12月号目次
閻魔帳
国民から乖離した国会議員の先生たち/段 勲
特集/問われるカルト対策──統一教会から創価学会へ
インタビュー/長井秀和氏に聞く
創価学会は昭和にはびこった日本社会の宿痾 スラップ訴訟(言論封殺)はセクト(カルト)の証明
高額献金規制法案をめぐる混乱と綱引き/藤倉善郎
「カルトとしての統一教会」から飛んで来た火の粉に苦渋する「公明党=創価学会」/古川利明
カルト対策を歪める専門家の不見識/広岡裕児
- 連載
信濃町探偵団──創価学会最新動向
「公明党と創価学会」を考える(第38回)
「平成の政治改革」と公明党・創価学会(7)/平野貞夫
ナニワの虫眼鏡(第42回)
根絶したはずの天下りが復活か!? 詭弁で実態を隠す大阪府に唖然/吉富有治
執筆者紹介&バックナンバー一覧 編集後記
編集後記から
「間違いないっ!」でブレークした長井秀和氏。創価学会二世の家庭に生まれ、創価小から創価大まで創価一貫教育を受けた長井氏が、創価学会を脱会した動機は、虚飾と虚偽にまみれた池田大作氏と創価学会の実態に幻滅したからだそうです。
現在、長井氏は年末実施の西東京市議選に立候補するため市内で積極的に街宣活動を行うとともに、SNS上でも自分が見た池田氏や創価学会の実態を告発する情報発信を続けています。これに対して創価学会は、長井氏のインタビューやコメントを掲載した『週刊新潮』と併せて、長井氏に「抗議書」を送り、名誉棄損訴訟を提起する構えを見せています。
長井氏の言論を封じるためのスラップ訴訟と言えましょう。詳しくは特集記事を。
統一教会被害者を救済するための新法を岸田自公政権が国会に提出しましたが、この「政府案」は、「世界平和統一家庭連合による加害行為の実態に即していないため、その被害救済のためにはほとんど役に立たないものとなっている」と、長年、統一教会被害と向き合ってきた全国霊感商法対策弁護士連絡会は批判。「政府案」が「配慮義務」とした「自由な意思を抑圧した勧誘の禁止」を「禁止規定」とするべきだと主張しています。
ところが創価学会はこの「政府案」を高く評価。「旧統一教会を巡る問題 被害者救済に全力尽くす公明」(11月21日付『聖教新聞』)などと持ち上げているのですから、何をかいわんや。小誌は10月号以来、フランスのセクト対策を批判し、事実を歪曲してフランスSGIの正当性を強調する創価学会の欺瞞性を指摘していますが、統一教会被害救済新法を巡る公明党そして創価学会の動静からも、両者の欺瞞的体質が窺えます。
その公明党がウクライナ戦争や台湾有事論を背景に防衛費の増額を図り、敵基地攻撃能力を獲得しようと企図する岸田政権にゴーサインを出しました。公明党創立者の池田大作創価学会名誉会長は、2013年のSGI提言で世界の軍事費を2030年までには半減せよと叫んでいました。もし公明党が「平和の党」「生活者の党」であるというなら、むしろ軍事費を削って困っている庶民の生活費に回すための政策立案を行うべきですし、創価学会もそう公明党に要望すべきでは。
それができないのは、被害者救済新法を事実上、骨抜きにしてもらうためだとすれば、宗教団体と政党の異常な関係を是正する必要性を痛感せざるを得ません。
小誌は今後も宗教と社会・宗教と政治の事実と真実を追究し続けます。
特集/問われるカルト対策──統一教会から創価学会へ
インタビュー/長井秀和氏に聞く
創価学会は昭和にはびこった日本社会の宿痾 スラップ訴訟(言論封殺)はセクト(カルト)の証明
スラップ訴訟ちらつかせる創価学会
