6月号目次
閻魔帳
緊急事態下でも東京五輪は開催 菅首相とIOCのバッハ会長、暗黙の合意か/川﨑泰資
特集/コロナ禍での都議選に呻吟する創価・公明
都議選カウントダウンを前に「呻吟のコウモリ飛行」を見せる「公明党=創価学会」/古川利明
東京に出向き“F票獲得”を指示する創価の“悪辣”/乙骨正生
トピックス
急務となった「カルト2世」問題への議論と沈黙する「反カルト運動」/藤倉善郎
- 連載
信濃町探偵団──創価学会最新動向
「公明党と創価学会」を考える(第20回)
公明党の自立路線時代(6)/平野貞夫
ナニワの虫眼鏡(第24回)
一本にまとまる政党と空中分解する政党との差 その秘密は”接着剤”にあり/吉富有治
新・現代の眼(第58回)
嘉肴ありと雖も食らわずんばその旨きを知らず/菅野 完
ヨーロッパ・カルト事情(277)
陰謀論者のリモート犯罪/広岡裕児
執筆者紹介 バックナンバー一覧 編集後記
編集後記から
9都道府県に対する3回目の緊急事態宣言を、6月20日まで延長することを政府が5月28日に発表しました。この延長に苦虫を噛みしめているのが創価学会だと言われています。
というのも、いま創価学会は、6月25日告示・7月4日投票の東京都議会議員選挙で、21選挙区に立てた23人の公明党候補の当選に向けてなりふり構わぬ選挙闘争を展開していますが、緊急事態宣言の発出・延長により、友人・知人を訪問して公明党候補への投票を依頼するお得意の人海戦術に縛りがかかっているからです。
1996年の宗教法人法改正以前、東京都は単立宗教法人・創価学会の所轄庁だったことから、創価学会・公明党は東京都議選に力を入れ、全国の組織あげての選挙闘争を繰り広げ、最大28議席を獲得。長くキャスティングボートも握り続けました。
しかし創価学会の勢力後退とともにじり貧となり、現有23議席まで減少しましたが、それでも過去3回は23議席を全員当選させることで、学会本部のあることから「本陣」と称する東京都での体面を維持し続けています。
しかしコロナ禍では、対面による投票依頼が難しいことから、今回は3人区を中心に苦戦は必至と見られており、あるいは20議席の大台を割るのではないかとの観測もあります。
それだけに創価学会は、いま懸命に学会員に鞭を入れる一方、公明党はコロナ禍での生活困窮者の支援を目的とした緊急提言を行うなど、ここにきて露骨な毛鉤作戦を展開しています。もとより生活困窮者支援に異論はありませんが、公明党の緊急提言が選挙目当ての姑息なものであることは明らかです。
小誌今号の特集記事では、そうした創価学会の都民や学会員の命と健康を危険に晒す非常識な選挙闘争の実態を特集しました。小誌は、今後とも宗教と社会・宗教と政治の事実と真実を追究し続けます。よろしくご支援・ご購読のほど、お願いいたします。
特集/コロナ禍での都議選に呻吟する創価・公明
都議選カウントダウンを前に「呻吟のコウモリ飛行」を見せる「公明党=創価学会」
古川利明
ジャーナリスト
「政争の具」と化した新型コロナ対策
新型コロナが政権を直撃している。
国政トリプル選で自公3戦全敗を喫する2日前の4月23日に、首相の菅義偉は4都府県(東京、大阪、京都、兵庫)に3度目の緊急事態宣言(4月25日~5月11日)を発令することを決め、ゴールデンウィーク期間中に人の動きを集中的に止めることで、感染拡大を封じ込め、予定通り五輪開催への梃子にしようと目論んでいたところ、見事に失敗し、連休明けの5月7日、緊急事態宣言の5月末までの延長と、5月12日からは、愛知、福岡の両県を加える決定を行った。さらに、群馬など5県に緊急事態宣言の前段階である蔓延防止等重点措置の適用拡大を既に決めていたところ、5月14日の朝になって、その政府案の諮問を受けた日本医師会や感染症の専門家らで作る基本的対処方針分科会で反対意見が噴出した。「(新型コロナの感染拡大は)もう黄色でなく、赤。北海道、岡山、広島は緊急事態宣言に格上げしろ」とねじ込むと、菅は「専門家が言うなら、それでいい」と、“専門家の乱”に屈してあっさりと白旗を揚げ、この3道県が、急遽、飲食店を含む施設の使用制限の要請や命令ができる緊急事態宣言に組み込まれてしまったのである。
