵庫の6小選挙区に候補を擁立することを明らかにした。

2021年10月の衆院選で維新は、大阪の19小選挙区中、公明党に配慮して候補擁立を見送っていた4小選挙区以外の15小選挙区すべてで圧勝している。次期衆院選で維新が公明候補のいる4小選挙区に候補を立てれば公明候補全員が落選する確率は極めて高い。

それだけに創価学会・公明党の危機感は強く、衆院の「10増・10減」の定数是正をめぐる候補者調整の不調から、東京での自公選挙協力が破綻した際に政界やマスコミ界では、創価学会・公明党は東京の小選挙区で維新候補を支援し、その見返りとして大阪・兵庫で公明候補のいる小選挙区での候補擁立を見送ってもらう「バーター取引」を行うのではないかと取り沙汰された。実際、水面下では創価学会の政治担当の佐藤浩副会長が、旧知の間柄の松井一郎前大阪市長(日本維新の会前代表)に接触したが、日本維新の会の共同代表である吉村洋文大阪府知事をはじめとする地元選出の地方議員の候補擁立の意思が固く、交渉は不調に終わったとも伝えられる。

そもそも創価学会・公明党が「10増」となる東京などの都市部の小選挙区に強引に候補擁立を図ったのも、維新が大阪・兵庫の6小選挙区に候補擁立の構えを見せたことがその一因。現在、公明党の衆院小選挙区の議席は9議席しかなく、仮に大阪・兵庫の6議席を失えば、小選挙区の議席は3議席となってしまう。こうした政治情勢に焦りを覚えた創価学会・公明党が、「10増」の4割にあたる4小選挙区の奪取を図ったことから、「10減」すべてが自らの議席である自民党の反発を招いた。

まして本誌でたびたび指摘してきたように、「常勝関西」は、池田大作創価学会名誉会長のカリスマの源泉。したがって大阪・兵庫の小選挙区で全敗し議席を失うことは、すでに13年にわたって姿を見せることなく、その影響力の減少が顕著となっている池田氏の権威失墜に直結する。

池田氏が鬼籍に入るまで「御輿」として、その権威を利用したい創価学会執行部にとって、議席消滅=「常勝」の虚構性の露呈=池田カリスマの消失だけは避けたい。それだけに次期衆院選では、これまでは認めていなかった小選挙区候補の比例区への重複立候補を認め、仮に小選挙区で敗れたとしても、惜敗率で比例復活に持ち込み、なんとか議席を維持しようと企図している。

しかし小選挙区での敗北はもとより、惜敗率が低ければ比例復活も叶わない。そこで一連の聖教報道に顕著なように、使い回した「古証文」のような「大阪事件」を持ち出し、池田氏が1957(昭和32)年の参院大阪補選での選挙違反容疑で逮捕・起訴され、釈放された7月17日を「常勝不敗の原点」と位置づけ、「常勝不敗」を守れと煽りに煽っている。

7月17日付『聖教新聞』掲載の池田メッセージの、「烈風があろうとも師弟不二の題目の獅子吼と異体同心の団結で、明るく朗らかに民衆常勝の大行進をと強調。今世の偉大な人間革命・宿命転換の劇を飾ろうと訴え、『愛する関西、わが命の常勝大関西、いざや前進 恐れなく!』と期待を寄せた」とあるのは、維新という「烈風」に負けず勝利しろとの檄であり、原田稔会長の「『断じて勝つ』との常勝不敗の揺るぎない一念こそ、関西魂であると強調。異体同心の団結固く、猛然と祈り、勇気と智慧と執念で師弟凱歌の金字塔を打ち立てよう」との指導も、同趣旨に他ならない。

月刊『文藝春秋』8月号は、名物コラム「赤坂太郎」の特別編「岸田自民を恫喝する学会の『喧嘩屋』」「連立を揺さぶる政治部長の正体」を掲載し、そこで前出の佐藤浩副会長の「傲慢」な動静を詳述している。大変に興味深い記事なのだが、その中でもっとも注目されるのは、原田会長自らが岸田文雄首相や茂木敏充自民党幹事長と直接、折衝しているとの記述である。

矢野絢也元公明党委員長は、著書『黒い手帳 創価学会「日本占領計画」の全記録』において、昨今の日本政治の大きな危機として、小選挙区制における創価学会票の影響力の拡大によって、「創価学会直営政治」が実現したことを指摘しているが、原田会長が首相や自民党幹事長と直談判している事実、また創価学会の「政治部長」と称される佐藤副会長が「原田会長の意向」をひけらかして自民党を「恫喝」している事実は、昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で明るみに出た、政治と宗教の歪んだ関係が今日なお、根強く続いていることを示唆している。

そしてその政治的影響力を保持するために、創価学会内部では今日もまた恣意的な政治的・宗教的イデオロギーに基づいた宗教活動に名を借りた政治活動が繰り返されている。厳しい監視と批判が肝要だろう。