11月22日、文化庁が初めて宗教法人の解散請求を視野に入れた質問権を、世界平和統一家庭合(以下・統一教会)に対して行使。またこれに先立つ11月18日に岸田自公政権は、統一教会による霊感商法や高額献金などによる被害者救済等に関する政府案を閣議決定した。しかし多年にわたって統一教会被害と向き合い、被害者救済に従事してきた全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、11月21日、被害救済に関する「政府案は、世界平和統一家庭連合による加害行為の実態に即していないため、その被害救済にはほとんど役に立たない」との声明を発表。その後も献金について悪質な誘導行為の「禁止」を求める野党提出法案に対して、数で勝る自民・公明の与党側は、禁止ではなく「配慮義務」とする骨抜き法案を提示するなど、統一教会被害者やカルト二世を救済する有効な施策が実現・実行されるかどうかは、まだまだ予断を許さぬ状況が続いている。
この被害者救済法案の骨抜きに公明党が腐心していることからも分かるように、日本の政治と宗教の歪んだ関係の是正や、カルト対策が遅々として進まない背景に、創価学会・公明党の存在があることは本誌既報の通り。そして統一教会に関するマスコミ報道に「空白の30年」(有田芳生前参議院議員・ジャーナリスト)があるとの指摘同様、創価学会報道についても、自公連立政権発足以来、名誉棄損の損害賠償の高額化や、広告費・機関紙誌の印刷費など、アメとムチを駆使した創価学会のマスコミ工作の結果、マス・メディアにおける創価学会報道は激減。政治と宗教の癒着やカルト被害は等閑視される状況が続いていた。
だが、安倍襲撃事件を契機とした統一教会問題の露顕によって、国民一般の間にも政治と宗教の歪んだ関係の是正やカルト対策の必要性が再認識され、阻害要因としての創価学会の存在に関心が集まっている。
その結果、SNSや雑誌媒体では創価学会報道が再び活発化、『週刊新潮』や『週刊文春』『女性セブン』などが相次いで創価学会問題を特集するなどしている。このうち『週刊新潮』11月24日号では、「『高額献金』規制すべきは『統一教会』だけでいいのか 元信者の私が言うから『間違いないっ!』 『長井秀和』が明かす 『創価学会』と『政治』『献金』『二世』」とのタイトルで、創価小・中・高・大出身で、創価学会芸術部でも活躍した長井秀和氏のインタビュー記事を掲載。『週刊文春』も12月1日号で「統一教会新法を骨抜きにした 創価学会のカネと権力 二世たちの告発」を掲載。ここにも長井氏のコメントや、正木正明前創価学会理事長の子息・正木伸城氏のコメントが載っている。
これに対して創価学会は、長井氏と『週刊新潮』『週刊文春』に抗議書を送り、謝罪訂正に応じない場合は法的措置を取ると、いわゆる“スラップ(恫喝)訴訟”をちらつかせてきた。だが抗議書を受けた『週刊新潮』と『週刊文春』はともに12月8日号で、「『創価学会』と『統一教会』映し鏡 『長井秀和』が教団からの抗議文に徹底反論」(『週刊新潮』)、「創価学会が恐れるオウム以来の危機 ▽批判に『欲ボケ』『ペテン師』長井秀和に法的措置も ▽統一教会新法骨抜き 自民幹部『自公連立でいいのか』」(『週刊文春』)と追及の手を緩めてはいない。
そこで本誌は「学会二世」の苦悩や創価学会の実情を告発、創価学会のスラップ訴訟の対象と目されている長井秀和氏にあらためてお話を伺った。
(聞き手・構成 本誌編集発行人 乙骨正生)
家族・親子関係の破壊を厭わない体質
――『週刊新潮』11月24日号や『週刊文春』12月1日号で、「学会二世」としての自らの創価学会体験や、見聞した創価学会の実情を赤裸々に語られていますが、雑誌媒体に登場して創価学会批判を行うには、相当の覚悟があったのでは。
長井 いや、すでに自分のブログやツイッターなどSNS上において創価学会問題を取り上げ、創価学会に批判的な話ばかりではなく池田大作名誉会長についても、その実像や虚像に言及していましたから、特段、覚悟はいりませんでした。
もともと私は芸人としてテレビなどで活躍していた当時、創価学会芸術部などからの依頼で、公明党の選挙支援や、創価学会への入会を勧誘するプロパガンダに寄与した責任がありますから、創価学会の反社会性や問題点に気付いた後は、その責任をとるという意味からも、創価学会に関する意見や認識を公表する必要があると思っていました。
