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2022年4月号

4月号目次

閻魔帳

「マイナンバー」の利用拡大とインボイス/浦野広明

 

特集/遠山有罪判決と参院選に突き進む創価・公明

参院選に向け「遠山疑獄」の不発に 胸を撫で下ろす「公明党=創価学会」/古川利明

遠山元公明党議員に有罪判決 判決文が踏み込んだ国会議員の「融資」問題/段 勲

「大楠公」を歌い参院選兵庫選挙区必勝を檄する創価学会のアナクロニズム/乙骨正生

 

トピックス

背任疑惑で揺れる神社本庁の役員改選/橋本征雄

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「公明党と創価学会」を考える(第30回)

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ナニワの虫眼鏡第(34回)

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編集後記から

今シーズンの冬は、北日本で豪雪が続き、北海道ではすべての交通機関がストップするなど、例年以上に寒さが厳しかったものの、東京地方では3月20日に桜の開花宣言が出され、27日に満開宣言となりました。気象庁によると開花は昨年より6日遅かったようですが、それでも例年に比べれば、意外なことに4日早いということでした。

桜といえば「モリ・カケ・サクラ」の安倍晋三元首相が思い出されますが、プーチン大統領との蜜月関係を誇示していた安倍元首相、なんとロシアのウクライナ侵攻(2・24)が始まるやいなや、「アメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する政策について、日本でもタブー視せずに議論すべき」(2月27日・フジテレビ)と、核共有を提唱。さらに4月3日には、持論である敵基地攻撃能力の攻撃対象を「基地に限定する必要はない。中枢を攻撃することも含むべきだ」(4月3日・時事)と発言。「日本も少しは独自の打撃力を持つべきだと完全に確信している」(同)と強調しました。

もともと安倍元首相は核武装論者であり、官房副長官だった2002年には「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は。小型であればですね」(「サンデー毎日」02年6月2日号)と発言。また16年4月1日に安倍内閣は、核兵器の保有や使用について、「憲法9条は、一切の核兵器の保有および使用をおよそ禁止しているわけではない」(NHK)と、保有のみならず使用も憲法は禁じていないとの答弁書を閣議決定しています。もとより閣議決定は閣僚が一人でも反対すれば成立しませんから、公明党の大臣も、この決定に賛成したことは明らかであり、「同じ穴の狢(むじな)」に他なりません。

そんな安倍元首相を中心に「戦後レジームからの脱却」を企図する勢力が推進している運動の一つが、『産経新聞』の「楠木正成考―『公』を忘れた日本人へ」と題する連載に見られる「滅私奉公」を忘れた日本人に反省を促す楠公顕彰キャンペーンなのですが、なんと創価学会は今年2月に兵庫県で開催した本部幹部会で、「大楠公の歌」を合唱し、参院選兵庫選挙区での必勝を檄しました。

遠山有罪判決を乗り越え、選挙で勝つために「大楠公」を歌う創価学会。やはり「同じ穴の狢」なのでしょう。そのアナクロニズムぶりは特集記事をご参照ください。

特集/遠山有罪判決と参院選に突き進む創価・公明

 

「大楠公」を歌い参院選兵庫選挙区必勝を檄する創価学会のアナクロニズム

乙骨正生

ジャーナリスト

 

全国の組織に兵庫支援を指示

3月29日に東京地方裁判所は、遠山清彦元公明党衆議院議員・元財務副大臣の貸金業法違反事件について、「国会議員としての影響力を背景とするものであったにもかかわらず、その違法性に思いを致すことなく、その一部につき謝礼の趣旨を含む金銭を受領していたのであるから、高い倫理観が求められる当時の立場等にも照らすと、相応の非難を免れない」として、懲役2年(求刑同)、執行猶予3年、罰金100万円(求刑同)の判決を言い渡した。

これを受けて公明党の山口那津男代表は同日の記者会見で、「判決を厳粛に受け止めたい。深く心から反省し国民におわびを申し上げたい」と陳謝するとともに、「再発防止策を党内で徹底してきた。政治の信頼を取り戻すために党として全力をあげていきたい」としおらしい姿勢を見せた。

もっとも「反省」と「おわび」を口にするものの、公明党は党としての独自調査を行わず説明責任にも頬被り。「『政界浄化の公明党』は、自他共に認める金看板」(『公明党50年の歩み』)であるとし、政界の汚職や疑獄・腐敗や不正の追及に多大な実績があると喧伝していながら、遠山事件に関しては、遠山元議員を除名するだけで早々に幕引きを図ろうというのだから呆れるしかない。

