Forum21

Read Article

2025年12月号 通巻359号(最終号)

12月号 通巻359号(最終号)目次

 

閻魔帳

政権奪還を企図する創価学会・公明党の本音が見えた原田発言/乙骨正生

 

特集/『フォーラム21』終刊に思う

創価・公明問題をはじめ宗教と政治の害悪を照射し続けた23年/溝口 敦

「山椒は小粒でもピリリと辛」かった『フォーラム21』の終刊を惜しむ/川﨑泰資

野党になった公明党と創価学会のゆくえ/佐高 信

乙骨正生氏のさらなる飛躍を切望/浦野広明

耐え抜き使命果たした23年9カ月 不屈の闘いが残した功績を評価したい/柿田睦夫

乙骨正生さん、お疲れ様でした/段 勲

「宗教と社会のかかわり」を考えることの意味を問い続ける/古川利明

『FORUM21』がジャーナリストとなったきっかけだった/鈴木エイト

カルト問題を語れる希少な言論空間/藤倉善郎

創価学会に逆転勝訴した東村山市議転落死事件記事/朝木直子

“信濃町”は『フォーラム21』をこう見ていた‼/匿名・一学会員

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「日本の議会政治」を考える(最終回)

『フォーラム21』の終刊にあたって/平野貞夫

ナニワの虫眼鏡(最終回)

本誌『FORUM21』終刊によせて 紙のジャーナリズムが果たした最後の役割  /吉富有治

ヨーロッパ・カルト事情(最終回)

社会そして宗教団体の木鐸でもあった『FORUM21』

執筆者紹介  編集後記

 

 

編集後記から

2002年3月1日発行の創刊号から数えて、359号の本号をもって小誌は終刊を迎えました。23年と9カ月にわたって発行を支えてくださった読者の皆さま、また創刊以来、編集実務を担当していただいた押木二郎氏をはじめ、執筆・校正・印刷・発送・事務・経理等にご尽力くださったすべての関係者の皆さまに、衷心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

振り返れば小誌の歩みは、まさに苦難の連続でした。まず自公連立政権の成立と強化に危機感を抱いて小誌の発行を決意し、創刊準備を始めたとたんに、小生の携帯電話の通話記録が、創価学会青年部の最高幹部の指示によって、NTTドコモの関連会社社員で創価大卒の男子部活動家によって盗み出されるというNTTドコモ事件が発生しました。

創刊後には、創価学会関係者から、上層部は「すぐに潰してやる」と息巻いているとの情報も寄せられ、実際、創刊から間もなく創価学会からの名誉棄損訴訟が相次いで提訴されました。ちょうどこの時期は、政権に参画した公明党が、創価学会に批判的な言論を封じ込めることを目的に、国会の各種委員会で名誉棄損の損害賠償額の高額化や、名誉棄損罪の適用条件の緩和を画策しており、その結果として損害賠償額は飛躍的に高額化し、多くの雑誌媒体をはじめとするメディアが、創価学会による訴訟を恐れて、創価学会・公明党問題から手を引いていきました。

それでも創価学会問題を取り上げる小誌や『週刊新潮』などに対して創価学会は、訴訟を濫発。また、創価学会の意向を受けてのことと想像される創価学会関係者やその周辺にいる人物らからの提訴も相次ぎました。しかし多くの読者の皆さまや執筆者のご支援、ご厚情を梃子に小誌は発行を継続。「すぐに潰してやる」と言われた小誌は、一昨年11月には創価学会の絶対的指導者である池田大作氏の「死去」を見届け、ついに今年10月、創刊動機である自公連立政権の崩壊を見るに至りました。

最終号の特集記事で、執筆者各位が小誌の功績を評価されるとともに、終刊を惜しんでくださっていることはありがたい限りであり、編集発行人としてこれに勝る誉れはありません。小誌はこれで終刊しますが、来年3月までは残務処理を続けます。それ以後は、新たな政治状況に対応しつつ、SNS等での情報発信を検討する心づもりです。

あらためて23年余に及ぶご厚情に深謝申し上げます。ありがとうございました。

『フォーラム21』編集発行人 乙骨正生拝

 

特集/『フォーラム21』終刊に思う

 

創価・公明問題をはじめ宗教と政治の害悪を照射し続けた23年

溝口 敦

ノンフィクション作家

 

本誌「FORUM21」には2002年3月の創刊以来、執筆者の一人として関わり続けることができた。以来、23年間、本誌は立派にその社会的使命と役割を果たしてきたと思う。

