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2024年1月号特集/支持率急落の自公政権──強気装う「下駄の雪」

1月号目次

閻魔帳

竹入義勝元公明党委員長の死去が示す時間との戦い/乙骨正生

 

特集/支持率急落の自公政権──強気装う「下駄の雪」

 

「落日の岸田政権」に下駄の雪の如くしがみつくばかりの主亡き「公明党=創価学会」/古川利明

虚構の福祉政策を見抜かれ忌避される創価・公明/山田直樹

作家・佐藤優氏が喧伝する、創価学会安泰説のフィクション/山本栄美子

 

トピックス

統一教会問題でまた骨抜き法成立 2世当事者の分断も/藤倉善郎

 

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「日本の議会政治」を考える(第1回)

「議会開設運動」の始まり(1)/平野貞夫

ナニワの虫眼鏡(第55回)

政権と自民党に大ダメージを与えた政治資金パーティー裏金疑惑

改革途中の自民党大阪もさらに衰退か/吉富有治

ヨーロッパ・カルト事情(305)

セクト的逸脱対策国家戦略(2024~2027)発表(1)/広岡裕児

執筆者紹介&バックナンバー紹介 編集後記

 

編集後記から

2024(令和6)年の年明けは、いきなりの大地震と津波、そして羽田空港での航空機事故と、暗雲漂う日本社会に暗い影を落とす天災と事故で幕をあけました。あらためて令和6年能登半島地震と航空機事故で犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害にあわれた方々にお見舞いを申し上げたいと思います。

太平洋プレートとフィリピン海プレートそしてユーラシアプレートに北米プレートと4つのプレートがぶつかりあう場所にある日本列島は、地震と火山の巣の上にあるようなものであり、文字通りの災害列島。阪神・淡路大震災や東日本大震災を引き合いに出すまでもなく、いつどこで大地震や火山の噴火があってもおかしくありません。

政府や地方自治体は、いずれ来るであろう東南海地震や首都直下型地震などの被害想定を発表していますが、私たちは元日早々の能登半島地震を他人事と思わず、十分に災害に備えるとともに心の準備をしておきたいものです。

それにしても、この度の能登半島地震からも日本のインフラ整備の脆弱さや災害対策の貧弱さが浮き彫りになっていますが、電気・ガス・水道の各設備や道路・橋などの老朽化に対処するために、この先いくら金がかかるか分かりません。ところが自公政権は、増税してまでアメリカから武器を購入する軍拡路線をとるとともに、たった半年の開催のために数千億円規模の税金を投入する関西・大阪万博を推進。しかもそれは地盤の脆弱な人工島にカジノという博打場を建設するために高速道路や地下鉄を整備するための呼び水に過ぎず、高速道路や地下鉄の建設には数兆円の税金が投入されることが明らかとなっています。

博打場を作るための万博や、博打場への交通網を整備するために税金を投入する余裕など日本には全くありません。ただちに万博や交通網の建設は中止して、被災地支援やインフラの整備に税金を回すべきでしょう。

しかし「平和」と「福祉」を掲げながら、公明党は軍拡予算に賛成。沖縄では県民の民意を無視して辺野古新基地の建設を推進し、公明党の国土交通大臣は、年末には党創立者が「核も基地もいらない」と述べた沖縄に基地を作るための「代執行」に手を染めました。

宗教的理念も政治的理念も放擲し、政権にしがみつくことで組織の延命と維持を図ろうとする創価学会と公明党。今年も厳しい監視と批判を続ける所存です。

特集/支持率急落の自公政権──強気装う「下駄の雪」

 

「落日の岸田政権」に下駄の雪の如くしがみつくばかりの主亡き「公明党=創価学会」

古川利明

ジャーナリスト

 

