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特集/検察人事・国会軽視を生んだ自公翼賛体制

 

三権分立に踏み込む安倍政権 創価流現世利益との共通利害

柿田睦夫

ジャーナリスト

 

ヒトラーと同じ手法の安倍政治

安倍政権は戦後最悪である。いや、戦前を含めてもそうかもしれない。嘘と詭弁で法の秩序を壊し、民主国家として要の制度である三権分立をも踏みにじる。それがまた、与党・公明党とその組織母体である創価学会の“現世利益”に強く結びついている。

「嘘も百遍言えば本当になる」はヒトラーの手法だった。安倍晋三首相のやり方も同じだ。保身のための嘘と詭弁の答弁をくり返し、閣僚や官僚が辻褄合わせに追われ、あげくに公文書の隠蔽、改竄、破棄にまで手を染める。森友、加計、自衛隊の日報…と。それをくり返し、自殺に追い込まれた公務員までいる。

そのあげくが首相主催の「桜を見る会」と安倍後援会主催の「前夜祭」である。国会で承認された予算をはるかに上回り、国費を使って招待客を増やす。首相は「長年の慣行」で増えたというが、これがまず嘘だ。第2次安倍政権の7年間だけで2倍になったのだ。

増えた客の大半は安倍後援会。悪質マルチ業者もいれば、昭恵夫人の個人客も判明分だけで140人超。18年には突然、自民党地方議員が増えた。この年に自民党総裁選があったからだ。「自民党衆院議員の一人は思った。これは党総裁選を意識した地方の『党員票』対策の一環なんだな」(読売新聞2018年5月4日付)。徹頭徹尾の私物化なのだ。

前夜祭は1人5000円で800人の参加者が個別にホテルと契約した――。こんな説明をいったい誰が信じるのか。会場となったホテルが野党議員の質問に文書で答えている。①費用は一括して主催者に請求。明細書を出さなかったことはない、②宛名が空欄の領収書を出したことはない、③主催者が政治家でも対応を変えたことはない。

弁明の全てを否定されてもなお、首相は同じ答弁をくり返す。そうしないと公職選挙法と政治資金規正法違反を問われかねないからだ。あげくには「広く募ったけれど募集していない」「合意したけれど契約ではない」と、意味不明の答弁になる。そんなことが国会の場で演じられている。

ヒトラーは「全権委任法」で議会を無力化し、憲法を骨抜きにした。安倍政権下でも同じことが進行している。たとえば15年の安保法制(戦争法)だ。日本の参戦を可能とする存立危機事態を認定する「新3要件」とはどんな状況か。答弁は「政府が総合的に判断する」だった。要するに戦争に加わるか否かは政府の判断次第ということだ。まさしく「全権委任」を狙ったものだった。

付言すれば、この時の「新3要件」は表向き、自民党の高村正彦副総裁の発案だとされているが、それは事実ではない。公明党が原案を作り、高村氏に渡したのが真相である。17年の「共謀罪」法では参院法務委員長(公明)が採決権とその責務を放棄して「中間報告」という奇策で本会議採決に持ち込んだ。これも「自民党幹部は、中間報告という奇策は、元々公明党が持っていたアイデアだと明かす」(朝日新聞17年6月15日付)というものだった。公明党は安倍政権を支持するだけでなく、ブレーンの役割を果たしているのだ。

事ほど左様、安倍政治は立法府無視の姿勢で一貫している。本来は国会で議決すべき集団的自衛権行使容認に向けた憲法解釈の変更(14年)も、天皇即位儀式の決定(19年)も閣議決定で押し切った。沖縄の辺野古新基地の予算を勝手に馬毛島(米軍機訓練施設)買収に流用していることも判明している。

加えて今回の東京地検検事長の定年延長という閣議決定(1月)である。次期検事総長を視野に入れた人事だと見られている。アベノミクス推進のための日銀総裁変更、集団的自衛権のための内閣法制局長官変更など、安倍政権には恣意的人事が目立つが、今回はそれだけにとどまらない。

検察庁法は検察官は63歳(検事総長のみ65歳)で退官すると定め、国家公務員法の定年延長規定は適用しないとされてきた。「唯一の公訴提起機関」(刑事訴訟法)である検察官は司法と不可分の関係にある。その職務が公正に行われるか否かは裁判の公正性にも及ぶ。だからこそ、政治の思惑で左右されないようその地位は法律で担保されている。その原則を閣議のみで変更したのが今回の人事である。