発行人の乙骨正生さんが創刊号で高く掲げた創刊の動機、①特定の宗教団体である創価学会を母体とする公明党の連立参画により憲法二十条一項後段の政教分離規定が危殆に瀕すること……以下、述べられた危機は、本誌「FORUM21」が先導的な役割を果たすことで阻止できたといって過言ではなかろう。

この10月、公明党が自公政権からの離脱を表明し、野党に転じたことで浮き彫りされたように、ひとまず創価学会=公明党が与党として国政に参画することの危険は回避された。

振り返れば1980年、名誉会長・池田大作が主導的に関わった創価学会=公明党の犯罪的な暗躍の数々が総合週刊誌などを通じて世に知られることになった。この時を期して、にわかに創価学会=公明党問題が大きな社会問題に浮上し、それに伴い、問題を扱うメディアもジャーナリストも増加した。

だが、世人の飽きもあり、創価学会=公明党の長期的な払拭工作や妨害工作もあり、創価学会、公明党に批判の目を向けるメディアもジャーナリストも失速し、論陣を張る媒体もライターも減少した。そういう状態に対して、本誌の創刊は活を入れ、学会批判者たちの気力を再起動してくれた。

創刊以来、本誌がデータセンター的な役割を果たし、創価学会=公明党のあり方や、カルト的な害悪を流す宗教団体に対する啓発的な文章の中心的な発表の場となってくれた。本誌の存続は、「反創価学会」という視点の継続と新世代へのバトンタッチを意味した。学会=公明党にとっては、さぞかし邪魔な存在だったにちがいない。

そのため乙骨さんはじめ多くの関係者が創価学会による物理的な嫌がらせや乱発する訴訟に耐え、勝たなければならなかった。

そういう意味ではまさしく「継続は力」だった。出版不況と活字離れがいわれる中、本誌は23年9ヶ月もの長期にわたって毎月、刊行を続け、読者に時宜にかなった情報を届け続けてくれた。

しかも執筆者への原稿料不払いとか、細々したトラブルは聞いたこともなく、常時、冷静に営業を続けて来られたのは、ひとえに発行人・乙骨さんと、編集整理に当たってきた押木二郎さん、購読料の前払いを続けてこられた読者や組織の努力の結果だったといえよう。

創価学会=公明党が抱えてきた政教一体の問題点は公明党が存続し、政界に進出しているかぎり、完全には解消していない。しかし、政教一体の元凶となったのは三代目会長だった池田大作であり、幸いにも彼は一昨年11月、死没している。しかも池田のカリスマ性が彼の死没で無効になりつつあるのか、選挙に動員される学会員の趨勢は目立って低落傾向にある。

すでに公明党の執行部も承知しているようだが、創価学会の選挙パワーが往事のように復活することは二度とあるまい。これからもその集票力はこれまでに倍して低落していくにちがいない。

だが、とはいえ創価学会=公明党以外にも宗教団体の活動が社会に大きな影を落としている。安倍晋三元総理を銃撃死した山上徹也被告の裁判が現に進行中だが、事件の原因となったのは世界平和家庭連合(旧統一教会)が一信者に課した1億円を超える過大な献金と、それによる信者家庭の崩壊や自殺だった。また松本サリン事件、地下鉄サリン事件、坂本弁護士一家殺害事件などを引き起こしたオウム真理教は現在も「アレフ」や「ひかりの輪」といった後進団体を通じて、活発に布教活動を続けている。

一部宗教が持つ社会悪を照射する「FORUM21」的メディアは依然として必要とされているようだ。

 

溝口 敦(みぞぐち・あつし)ノンフィクション作家。1942年生まれ。早稲田大学政経学部卒。出版社勤務などを経てフリーに。宗教関係をはじめ幅広く社会問題を扱う。『食肉の帝王』(講談社プラスα文庫)で第25回講談社ノンフィクション賞、日本ジャーナリスト会議賞、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞の3賞同時受賞。『堕ちた庶民の神』(三一書房)『歌舞伎町・ヤバさの真相』(文春新書)『パチンコ「30兆円の闇」』『生贄の祀り』『あぶない食品』(小学館文庫)『武富士 サラ金の帝王』『池田大作「権力者」の構造』『中国「黒社会」の掟』『細木数子 魔女の履歴書』(講談社プラスα文庫)『暴力団』『続・暴力団』(新潮新書)『抗争』(小学館新書)『喰うか喰われるか 私の山口組体験』(講談社)など著書多数。

 

 

 

 

