11月号目次
閻魔帳
「政権離脱」と「池田外し」路線/柿田睦夫
特集/自公連立崩壊=岐路に立つ日本の宗教と政治
政治路線放棄して小教団化する可能性示す連立離脱/溝口 敦
政権にしがみつかせた三悪人──公明党を毒する菅義偉、鈴木宗男、佐藤優/佐高 信
「公明党=創価学会」はどこまで本気で「連立離脱カード」を切ったのか?/古川利明
自公連立の解消、もう1つの分析/段 勲
公明党「連立離脱」を招いた「池田不在」/乙骨正生
- 連載
信濃町探偵団──創価学会最新動向
「日本の議会政治」を考える(19)
「自民と公明によるカルト政治」――日本型カルト政治の形成(2)/平野貞夫
ナニワの虫眼鏡(第77回)
公明離脱と維新の合流 改革か妥協か日本政治の再編劇 /吉富有治
ヨーロッパ・カルト事情(326)
日本の極右化を招来した創価・公明の重大責任/広岡裕児
執筆者紹介 編集後記
編集後記から
小誌の創刊は2002(平成14)年3月1日でした。創刊号の「編集後記」で筆者は、小誌創刊の動機を、①特定の宗教団体である創価学会を母体とする公明党の連立参画により憲法二十条一項後段の政教分離規定が危殆に瀕すること。②小渕・森そして小泉政権にいたる自公政権で公明党・創価学会の政治的影響力が拡大していること。③その結果、多くのマスコミが創価学会の膝下に屈しつつあり、創価学会・公明党に対する正確な情報の発信が困難となっていることから、「宗教と政治、宗教と社会についての正確な情報を発信し続ける媒体として、隔週刊誌『フォーラム21』を発刊することといたしました」と書きました。
以来、23年にわたって創価学会・公明党問題を中心に、カルト問題など宗教と政治・社会に関する情報を発信し続けてきましたが、石破茂首相が退陣を表明し、自民党が高市早苗氏を新総裁に選出した後の10月10日、公明党が突然、「連立離脱」を表明し、自公連立政権が崩壊しました。その理由や政治的背景は小誌今号の特集記事が詳述している通りです。
もとより自公連立政権が崩壊しても、宗教と政治・社会の問題が、例えば解散命令にまで発展した統一教会問題に象徴されるように解消したわけではありません。
しかしながら創価学会・公明党の政権参画による、創価学会問題に関する情報の閉塞・阻害への危惧を動機として創刊した小誌としては、自公連立政権の崩壊によって、ひとまずはその発行の目的を果たしたと考えます。
また自公政権の失政に伴う昨今の物価高騰は、もともと出版不況といわれるほど厳しい経済環境下にある紙媒体の小誌にとって、もはや経営努力だけでは発行を続けることを難しくしているという現実的理由もあります。
そこで2025年12月号をもって小誌の発行を終了させていただくことにしました。
23年8カ月にわたって小誌の発行を支え続けてくださった読者の皆様に衷心より感謝申し上げます。また、執筆者をはじめ発行にご協力くださった関係者各位に心から御礼を申し上げます。
最終号の次号にて詳細は書かせていただきますが、小誌は前売りのため終刊の後、来年に入ってからは前金を頂戴している読者の皆様への返金作業にも、誠実に取り組ませていただく所存です。
重ねて小誌発行を支えてくださった全ての皆様に感謝するとともに、御礼申し上げます。
有限会社フォーラム・代表取締役
『フォーラム21』編集発行人 乙骨正生拝
特集/自公連立崩壊=岐路に立つ日本の宗教と政治
公明党「連立離脱」を招いた「池田不在」
乙骨正生
ジャーナリスト
連立政権は「本音」の実現
公明党を創立し衆議院へと進出させた創価学会の池田大作三代会長の三回忌(11月15日)を前にした10月10日、1999(平成11)年10月以来、26年もの長きにわたって続いてきた自公連立体制が崩壊した。
突然に見える自公の連立崩壊だが、実は通算で23年に及ぶ自公連立政権下においても、両者の軋轢が高まり、「連立離脱」が取り沙汰されたことは何度かあった。例えば消費税の10%への引き上げ時に軽減税率を導入するか否かで、自公が対立した2013(平成25)年の税制協議時や、同年暮れから翌年にかけての集団的自衛権の行使容認をめぐって、自公の立場の相違が明確になった際などである。しかしたいがいの場合、公明党そして創価学会は、自説を曲げて自民党に妥協し連立を維持した。
