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2025年4月号オウム事件から30年&統一教会解散命令

4月号目次

 

閻魔帳

「カメレオン政党」の面目と公明党の行動原理/柿田睦夫

 

特集/オウム事件から30年&統一教会解散命令――生き残りを賭けた創価の「終わコン」戦術

 

対談/創価教育の同窓が語り合う「創価学会の現状」

喪失した「求心力」の代替として活用される「体験談」と「芸術部」/長井秀和 乙骨正生

「芸術部員の有効活用」等で都議&参院のダブル選を切り抜けんとする「公明党=創価学会」/古川利明

 

トピックス

トランプ政権の25%関税と日本税制/浦野広明

トピックス

ユダヤ人とは誰なのか!? 聖書の時代から続く真贋論争/橋本征雄

トピックス

「学会批判者」を糾弾し続けた『エバラ・オフィス』の代表が急逝!!

“行き倒れ”と“変死”を美談にする切実な理由とは/本誌編集部

 

  • 連載

「日本の議会政治」を考える(12)

「カルト政治」の淵源──住専国会と「密会ビデオ」(4)/平野貞夫

ナニワの虫眼鏡(第70回)

第三者調査委員会が“クロ”と判定 それでも開き直る兵庫県知事にあ然/吉富有治

ヨーロッパ・カルト事情(319)

宗教問題ではないセクト問題(1)

マインドコントロールの見分け方/広岡裕児

執筆者紹介&バックナンバー一覧  編集後記

 

編集後記から

寒暖差の激しい天候不順の日々が続いた今年の東京でしたが、桜は見事に開花しました。

東京の開花宣言は3月24日でしたが、その4日前の3月20日はオウム真理教による凄惨な地下鉄サリン事件から30年の節目の日でした。

宗教団体が猛毒のサリンを地下鉄に撒き、多数の死傷者を出すという前代未聞の事件の衝撃は大きく、日本社会ではカルト対策の必要性を求める声が高まりました。その結果、宗教法人・オウム真理教の解散命令が最高裁で決定し、ザル法と呼ばれた宗教法人法は改正されました。

宗教法人の運営や財務面の透明化を強化する宗教法人法の改正には、創価学会や統一教会(現・世界平和統一家庭連合)を含むほとんどすべての宗教法人が信教の自由を盾に反対しましたが、国民世論の後押しを受けて宗教法人法は改正されました。

しかしその裏で、創価学会や統一教会は政治との結びつきを強化。1999年に創価学会を母体とする公明党は自民党との連立政権に参画し、統一教会は自民党・安倍派とのつながりを強化していたのです。

霊感商法や高額献金、そして合同結婚式という宗教的呪縛で人権を侵害する非道な行為によって多くの日本人が塗炭の苦しみを受け、その事実は裁判所によって不法行為として認定されていたにもかかわらず、自民党は統一教会を庇護し続けました。

その歪んだ癒着関係は、安倍晋三元首相殺害という不幸な事件を通じて明らかとなり、オウム事件30年の節目から5日後の東京地裁による統一教会の宗教法人格の解散命令に至りました。統一教会は東京地裁の決定に反発し、即時抗告したことから今後は東京高裁、さらには最高裁で審理が続くことになりますが、オウム真理教ならびに統一教会が解散になったからといって、カルトや宗教団体が抱えている様々な問題が解消するわけではありません。

例えば統一教会と自民党との癒着という政治と宗教の問題については、いまだになんらの解明もされていません。当然のことですが統一教会よりはるかに深くそして強く政治と結びついている創価学会と政治の関係については、全くの手つかず状態です。

ところで地下鉄サリン事件の捜査の過程で、警察が山梨県上九一色村にあったオウム施設・サティアンに踏み込む際、捜査員がガスに敏感なカナリヤを籠に入れて掲げていた姿が想起されます。危険を察知して囀るカナリヤたれ、との心づもりで小誌は2002年3月に創刊、創価学会問題を中心とする宗教と政治・宗教と社会の諸問題を追及しています。今後ともよろしくお願いいたします。

特集/特集/オウム事件から30年&統一教会解散命令――生き残りを賭けた創価の「終わコン」戦術

 

「芸術部員の有効活用」等で都議&参院のダブル選を切り抜けんとする「公明党=創価学会」

古川利明

ジャーナリスト

 