そもそも、国会で議決した立法時の解釈を変更することは新たな立法行為であり、当然、国会の議決が求められる。安倍政権はその大原則に土足で踏み込んだのである。

政府の説明は支離滅裂だ。国公法の定年延長制は検事に適用しないという政府見解(81年)を「知らなかった」という森雅子法相発言から、人事院給与局長の「言い間違え」発言、戦前の裁判所構成法には定年延長制があったからだという法務省の弁明文書等々、それもこれも「法解釈を変更した」という首相答弁(2月13日衆院本会議)への辻褄合わせゆえの迷走なのだ。戦前の裁判所構成法を持ち出すこと自体が異常である。戦前への反省にたった新憲法の下での三権分立を保障するために制定したのが現在の裁判所法、検察庁法だからである。

特別扱いを受けた東京高検検事長は現場経歴は少なく、主に法務省の官僚畑を歩んできた。安倍政権下で法務省官房長や事務次官を歴任。法務省は国がかかわる訴訟で国側の代理人となる立場でもある。

そして今、元カジノ担当副大臣の逮捕、広島地検による前法相の捜査など、安倍周辺で検察の動きがある。カジノ疑惑では検察の目が本命の米カジノ業界に向くかどうかが注目されている。そして何より、安倍首相自身が「桜」問題で刑事告発をされている。そんな中での検察人事私物化の疑いなのだ。

 

学会と検察・警察の“特別”関係

問題のもう一つは与党公明党である。「桜」について山口那津男代表は「当事者である首相がきちんと説明を尽くすということが重要」と述べた(2月18日の会見)。その程度のことは言うけれど、それ以上の言行はない。ましてや検察や司法のことを語る術はないだろう。公明党とその組織母体の創価学会には検察や警察を特別に扱うという歴史があるからだ。

1965年以来、参議院法務委員長には公明党議員が就いている。裁判官や検察官の人事や予算などを扱うポストだ。都道府県議会では警察消防委員会のポストに固執する。特別の意味がそこにある。

創価学会は1970年に、共産党の宮本顕治委員長宅の電話を盗聴するという犯罪を実行した。東京高裁が88年4月の判決で創価学会の組織的関与を認定し、その判決が確定している。

盗聴器が露見し撤収した後に行われた事後対策の相談の場に、神崎武法氏ら現職検事3人が出席。東京地裁の裁判記録(82年2月)によると、神崎氏ら3人は「知らんぷりしていなさい」「下手に動くと怪しまれる」と助言したという。犯罪を摘発し公訴すべき立場にある現職検事が“もみ消し”に加担したというのだ。創価学会を護るという任務の遂行。神崎氏はその後、公明党代表になり、盗聴の対象となる電波通信事業を所管する郵政大臣にも就いた。

95年9月、創価学会の人権侵害問題に取り組んでいた東京・東村山市の朝木明代市議が転落死した。司法解剖の鑑定書に他殺の可能性を示す記述があることが、のちになって判明している。しかし警察も検察も「事件性は薄い=自殺」の疑いが濃いとして捜査を終結。その時の担当検事は創価学園・創価大学出身の創価学会員、上司の地検支部長も創価学会員だった。

この支部長と神崎氏はともに学会内部の法学委員会の役員だった。「法学委員会の新体制について」という内部文書(76年)には、その役割を「総体革命戦略の構築」「特殊問題に関する戦略」とある。総体革命とは政界のみならず、官界・法曹界・マスコミなどに創価学会員の人材を送り込むという、池田大作会長(現・名誉会長)が構築した“天下取り”戦略である。

創価学会員が交通違反などで捕まると、公明党議員が“もらい下げ”に動くことがある。公明党国会議員の北側一雄、白浜一良両氏はテレビ朝日の番組でそれを「事件があったときに警察にお願いするのは当たり前でしょう」と語っている(99年9月24日)。

創価学会・公明党にとって検察や警察はそんな存在だということだろう。創価学会を護り、“口利き”や“もらい下げ”などで組織や学会員に行政施策の恩恵をもたらすという創価学会流現世利益主義がそこに見える。その意味で安倍政権の体質とは相通じるものがあるのだ。

 

柿田睦夫(かきた・むつお)フリージャーナリスト。1944年生まれ。業界紙記者などを経て1979年から「しんぶん赤旗」社会部記者。退職後「現代こころ模様」シリーズなどで「宗教と社会」の関わりを取材。葬儀や戦後遺族行政に関わるレポートも多い。『霊・超能力と自己啓発─手さぐりする青年たち』(新日本新書、共著)『統一協会─集団結婚の裏側』(かもがわ出版)『現代葬儀考─お葬式とお墓はだれのため?』(新日本出版社)『宗教のないお葬式』(文理閣、共著)『これからの「お墓」選び』(新日本出版社)『自己啓発セミナー─「こころの商品化」の最前線』(新日本新書)『現代こころ模様─エホバの証人、ヤマギシ会に見る』(新日本新書)、新刊に『創価学会の“変貌”』(新日本出版社)など著書多数。