創価・公明問題をはじめ宗教と政治の害悪を照射し続けた23年

佐高 信

ノンフィクション作家

 

寄稿者としてより読者として私は本誌に恩恵を受けてきたので、発行停止は残念でならない。

たとえば本誌は2019年12月号で自民党の代議士だった白川勝彦の死を悼んでいる。白川は私と同い年で『新憲法代議士』(サイマル出版会)という著書もあるリベラルな護憲派だった。

その白川は自公連立政権を「自公“合体”政権」と呼び、“創価学会党”(と変質した自民党)の特質を5つ挙げている。

1、排他独善―高じて批判者を抹殺する体質

2、反自由で非民主的な体質

3、詐術的・謀略的手段を平気で用いる体質

4、理想や理念を求めようとしない俗物的体質

5、寄生獣(パラサイト)的体質

これらのうち、2と4はもともと自民党に内在していたが、公明党との連立によって顕著となったと白川は分析した。また、1と3と5は、連立したことで自民党に感染し移植されたという。

その結果、公明党イコール創価学会は、自民党が各種選挙で議席を獲得するための生命維持装置であるだけでなく、寄生獣として自民党の体質を変えてしまった。

奇しくも、白川が亡くなった11月18日は、創価学会の創立記念日だった。

拙著『自民党と創価学会』(集英社新書)には「戦うリベラル、白川勝彦の絶縁状」という1節がある。白川は2001年2月4日に離党届を出した。

今後の自公の連立解消で白川が指摘した体質は変わるのかどうか。

公明党が野党になって問われるのは共産党との距離だろう。“天敵”のような創価学会と共産党が協定を結んだことがあるのはもう忘れられている。私はそれを『池田大作と宮本顕治』(平凡社新書)で詳述した。

いわゆる創共協定が公になったのは1975年夏である。首謀者は池田と宮本で、仕掛け人は松本清張だった。

発端は学会の言論出版妨害事件で、それに対する非難の昂まりに、池田は1970年の5月3日、謝罪の声明を発表し、政教分離を明言する。その1節に次の文言があった。

「共産党と学会が常に敵対関係にあるかのような印象を世間に与えることは本心ではなく、このようなことはできるだけ避けたいというのが本音である。学会はかたくなな反共主義を掲げる者ではない」

批判の急先鋒が共産党だったため、こう言わざるをえなかった池田は、批判をかわす目的で創共協定に突き進む。これが一時しのぎだったことは池田が当時の公明党書記長の矢野絢也に次のように言ったことで明らかだ。

「本気で仲良くする気なんかあるものか。表面だけだよ。お前よく考えてみろ。自民党と共産党、両方敵に回せるか」

協定は学会にとって予期せぬ事態を招いた。

『週刊現代』の1978年10月26日号に、「創価学会、公明党の最高機密ルートの1つはやっぱり公安機関」という記事が載った。公安機関とは公安調査庁、内閣調査室、警視庁などだが、警視庁詰めの記者が語っている。

「学会が共産党と協定したというので驚いた警視庁では、右翼担当の公安2課が本腰を入れてマークし始めたわけですよ。月に1回の報告書を作成し始めたのは、それから」

公安の調査というのがそもそも不当なのだが、野党になって権力から離れるということはそうした厄介を抱え込むことでもある。学会および公明党はそれに耐えられるだろうか。

 

佐高 信(さたか・まこと)評論家。1945年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。高校教師、経済誌編集長を経て執筆活動に入る。著書に『逆命利君』(講談社文庫)『安倍政権10の大罪』(毎日新聞出版)『総理大臣菅儀偉の大罪』(河出書房新社)『自民党と創価学会』(集英社新書)『池田大作と宮本顕治 「創共協定」誕生の舞台裏』(平凡社新書)『佐藤優というタブー』(旬報社)『統一教会と創価学会』(旬報社)『玉木、立花、斎藤、石丸の正体』(旬報社)など多数。共著に『世代を超えて語り継ぎたい戦争文学』(澤地久枝・岩波現代文庫)『お笑い創価学会 信じる者は救われない』(テリー伊藤・光文社知恵の森文庫)など。

 

 

 

『FORUM21』がジャーナリストとなったきっかけだった

鈴木エイト

ジャーナリスト

 

衝撃的な報せだった。長年寄稿させてもらっていた『FORUM21』が本号で終刊になるという。編集発行人の乙骨正生氏は私にとって恩人と言える編集者であり、今の「鈴木エイト」を育ててくれた存在でもある。