そもそも検察が逮捕もせず在宅起訴にしたばかりか、公判でも証人尋問を省くなど異例のスピード審理で、裁判所が年度内に判決を言い渡した背景には、7月の参院選への影響を最小限に抑えたいとの、参議院法務委員長のポストを半世紀以上にわたって握り続ける政権与党・公明党の意向を、検察・裁判所が忖度したのではと見られている。

「人の噂も七十五日」とばかりに早期の幕引きを図る公明党だが、遠山有罪の影響は否定し難く、創価学会の組織力・活動力の低下と相俟って、おそらく今夏の参院選は公明党そして創価学会にとってひときわ厳しい選挙となるのではないか。

当然、そのことは創価学会も分かっている。それだけに創価学会は早くから参院選に向けた準備に入っており、特に公明党候補が立候補する7選挙区中、もっとも苦戦が予想される兵庫選挙区については、2月の段階で全国の組織に「2022参院選・兵庫勝利への取り組み」と題する指示文書を配布し、勝利に向けて眦を決している。

では、どのような指示を出しているのか。「2022参院選・兵庫勝利への取り組み」と題する指示文書を見てみよう。

冒頭に「配布範囲:CK長・CKJ長まで」(注・30~40世帯を単位とする地区の責任者である地区部長・地区女性部長のこと)とある同文書は、こんな書き出しで始まっている。

〈本年の参院選完勝のために、兵庫勝利に向けて全国人脈による特段の押し上げが必須の情勢。そこで、昨年衆院選の際に取り組んだ『進む会』のような後援会について、参院選では『兵庫に限り』以下のとおり設立・推進し、『兵庫に人脈を持つ人自身が、より強い意識をもって自己完結で相手の支持を固める』ようにしたい〉

ここにある「『進む会』のような後援会」とは、2020年7月8日開催の創価学会全国方面長会議で、政治担当の佐藤浩副会長が発表したもので、新たに衆議院選挙の小選挙区に立候補する公明党の各候補に「進む会」という「全国後援会」を設立し、各小選挙区の創価学会組織の学会員の支援活動に加えて、全国の学会員のそれぞれの小選挙区における人脈を掘り起こして組織化し、集票の拡大を図ろうとしたもの。

その「進む会」を創価学会は、今夏の参院選では最も厳しいと見られている兵庫選挙区だけで推進し、票の掘り起こしを図ろうというのだ。その具体的内容について「2022参院選・兵庫勝利への取り組み」は、こう指示している。

〈後援会「兵庫公明党を応援する●●(注・創価学会の方面組織)友の会」設立について

▽兵庫県内における公明党の党勢拡大を目的とした後援会を設立する。

▽本後援会は、今回に限らず今後も継続して兵庫県内での党勢拡大に取り組む。

よって、兵庫県内で活動する参院議員の「伊藤たかえ」や「高橋みつお」の応援も行う。

▽今回については、既存の伊藤たかえLINE公式アカウントを活用して、後援会会員に対して直接情報を発信していく。

▽郵送・メルマガは基本的に実施しない〉

その上で2月から3月にかけて後援会の入会を募り、候補者本人が出席する時局講演会を経て、ゴールデンウィーク期間に、直接、兵庫に足を運んで票の積み上げを図るよう、こう指示している。

〈組織の取り組みについて

①後援会への入会推進

【推進期間】2月14日(月)~3月6日(日)

【対象者】兵庫に人脈を持ち、後援会の趣旨に賛同する党員・支持者(内部)〉

〈②「後援会時局(兵庫ビクトリー時局)の開催

候補者本人が出席する「後援会時局」を下記のとおり開催し、それを受けてGW期間を中心に個人の戦いとして、兵庫に足を運んで押し上げていく〉

 

兵庫で本部幹部会を開催

こうした指示と軌を一にするかのように、創価学会の機関紙『聖教新聞』には、年初から兵庫選挙区の勝利を煽る各種の記事が掲載されている。例えば1月20日付『聖教新聞』掲載の幹部座談会は、「『大阪事件』の無罪判決から60年 常勝不敗の関西魂で勝つ!」と題して、1958年の参院大阪補選で、池田大作参謀室長(当時)が選挙違反容疑で逮捕・起訴されたが、62年に検察の違法な取り調べを理由に無罪判決が言い渡されてから今年が60年の節目にあたると強調。その中で「(池田)先生は無罪判決の前日となる1月24日、兵庫・尼崎市体育会館での関西男子部幹部会の終了後、リーダーに語られました。『一人一人が力をつけ成長することだ!多くの友をつくり、正義の陣列を拡大することだ!そして広宣流布の戦いに勝って、世間をあっと言わせる時代を創ることだ!』」と、兵庫の地で「広宣流布の戦いに勝」ち「世間をあっと言わせる」ことを、かつて池田名誉会長が強調したことをアピールしている。