「池田の死」に前後して検察が本格捜査に

岸田政権の内閣支持率の下落が止まらない。各紙の世論調査(いずれも昨年12月18日付朝刊)によれば、朝日23%、読売25%、共同22・3%で、毎日に至っては20%を割って16%にまで落ち込んでおり、まさに政権末期の様相を呈している。きっかけは、昨年11月9日に首相の岸田文雄が記者団に対して「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心で取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と話し、「年内解散断念の意向」を明かしたことで、勢いが削がれていたところに、安倍派を始めとする自民党の主要派閥によるパーティー券を巡る裏金捻出疑惑について、東京地検特捜部が政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)の容疑で本格的な捜査に乗り出したからである。

これは朝日新聞(昨年12月1日付朝刊)が1面トップで「パー券不記載、立件視野 ノルマ超過分、議員に還流」の見出しで報じたことから火が点いたが、元々は、しんぶん赤旗・日曜版(22年11月6日号)が「自民党5派閥が政治資金パーティー券について、20万円超購入した大口購入者の名前を収支報告書に記載せず、長年にわたり脱法的な隠蔽を行っていたことが分かった」とスクープしていたものだった。この記事にコメントを寄せていた神戸学院大教授で政治資金オンブズマンの代表も務める上脇博之が、その後、さらに関連資料を精査したところ、安倍派以外にも二階派、茂木派、麻生派、岸田派を加えた5派閥が18~21年分の収支報告書に計4168万円を過少記載していたことを突き止め、刑事告発していたが、中でも安倍派が1952万円と突出していたというのである。

それよりも、安倍晋三が首相時代は、あの森友学園に対するタダ同然の国有地払下げを始めとする同様な不正事案がいくつも刑事告発されながらも、「官邸の守護神」の異名を取っていた黒川弘務(20年5月で東京高検検事長を退任)が、赤レンガこと法務省をがっちりと押さえていたために事件化もされず、揉み消されていたことを思うと、雲泥の差というか、「時代は変わった」と痛感する。今回の派閥裏金の刑事告発についても、初めて報じられたのは、昨年11月2日の読売新聞電子版の有料会員限定記事だったが、しかし、この時点において検察の動きはまだ不透明で、その後、あの岸田の年内解散断念表明を経て、昨年11月18日夜7時のNHKニュースが「独自」として、特捜部が捜査に着手していたことを伝えていたが、実はこの日は、午後2時過ぎに報道各社が「池田大作死去」の第一報を打っていた日でもある。偶然の一致にしてはあまりにもデキ過ぎているのだが、歴史をひも解くと、薩長藩閥政治の象徴だった明治天皇が死去し、元号が大正へと替わると、重しが取れたかのように国民の間には新時代到来の期待が高まり、こうした世論を背景に、当時の検察がイギリスからの軍艦購入を巡るシーメンス事件の汚職摘発に乗り出し、海軍高官らが起訴されたことで、海軍大将だった山本権兵衛を首班とする内閣が総辞職に追い込まれている。特に法務検察というのは政権中枢のパワーバランスに対して極めて敏感で、要は「水に落ちた犬は叩け」が彼らの行動原理なのだが、今回の一連の流れにおいて、あの明治天皇の死に「池田大作のそれ」を準(なぞら)えるのは、筆者の穿ち過ぎだろうか。

 

骨抜きにされた統一教会の「被害者救済法」

そこで、「宗教法人とカネ」の問題だが、統一教会解散命令請求を機に、教団側が「財産隠し」に走ることが懸念されたことから、これを阻止すべく「財産保全」のための献金被害者救済法案の審議が、先の臨時国会で行われた。しかし、結論から先に言うと、本誌(昨年11月号)の拙稿で指摘していた通り、「信教の自由」を盾にその「非課税特権」以下の既得権を死守せんとする信濃町の意向を最大限に酌んで、完全に骨抜きにされたものが、何と、れいわとみんな(旧・N国)を除くほぼ全会一致の賛成で成立している。

