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2022年5月号

5月号目次

 

閻魔帳

ウクライナを巡る日本遺族会声明と岸田=安倍自公政権/柿田睦夫

 

特集/ロシアのウクライナ侵攻に沈黙する平和指導者・池田大作

 

「露軍のウクライナ侵攻」に口を噤む 「池田大作=創価学会」の相変わらずの欺瞞ぶり/古川利明

なぜ、今のロシアに「平和」を主張する団体は沈黙を続けているのか/山本栄美子

プーチン大統領に「即時停戦」を直言できない「善き友人」/乙骨正生

 

トピックス

逮捕者続出の反ワクチン団体「神真都Q」とカルト問題/藤倉善郎

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「公明党と創価学会」を考える(第31回)

政治と法務・司法の正常化を確立すべし/平野貞夫

ナニワの虫眼鏡(第35回)どうなる日本版IR・カジノ みずからバクチの罠にはまった大阪府・市の愚/吉富有治

ヨーロッパ・カルト事情(288)

いまフランス人はセクト(有害カルト)現象についてどう考えているのか(2)/広岡裕児

執筆者紹介  バックナンバー一覧 編集後記

 

 

編集後記から

遠山清彦元公明党衆院議員の貸金業法違反罪での有罪判決が東京地裁で言い渡されたのは年度末の3月29日。4月の年度替わりを前にしての異例のスピード審理だったのは、6月22日の公示が有力視されている参院選への影響を最小限に抑えることを熱望していた政権与党・公明党への司法当局の政治的配慮だったとの見方があります。

なぜ司法当局は公明党に政治的配慮を行うのか。その要因の一端を、小誌今号の連載「『公明党と創価学会』を考える」で、衆院事務局の委員部長などを歴任し、「公明党の陰の指南役」などと言われた平野貞夫元参院議員が指摘していますので、ご一読を。

その貸金業法違反罪で、遠山元衆院議員同様に起訴された太田昌孝前公明党衆院議員の元政策秘書・澁谷朗被告の初公判が4月25日に東京地裁で行われましたが、公判を報じる4月26日付『毎日新聞』報道には、次のようにあることから、同公判もスピード審理だったことが分かります。

〈検察側は「コロナ禍の企業の窮状に乗じて不正な利益を得た。貸金業の登録制度の趣旨を根本的に損ない悪質だ」として、渋谷元秘書に懲役2年と罰金100万円、川島被告に懲役2年と罰金200万円を求刑した。弁護側は起訴内容を争わず、執行猶予付きの判決を求めて結審した。判決は5月24日〉

この「渋谷被告は党重鎮だった漆原良夫・元国会対策委員長の秘書を長く務め、漆原氏が17年に引退した後は後継の太田前議員に付いた」(4月26日付『朝日新聞デジタル』)という人物で、公明党秘書会の中心的存在でした。

公明党や司法当局も、財務副大臣まで務めた元衆院議員より、単なる議員秘書はニュースバリューが低く、世間の注目度も高くないということで、年度を越しての公判となったのかもしれませんが、同事件の公判も予想通りスピード審理となり、幕が引かれることになりそうです。

しかし次代の公明党を担うホープと公明党秘書会の中心的存在、そして藤井富雄元公明代表の側近が関わっていた同事件は、「政界浄化」「クリーン」を売物とする公明党の本質を表沙汰にしたという点で、極めて注目すべき事件だったといえるでしょう。

そうそう看板倒れという意味では「世界の平和指導者」を自称し、ソビエトのゴルバチョフ大統領やコスイギン首相と、平和について直談判したことを自慢していた池田大作創価学会名誉会長の、ロシアのウクライナへの軍事侵攻に対する沈黙も看板倒れの極みといわざるをえません。特集記事をご一読の程を。

特集/ロシアのウクライナ侵攻に沈黙する平和指導者・池田大作

 

なぜ、今のロシアに「平和」を主張する団体は沈黙を続けているのか

山本栄美子

研究者(宗教学)

 

ロシアと創価学会とのつながり

日本における仏教系宗教団体の指導者の中で、池田大作氏ほど、ロシアと交流の深い宗教者はいないだろう。ソ連時代の1975年、池田氏は人生初となる名誉博士号を、モスクワ大学より受章している。いわば、この受章以来、世界各地の学術機関等をめぐる彼の名誉学術称号コレクションの旅が始まったのである。