そして「大阪事件無罪判決60周年」の意義を顕揚するために、創価学会は2月の本部幹部会を兵庫総会を兼ねて兵庫県内で開くことを発表。2月6日、兵庫池田文化会館を中心に、兵庫県内の31会館を中継で結んで本部幹部会兼兵庫総会を開催した。

これには池田名誉会長が「関西よ兵庫よ 今再びの正義の大行進を」「『立正安国』の不屈の誓願胸に」と題するメッセージを送り、「私は大阪事件の無罪判決の前夜、縁も深き兵庫の尼崎で」、「法華経の『三変土田』、御書の『立正安国』の仰せのままに、勇んで社会へ飛び込んでいく」という「不撓不屈の誓願」を「獅子吼した」として、参院選の必勝を檄している。

ところで池田名誉会長はメッセージの中で、「今、わが従藍而青の(楠木)正行たる青年たちが先頭に躍り出て」拡大に励んでいると、創価学会青年部を鎌倉末期から南北朝にかけて後醍醐天皇の忠臣として歴史上に登場し、建武の新政実現に寄与した楠木正成の子息である楠木正行になぞらえたのだが、2月の本部幹部会を兵庫県で開催した“肝”、そして今夏の参院選兵庫選挙区での必勝を期す創価学会が、学会員を熾烈な選挙闘争に駆り立てるための“肝”は、ここにあると言えるだろう。

というのも本部幹部会では、楠木正成・正行父子が足利尊氏との決戦となる「湊川の戦い」に臨む心情を詠んだ戦前の小学唱歌「桜井の決別(大楠公の歌)」を、未来部(少年・少女部)と青年部に合唱させたからだ。本部幹部会の模様を報じる2月7日付『聖教新聞』を紹介しよう。

「〽青葉茂れる桜井の……

幹部会の前半、兵庫の未来部と青年の代表による合唱の映像が流れ、凜々しい歌声が響いた。曲は、湊川の決戦に臨む武将・楠木正成と、その子・正行の、父子の心意気を歌った“大楠公”。

これは、第2代会長の戸田城聖先生がこよなく愛し、若き池田先生が広布の激戦に勝ちゆく誓いを込めて、幾度も恩師の前で披露した“師弟の歌”でもある。参加者は、頼もしき後継の師子の歌声に喜びの涙を浮かべつつ、“共に常勝の新時代を!”と大拍手で応えた」

 

「尽忠報国」ならぬ「尽忠創価」

敗戦からすでに76年、日本人の大半が戦後生まれという今日、「大楠公」と言われてもピンとこない人が多いだろうが、「戦前の日本国民にとって、楠木正成という存在は、日本人としてのあるべき正しい姿を垂範し続けた『日本精神』の権化であり、天皇に至誠を尽した忠臣の中の忠臣にほかならなかった。楠公という『忠臣の鑑』を手本として、滅私皇恩に報いることこそが、天皇の赤子たる国民のつとめとされた」(『非常時日本の楠公崇拝 国家はいかに『楠木正成』を作ったのか』(滋賀大学教授・谷田博幸 河出書房新社)というものであり、「大楠公の歌」は、「滅私皇恩に報いる」「天皇の赤子」たる「日本精神」を子供たちに刷り込むための唱歌だった。

しかもこの「滅私皇恩」と、楠木正成が「湊川の戦い」で討ち死にする前に示した「七生敵滅・七生報国」に基づく死生観は、有為な青年を死に追いやった戦時中の特攻・玉砕を支える思想的根拠となった。

その「大楠公」を少年・少女に歌わせて「喜びの涙を浮かべつつ、“共に常勝の新時代を”」と煽り立てる創価学会のアナクロニズムは驚くべきものだが、ここに「戸田城聖先生がこよなく愛し」、池田名誉会長が「幾度も恩師の前で披露した“師弟の歌”」とあるように、「師弟不二」を強調する創価学会では「大楠公の歌」を、「滅私皇恩」ならぬ「滅私師恩」を刷り込むためのツールとして、学会員なかんずく青少年に歌唱させてきた事実がある。

斯く言う筆者自身も、創価学園在学中あるいは高等部員時代に、池田会長(当時)の前で、「大楠公の歌」を池田氏を師と仰いで生きる決意を込めて歌わされた経験を持つが、その意義を池田氏は小説『新・人間革命』(第9巻「鳳雛」の章)において次のように書いている。