具体的に動き出したのは、昨年11月下旬に入ってからで、自民、公明に国民も加わった3党による特例法案が11月21日に衆院に提出されると、立民と維新は別々に提出していた法案を急遽取り下げて、一本化した新たな法案を共同で再提出した。ちなみに、この自公案とは、解散命令を裁判所に請求された宗教法人が不動産を処分する際、1カ月前までに所轄庁への通知を義務付け、通知がない場合はこれを無効とするほか、通常は1年ごとの提出が求められている財産目録などの財務書類の提出を3カ月ごとに短縮させたうえで、財産の隠匿や散逸の恐れがある場合は、被害者による閲覧も可能とした。また、教団側の財産保全に向けた司法手続きを支援するため、弁護士費用の負担なども盛り込んだが、統一教会の被害者らが求めていたのは、飽くまで「財産保全を可能にする新法」である。日弁連によれば、22年9月~23年2月の間だけでも、教団に関する相談が550件寄せられ、うち、422件が財産に関するもので、被害金額が1千万円以上のものがその4割を占め、「1億円以上」が26件もあり、このように献金被害は決して過去のものではない。

一方、野党側だが、立維案とは言うものの、実質的には立民が提出していた「解散命令請求が出された宗教法人(=統一教会)には、文科相の請求により財産の保全処分が命令できる」とした2年間の時限立法を維新が丸飲みしたものである。元々の維新案では「これ」を「恒久的にすべての宗教法人を対象とする」としており、ある意味、「常勝関西」を掲げる池田大作を創立者とする公明党(=創価学会)と、次の衆院選で維新は全面対決を控えていることから、要するに信濃町を標的とした最もラディカルな内容だったが、折からの25年開催の大阪万博の建設費高騰問題の直撃を受けたことで、一挙に弱気モードに転んだ結果と見て取れる。ところが、採決では、東京新聞(昨年11月22日付朝刊)の取材に応じた統一教会の元2世信者が「バケツの穴が空いたような法案」と斬り捨てていたこの自公案に、その立維だけでなく、ここのところ、党勢退潮の著しい共産や社民も「救済に後ろ向きとみられかねない」と賛成したのである。

 

政権与党にしがみつく「欺瞞の極み」の信濃町

話を戻して、検察の捜査が迫ってきたことを受けて、臨時国会が閉会した翌日に、岸田は早速、パー券の過少記載により1千万円超の裏金捻出が報道された安倍派に所属する官房長官の松野博一、経産相の西村康稔ら4閣僚に加え、副大臣の5人全員も更迭する安倍派一掃の人事を断行するとともに、党側でも同派の政調会長の萩生田光一、参院幹事長の世耕弘成、国対委員長の高木毅が辞表を出したことで、政権中枢から安倍派議員がスッポリと消える事態に陥っている。そこで、公明党(=創価学会)だが、「またか」ではあるのだが、こっちも早速、激しく羽をバタつかせるコウモリ飛行をおっ始めており、創立者である亡き池田大作がブチ上げた「平和の党」「福祉の党」「大衆の党」のスローガンと合わせ一本で、あの「クリーンと言えば公明党」の謳い文句から、公明新聞(昨年12月12日付)の1面トップには「自民党派閥資金を巡る問題 政治改革の徹底が必要 信頼回復へ『規正法』見直しも 山口代表、西田参院会長が力説」との見出しが踊っている。ところが、「これ」と同時並行で野党が衆院に提出した官房長官の松野に対する不信任決議案には「松野氏は官房長官としての役割を十分に果たしており、(提出理由が)個人の政治資金の問題であるので、官房長官としての立場の不信任には相当しない」として、公明党は自民党ともに反対して否決しており、既にマンガの域に入っている。