創価大学は、日露交流が活発な私立大学として有名である。中でも特筆すべきは、2016年、日本の高等教育機関としては初のロシアセンターが、社会教育団体「ルースキー・ミール」基金の協力によって、創価大学に設立されたことである。この基金は、2007年、ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンの大統領令に基づき創設された団体であり、世界各地(約100カ所)に「ロシアセンター」を設立している(創価大学公式ホームページ参照)。つまり、ロシア政府肝いりの機関が、創価大学内に設置されていることになり、両者の繋がりがいかに深いかが想起される。

1990年に初めて、池田氏とミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領との会談が実現して以降、両氏はロシア・日本において10回もの対話を重ね、対談集『二十世紀の精神の教訓』(上下巻・潮出版社、1996年)が発刊されているほどである。ロシアに影響力を持つ両者方には、今こそ、対談経験を活かして、遮二無二ウクライナ侵攻に猛進するロシアに働きかけを行ってはもらえないものだろうか。

ちなみに、元モスクワ大学副総長のウラジミール・トローピン氏の著書『出逢いの二十年―「世界市民」池田大作とロシア』(潮出版社、1995年)においては、池田氏は「ソ連・ロシアと日本に『友情の橋』を架けた人間」として称されている。多くのロシア関係者と「対話」を重ねてきた池田氏に、今の荒ぶるロシアを相手に、停戦の呼びかけや仲介の役割を期待することはできないのだろうか。池田氏が得意とする「平和」の提言を行うべき、まさにこの時に、なぜ「沈黙」を続けておられるのだろうか。

 

いまだ不明確な創価学会の「平和」への貢献度

21世紀に入り、現在ほど、人類が第3次世界大戦の危機に瀕している状況はない。かつて、創価学会と日本共産党との間で結ばれた「創共協定(1975年7月に公表)」に関連して、作家の松本清張氏の提案で実現した、創価学会の池田大作会長と日本共産党の宮本顕治委員長との対談で、池田氏は宮本氏に次のように語っていた。

 

「私は仏法者ですから、もとより自由主義国、社会主義国のいかんを問わず、世界中のどこへでも訪問したい。また、これまでも訪問してきました。そして、ともかく、この地球上に、第三次世界大戦の惨劇だけは、何とかして回避しなければならない。そんなことが私一人にできる仕事とは毛頭思っていないけれども、せめてそのために少しでも努力したい、というのが私の行動なのです。(中略)この世界には確かに国境という壁も存在しているけれども、もっと大きな平和への障害となっているのは、あらかじめ一定の決められたイデオロギーや感情が基礎になっての各国間の不信感であると思います。本当に各国の民衆が、互いの国について謙虚に理解し合い、交流し合うという国際的土壌が生まれるならば、戦争回避への道は決して遠くないでしょう」(佐高信『池田大作と宮本顕治』平凡社新書、2020年)

 

熱心な創価学会員たちが「平和」の指導者と仰ぐ池田大作氏よ、かつての発言を実行に移す時である。昨今の世界情勢を嘆かわしく思う創価学会員たちは、尊敬する「池田先生」によって、ロシアとウクライナをはじめとした他国との間に「友情の橋」がかけられることを心待ちにしているに違いない。

無論、幾度に及ぶ創価学会側の協定違反により、「『創共協定』は発表直後から死文化の道をたどった」(同書)と、佐高信氏が指摘しているように、約束を反故にすることを厭わない池田氏に、かつての発言責任を果たす「有言実行」を期待するのは、端から無理な話なのかもしれない。ならば、本年7月に控えた参議院議員選挙の「闘争」に注力するのではなく、創価学会の組織や会員たちが、「池田先生」の弟子として、戦争回避の行動を起こすべき時なのではないか。昨年(2021年)11月に制定された「創価学会 社会憲章」前文に、「全世界の創価学会の各組織及び会員は、仏法の生命尊厳観を基調に平和・文化・教育に貢献するとの目的と使命を共有する」と謳われているのだから、その使命を果たすべきであろう。