芸能人活用でもくろむダブル選のF票獲得

不定期刊行ということもあって、巷間ではあまり知られていないが、創価学会第3代会長だった池田大作が、その没後も「『そこ』の会長」として永遠に仰がれている「SGI(創価学会インタナショナル)」の創立記念日である2020年1月26日付で創刊された『THE WORLD SEIKYO(ワールド セイキョウ)』(聖教新聞社)という題のパンフレット大のオールカラーの冊子があり、ここで「信濃町の広告塔」として陰に陽に露出している学会の芸術部員が、毎回、巻頭でインタビューに登場し、自らの信仰体験を始めとして、あれこれと喋っている。ちなみに、これまでだと、創刊号はザ・ドリフターズの加藤茶(タレント)と綾菜の夫婦、第2号(22年1月26日発行)は久本雅美(俳優・タレント)とTM NETWORKの木根尚登(ミュージシャン)、第3号(22年9月8日発行)はハービー・ハンコック(ジャズ奏者・SGI芸術部長)、第4号(24年1月26日発行)はロベルト・バッジョ(元サッカー選手)、そして、最新の第5号(24年11月18日発行)は氷川きよし(歌手)で、なかなか錚々たるものである。

そもそも、こうした著名人を組織拡大のダシとして活用するのは、戦後間もなく設立され、宇野重吉を始めとする多くの俳優や歌手らを擁し、旺盛な活動を繰り広げていた共産党系の勤労者音楽協議会(労音)の向こうを張って、池田大作が公明党を創立する前年の63年10月に民主音楽協会(民音)を立ち上げたことに始まる。民音は今でこそ、クラシックから歌謡曲、落語にお笑いと幅広く興行を手掛けることで、芸術部員が食いっぱぐれることのないよう、そのチケットを学会員に買い取らせる一方で、現場の演出家や芸能プロダクションにも深く食い込んで、仕切っているが、しかし、当初はさしたるツテもなく、運営も大変だった。奇しくも『ワールド セイキョウ』の第3号で、ハンコックが72年に入信した時の事情を明かしているが、その翌々年の4月に米カリフォルニア州のサンディエゴで行われた文化祭に池田大作も出向き、ハンコックと初めて会った際、エプロン姿の池田から料理を振舞われ、忌憚のない会話が交わせたことで、いたく感銘を受けたといい、実は当時、どこのプロモーターもできなかったハンコックの日本での公演を「創立者によるトップセールス」により、いとも簡単に実現したことで、民音の株が一気に上がったのである。

そこで、衆院選のあった去年に続き、今年も「公明グラフ別冊」ということで、夏の参院選と東京都議選における公明党公認の立候補予定者を収録した『Komei handbook 2025』が4月1日付で発行されたが、実質的には、選挙も中盤戦に差しかかっているので、まさにF(フレンド)票を獲得するための宣伝パンフである。24年版は俳優の柴田理恵が、公明党代表だった山口那津男と日大教授・社会学者の西田亮介との「結党60年――公明党こそ希望の存在」と題する鼎談に出ていたが、今回は久本雅美が「公明党 私はこう見る」として、「常に誠実で、一人を大切にする姿は私たちの誇りです。頼むよ、公明党!」と、必死に尻を叩いている。

 

オウム、統一教会、創価…選挙に関与するカルト集団

話は変わるが、折しも、この3月20日で、死者14人、中毒症状などの負傷者6千人超を出した、オウム真理教による地下鉄サリン事件の発生から、まる30年を迎えた。筆物が摑んでいる情報では、凶器となった猛毒ガスのサリンだが、実は陸上自衛隊の化学学校が「防護のため」と称して、「これ」を始めとする、所謂、化学兵器を製造しており、オウムは当時、自衛官も熱心に勧誘していたため、「ここ」から製造方法がオウム側に漏れていたのは間違いないが、それはともかく、元々は80年代半ばに設立されたヨガ道場「オウム神仙の会」がルーツだった。しかし、90年2月の衆院選惨敗をきっかけに過激な武装化路線に転じ、その中で「池田大作ポア計画」もあったが、最盛期には1万人もの信者を抱え、なおかつ、高学歴の若者が続々と入信していったことに、世間は奇異の目で捉えていた。だが、当初は、教祖の麻原彰晃以下、教団はヨガの修養とともに、真面目に仏教の原典を解釈するなど、実に分かりやすい言葉で、そして、具体的な実践を通じて、その時代を生きる、特に若者の不安や苦しみに真摯に向き合っていたというのである。

そこで、この地下鉄サリン事件を機に「カルト」という存在がクローズアップされ、とりわけ、フランス下院の調査委員会が95年12月にまとめた報告書では、この問題を正面から取り上げ、国内で活動する172の団体をカルトとしてリストアップし、その中に「日本発」のものとして「創価学会」や「幸福の科学」を始め、他にも御馴染の「統一教会」や「エホバの証人」などが入り、警鐘を鳴らしたが、こうしたカルトが信者を勧誘するに当たって、人々の不安に訴えるのは、常套手段なのである。最近では、まさに「陰謀論」だが、その代表は「ディープ・ステイト(闇の政府)が世界を支配している」というもので、そこから、新型コロナの大流行以降は、「反ワク」こと「ワクチン接種に反対」といったものが席捲している。だが、そもそも、これはCIAなどの諜報機関が敵や世の中を欺く工作活動で使う「カバー・ストーリー」そのもので、「話の9割以上は事実だが、残りの1割以下に決定的な嘘を混ぜる」という手口なのである。少なくとも、ロスチャイルドやロックフェラーといった国際金融資本が大きな力を持ち、米英以下の大国に強い影響力を与えているのは、厳然たる事実であり、陰謀論もそこからさらに話を膨らませている。