折しも、公明新聞(昨年12月3日付)では「党創立者と公明党」のテーマで元外務省主任分析官で作家の佐藤優へのインタビューを載せ、「池田氏の逝去を受け、公明党の支持母体である創価学会が退潮するとの報道が目に付くが、私は全くそうは思わない。なぜなら、池田氏は将来への基盤を完璧に整えてきたからだ」としたうえで、「何の根拠もないマスメディアの報道や誹謗中傷に対しては、公明党もしっかり言論戦で打ち返していくべきだ」と喋らせていたのだが、開いた口が塞がらない。確かに「今すぐに退潮する」ことはないが、中長期的に見た場合、“生き仏”としてのカリスマ性を持っていた池田の死が、組織に与えるダメージは決して小さくはない。むしろ、根拠を示さずにひたすら信濃町に阿諛追従を繰り返しているだけの佐藤こそ、言論戦で打ち返さなければならないのだが、御存知の通り、出版業界では超売れっ子ゆえに、完全にその存在がタブーと化しているため、佐藤が何を言ったところで、どこからも誰からも批判されないという異様な状況が、今なお続いている。

昨今の物価高騰のあおりで庶民は辛酸を舐めさせられているが、そんなものどこ吹く風とばかり、相変わらずの聖域扱いとなっている、今年度から5年間で総額43兆円、新年度予算案で過去最高の7・9兆円を計上した防衛費だが、円安や資材高の影響などで、さらに「少なくとも8千億円」膨張する恐れが出てきている。昨年10月の日米防衛相会談では、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の調達を1年前倒しして25年度にすることを決めたが、「では、『それ』を何発、日本は購入させられ、全部でいくらかかるのか」については、「具体的な数量を明かすと、敵に手の内を明かすことになるため、軍事機密である」ということをヌケヌケと言う有様である。そもそも、国家予算の総枠は限られているため、防衛費にたんまりと回せば、その分、医療や介護、年金といった社会保障費が削られることなど、そのへんの子供でも分かる話であって、「これ」を政権与党にしがみついて推進させるばかりの「公明党=創価学会」の欺瞞の極みを、我々心あるジャーナリズムは今年も引き続き、敢然とブッた斬っていく必要がある。(文中・敬称略)

 

古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』最新刊『「自民党“公明派”」20年目の大失敗』(いずれも第三書館刊)『核と原発 ヒロシマ・ナガサキ、ビキニ、そしてフクシマを繋ぐ悲劇の誕生』(アメージング出版)など著書多数。

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

  • 竹入義勝元公明党委員長死去

――沈黙する創価・公明

・12月26日付『朝日新聞デジタル』「竹入義勝・元公明党委員長が死去 訪中積み重ね日中国交正常化に貢献」

「20年間にわたって公明党委員長を務めた元衆院議員の竹入義勝さんが23日、肺炎のため福岡市内の病院で死去した。97歳だった。葬儀は近親者で行った。喪主は長男正彦さん。

国鉄職員から東京都文京区議、都議を経て、公明党が衆院に初進出した1967年1月の総選挙で当選。同年2月、41歳の若さで3代目の委員長になった。連続8回当選し86年12月の党大会で委員長を辞めるまで、矢野絢也書記長とのコンビで公明党の一時代を築いた。

この間、反自民の『中道革新路線』を掲げ、社会、民社両党との連合政権を目指す一方で、自民党首脳とも深い関係を築き、影響力を強めた。84年には『田中(角栄元首相)支配の打破』を合言葉に、鈴木善幸元首相や民社党首脳と連携して二階堂進自民党副総裁を総裁に担ぎ出そうとした『二階堂擁立劇』に参画。失敗したが、田中支配にひびが入るきっかけとなった。

また、69年に表面化した創価学会・公明党による『言論・出版妨害問題』で、党と学会の一体性が批判されて以降、『政教分離』体制の確立に力を注いだ。訪中の積み重ねを通して得た中国要人とのパイプを生かし、田中内閣の日中国交正常化にも貢献した。

98年、朝日新聞に連載された回顧録で『公明党は財政、組織の上で創価学会に従属していた』と指摘。これに対し、党・学会側が大がかりな批判キャンペーンを展開し、党人としての評価は『功労者』から百八十度転換していた」