人びとの「平和」な日常がこんなにも脆く暴力によって破壊され、「世界平和」の具現化がいかに難しいものであるのか、私たちは今回のロシアによるウクライナ侵攻の報道によって、改めて突き付けられている。日本の宗教団体の中で、創価学会ほど、「平和」の文字を多用してきた集団は他にない。しかし、これまで発行された多数の創価学会関連の刊行物で、「平和」の文字をやたら目にする割には、創価学会の「平和」への貢献度は非会員にとっては不明確なままであり、具体性に乏しいと言わざるを得ない。口先だけの吹聴で、創価学会が「平和」を強調すればするほど空虚な響きを覚えるのは、筆者だけではないだろう。「言葉と、生きていく。」を、創価学会の機関紙「聖教新聞」宣伝の標語に掲げている以上、創価学会関係者は、「言葉」を大切に、自分たちの発言に責任をもって「有言実行」に取り組んでほしいものである。

 

今こそ、「核廃絶」に向けた本気の取り組みを

かつて日中国交正常化の進展に大きく寄与した公明党委員長・竹入義勝氏による貢献が、公明党結党以来、最大の功績ではなかったか、と筆者はみている。創価学会では、1968年の学生部総会において、当時池田会長による中国との国交正常化の必要性を訴えた提言が「日中国交正常化」の扉を開いたと喧伝されているが、実際の行動を起こしたのは竹入氏である(井上正也「『竹入メモ』日中国交正常化を進めた公明党委員長の独断専行」『外交』vol.7、2011年、参照)。

公明党関係者は、今こそ、竹入氏を凌ぐ活躍を見せる時ではないのか。暴挙をくり返すロシアに対して、創価学会・公明党が築き上げてきた人脈・コネクションを発揮して、「平和」の実現に尽力すべき時機ではないのか。

世界中で俄かに、核兵器の使用が現実味を帯び、緊迫の度を増している。かつて戸田創価学会二代会長は、死去の約半年前にあたる昭和32年9月に、青年部たちに、「遺訓の第一」として「原水爆禁止宣言」を託した。その宣言において戸田氏は、核兵器を「使用したものは、ことごとく死刑にすべき」とし、「たとえ、ある国が、原子爆弾を用いて世界を征服しようとも、その民族、それを使用したものは悪魔であり、魔物であるという思想を全世界にひろめることこそ、全日本青年男女の使命であると信ずる」と主張していた(東京大学法華経研究会編『日蓮正宗創価学会』山喜房仏書林、1987年、参照)。現在の創価学会公式サイトでも、戸田氏による「原水爆禁止宣言」は「今日、世界中で幅広く展開されている SGIの平和運動の不滅の原点となっている」とされている。

戸田氏の宣言以来、創価学会は「核廃絶運動のあゆみ」を進め、「一貫して核廃絶運動を展開してきました」と標榜されている通り、「核兵器廃絶」への取り組みは今日まで、主要な創価学会活動の一つとなってきた。現在、「核兵器禁止条約」の批准国は60か国に達している(2022年3月23日時点)にもかかわらず、唯一の戦争被爆国である日本は、いまだにその条約を批准できていない。

「核兵器廃絶」を掲げる創価学会を組織母体としている公明党が、長年政権与党にいながら、「核兵器禁止条約」の批准にすらこぎつけず、条約締結に背を向けたままでいるとは、一体どうしたことだろうか。

ロシア軍によるウクライナ侵攻を機に、この時とばかりに、米国の核兵器を日本に配備する検討の必要性を主張し始めた安倍晋三元首相ら自民党のタカ派勢力に「NO」を叩きつけ抑止できるのは、連立与党のパートナーである公明党をおいて他にない。被爆地である広島出身の岸田文雄首相の政権下で、「核兵器禁止条約」を批准できなければ、公明党の「言行不一致」な矛盾を抱える欺瞞的体質を、我々は糾弾すべきである。行動に反映されない口先だけの「平和」を唱える宗教政治集団が政権の一翼を担っていることの問題性を、民主主義にとっての多大な脅威として認識しなければいけないのではないだろうか。

 

山本栄美子(やまもと・えみこ) 研究者(宗教学・死生学)、東京大学人文社会系研究科研究員、非常勤講師(岡山大学・埼玉県立大学・文教大学、他)。1977年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。文学博士。『よくわかる宗教学』(ミネルヴァ書房・分担執筆)「和辻哲郎における真理の実践と哲学」(『宗教と倫理』第19号・宗教倫理学会)など。