――長井さんの告発に創価学会は危機感を抱き、長井さん本人と、長井さんのインタビューとコメントを掲載した『週刊新潮』『週刊文春』に「抗議書」を送付。7日以内に謝罪訂正しなければ法的措置を取ると、いわゆる「スラップ(威圧)訴訟」を提起する構えを見せています。
長井 乙骨さんが創価学会との間で数多くの訴訟を戦い、勝訴していることを聞いていましたが、なるほどこういう手を使ってくるんだなということを実感しています。フランスのセクト(カルト)対策において、セクトの要件とされる10の指標の一つに「裁判沙汰の多さ」というものがありますが、今回の私や『新潮』『文春』に対する提訴の動きからも、創価学会は自らセクトの指標に合致していることを証明している、と見ることが可能です。
――私が創価学会と裁判闘争を繰り広げている時分には、まだ「スラップ訴訟」という言葉もありませんでしたが、いまでは大企業など金銭的余裕のあるものが、名誉棄損に名を借りて批判的言論を封じようとするこの手の訴訟は「スラップ訴訟」だと広く認識されるようになってきました。それだけに長井さんが自身のツイッターに「創価学会から抗議書が届きました。先の週刊新潮の記事内容に関しての抗議です。……訴権の濫用の始まりになりそうです。カルトの要件を十分に満たしている事を創価学会自ら証明しそうですね」とアップしたところ、すでに6万件以上の「いいね」がついています。
「スラップ訴訟」で長井さんの口を封じようとの創価学会の意図は明らかですが、長井さんの口を封じるどころか、なんだやっぱり創価学会はセクトじゃないかと、藪蛇になる可能性は大きいですね。創価学会お得意の宗教的フレーズでいえば「還着於本人(げんじゃくおほんにん)(注・「法華経普門品」による仏語。本人の身に帰り着くこと。他にさし向けたものが逆に自分に帰ってくること―コトバンク)ということでしょうか。
長井 すでに12月8日号『週刊新潮』が、「スラップ訴訟」を視野に入れた抗議書を出した創価学会について、創価学会と統一教会は「映し鏡」との私の反論記事を掲載しましたが、無反省で相手を一方的に誹謗中傷する独善排他的な創価学会の体質は、統一教会とよく似ていると感じています。
――抗議書を送るにあたって創価学会は、長井さんの母親に接触して長井さんの言説を否定する発言を引き出したようですが、統一教会問題でも、統一教会の被害を訴えた二世の小川さゆりさんが、外国特派員協会で記者会見している時、統一教会が小川さんの両親の署名入りのファックスを特派員協会に送り付け、そこに「彼女は精神異常をきたしており、安倍元首相の銃撃事件以降その症状がヒドくなって多くの嘘を言ってしまう。そのためこの会見を中止するように」と、教団擁護のために娘を非難する一文があったことを思いだしました。教団を守るために家族の分断も親子の断絶も厭わない、そんな体質も両者には通底していますね。
長井 母はいまでも熱心な学会員ですから。創価学会から言われればその指示に従うと思います。一家和楽などと言いながら親子関係の断絶や家庭の崩壊を助長することを異常だと思わない。人より教団が大事なんですね。
池田発言のメモを注意した氷川きよし
――『週刊新潮』記事に詳述されていますが、一家はそろって学会員。長井さんは学会二世として生まれ、創価一貫教育を受けたんですね。
長井 その通りです。父親が東京都武蔵村山市で聖教新聞の販売店の店主をしていたことから、自宅は地域の拠点として朝から晩まで創価学会の活動に使われるという、まさに「宗教ハウス」という環境の下で育ちました。
その後、父は公明党の武蔵村山市議となるなど、一家そろって熱心な学会員であったことから、私も創価小学校の開校と同時に一期生として三年生に編入学。以後、乙骨さんの後輩になりますが創価中学へと進学。さらに創価高校・創価大学に進みました。
――長井さんは創価小の一期生、私も創価中の一期生。そして創価大の同窓ということですが、当然、創価学園・創価大学の創立者である池田大作氏とは何度も会われている。