こうしてブレまくり、迷走を極める菅の対応に、国民はいらだちを募らせており、この直後の5月15、16両日に行った朝日新聞の世論調査では、内閣支持率が33%に急落、同じく共同通信でも41・1%、さらには、他社よりいつも必ず突出して高い数字が出る産経新聞とFNNですら、約1ヵ月前より9・3ポイント減の43%にまで落ち込んだ。
じつを言うと、この緊急事態宣言はもとより、ワクチン接種を始めとする新型コロナ対策は、今や完全に政争の具と化している。そもそも「7月末までの高齢者へのワクチン接種完了」を明言していた菅が5月7日の会見で、突如「1日100万回接種」をブチ上げたのも、五輪開会式がある7月下旬と同時期に高齢者接種にメドをつけることで、何が何でも「政権浮揚」させ、自民党の総裁任期が切れる9月末までに解散総選挙に打って出て、それに勝利することで「総裁再選を果たす」との浅ましい権力欲からで、最早、裸の王様そのものである。
産経新聞(5月8日付)によると、菅が緊急事態宣言の解除基準について、多くを語らない理由を「具体的な目標を定めると、解除を政治的に判断する余地が狭まる」と明かしており、要は「思いつきで緊急事態宣言を発令したり、解除したりしている」と言ってるのと等しい。同じく産経新聞(5月15日付)が、今年1月に出された2度目の緊急事態宣言に伴い、時短要請に応じた飲食店への協力金の支給状況(11都府県)をまとめているが、地域ごとにばらつきがあり、福岡のように支給率100%のところもあるかと思えば、大阪は56%止まり(1~2月分)と最も低く、国民を舐めきった話で、結局、3度目の宣言は6月20日まで延長された。
公明の保身で方針転換した入管法改正案審議
この内閣支持率の急落は、重要法案の審議にも影を落としており、例の曰く付きの入管法(出入国管理及び難民認定法)の改正案が、事実上、廃案に追い込まれた。これは、在留資格を失うなどして非正規滞在となったため、入管施設に収容されている外国人のうち、強制退去処分が決まっても、送還に応じないケースが年間3千~4千人おり、うち、収容期間半年以上が、19年末時点で462人に上り、長期収容が常態化している。法務省はこれを解消すべく、現行では「難民認定を申請中の場合は、送還を停止する」とあるが、改正案では「3回目以降の難民認定の申請においては、それに相当の理由がない場合は、送還させることができる」とし、実質的に「難民認定の申請は2回限り」とするものだった。
折しも、今年3月6日、名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(33歳)が死亡した事件で、その死に至った経緯を当局が何らまともな説明をしないのみならず、監視カメラ映像の開示を「保安上の理由」を盾に拒むという有り様だった。留学生として17年に来日したウィシュマさんは、留学ビザを持っていたが、学費が払えず学校に通えなくなったことで、19年1月から非正規滞在となっていた。同居男性の暴力から逃れようと、警察に助けを求めるも、逆に逮捕され、20年8月に名古屋入管に収容されたウィシュマさんは、今年1月中旬から体調を崩して吐き気や体のしびれを訴え、入院治療を行うべく仮放免を申請したものの、不許可となっていた。
毎日新聞(5月17、18日付夕刊)によれば、こうした入管施設の現場では、収容された外国人を「ガラ」と呼び、常勤医師はおらず、体調不良を訴えても「仮病」と取り合ってもらえないばかりか、「制圧」と称する体罰が横行している実態を報告している。07年以降だけでも、今回のウィシュマさんを含めて17人も入管施設で死者が出ているというのは、異常というより他はない。もっと言うなら、昨年の日本の難民認定率が1・3%と、世界水準と比べても異様に低い背景には、国はこうした外国人を「国内労働市場の調整弁」としか見ていないことがあり、そこから「非正規滞在となったら、即、収容」という全件収容主義が生まれている。しかし、今回の改正案では、帰国すると政治的な迫害から身に危険が生じる恐れがあったり、日本に家族がいたりするといった事情については、全く配慮しておらず、透けて見えるのは「当局の人権感覚の欠如」だけである。