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

 

  • ウクライナへの軍事侵攻―「カネは出すが口は出さない」

・4月16日付『聖教新聞』「県長・県女性部長会での原田会長の指導」

「ウクライナ情勢が深刻化・長期化しており、深い憂慮を禁じ得ません。即時停戦と部隊の撤退へ向け、関係諸国と国連のさらなる外交努力を強く念願するとともに、一刻も早い終息を一層、真剣に祈ってまいりたい。

学会は現在まで、難民・避難民の支援に当たるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、国連WFP(国連世界食糧計画)、ユニセフ(国連児童基金)をはじめ、国際協力NGOなど計5団体に寄付をしてきました。

私たちは、仏法者の社会的使命を一段と深く自覚し、世界の平和と全民衆の幸福をより強く祈念するとともに、混迷と困難の時代だからこそ、一人一人の足元から対話と励ましの力で幸の連帯を着実に広げ、広宣流布と立正安国への諸活動を進めていきたい」

 

※UNHCRに3000万円を寄付したのをはじめ、国連の各機関やNGOにウクライナへの人道支援のための寄付をしてきたという創価学会の原田会長。創価大学もウクライナの学生を受け入れる(4・9付聖教)ということで、結構なことだが、すでにロシアのウクライナへの軍事侵攻が2カ月を超え、市民に多くの犠牲者が出ているにもかかわらず、創価学会の「永遠の師匠」で、ロシアから「友好勲章」を、ウクライナの国立大学から名誉博士号を受けている池田大作名誉会長兼SGI会長は、一言もウクライナ情勢に関する声明を出していない。金を出すのも結構だが、いまこそゴルバチョフ大統領(当時)やコスイギン首相(当時)に直言を重ねたという池田氏が、プーチン大統領に「即時停戦」を直言すべき時なのでは。

 

  • 参院選挙―闘争扇動座談会が候補者礼賛を開始

・4月7日付『聖教新聞』「先駆けの“春風対話”広げる福岡」「公明はコロナ対策のエキスパート」

「原田(会長)6年前の4月14日、熊本地方で震度7の地震があった際、すぐに東京から駆け付けたのが、福岡を中心に活動している、公明党のあきの公造参院議員でした。(中略)

永石(女性部長)そもそも、現在行われている海外ワクチン接種の道を開いたのは、医師でもあるあきの議員ですね」

・4月18日付『聖教新聞』「永遠の『正義』の天地神奈川」「公明若者の声を国に届け実現」

「西方(男子部長)この4月から、成人年齢が18歳に引き下げられました。若者が将来に希望を持てる社会を実現するためにも、政治の役割がますます重要になります。

會田(総神奈川青年部長)その先頭に立つのが神奈川の三浦のぶひろ参院議員です」

・4月25日付『聖教新聞』「“日本の柱”大関東の要衝埼玉」「公明は連立政権のかじ取り役」

「志賀(青年部長)今、公明党の参院会長、税制調査会長などの要職を務め、連立政権のかじ取り役を担っているのが埼玉の西田まこと参院議員です」

 

※『聖教新聞』の座談会で、参院選の必勝を煽りに煽る創価学会。参院選の公示まで約2カ月となった4月からは、公明党の政策や実績のアピールに加え、選挙区候補の名前をあげて、その宣伝に努めている。

全国紙をはじめとするマスコミの予想では、最激戦区の兵庫選挙区を除いて、公明党の選挙区候補はいずれも安全圏と見られているが、創価学会は「油断大敵」とばかりにネジをまいているようだ。いわく「あきの議員は日本の政治に不可欠な人物です」(平井九州長)、「三浦議員は抜群の行動力も定評です」(山崎総神奈川長)、「(西田議員の)政策実現力は政界の中で群を抜いています」(石毛総埼玉男子部長)。学会員を選挙に駆り立てるために、盛んに美辞麗句をならべる創価学会の各幹部だが、昨年2月にコロナ禍での銀座豪遊で議員辞職した後、貸金業法違反で有罪となった遠山清彦元公明党衆院議員も、創価学会は公明党のホープとして、さかんに持ち上げていたことをお忘れなく。

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