・12月27日付『読売新聞オンライン』「死去の竹入義勝・元公明党委員長、日中国交正常化に足跡…引退後は党・創価学会と関係断つ」

「23日に死去した元公明党委員長の竹入義勝氏は、1972年の日中国交正常化に決定的な役割を果たした。

竹入氏が訪中したのは72年7月。周恩来首相(当時)との会談に臨み、日米安全保障条約の容認や対日賠償請求権の放棄など8項目でつくる日中共同声明の案を引き出した。

田中角栄首相(当時)は9月に訪中して日中共同声明に調印し、『恒久的な平和友好関係』の確立に合意した。竹入氏が地ならししたことが国交正常化に大きく影響したとされている。

党の勢力拡大期のかじ取りを担い、公明党と創価学会との『政教分離』にも直面した。69年には、創価学会を批判する書籍の出版を差し止めようとした『言論出版妨害事件』で、田中氏に仲介を依頼した。

政界引退後は公明党や創価学会との関係を断った。98年に朝日新聞に連載された回顧録で、『公明党は、財政、組織の上で創価学会に従属していた』などと発言し、公明や創価学会から激しい批判を受けた」

・12月26日付『毎日新聞』「竹入義勝・元公明党委員長が死去97歳 創成期に20年在任」

「公明党の創成期に約20年にわたり党委員長を務め、党勢を拡大させた竹入義勝さんが23日、肺炎のため死去した。97歳。葬儀は近親者で営んだ。喪主は長男正彦さん。

1926年生まれ。長野県出身。旧国鉄勤務の後、東京都文京区議、都議を経て、64年の公明党結党とともに副書記長に就任。同党が衆院に進出した67年1月の衆院選で初当選し、8期務めた。

67年2月、第3代委員長に就任し、矢野絢也書記長とともに約20年にわたる『竹入・矢野体制』を確立。公明党を中道政党の中核として定着させ、政界を保守・革新の2極から、保守・中道・革新の3極に変える原動力となった。

79年に民社党の佐々木良作委員長と公民連合政権構想で合意。翌80年には社会党の飛鳥田一雄委員長と社公連合政権構想を確認し、『社公民路線』を取った。83年衆院選で公明党が58議席を獲得すると、翌84年の自民党総裁選で二階堂進副総裁の擁立を模索する動きに佐々木氏とともに参画するなど『自公民路線』も追求した。

72年の日中国交正常化では、十数回にわたる訪中で周恩来首相と会談するなど、国交正常化に向けた環境整備に貢献した。86年に委員長を辞任し、90年に政界を引退した。後に公明党・創価学会と対立し、除名された」

 

※竹入義勝元公明党委員長の訃報を、各種のマスコミ媒体がそれぞれの視点に基づいて報じている。力点の置き方に相違はあるものの、いずれも竹入氏が日中国交正常化交渉に尽力したことや、創価学会との政教分離で苦心したこと、あるいは政界での保守・中道・革新の三極構造の確立や「社公民路線」や「自公民路線」などの構築に尽力した事実などに触れ、晩年は創価学会・公明党と対立した事実などを報じている。

これに対して公明党や創価学会は、機関紙「公明新聞」や「聖教新聞」で竹入氏の死去を報じることはなく沈黙を守っている。

かつて創価学会・公明党は竹入氏に悪罵の限りを尽くした。その発端は、98年に竹入氏が朝日新聞に連載した「秘話 55年体制のはざまで」という手記で、創価学会・公明党の支配・被支配の政教一体関係に言及したことだった。「畜生以下の不知恩・忘恩の輩」「学歴詐称男」「宝石漁り」「銭ゲバ」「傲慢」「阿保」などと竹入氏本人に対する口汚い誹謗中傷にとどまらず、その矛先は夫人や子息さらには親族の名誉や人権まで否定する熾烈なものだった。