 

  • 未来部育成に腐心する創価学会

――創価学園では栗山前侍ジャパン監督が講演

・7月27日付『聖教新聞』「後継の育成に金の汗を」「原田会長を中心に各部代表者会議」

「(池田先生はメッセージを贈り)日本中、世界中で、たくましく伸び伸びと育ちゆく後継の宝の未来部一人一人を、御本仏がいかばかり喜び、見守ってくださっていることか。信心の継承に心を砕く父母や未来部を励ます担当者の尊い努力も、全て御照覧である。大聖人直結の確信と誇りも高く、未来部育成に金の汗を流そう!──と訴えた」

・7月16日付『聖教新聞』「東京 関西創価学園で『栄光の日』の集い」「創立者がメッセージ 負けじ魂で朗らかに前へ」

「創価学園の7・17『栄光の日』記念の集いが15日、東京と関西の各キャンパスで晴れやかに開催された。創立者の池田大作先生は祝福のメッセージを贈り、『創造性豊かな世界市民』たる学園生は、地球と人類を包みゆくような大きな心で語学力と人間力を磨き鍛えてほしいと強調。若き生命に秘められた『困難に立ち向かう偉大な才能』を信じ、創価の『負けじ魂』で朗らかに前進をと望んだ」

「皆の“努力の結晶”が光った7・17『栄光の日』記念の集い。その淵源は、創立者の人権闘争の歴史にある。1957(昭和32)年7月17日、無実の罪で逮捕・投獄された若き池田先生が15日間の獄中闘争を経て出獄。民衆を抑圧する不当な権力との戦いを貫いた。この“創価の原点”を学び深め、後継の誓いを新たにするのが、学園伝統の『栄光の日』である。

かつて創立者は学園生に訴えた。“いかなる困難に遭おうとも、揺るぎない信念で、民衆のために苦労し、忍耐し、戦い続ける人こそ『栄光』の人である”と」

・7月15日付『創価高等学校ホームページ』「栗山英樹さん(本校卒業生)を迎えてグローバルセミナーを開催」

「本日(7月15日)、創価中学高校においてグローバルセミナーを開催しました。講師に本校卒業生で2023年WBC日本代表監督の栗山英樹さんをお迎えしました。野球界で活躍され、2023年WBCで世界一に輝いた栗山英樹さんの『特別授業』に生徒は大きな刺激を受ける素晴らしい機会となりました。また小学校では全校児童との交流会も開催しました」

 

※少子高齢化の波に覆われ勢力の減少が顕著な創価学会。同会が「広宣流布のバロメーター」と位置づける国政選挙での公明党比例区票に基づけば、2005年衆院選から2022年の参院選までの17年間で、得票数は280万の減小、減少率は実に32%にも及ぶ。

創価学会問題を対象とするWEBサイト「狂気従容」の20年11月22日付「創価学会の会員数について(圧倒的な少子化)」には、創価大学関係者の話を根拠に、創価学会の統監における2013年から14年における小学1年生の数は、1万人に満たなかったとの記述があり、創価学会の少子高齢化の深刻さを指摘している。

そうした危機感の反映でもあるのだろう、小中高が夏休みに入る時期にあたって創価学会が「未来部(小中高生)」の育成を声高に叫んでいるが、そこには統一教会問題を契機に社会的注目を集める悩める宗教二世・三世に対する視座は全く見られない。

そんな創価学会傘下の学校法人・創価学園で、7月15日に「栄光の日」を記念する集いが開催された。この「栄光の日」とは、16日付聖教記事にもあるように、「大阪事件」で池田氏が釈放された7月17日を指す。すなわち池田氏の釈放記念日に「国家権力による弾圧=法難」を受けた「師匠である池田先生」の「仇討ち」を、「弟子である創価学園生」が誓うのが、かつては「栄光祭」と呼ばれた「栄光の日記念集会」開催の元意である。

「仇討ち」とは、具体的には弟子である学園生が社会に雄飛し、政権奪取をはじめとする「総体革命」を達成することとされていた。

その「栄光の日」記念集会開催日に、先のWBCで大谷翔平選手やダルビッシュ有投手を擁して優勝した創価高校OBである栗山英樹前侍ジャパン監督が母校を訪れ、「特別授業」を行ったと創価高校ホームページが喧伝している。おそらくこの日の行事で一番盛り上がったであろう「特別授業」だが、なぜかこの事実を『聖教新聞』は一行も報じていない。

創価高校OBが母校で講演することに何ら問題はない。にもかかわらず『聖教新聞』が報じないのは、栗山氏が創価学会に利用されるのを嫌がったか、あるいは表向き栗山氏の立場を慮って聖教報道を控えているからだろうが、栗山講演を選挙のF取りや会員勧誘のとっかかりとして利用したいはずの創価学会には、なんらかの思惑があるはず。興味は尽きない。

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