「戸田先生は、よく私どもと、“大楠公”の歌を歌われた。

これは、古い歌なので、皆さん方は知らないかもしれないが、そのなかに『早く生い立ち大君に 仕えまつれよ国の為』という個所があります。

『早く生い立ち』――この言葉に託した先生の真意は何か。早く広布の人材となり、創価学会の中核となって、日本の大指導者となっていきなさいということであります。

また、『大君に』とは、この詞のうえからは、天皇ということになりますが、先生の元意は違います。

仏法に尽くせ。大聖人の御遺命を実現していけ。民衆に、人類に尽くせ。そして、世界を、東洋を、また当然、日本の国を救っていけ――というお気持ちでありました」

さすがに「尽忠報国」ならぬ「尽忠創価」とはいえないので、「大聖人の御遺命を実現」とか「民衆に、人類に尽くせ」などとごまかしているが、その真意は創価学会と師匠・池田先生のために「滅私奉公」する「弟子」になれということであり、それが「滅私皇恩」の「日本精神」ならぬ、「滅私師恩」ともいうべき「師弟不二」なる概念に基づく「学会精神」の核心と言えよう。

兵庫開催の本部幹部会で、「大楠公」を歌わせたのは、こうした「滅私師恩」「尽忠創価」の再確認に加え、足利尊氏の大軍の前に討ち死に覚悟で、現在の住所でいえば神戸市の中央区・兵庫区にある「湊川の決戦」に出陣する楠木正成の故事にならって、学会員に兵庫で“決死の覚悟”の選挙闘争を展開させようとの狙いがあるのだろう。

牧口常三郎初代会長は、国家神道に基づき「滅私皇恩」「尽忠報国」を強制した軍国主義政府に獄死させられたと主張しながら、「大楠公」を歌わせて、「湊川の決戦」ならぬ参議院兵庫選挙区の選挙闘争に突き進むアナクロニズムな創価学会。その先にあるのは、はたして特攻か玉砕か。

 

乙骨正生(おっこつ・まさお)フリージャーナリスト。1955年生まれ。創価中学・創価大学法学部卒。宗教・政治・社会分野などを取材、週刊誌・月刊誌を中心に執筆。著書に『怪死』(教育資料出版会)『公明党=創価学会の野望』『公明党=創価学会の真実』『司法に断罪された創価学会』(かもがわ出版)など。

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

 

  • 遠山清彦元公明党衆院議員に有罪判決

・3月30日付『聖教新聞』「遠山元議員に有罪判決 東京地裁 公庫融資違法仲介で」

「日本政策金融公庫の新型コロナウイルス対策融資を違法に仲介したとして、貸金業法違反(無登録)罪に問われた元公明党衆院議員で元財務副大臣の遠山清彦被告(52)の判決が29日、東京地裁であった。丹羽敏彦裁判長は『法の趣旨にもとる犯行だ』として懲役2年、執行猶予3年、罰金100万円(求刑懲役2年、罰金100万円)を言い渡した」

「国民に心からおわび 陳情対応 厳格なルールを徹底 公明党石井幹事長」

「公明党の石井啓一幹事長は29日、貸金業法違反罪に問われた遠山清彦・元公明党衆院議員が東京地裁で有罪判決を受けたことについて、次の談話を発表した。

一、公明党の元議員が有罪判決を受けたことは誠に遺憾であり、到底許されるものではありません。政治への信頼を損なう事態に至ったことを猛省するとともに、国民の皆さま、党員・支持者の皆さまに対して、改めて心から深くおわび申し上げます。

一、既に再発防止については徹底しておりますが、このような事態を二度と起こさないために、今回の判決を踏まえ、改めて党所属議員や秘書など、党内に融資などの陳情に関する厳格なルールを徹底してまいります。

一、国民の信頼なくして、政治を前に進めることはできません。今一度、清潔を旨とする公明党の議員一人一人、秘書も共に、このことを肝に銘じ、真に国民の信頼に足る政治を築くため、自らを厳しく律して、信頼回復に努めてまいります」

・3月31日付『聖教新聞』「座談会 広布の翼を天高く」「弟子の勝利を師匠に捧げる『4・2』 勇んで『立正安国の対話』を!」

「西方(男子部長)先日、支持者の信頼を裏切り、政治不信を招く言語道断の事件で、公明党を除名された元衆院議員に、厳しい法の裁きが下りました。公明党は猛省してもらいたい。