公明党そして創価学会が連立の維持を優先するのは、自公連立の紐帯となっている選挙協力におけるメリットや、政権与党入りすることで得られる学会員の政治的ニーズの実現などが指摘されているが、そこにはより根源的なファクターがある。
そのファクター、そして公明党や創価学会首脳が、政権参画と政権の維持を優先するメンタリティの根拠を示す興味深い文書の原本が筆者の手許にある。
それは矢野絢也元公明党書記長(当時)が、1974(昭和49)年7月7日投票で行われた第10回参議院選挙の投票翌日にあたる7月8日に書き、池田氏に提出した「御礼」と題する「報告事項」なる文書である。そこにはこう書かれている。
「先生、大勝利させて頂き本当にありがとうございました。先生のご慈愛に守られ、同志の血と涙の斗いで勝たせて頂きました。
先生、本当に有難うございました。
この勝利におごることなく、同志の誠心に甘えることなく、さらに団結し、自戒し、斗ってまいります。
愛知を敗けてしまい申し訳ございません。
先生の弟子として恥かしくないよう、さらに信心に励み斗ってまいります。
先生、心から心から御礼申し上げます。
同志の皆さん本当に有難うございました」
池田氏への感謝の意を赤裸々に表する矢野書記長。これに対して同文書には「池田」の印とともに、赤鉛筆で書かれた次のような池田氏のコメントがある。
「本当に御苦労様よかったな。これからも頑張ろう
天下を取るまで応援するから学会も守ってくれ
愛知も頑張ったよ。この次はもっと取ろう。
天下を取ろう」
この選挙で公明党は、地方区で5議席、全国区では得票数636万419票で9議席と、合計14議席を獲得したが、文中に「愛知を敗けてしまい申し訳ございません」とあるように、候補を立てた北海道・東京・愛知・大阪・兵庫・福岡の地方区で、唯一愛知選挙区の現職・渋谷邦彦候補が惜敗した。ちなみに今年7月の第25回参院選での公明党比例区票は521万569票であり、51年前の第10回参院選での全国区得票を114万9850票下回っている。
矢野書記長の記述は、こうした選挙結果を踏まえてのものだが、この文書が書かれた74(昭和49)年といえば、70(昭和45)年の言論出版妨害事件を踏まえた「政教分離宣言」からすでに4年も経っている。にもかかわらずこの文書からは選挙丸抱えの実態など、両者の一体不可分性が看取できる。また池田門下生の「弟子」としての、卑屈としかいいようがない矢野氏の態度からは、池田氏と公明党首脳との絶対的上下関係や、創価学会の政治部門に過ぎない公明党と創価学会の上下関係を読み取ることができる。
そして注目すべきは池田氏のコメント部分。そこには公明党を設立し衆議院に打って出た池田氏の「本音」が赤裸々に綴られている。すなわち「天下を取ろう」と「学会を守ってくれ」の二点である。
この池田氏の「本音」である「天下取り」すなわち政権奪取と、「創価学会(=池田氏)を守る」ことは表裏一体の関係にあり、「弟子」である創価学会・公明党の首脳をはじめとする幹部や議員は、池田氏の「本音」を実現すべく全力を傾注する義務を負わされている。
70(昭和45)年の言論出版妨害事件での池田国会証人喚問問題を嚆矢とする数々の政治的危機において、公明党議員や新進党に所属した公明党出身議員らが全身全霊を賭して池田喚問を阻止する行動に出たのは、その発露に他ならない。
そして池田氏と創価学会を守るための究極の選択が政権参画であり、それは同時に池田氏のもう一つの「本音」である「天下を取ろう」の具現化だった。その意味で、公明党・創価学会が非自民連立政権を経て自公連立政権に踏み切ったのは、池田氏の「本音」を実現するための必然だったのである。
桎梏から解放された創価・公明