長井 はい。記憶をたどると創価小・中時代だけでも60回くらいは会っていると思います。子供心に見た池田さんは、しょっちゅうアイスクリームや小遣いをくれる人のいいオッちゃんという印象なのですが、学園の教師や組織の幹部は、池田さんを「偉大な世界の指導者」「偉大な宗教指導者」と強調し、いわば刷り込みを図っていましたから、そういうものかと信じていました。
ところが創価高・創価大と進み、自覚的に池田さんの著作物と向き合うようになると、大きな矛盾に突き当たりました。というのも池田さんの著作物には実に高邁かつ高尚なことが書かれています。しかし私が見た人間・池田大作というか、生身の池田さんからは、そんな高邁な「知性」の香りなど全く感じられなかったからです。いったい高邁な池田像と、生身の池田さんとどちらが本当なのか、いまから思えば高邁な池田像など作り上げられたカリスマの虚像なのですが、当時は、その虚像と実像のはざまで葛藤しました。
それでも親の期待などもあって、創価学園・創価大学と進んだ私は、周囲の友人らがそうであるように、池田先生の弟子として広宣流布のためにお役に立つ人材になろうなどと、疑問を封印していました。大学卒業後はお笑いの道に進み、10年ほどの下積みを経て2003年にテレビに出るようになりブレークしたところ、創価学会の芸術部から声がかかるようになりました。
――創価学会の芸術部には、久本雅美・岸本加代子・山本リンダ・柴田理恵など創価学会のためにそれこそ“粉骨砕身”しているメンバーもいますが、長井さんは創価学園・創価大学出身で初めてブレークした芸人ということで、池田さんも喜んでいるとして特別扱いだったとか。
長井 そうなんです。ですから普通、芸術部所属のタレントが公明党支援活動や布教セミナーなどに出る場合、半年ほど研修を受けさせられるんですが、私の場合はパスでした。本部幹部会に呼ばれ、壇上に上げられて池田さんから直接、激励を受ける機会もありました。
そうそう本部幹部会といえばこんなことがありました。芸術部所属のタレントには、久本さんや岸本さんらのように学会員であることをカミングアウトしている方と、事務所などの都合で学会員であることを隠している人がいます。ある時、本部幹部会に呼ばれたので会場に行くと、氷川きよし君と滝沢秀明君がいて、私と三人が並んでスポットライトを浴びました。私はカミングアウトしており、映像を使われるのもOKでしたが、氷川君と滝沢君はNG。したがって本部幹部会の再聴映像には二人は映っていません。その日は、滝沢君がNHK大河ドラマの義経の主役を演じるということで壇上に上げられ、池田さんがしきりに『義経、義経』と滝沢君を褒めていましたが、氷川くんや私にも言及しました。地元の学会組織に帰った時に、その時の池田さんの話などを皆さんにお伝えしなくてはなりませんから、私は池田さんの話をメモしていたんです。すると氷川君が、「なにやってるんですか。池田先生の話をメモしてはいけないといわれたでしょう」と強い口調で注意してきたんです。たしかに本部幹部会の始まる前に、メモは禁止といわれていたんですが、池田さんの話は滑舌が悪くて聞き取りにくいし、忘れちゃいけないのでメモしていたんです。創価学会の指示に忠実な氷川君はなんて真面目な学会員なんだろうと思いました。
――02年1月の創価学会の内部文書に、氷川きよしが初めて紅白歌合戦に出場した際、学会本部に挨拶にいき「普通の人が、一気に有名になってビックリしています。だからしっかりお題目をあげて頑張ります」と語ったところ、池田さんから「あわてて学会宣言する必要はないよ」との伝言があったとの記載があります。池田さんも氷川きよしに目をかけていたんでしょう。
長井 やはり人気歌手。それも婦人層に絶大な人気を誇るスターですからね。あわててカミングアウトさせたら離れるファンもいるでしょうから。
虚像を守るために政治を悪用