あげく公明党は竹入氏を党の資金を横領着服したとして提訴。しかし東京地裁は2008年3月に公明党の主張を「疑問」「不自然」と退け、竹入氏勝訴の判決を下した。この後、裁判は相互批判を控えることで和解となったが、公明党そして創価学会が竹入氏の死去に言及しないのはこの和解の縛りがあるからだろう。功労者を悼むことのない政党に、人の心や弱者の痛みを理解した政治を実現すことなどできないのは、自明の理である。

 

  • 書店業組合への説明会から垣間見える

創価学会の社会的影響力の一断面

・12月21日付『新文化』「聖教新聞社『創価学会教学要綱』好調」「池田大作名誉会長が監修」「学会の独自性、教義を解説 鳳書院、第三文明社、潮出版社合同で説明会」

「聖教新聞社は12月14日、東京・新宿区の世界聖教会館で書店説明会を開催。同社、潮出版社、第三文明社、鳳書院の企画を紹介した。なかでも、創価学会の創立記念日である11月18日、池田大作名誉会長の訃報(逝去日は同15日)と同日に発刊した『創価学会教学要綱』(税込2800円、聖教新聞社)を強くアピールした。

聖教新聞社の萩本直樹代表理事は、池田名誉会長の逝去の発表が創価学会の創立記念日であったと話し、『この日は、「創価教育学体系」第1巻の発刊日。その奥付には、昭和5年11月15日印刷、11月18日発行、著作者・牧口常三郎、発行兼印刷者・戸田城外(後の戸田城聖)とある。池田名誉会長は、初代・二代会長の師弟の魂の結晶ともいえる同書が誕生した意義ある日に、尊いご生涯を終えられたと、感慨深い思いでいっぱいだ』と胸中を述べた。

また萩本代表理事は、『新・人間革命 第1巻』のあとがきで、池田名誉会長が『命の続く限り、私は書き続ける』と綴ったことを伝え、逝去日である11月15日にも、『随筆「人間革命」光あれ』で『人材の城を 平和の園を!』を発表したとし、『まさに命を賭しての執筆活動だった』と振り返った。

今年11月18日に刊行した『創価学会教学要綱』は、池田名誉会長が監修。今年で10周年を迎えた広宣流布大誓堂(東京・新宿区)の完成以来、創価学会会則の条項改正、『勤行要典』や会憲、社会憲章の制定、『日蓮大聖人御書全集新版』の刊行(2021年)など、世界教団としての歩みを進めた創価学会の宗教的独自性を示し、学会の教義を客観的に説明したもの。増刷もかかり好調という。

日本書店商業組合連合会の八幡秀次会長(真光書店)は、池田名誉会長の逝去に弔意を表し、創価学会の原田稔会長が24年を『世界青年学会開幕の年』と位置づけたことについて、『前向きな発信に、我々書店業界は厳しいなか勇気づけられた』と述べた」

 

※出版業界の専門紙である『新文化』の昨年12月21日号が、12月14日に創価学会の出版部門である聖教新聞社と、外郭出版社と位置づけられている鳳書院・第三文明社・潮出版社が合同で開催した書店説明会の模様を報じている。

それによると説明会では、聖教新聞社の萩本代表理事が昨年11月15日に死去した池田大作名誉会長の死去日が、創価学会の名称の由来となった初代会長・牧口常三郎著『創価教育学体系』の発行日と重なっているなどとしてその意義を強調。死去直前まで池田氏が執筆に勤しんでいたかのようにアピールしていることが分かる。

これに対して創価学会系出版物の売買による利益の恩恵に与っている書店組合側は、池田氏の死去に弔意を表すとともに、創価学会に迎合・忖度する姿勢を見せており、両者の関係性を窺うことが可能だ。

創価学会が巨大なマンパワーが生み出す金と票を武器に、政界・経済界・マスコミ界をはじめとする各界に多大な影響力を及ぼしていることは本誌既報の通りだが、書店業組合への説明会という一事例の内容からもその構図の一端を垣間見ることができる。

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