矢野元書記長は、公明党委員長を経て政界を引退するが、引退後に月刊誌『文藝春秋』に、創価学会と公明党の関係について、「政教一致といわれても致し方ない部分がある」と書いたことを理由に、創価学会・公明党から熾烈な攻撃を受けて、脱会。創価学会を離れた後の2011(平成23)年10月に、『乱脈経理――創価学会VS.国税庁の暗闘ドキュメント』(講談社)を上梓し、1990(平成2)年から92(平成4)年にかけて、国税庁が創価学会に対して行った税務調査を妨害した顚末を詳細に暴露したが、その中で矢野氏は公明党の自公連立政権参画の動機と背景を次のように書いている。
「国税調査が一段落したとき、池田名誉会長は、『やはり政権に入らないと駄目だ』と述懐した。
国税当局から、とりわけ厳しい指摘があったのは、池田大作名誉会長の公私混同問題だった。池田氏に鬼のような形相で叱咤された秋谷会長たちは、右往左往しながらも池田氏に指一本ふれさせないという一線だけは守り抜いた。私への指示も池田氏を死守することだった。
国税にマークされ、のたうち回る思いをした池田氏が野党である公明党に歯がゆい思いを募らせたことは想像にかたくない。そこで『政権に入らないと』という発言になるのだが、その後、池田氏の野望は細川連立、自自公連立、自公連立政権として実現した。
我々は自公政権の功罪を論じる前に、そもそも連立政権誕生の動機が、税務調査逃れと国税交渉のトラウマであったことを確認しておく必要がある」
公明党は、自らが自民党との連立政権に参画した理由を、日本の金融危機を救うべく98(平成10)年の「金融国会」で破綻前の金融機関に公的資金を投入する「金融早期健全化法」に賛成した事実などを挙げて、「政治の安定と改革のリーダーシップ発揮」(『大衆とともに――公明党50年の歩み』公明党史編纂委員会)するためだとしているが、かつて「公明党の指南役」とか「公明党の陰の国対委員長」などと呼ばれ、本誌に「創価学会・公明党を考える」を連載中の平野貞夫元参議院議員は、公明党が自民党と連立する先駆けとなった「住専処理」や、「金融早期健全化法」の成立で自民党に協力した背景には、破綻しそうな金融機関に創価学会の資金が大量に預けられていた事実があったからではないか、と指摘している。
また平野氏は、自公連立政権成立の動機の一つとして、小渕政権で官房長官を務めた野中広務自民党幹事長代理(当時)が、公明代表の藤井富雄都議と、山口組系後藤組の後藤忠政組長との「密会ビデオ」をネタに創価学会を恫喝した事実を指摘。創価学会と暴力団の関係が明るみに出ることを恐れたのでは、と指摘しており、実際、野中氏も「叩きに叩いたら、向こうからすり寄ってきたんや」(『野中広務 差別と権力』魚住昭著・講談社)と発言し、後藤組長も著書『憚りながら』(宝島社)で、創価学会との濃密な関係を暴露している。
矢野氏や平野氏の指摘に明らかなように、公明党の連立参画とは、74(昭和49)年7月8日の「報告事項」に書かれた池田氏の「本音」の具現化そのものなのだ。
したがって池田氏が存命中は、どんなに無理難題をふっかけられても、公明党そして創価学会に「連立離脱」の選択肢はなかった。どこまでも「下駄の雪」として自民党に追随せざるをえなかったのである。
そうした実態を象徴するようなエピソードがある。09(平成21)年8月の衆院選で自公が惨敗し、民主党へと政権交代した後、最初に開かれた9月10日の本部幹部会での池田発言である。この日の本部幹部会で池田氏は、居並ぶ創価学会と公明党の首脳を名指しでこう罵倒したのだ。
「勝負は必ず勝たなければならない。私はずっと命がけで戦い、そして勝ってきた。今回はなぜこうなったのだ」「幹部たちに油断があった。原田(稔・会長)、秋谷(栄之助・前会長)、西口(良三・前総関西長)…、お前たちは真剣に戦ったのか」「そこに座っている太田もそうだ。議員たちはいったい何をやっていたのか」(『創価学会・公明党の研究 自公連立政権の内在論理』中野潤著・岩波書店)
池田氏の「本音」を具現化した自公連立政権を敗北させたことに、池田氏の怒りが爆発したのだ。「弟子」がこれに逆らうことなどできるはずもない。
だがその池田氏は23(令和5)年11月15日に鬼籍に入った。創価学会と公明党の執行部は、池田氏の「本音」という桎梏(しっこく)からようやく解放されたのである。それが今回、公明党と創価学会が「連立離脱」に踏み切れた最大の要因と言えよう。