――長井さんもそうしたタレントの一人だったわけですが、しかし芸術部から依頼されて行った公明党の支援活動の際に体験した一つのエピソードが、長井さんの脱会につながる転機になったとか。
長井 忘れもしません。2007年の参院選の応援に埼玉県を訪れていた時に、車に同乗していた池田さんに近い幹部が、終始、池田さんの悪口を言っていたのです。言うことがコロコロ変わるとか、傲岸不遜だとか、もう言いたい放題でした。その発言を聞いて、ああ、やっぱり自分が見ていた池田さんの姿こそ実像なんだと思い、事実を知るために池田さんや創価学会について書かれた書籍や資料を読み漁りました。すると創価学会が言っていたことはウソばかりだったということが分かり、それまでも全面的に信じていたわけではありませんが、不信が決定的になり最終的に12年に脱会しました。
――創価大学3年時に私が脱会するきっかけとなったのも、創価中学在学中に感じた人間池田大作と、カリスマ池田大作に関する疑念でしたから、その気持ちはよく分かります。多くの脱会ないしは造反した創価学会の元大幹部や公明党の元国会議員らに話を聞くと、皆さん同じような認識を持っています。だから生身の池田さんと直接的に接した人々の間では、池田カリスマは虚像であるというのが共通認識となっている。長井さんに池田さんの悪口を言った幹部もその一人であり、大半の本部職員や幹部は、飯のタネだから黙っているだけなんです。
長井 本当ですね。だいたい「創価学会の精神の正史」などと称する『人間革命』『新・人間革命』が、代作なんですからね。小説と銘打っているからいいというのでしょうが、改竄・偽造した歴史を「精神の正史」などと言って刷り込み、正当化しているのですから呆れるしかありません。池田さんは2010年以降、健康状態の悪化が取りざたされ全く大衆の前に姿を見せていないにもかかわらず、「お元気」などと主張しているんですから、これほど不誠実かつ不正直な宗教団体もないでしょう。
そんな虚像とマンパワーが生み出す莫大な利権を生む創価学会という組織を守るために政治権力を悪用している。私はこの点が大問題だと思っています。
創価学会問題は市民生活に直結
――矢野絢也元公明党委員長は、国税庁の創価学会に対する税務調査妨害の実態を赤裸々に綴った著書『乱脈経理』の中で、最大の問題は創価学会の経理と池田さんの私的流用という公私混同に調査を及ぼさないようにすることだったと書いています。要するに池田さんを守るために公明党が政治権力を使い、財務調査を骨抜きにした。そしてこの税務調査に対する恐れが、自公連立政権成立の大きな要因だったと指摘しています。創価学会は宗教法人として、公益性を根拠に税制上の優遇措置を受けていますが、会長・理事長・副理事長(現会長)をはじめとする最高幹部が名誉棄損の不法行為者として“断罪”されている創価学会の公益性、宗教法人の適格性には大いに疑問があります。
いま統一教会の問題がクローズアップされ、宗教法人の解散や高額献金などからの被害救済、カルト対策などが問題となっていますが、長井さんはこうした点も含めて世間に問題提起、情報発信を続けている。長井さんは年末の12月25日投開票で行われる西東京市議選に立候補するとのことですが、駅頭での街頭演説でも、こうした政治と宗教の問題やカルト対策を訴えておられますね。
長井 もともと西東京市議選への立候補を考えたのは、市民不在の政治・行政を変えたいと思ったからです。田無市と保谷市が合併した西東京市は、私の生まれ故郷であり、居住地でもあります。しかし田無・保谷と別々の自治体だったことの弊害がいまも続いており、市民は不便をかこっている。これを解消しようと思ったのが市議選出馬の直接的動機でした。
1年半前からほぼ毎日、西東京市内の西武線沿線の5つの駅で辻立ちをしていますが、公明党の議員が街宣している姿を見たことがありません。また私は障害者のボランティア活動を行っていますが、福祉を標榜する公明党の議員が関わることもありません。彼らは「生活者の声を聞く」とか「小さな声を聞く力」などと言っていますが、いったい何をしているんだという感じです。そうしたところへ統一教会の問題が起こりましたので、いまでは政治と宗教の歪んだ関係の是正や、カルト対策の必要性を広く訴えています。