2010年、高齢化で衰退する地域社会に入り込むカルト団体を対比して描き論評した記事が高い評価を受けた。それまでは単に「ライター」を名乗っていた自分がジャーナリストとしての自覚を持つに至ったきっかけだった。単に事実を伝えるだけでなくその背後にある社会問題の構造を示す。そんな命題を常に課してくれたのが乙骨氏だった。

原稿依頼は常に直電だった。明るく快活な声での原稿の依頼が今後なくなると思うと寂しい気持ちになる。

統一教会の問題、統一教会と政界の癒着、ライフワークとも言えるカルトの2世問題。私が無名時代から追ってきたテーマを継続して掲載してくれた。社会の側で大きな動きがあったときだけでなく、世間からみれば小さなトピックでも重要な出来事が起こるとそれに関連した記事を書いてほしいと連絡が来る。自分が思うテーマを自由に書かせてくれる媒体は本当にありがたかった。

思い返すと私が商業誌に寄稿し、最初に原稿料を得たのも『FORUM21』だった。あのときノートパソコンに向かって打った最初の一文字から今に至るまで、本誌における私の軌跡自体が私の言論活動の推移を示している。

本誌へ寄稿を続けたこの15年、実に様々なことが起こった。前述の地域社会へのカルトの進出から、第二次安倍政権発足後の政権中枢と統一教会との裏取引を継続して追及してきた。2013年参院選における安倍首相による教団への組織票依頼と引き換えの体制保護、菅義偉官房長官が手配した候補者の教団礼拝への派遣。2015年の教団名称変更時の下村博文文科相による文化庁への圧力疑惑、大規模な統一教会系国会議員団の結成、自民党国会議員団による統一教会外遊、教団イベントへの政治家参加と時系列に沿って記録に残すように書いてきた。

連載していたウェブメディア「ハーバー・ビジネス・オンライン」が2020年に配信停止となった際も、継続して私の原稿を掲載してくれる『FORUM21』の存在は心強かった。

そして、安倍氏が命を落とすきっかけとなった2021年9月のビデオメッセージについてもその背景と問題点を記した。

翌22年7月、社会を震撼させる安倍元首相銃撃事件が起こり、私がそれまでとは次元の違う忙しさとなったことで『FORUM21』への寄稿が途切れた。それは乙骨氏が私の忙しさを気遣ってくれたからだ。それまでの付き合いから、すぐにでも原稿を依頼したかったと思う。でも乙骨氏は、社会の喧騒が落ち着くタイミングまで待って、原稿依頼の連絡をくれた。

問題点を指摘する厳しい視点のなかに人情が溢れるところが乙骨氏の魅力であり、『FORUM21』の強みだったと感じる。そこには常に社会的弱者への優しい視点があり、組織構造が持つ問題が指摘されてきた。その精神の一端を私も引き継いでいければと思っている。

私は現在(本稿執筆時点の11月28日)、奈良地裁で行われている山上徹也の裁判を傍聴取材している。動機面について山上は教団系オンライン集会での安倍元首相によるビデオメッセージを見た時の感想を「絶望」「危機感」と答えた。絶望を経た危機感、つまり強い焦燥感から直接的な行動に出たとすると、それは報道やペンの力を見限ったとも言える。社会問題の被害者が重大事件の加害者となってしまう、そんな社会構造を変えていくために言論活動を続ける思いを新たにした。その場が一つなくなってしまうことは残念だが、私はこれからも『FORUM21』で培われた精神で抗っていこうと思う。

 

鈴木エイト(すずき・えいと)フリージャーナリスト。滋賀県生まれ、日本大学卒。2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表、主筆を歴任。統一教会問題をはじめとする宗教と政治というテーマのほかに、カルト宗教の2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行なう。著書に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書・共著)『日本を壊した安倍政権』(扶桑社・共著)『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)『自民党という絶望』(宝島社新書・共著)『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』(小学館)『統一教会との格闘、22年』(角川新書)『NG記者だから見えるもの 』(講談社+α新書)など。

閻魔帳

政権奪還を企図する創価学会・公明党の本音が見えた原田発言

乙骨正生

編集発行人

 

公明党が自民党との連立政権から離脱したのは10月10日。この公明党の政権離脱について、公明党の誕生母体・組織母体である創価学会は沈黙していたが、同会の「永遠の師匠」(会憲)で、公明党の創立者でもある池田大作三代会長の三回忌の祥月命日にあたる11月15日開催の全国総県長会議で、原田稔会長が初めて次のように言及した。