11月2日現在、創価学会の内部からは、衆議院小選挙区から撤退する意向を固めたとの情報が入っている。「池田氏を守る」必要も、「天下を取る」必要もなくなった創価学会・公明党は、早晩、会員数の減少に伴い政治路線を大きく転換せざるを得ない時がくるはずだ。
それが政治と宗教が利害関係で結びつくという日本の悪しき宗政関係改善の一歩となればと願うばかりである。
乙骨正生(おっこつ・まさお)フリージャーナリスト。1955年生まれ。創価中学・創価大学法学部卒。宗教・政治・社会分野などを取材、週刊誌・月刊誌を中心に執筆。著書に『怪死』(教育資料出版会)『公明党=創価学会の野望』『公明党=創価学会の真実』『司法に断罪された創価学会』(かもがわ出版)など。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- 公明党連立離脱&連立離脱決定後にアメリカに退避(??)した学会首脳
・10月9日付『聖教新聞』「原田会長、谷川SGI理事長がアメリカを訪問」
「原田会長、谷川SGI理事長ら訪問団が7日午前(現地時間)、アメリカ西海岸のロサンゼルスに安着した。(中略)原田会長ら一行は、広布史に刻まれる初の海外指導65周年の佳節を記念した全米総会、全米最高協議会、南カリフォルニア代表幹部会に出席するほか、アメリカ創価大学を訪問。要人会見も予定されている」
・10月11日付『聖教新聞』「公明、連立政権に区切り」「政治とカネ 自民の回答は不十分 『清潔政治』の党是貫く」「公明党らしさ不断に追求」「政策実現、他党と連携し推進」
「自民党の高市早苗総裁と公明党の斉藤鉄夫代表は10日、国会内で2回目の政策協議を行った。その後、国会内で開かれた記者会見で斉藤代表は、公明党が自民党に求めていた『政治とカネ』を巡る問題の対応について『私たちの要望に対して明確かつ具体的な協力が得られなかった』と説明。その上で『自公連立政権は、いったん白紙とし、これまでの関係に区切りをつけることとしたい』と表明した。公明党は9日夜、東京都新宿区の党本部で中央幹事会を開き、今後の政策協議の対応を斉藤代表、西田実仁幹事長に一任していた」
・同「池田先生の第一歩65周年 世界広布へ新たな飛翔」「アメリカが人類の希望に 最高協議会に原田会長、谷川SGI理事長が出席」
・「南カリフォルニア代表幹部会 原田会長のあいさつから」
「ロサンゼルスで池田先生が語った『アメリカが「再生」することは、世界の「再生」に結びついている』『広宣流布においても、「アメリカの再生」は「世界広布の新生」に直結している。世界広宣流布の壮大な未来は、アメリカの皆さまの双肩にかかっている』との指導を通し、恩師から託された世界広布を、先生は不惜身命で切り開き、その未来をアメリカの同志に託したと訴えた。さらに会長は、使命深き一人一人が妙法の生命哲学を根本として、今いる場所で、真の『平等』『自由』『幸福』の価値を体現し、『アメリカの再生』を成し遂げることができれば、必ずや世界広布の新生の道を切り開くことができると力説」
※10月10日、公明党が自民党に三下り半をつきつける形で、自公連立政権が崩壊した。連立離脱翌日の10月11日付『聖教新聞』には、「公明、連立政権に区切り」と題する同日付『公明新聞』とほとんど同一の記事が9面社会面に掲載されたが、これ以外に公明党の連立離脱に関連する記事はなく、同日以降も創価学会は「見解」の表明はもとより、連立離脱については言及していない。
自公連立体制を維持するために創価学会は、各種選挙で会員に公明党の支援のみならず、自民党への支援・投票を求めてきた経緯がある。そうであるならば、公明党が「政治とカネ」の問題に対する自民党の不誠実な対応を根拠に連立を離脱した以上、会員に自民党への支持・投票を強いてきた創価学会としても、一言、その不明を詫びてもよさそうなものだが、いっさい言及はない。
言及しないどころか、原田会長は離脱発表直前になんと渡米。読売新聞の元政治部長である政治ジャーナリストの小田尚氏が、10月13日付『PRESIDENT Online』に書いた「『高市氏は赤の他人』支える理由が一つもない――『連立離脱ありき』で突き進んだ公明党・創価学会の腹の内」によれば、今回の連立離脱を主導したのは、原田稔会長だったというのに。記事には次のようにある。