創価学会・公明党問題やカルト問題というと、一般の市民・有権者は、なにか怖くて自分とは関係ないことと思われるかもしれませんが、税務調査妨害をした宗教法人が税金を免除してもらっていることのおかしさ。例えば創価学会は大阪で太閤園という施設を500億円ともいわれる高額な値段で購入し、池田さんを顕彰する大講堂を建設するということですが、創価学会の太閤園の買収によってそれまで発生していた固定資産税や事業所得税は消えてしまい自治体の税収は減るわけです。
税収減は市民の生活に直結します。そういう観点からもこの創価学会・公明党問題に関心をもってもらい、市民の審判を受けたいと思います。
――創価学会の勢力は着実に衰退しており、「広宣流布のバロメーター」である国政選挙の比例区票の推移を見ても、05年の衆院選の898万票から今年7月の参院選の618万票と約300万票も後退しています。創価学会は莫大な利権を生み出す組織の維持と延命に必死であり、それが統一教会問題の自らへの波及を恐れる所以でもあります。しかし、繰り返しになりますが日本の政治と宗教の歪んだ関係の是正と、カルト対策を実行するには創価学会問題に切り込むしかありません。少なくとも宗教法人の適格性と税制上の優遇措置の問題を俎上に上げて議論すべきでしょう。
長井 私は、カリスマの虚像を守るために政治的影響力を拡大し、先ほどの税務調査妨害をはじめ言論出版妨害事件や宮本共産党委員長宅盗聴事件、各種の違法行為や不法行為、反社会的行為を行ってきた創価学会の存在は、昭和の日本社会にはびこった大きな宿痾だったと思っています。それがいま衰退を始め、先ほど指摘したように池田さんが12年も大衆の前に姿を見せられずにいる。来年95歳の池田さんは、いずれ物理的終焉を迎えられるでしょうが、その時「昭和」の一断面が終わるのかなとも考えています。
――西東京市議選の結果を楽しみにしています。ありがとうございました。
長井秀和(ながい・ひでかず)1970年生まれ。創価小学校、創価中学校、創価高校を経て、創価大学文学部を卒業後お笑い芸人となり「間違いないっ!」のフレーズでブレーク。「創価学会2世初の有名芸能人」と評される。現在は都内で焼肉店などを経営する傍ら、12月25日に行われる西東京市議選挙への出馬を見据えて政治活動を行っている。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- 統一教会新法を巡る創価学会の主張
・11月21日付『聖教新聞』「座談会 広布の翼を天高く」「旧統一教会を巡る問題 被害者救済に全力尽くす公明」「政争の具にするな」
「池田(女子学生部書記長)旧統一教会を巡る問題で、被害者救済と再発防止に向けた取り組みが、国会で議論されています。
先崎(女子学生部長)公明党は有識者などと討議を重ね、先月28日に政府へ提言を提出。相談対応の強化、被害者の心身ケアの充実を要請し、消費者契約法の取り消し権の対象範囲拡大や、寄付・献金を強要する悪質な勧誘の規制に向けた法制度の整備などを訴えました。
池田 今月18日には早速、取消権が現行は契約締結から5年としているのを10年へと延長することなどが閣議決定され、着実に前進しています」
※公明党が統一教会新法をめぐる国会議論の中で、「被害者救済に全力を尽く」していると強調する創価学会。11月18日に閣議決定された統一教会被害者救済に関する「政府案(新法案・消費や契約法等改正案)」についても、法人が規制対象となったことや消費契約の取消権延長、不安を煽る寄付行為や借金・住宅売却などの寄付金調達要求の規制、被害者本人に代わって家族が寄付の取り消し請求を認める規定も設けられたなどと高く評価している。