〈公明党はこのたび「大衆とともに」との立党精神を貫き通し、大きな政治的判断を下しました。公明党の新たな挑戦を見守りながら、私たちも、いよいよの思いで広宣流布・立正安国の戦いに、まい進していきたい〉

公明党の連立離脱を、党創立者が示した「立党精神」に適うものと評価した原田会長。その上で連立離脱の是非について、戸田城聖二代会長の言を引いてこう強調した。

〈あの「大阪の戦い(筆者注・1956年参院選大阪地方区の選挙闘争のこと)」を終えたあと、戸田先生は池田先生と未来を展望されながら、次のように語られました。

「政体(政治体制)とか、政権といったものは、長い目で見れば、その時代、その時代で変わっていくものだ。そんな移ろいやすいものに、目を奪われてはいけない。

民衆自身に光を当てていかなければ、この厄介な社会を寂光土化する広宣流布という仕事は、決してできはしない」と。

この指針の通り、私たちはいかなる変化があっても動じることなく、「我々学会員こそが不動の『日本の柱』である」との誇りに燃えて前進したい〉(11月16日付『聖教新聞』)

「移ろいやすい」政治状況の一現象に過ぎない「政権離脱」に一喜一憂することなく、「社会を寂光土化」する「広宣流布・立正安国」の闘争に、「いよいよの思い」で「まい進」する必要性を強調した原田会長。

ここで原田会長は「いよいよの思い」と「学会員こそが不動の『日本の柱』」という二つのフレーズを使用しているが、ここに創価学会執行部の狙い・本音が浮き彫りになっている。

すなわち「日本の柱」とは、「立正安国論」を著述した「末法の御本仏日蓮大聖人」(会憲)が、法門上の重要書として著した「開目抄」において示した「三大誓願」の一つなのだが、これを池田会長は、公明党の前身である公明政治連盟が国会に控室を得た時に、控室に飾るために贈った「子持ち杉(筆者注・かつて日蓮正宗の総本山にあった根が一つで二本に枝分かれしている杉)」の絵の「二本」を「日本」になぞらえて、公明党が「日本の柱」となって政権を取れと厳命した経緯がある。

要するに原田会長は、「政権」という「移ろいやすいもの」に「目を奪われてはいけない」と言いながら、池田会長の厳命である「日本の柱」として再び政権を奪還すべく、「いよいよの思い」で「広宣流布・立正安国」の闘争に挑むことを表明しているのだ。

そのことは、全国県長会議から5日後の11月20付『聖教新聞』掲載の座談会記事の中で原田会長が、日本総合研究所の寺島実郎会長の、「日本が二大政党制から多党制へと移り変わる中、“凝固剤”となり得る中道政党の役割が一層必要になるとし、『公明党の存在は極めて重要』であり、『公明党の動き次第で、日本に新しい政治の季節が訪れる』と論じています」を引用していることからも明白である。

こうした創価学会の意思を反映するかのように、公明党の斉藤鉄夫代表も、11月29日の全国県代表協議会において、「中道改革の旗を高く掲げ、与野党の結集軸として新たな地平を力強く切り開く」「人間のための中道政治を推進する政治勢力を再構築する必要がある」として、自らを「結集軸」とした政権の構築を目指す考えを明らかにしている。

そのための「立正安国」の闘争に、「いよいよの思い」で「まい進」しようというのが原田発言の底意である。

こうした公明党そして創価学会の動きに対して、高市首相を支持するある自民党関係者は、警戒感を示す一方、「もう二度と創価学会・公明党とは組まない」とも発言。場合によっては国税調査や外為法違反、そして暴力団との関係を含む宗教法人(公益法人)の適格性について取り上げる必要があるのではないかと、筆者に語った。

この国の動向と、この国で暮らす多くの人びとの将来を左右する重大な政治的局面に、宗教と社会・政治の事実と真実を追及してきた本誌は終刊を迎えなくてはならない。口惜しい思いだが、創刊以来23年と9カ月にわたって本誌を支えてくださったすべての人々に感謝の意を表して、「閻魔帳」の最終回としたい。

誠にありがとうございました。

 

 

 

乙骨正生(おっこつ・まさお)フリージャーナリスト。1955年生まれ。創価中学・創価大学法学部卒。宗教・政治・社会分野などを取材、週刊誌・月刊誌を中心に執筆。著書に『怪死』(教育資料出版会)『公明党=創価学会の野望』『公明党=創価学会の真実』『司法に断罪された創価学会』(かもがわ出版)など。

Return Top