で、この5月18日、政府与党は突如、「今国会では入管法改正案を採決しない」と方針転換したのだが、やはり、キモは日頃から「人権、人権」と口やかましく唱える創価学会名誉会長の池田大作を創立者とする公明党だったのである。野党が徹底抗戦し、「採決拒否」に打って出ていたため、自公は「強行採決」以外に選択肢はなくなっており、法案が衆院を通過しても、ご存知の通り、参院は法務委員会の委員長を公明党が独占し続けている。東京都議選告示9日前の6月16日に会期末を迎える通常国会の最終盤で、同委員長の山本香苗が野党に揉みくちゃにされる映像が拡散されてしまうことを、信濃町は何よりも恐れたためで、相変わらず「自分たちの保身」しか頭になく、呆れるより他ない。
進軍ラッパを彷彿とさせるワクチン狂騒曲
菅が「7月末までの高齢者のワクチン接種完了」をブチ上げたことで、今や「それ」はまさに国策と化し、新聞やテレビも取り上げない日はないほど、さながら進軍ラッパを彷彿とさせるワクチン狂騒曲で溢れ返り、この5月21日には、先行している米ファイザー製に加え、米モデルナ製と英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンを、厚労省は、申請からわずか2~3ヵ月の超スピードで正式承認した。ただ、自治体の現場では「それ」が実現するとは誰も思っておらず、「ワクチン確保の道を開いたのは公明党」と、接種を煽る同党幹事長の石井啓一の談話を載せた公明新聞(5月20日付)ですら、「全国自治体のうち7月末までに完了できるのは86%だ」と予防線を張り、逃げを打っている。
ただ、英アストラゼネカ製ワクチンは、血の固まりで血管が突如、閉塞する血栓症の副反応事例が多数、報告され、英国では接種した約2020万人中、79人が発症し、うち19人が死亡しており、40歳未満への接種を推奨していない。EUも「1回目で血小板減少を伴う血栓症を発症した人は、2回目を接種してはならない」と勧告していることなどを受け、日本もこの英アストラゼネカ製ワクチンは、当面、使用しないことにしている。
そこで、じつは、既に接種が始まっている米ファイザー製ワクチンでも、厚労省は5月12日の専門部会で「5月7日までに新たに26~97歳の男女20人の接種後の死亡が判明し、死亡例はこれで計39人になった」と報告しており、その後も死亡者は増えている。うち、接種から4日後の3月23日に亡くなった、26歳と最も若く既往症のない福岡県内の女性看護師の死因は「小脳からの脳出血とくも膜大出血」だった。5月6日までの接種件数は423万回余りで、この死亡率の高さは、英国で判明したアストラゼネカ製の「それ」を遥かに上回っている。
厚労省は副反応かどうかについて、「情報不足などで評価できない」か「評価中」としているが、5月19日には、福井県小浜市でワクチン接種を受けた80代女性が、帰宅後に意識を失い心肺停止の状態となり、搬送先の病院で死亡が確認されている。せめて厚労省は「体調がすぐれない場合は、接種を焦らず、様子を見るべきだ」ぐらいは勧告しなければならないが、異様に腰が重いうえ、「人権の党」を標榜する公明党(=創価学会)も「見て見ぬフリ」を決め込んでいる。今後、永田町では都議選(7月4日投票)と衆院選(10月21日任期満了)の2大案件を控えているが、コロナ禍とリンクして五輪開催の可否は、もろに政局に直結するため、我々心あるジャーナリズムは引き続き、信濃町の動向と合わせて、これらをきっちりと凝視する必要がある。(文中・敬称略)
古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』最新刊『「自民党“公明派”」20年目の大失敗』(いずれも第三書館刊)など著書多数。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- 関西池田記念大講堂建設について