「公明党の連立離脱は、創価学会の原田稔会長主導だった。10月6日夜、斉藤代表、西田実仁幹事長と学会本部で会い、連立離脱すべしという強硬方針が決まった。
離脱の理屈や方法は斉藤氏らに委ねられた。翌7日の公明党常任役員会では、自公連立を組んだ経緯からの異論も出たが、連立離脱ありきの方針が最後まで変わることはなかった。原田会長周辺には、付き合いがない高市氏をなぜ支えなければならないのか、公明党を軽んじてきた麻生氏となぜ付き合わなければならないのかという気分が強かったとされる」
聖教記事によれば原田会長は10月7日にはアメリカ・ロサンゼルスに入っているが、海外指導はSGI理事長で済むのだから、公明党の連立離脱による政局の混乱に巻きこまれたくない、あるいは混乱の責任回避のために渡米したとも考えられる。アメリカではトランプ政権による分断の拡大による社会的混乱を視野に入れてのことか、「アメリカの再生」の必要性を唱えているが、そこに「日本の再生」の必要性も暗喩されていると見るのはうがちすぎか。
原田会長は14日には帰国したようだが、16日付『聖教新聞』掲載の座談会記事では、「仏意仏勅のわが学会は、何もたよらない。わが道を、学会らしく決然と進む。だから、強い」なる指針を述べている。 公明の連立離脱に敵意を抱く高市自維政権に対する闘争宣言なのか、空威張りなのか……。
- 創価学会による長井秀和西東京市議提訴事件の控訴審判決
・10月17日付『聖教新聞』「デマ演説で学会の名誉を毀損 長井秀和氏の控訴を棄却 東京高裁」
「東京高等裁判所は16日、悪質な虚偽の発言で創価学会の名誉を毀損した長井秀和氏をめぐる裁判で、長井氏に22万円の損害賠償の支払いを命じた東京地裁の判決を支持し、長井氏の控訴を棄却した」
・10月20日付『弁護士JPニュース』「長井秀和氏の街頭演説、創価学会への『名誉棄損』と控訴審でも認定 『表現の自由を委縮させるスラップ訴訟だ』代理人弁護士が批判」
※2022年12月19日、西東京市議会議員選挙に立候補していた長井氏が、西武新宿線田無駅前で行ったリレー選挙演説での発言中、1995年9月に発生した朝木明代東村山市議転落死事件に触れた部分が名誉棄損に当たるとして、創価学会が1100万円の損害賠償を求めて提訴していた事件で、10月16日、東京高裁は一審の東京地裁同様、22万円の損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡した。
高裁判決では、地裁判決が長井氏の選挙演説には、「(創価学会と)行政との癒着等に関する指摘が含まれていた余地があることは否定できない」と、演説は朝木市議転落死と創価学会の関与を指摘するものではなく、創価学会と行政の癒着を指摘するものとする長井氏の主張の一部を認めていたが、この部分を削除。
一方で、地裁判決は、公職候補者の政治的言論における表現の自由は広く裁量・尊重されるべきという長井氏の主張に対して、「(長井氏は)地方議会議員選挙の候補者に過ぎない私人」と判断していたが、東京高裁はこの部分を削除し、実質的に候補者も議員と同等の表現の自由が認められることを認定した。
その上で、高裁判決は、長井演説によって創価学会の社会的評価は下落したが、「原告(創価学会)が朝木氏の他殺に関した疑いがあるという見解が存在すること自体は、ある程度公になっていたもの」との地裁判断を維持し、22万円の支払いを命じた。
18日に行われた記者会見で、長井氏代理人の大山勇一弁護士は、「選挙演説中の発言の一部だけを切り取ってスラップ的な訴訟の対象にされると、表現の自由があまりにも規制されてしまう」とし、「(損害賠償支払い額が)22万円だとしても負担やプレッシャーになる」と創価学会のスラップ訴訟を批判。
被告の長井氏も、判決は「一部敗訴」に過ぎないが、「判決が言論活動にとって悪しき前例になることは変わりない」との認識を示し、判決を批判した。