その「反ワク」で言うと、仏下院調査委のリストにも載り、米国を拠点として、俳優のジョン・トラボルタやトム・クルーズらが広告塔となって、資金をふんだんに持っていることから、創価学会と同様、スラップである恫喝訴訟を頻発させている「サイエントロジー」との繋がりが指摘されている内海聡(内科・精神科医)が、ここのところ、目立った動きを見せている。そもそも、内海は治療において、そのサイエントロジーの創立者であるラファイエット・ロナルド・ハバード(1911~86)が提唱した「ピュアリフィケーション」と称されている、断薬による解毒プログラムを取り入れており、組織拡大の背景には、元々、薬漬けによる副作用に晒されて医療不信に陥っている患者が、一定数存在していることがあり、ここから内海は「反ワク」に入っている。21年に「市民がつくる政治の会」を立ち上げ、昨年7月の都知事選では12万1715票、同10月の衆院選では神奈川15区で3万9183票を獲得している内海は、この3月14日に会見を開き、19年の参院選でれいわ新選組から比例で出馬するも落選した後、「命の選別発言」で除籍されている大西恒樹と「無所属連合」を設立し、今夏の参院選に出ると表明しており、注視する必要がある。

 

国民民主に抱きつきコウモリ飛行に邁進の公明党

公明党(=創価学会)との絡みに話を戻すと、朝日新聞(3月14日付朝刊)がスッパ抜き、各社が直ちに後追いしていた例の10万円分の商品券の問題で、首相の石破茂が窮地に立たされている。これは、3月3日夜に公邸で行われた自民党の新人衆院議員15人を集めた懇談会に先立ち、石破事務所の秘書が同日昼、参加する議員の永田町の議員会館の部屋を訪れ、1人当たり10万円分の三越の商品券を渡していたというもので、出所は、まず、間違いなく「官房機密費」だが、その後、「これ」と同様のことは、前首相の岸田文雄や元首相の安倍晋三の時代もあったことが明るみになっている。これを受け、共同通信の世論調査(3月24日付配信紙朝刊)では、内閣支持率は2月より12ポイント下落して27・6%と、発足以来、最低を更新し、政権を直撃している。

そこで、年明け以降は、その「政治とカネ」の問題も、だんだんと下火になっていたところ、こうやって、突如、バーッと再燃したことで、「やはり」と言うべきか、公明党は、ここのところ各社の世論調査で支持率が好調な国民民主党に、すぐさま抱き付いて、「公国」へと動いたのである。その企業・団体献金を巡る政治資金規正法改正案においては、「原則全面禁止」を謳う立民・維新・参政・社民・有志の会の野党と、「禁止でなく、透明性の向上」を主張する自民が、それぞれ独自に法案を既に提出しているが、国民は、支持母体である連合内の旧・同盟系の労組からの潤沢な献金が制約されることもあって、原則全面禁止とする野党案の共同提出には加わらなかったのである。

そのへんの足元をシビアに見ていた公明党(=創価学会)は、その「野党案と自民案」の間を取って「規制強化」を謳い、現行では無制限となっている1つの政党や政治資金団体への寄付は「年間2千万円が上限」を柱とする素案を3月24日に国民と一緒に公表し、法案の修正を与野党双方に呼び掛けつつも、「いいか、今後、公国で法案として共同提出すれば、全部パーになるんだぞ」と、さりげなく揺さぶりをかけている。というのは、衆院では自民は196議席、公国を除く野党は210議席と、いずれも過半数の233議席には届かないため、双方がそれぞれの法案を通すには、この「公国」を抱き込まないとなので、まさしく、信濃町がかねてから十八番とするキャスティング・ボート戦術である。ちなみに、読売新聞(3月22日付朝刊)によれば、「首相交代により衆参ダブル選に雪崩れ込むことは、是が非でも避けたい」ので、公明党代表の斉藤鉄夫は「『石破降ろし』を仕掛けることはあり得ない」と周囲に語る一方、別の党幹部は「あまり突き放すこともしないが、積極的に助けることもしない」と漏らしており、いつものことだが、夏本番に向けて「クリーンと言えば、公明党」を最大限にアピールすべく、羽がちぎれんばかりのコウモリ飛行に、これまで以上に邁進することになる。(文中・敬称略)

 

古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』最新刊『「自民党“公明派”」20年目の大失敗』(いずれも第三書館刊)『核と原発 ヒロシマ・ナガサキ、ビキニ、そしてフクシマを繋ぐ悲劇の誕生』(アメージング出版)など著書多数。

 

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