原田(会長)公明党の全議員は、支持者の大恩を絶対に忘れてはならないと強く言いたい。今が重要な時である。立党の原点に立ち返り、党を挙げて、国民のため、支持者のため、死に物狂いで働いてもらいたい」

 

※3月29日に貸金業法違反罪で起訴されていた遠山清彦元公明党衆議院議員・元財務副大臣に、東京地裁が有罪判決を言い渡した。

まず3月30日付『聖教新聞』と『公明新聞』掲載の判決報道だが、これは一字一句同じだった。この判決を受けて公明党は、山口代表・石井幹事長が、国民に謝罪・猛省する姿勢を表明した。もっとも「政界浄化の公明党」などと自称し、「清潔・クリーン」を金看板としているにもかかわらず、公明党は党独自での調査は行っていない。当然のことだが調査を行わないのだから、どうして遠山元衆院議員をはじめ複数の公明党関係者がこのような悪質な事件を引き起こしたのかについての説明責任を果たすこともない。

それも当然だろう。古くは砂利船汚職やリクルート汚職を持ち出すまでもなく、公明党は新銀行東京での大量の口利き問題をはじめ、目黒区議団全員辞職に象徴されるように多くの地方議員が全国各地で政務調査費・政務活動費の不正使用を繰り返している。要するにその腐敗体質は構造的であり、「清潔・クリーン」とは程遠いからだ。今回の遠山事件でも、遠山元衆院議員ばかりが注目されるが、同時に公明党国会議員秘書の中心的存在だった澁谷朗被告や、藤井富雄元公明代表(元都議会公明党幹事長)の側近で政治ブローカーの牧厚被告も逮捕・起訴されていることはその証左であり、調査と説明責任を果たすことは公明党にとって“藪蛇”に他ならなくなるからだ。

ところで遠山事件発覚以来、『聖教新聞』はニュース面でこそ捜査の経緯を報じる通信社記事を掲載しているものの、公明党が独自調査を行わないのと同様に遠山問題に関する独自見解を示すことはなく、自らの支援責任についても頬かぶりを続けてきた。

だが有罪判決が出たことでさすがに無視黙殺はできないと考えたのだろう。判決翌々日の3月31日付『聖教新聞』掲載の幹部座談会で原田会長・西方男子部長が、「言語道断の事件」で「支持者の信頼を裏切」り「公明党を除名された元衆院議員に、厳しい法の裁きが下りました」と、判決に触れて公明党に猛省を促したが、狡猾なことに遠山元議員の名前を伏せたのである。

おそらく遠山元議員の名前を出せば、創価学園・創価大学卒の遠山元議員を、国会の場に送るにあたって大きな役割を果たした創価学会の責任、なかんずく、遠山元議員を引き立てた創価学会の青年部長・総合青年部長を歴任した政治担当の佐藤浩副会長の責任が想起されること恐れたのだろう。

昨年2月に遠山元議員が緊急事態宣言下での銀座豪遊で議員辞職したことを受けて佐藤副会長は、遠山元議員を衆院比例区から衆院小選挙区神奈川6区に鞍替えさせるなど、後見役的立場にあった責任を取る形で本部職員を定年退職し、表舞台から一時姿を消した。だが昨年秋の衆院総選挙前に復権し、現在も創価学会の政治担当・選挙対策を仕切っているという。もっとも学会関係者の話を総合すると、かつては線路のこちら側(学会本部)にいたが、現在は線路の向こう側(公明党)に席があるとのこと。

しかし原田会長―谷川主任副会長―佐藤浩副会長ラインで、政治路線・選挙対策を仕切る構図に変化はないことから、遠山元議員の名前を出すことはマイナスと判断。自らの責任には頬かぶりをしたうえで、公明党ならびに所属議員に、遠山元議員のように「下手を打つ」ことなく、創価学会への恩を忘れず「死に物狂いで働」けと、“オドシ”をかけたものと見られる。

公明党は建て前であったとしても、陳謝・猛省を口にしたが、組織母体の創価学会は、自らの支援責任は等閑視。むしろ迷惑をかけられたとばかりに、「死に物狂いで働」けと注文をつけるのだから、その傲岸さ、厚顔無恥ぶりには呆れるしかない。

ちなみに遠山元議員は、司直によって断罪されたが、学会批判・池田批判は行っていない。そこが学会・公明党にとって実名を出して批判するか否かの境界線であること。さらには控訴せず、参院選への影響を最小限に抑えようという学会・公明党にとって“健気”な姿勢も見せていることから、おそらく創価学会は、日本人の健忘症的体質を利用して、いつの間にかなんらかの形で復権させる可能性も否定できない。

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