しかしここで触れられている11月18日の閣議で決定された統一教会被害者救済に関する「政府案(新法案・消費者契約法等改正案)」について、統一教会被害者の救済活動を多年にわたって続けてきた全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、11月21日に「政府案は、世界平和統一家庭連合による加害行為の実態に即していないため、その被害救済のためにはほとんど役に立たないものとなっている」と、批判する声明を発表。
創価学会が高く評価している「政府案」の内容についても、「対象」「寄付に関する規制」「寄付の取消権」「子や配偶者に生じた被害の救済を可能にするための特例」などについて、対策が甘く事実上の骨抜き法案だと批判し、その問題点を具体的に列挙している。
「伊藤(学生部書記長)関連して『マインドコントロール』との言葉も飛び交っていますが、そもそも定義が不明確で、仮に裁判で争われた場合に長期化するなど、実務運用上、現実的でないとの指摘があります。
田島(学生部長)寄付の上限について、可処分所得4分の1を目安にするとの案もありますが、これは寄付先に年収を把握される契機となり、さらなる被害につながりかねません。20日付の読売新聞でも、『宗教団体が信者の収入を把握することにならないか』と危惧されています。(中略)
池田 作家の佐藤優氏はキリスト教徒としての経験を通し、『寄付金に上限を設ける案は、信教の自由に土足で踏み込む暴論と言えます』『ごく一部の反社会的事例の話を宗教全体の話にすり替えて、献金自体を危険視するのは暴論です。それは宗教の根幹がわかっていない人、あるいは宗教を敵視している人の言うことです』と語っています。
西方(青年部長)重要なのは、口先、パフォーマンスでなく、現実的に被害者救済となる法律を作ることです。公明党は、その推進にさらに尽力してもらいたい」
※先の全国弁連の声明における「政府案」の問題点に関する記述では、「家庭連合による被害は、『困惑』しないで行う献金が多く含まれるのであり、困惑類型として規制だけでは不十分であり、『正常な判断ができない状態にあることに乗じた』勧誘も規制対象とすべき」「霊感商法では、単に不安を煽るだけではなく、それに乗じて、当該契約締結による運が向上する、良い結果が生じると告知するような事例も多い。したがって、『不安の告知』のみならず、不安に乗じた『開運等の告知』も規定に盛り込むべき」と指摘している。
そして被害者救済の裁判等を通じて、被害者が献金するケースが「困惑類型」だけではない根拠として、献金をすることが「使命」「責任」だと確信させられ、それが「真の利益」と誤認して勇んで献金するケースも少なくないと主張している。
さらに11月29日に全国弁連は、政府が与野党協議の結果を受けて、「自由な意思を抑圧した勧誘の禁止」「生活維持を困難にする寄付の禁止」「寄付の相手方及び使途の誤認禁止」を、「寄付の勧誘を行うに当たっての配慮義務」としたことについて、「これらの配慮規定は、まさに家庭連合の加害実態から規制が求められている点であるところ、その規制が法人等に対して『配慮義務』を課すだけに留まれば、迅速な被害防止・被害救済は実現できない」として、「禁止行為」とすべしとの声明を出している。
創価学会は、会長や理事長などが直接、統一教会問題や被害者救済法案などに関する発言を行うことはマズイと判断してか、青年部それも学生部の幹部などに救済法案についての発言をさせているが、公明党の動きや創価学会の一連の主張は、末尾で西方青年部長が言う「重要なのは、口先、パフォーマンスでなく、現実的に被害者救済となる法律を作ることです」と矛盾する。彼らの本音は「重要なのは、口先、パフォーマンスではなく、現実的に創価学会へ被害を及ぼさない法律にすることです」なのではないか。火消しに躍起なのだ。
- 統一教会の被害者救済新法審議中も
金集めに腐心する創価学会