・5月28日付『聖教新聞』「関西池田記念大講堂建設委員会を開催」
「関西池田記念大講堂の建設委員会が、27日午前11時から東京・信濃町の学会本部別館で開催された。総合委員長の原田会長、委員長の谷川主任副会長らを中心に、建設に向けた協議を行った」
※4月の本部幹部会の席上、原田稔会長が「常勝関西の長年の悲願でありました講堂の建設が、このほど正式に決定いたしました。新講堂の名称は『関西池田記念大講堂』です。誠におめでとうございます」(4・26付『聖教』)と発表した関西池田記念大講堂の建設委員会が、「東京・信濃町の学会本部別館」で開催された。
本部幹部会の原田発言によれば、そもそも「新講堂の建設構想」は95年7月3日の大阪支部長会での関西総本部となる記念講堂の建設発表まで遡るという。そんな「悲願」の大講堂建設委員会は、しかし「東京・信濃町」で、しかも関西の代表幹部ではなく、歴代の総東京長である原田会長・谷川主任副会長を総合委員長・委員長として進められるのだ。
関西方面の学会員によれば、すでに関西の中心施設としては、06年11月に関西池田記念会館が完成しており、このオープニングに際して池田大作名誉会長は、「この会館は、関西と私の『学会精神の真髄』を万代へ伝えゆく大殿堂です。関西と私の『師弟不二の魂』を全世界へ示し切っていく大城なのであります」とのメッセージを贈り祝福していることから、会員数も減少している今日、いまさら新たな大殿堂は作る必要性は薄いという。
どうやら関西の「悲願」といいながら、東京主導で建設される池田記念大講堂。果たして関西・大阪の多くの人々に馴染みの深い、文化的価値のある太閤園を、一宗教団体の施設とすることが妥当なのか。SNS上には、太閤園を創価学会が破壊することに反対する声が溢れていることを、創価学会はどう感じているのだろうか。
- 東京都議選にまい進する創価学会
・5月10日付『聖教新聞』「不二の旅 池田先生と総東京(上)」「我が人生に勝利の万歳を」
「目黒 目黒平和会館を訪問。目黒で過ごした宝の青春を振り返り、“私は1日を1カ月分にとの思いで戦ってきた”と述べた」
「豊島 第3代会長辞任後、初めて学会歌の指揮を。曲は『威風堂々の歌』。反転攻勢への誓いが一つに」
「総東京の友に贈った指針 我らの東京! 我らの東京は 日本の広宣流布の原点である。 東京の勝利が 日本国中の勝利だ。 いな 全世界の勝利へと 発信されていくであろう。(中略) 茨の道を 苦難の道を 断固として 勝ち乗り越えて 我が人生に 万歳を叫び飾ろう!」
・5月14日付『聖教新聞』「不二の旅 池田先生と総東京(中)」「広布の本陣に師弟の凱歌を」
「総東京の友に贈った指針 大聖人は、ここ東京の天地で、ご生涯の総仕上げをされた。大聖人のご一代の弘法は、『立正安国論に始まり、立正安国論に終わる』と言われる。妙法を掲げ、平和と安穏の社会を築き上げていくのが、私たちの戦いである。
東京は、永遠に『広宣流布の本陣』である。本陣として、『立正安国』の大闘争を勝ち抜かねばならない使命と宿命がある。責任があり、名誉がある」
※来る7月4日投開票の東京都議選。公明党そして創価学会は21選挙区に23人の候補を立てるが、そのうち3人区を中心とした5選挙区を超重点区、3選挙区を重点区として、熾烈な選挙闘争を繰り広げている。『聖教新聞』紙上の「寸鉄」には、「東京・豊島の友が奮闘。師弟の魂刻む地に民衆の勝ち鬨を!正義を満天下に」(5・13付)など、超重点区・重点区をはじめ、公明候補の立つ選挙区の地名をあげた激励が載り、選挙闘争を鼓舞する集会の模様が報じられている。
そんな最中に「永遠の師匠」(会憲)である池田大作名誉会長と、東京の縁を強調する特集記事が登場した。もっともそこに載っているのは、超重点区や重点区の創価学会組織との池田氏との縁のみ。そして「立正安国の大闘争を勝ち抜け」との檄が掲げられている。
コロナ禍、不要不急の外出自粛が叫ばれる中、選挙闘争に学会員を駆り出す宗教団体。もちろんワクチン接種会場に、非課税の宗教施設を提供することもない。とても公益性があるとは思えないが。