・11月12日付『聖教新聞』「県長・県女性部長会での原田会長の指導(要旨)」「『立正安国』と『広布拡大の凱歌』を」「絶対無事故の財務」
「今月末からは、財務納金が始まります。コロナ禍、また物価高や円安など、国民生活に大きな影響が出るなかでの、広布部員の皆さまの赤誠に、深く深く感謝いたします。
大聖人が門下の御供養を『今の檀那等は、二十枚の金のもちいを法華経の御前にささげたり。後生の仏は疑いなし。なんぞ今生にそのしるしなからん』とたたえられた通り、世界広布を進めゆく財務で、福徳輝く人生を開いていけることは間違いありません。
詐欺や事故などには細心の注意を払っていきたいと思います。最後まで絶対無事故で、功徳あふれる財務となるよう、真剣に祈ってまいります。
※上記の統一教会被害者を救済する新法が国会で審議されているさなかの11月末から、創価学会が財務と称する金集めを開始した。
被害者救済新法の「政府案」に対して、長年、統一教会被害と向き合ってきた全国弁連は、その有効性に疑問符をつけているが、そこでは、不安に付け込んだり、脅したりするばかりではなく、献金することに「使命」や「責任」を持たせ、「真の利益」や除災招福などを求めて献金するよう「誘導」する場合が少なくないことを指摘している。
11月の創価学会全国県長会・県女性部長会で原田稔会長は、「世界広布を進めゆく財務で、福徳輝く人生を開いていけることは間違いありません」「功徳あふれる財務」などと語っている。使命感と責任感を煽り、「功徳」というニンジンを鼻先にぶら下げる創価学会の財務。公明党が「誘導」には触れず、「自由な意思を抑圧した勧誘の禁止」を禁止規定ではなく、「配慮義務」とするよう尽力するのもむべなるかな。
- 長井秀和氏・『週刊新潮』『週刊文春』に抗議書
・11月25日付『聖教新聞』「創価学会 悪質な虚偽、偏向報道で 週刊誌2誌に厳重抗議」
「『週刊新潮(11月24日号)の虚偽報道に対して、創価学会は24日、発行元の新潮社などに『抗議書』を送付した。記事には、学会の財務について『額はおおむね収入の1割が目安』などと記載しているが、もとより、学会が会員に対して、そのような指導をしたことなど一切なく、全くの事実無根である。
こうした記事は、学会と統一教会を同一視するものであり、学会の名誉を著しく棄損することから、謝罪および訂正を求めた。
一方、『週刊文春』(12月1日号)の偏向報道に対しても、『抗議書』を提出した。記事は、統一教会問題の被害者救済法案をめぐり、無関係な学会が同法案を『骨抜きにした』などと断定。しかも、その論拠となる記述すら掲載されていないのである。
また、約40年も前の一個人の伝聞情報に基づき、あたかも学会が、虐待や人権侵害を行う団体であるかのごとく印象操作した記事を掲載。これも、事実確認もないまま一方的に載せたもので、断じて容認できるものではない。
これらの悪質極まる報道について、学会は同誌に対しても厳重に抗議するとともに、謝罪および訂正記事を求めた」
※政治と宗教の癒着・歪んだ関係の是正や、カルト対策に関心が集まる中で、『週刊新潮』『週刊文春』をはじめとする大手雑誌メディアが、創価学会を取り上げている。その趣旨は、「『高額献金』規制すべきは『統一教会』だけでいいのか」(『週刊新潮』11月24日号)「統一教会新法を骨抜きにした 創価学会のカネと権力」(『週刊文春』12月1日号)とのタイトルからも明らかなように、政治と宗教の癒着・カルト対策は統一教会にとどまらず、創価学会もその対象とすべきというもの。
こうした一連の報道に危機感を抱いた創価学会は、『週刊新潮』『週刊文春』の2誌と、両誌にコメントを載せている元芸術部所属の芸人で、現在は西東京市議選へ無所属で立候補するために政治活動を行っている長井秀和氏に「抗議書」を送り、7日以内に謝罪訂正しない場合は法的措置を取ると通告した。
小誌や小誌編集発行人の乙骨正生に対する一連のスラップ訴訟同様の対応である。詳しくは特集での「長井秀和氏に聞く」をご参照ください。