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2022年2月号

2月号目次

閻魔帳

読売新聞がジャーナリズムを逸脱 大阪府と情報発信など8項目で包括協定/川﨑泰資

 

特集/混迷する創価学会の内実を投影する「SGI提言」

 

「立正安国論」引用の差異が映し出す創価学会の原風景/乙骨正生

「創価学会=池田大作」が今年も垂れ流す「言うだけならタダ」のSGI提言/古川利明

『米軍コロナ』に物言えぬ自公政権 「政権追従」路線と「SGI提言」/柿田睦夫

核兵器のない世界──池田大作氏の「SGI記念提言」の検証/段 勲

 

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「公明党と創価学会」を考える(第28回)

公明党の自立路線時代(14)/平野貞夫/平野貞夫

ナニワの虫眼鏡第(32回)

自己増殖を続ける維新 行政と議会と全国紙も支配か/吉富有治

ヨーロッパ・カルト事情(285)

港を眺めながら……/広岡裕児

 

執筆者紹介 バックナンバー一覧 編集後記

 

 

編集後記から

立春も過ぎ、小誌の事務所があるJR飯田駅橋周辺では梅が盛りを迎えつつありますが、コロナ禍・オミクロン株の感染拡大はあいかわらず続いており、ワクチンの3回目接種に伴う混乱も全国各地の自治体で頻発しています。

すでに世界的パンデミックになって3年目。安倍・菅両政権はもとより、岸田政権となっても後手後手で混乱する自公政権のお粗末な対応ぶりには呆れるばかりです。

にもかかわらず公明党の組織母体の創価学会は、公明党の姿勢を礼賛。昨年の東京都議選、衆院選を前にした創価学会幹部らによる『聖教新聞』での座談会記事は、公明党がコロナ対策を主導していると喧伝していました。おそらく今年7月の参院選に向けても同種の宣伝が繰り返されることでしょう。

その創価学会の池田大作名誉会長が、「SGI会長」名義で今年も大論文を発表しました。齢94歳の池田氏が書いたとして発表される長大論文では、「パンデミック条約」の制定や「気候危機の打開に向けた日中共同誓約」の策定などが提言されていますが、興味深いのは、コロナ禍のパンデミックであるにもかかわらず、「天変地夭・飢饉疫癘」すなわち災害や疫病の流行に触発されて認められた「日蓮大聖人」の「立正安国論」への言及がなかったことです。詳しくは特集記事をご参照ください。

その創価学会が全面支援して国会議員に送り込んだ遠山清彦元公明党代議士・元財務副大臣。昨年末の御用納めの日に東京地検特捜部が貸金業法違反罪で在宅起訴しましたが、これを受けて公明党は1月12日に、「党の名誉を傷つけた」として、除名処分としました。今夏の参院選対策として早々に除名したのでしょう。初公判はバレンタインデーの2月14日に決まりましたが、早期結審を図り参院選への影響を最小限に抑える腹積もりのようです。

その遠山被告同様に、「次世代のエース」と期待され、岸田政権発足とともに財務副大臣に就任した岡本三成公明党代議士。創価大学OBでゴールドマンサックスから政界入りし、昨秋の衆院選で比例区から太田昭宏元代表の後釜として小選挙区東京12区に抜擢されて当選しましたが、いま与野党の顰蹙と失笑を買っています。というのも衆院予算委員会で来年度予算案の政府説明で読み間違えを連発しているからです。「ホープ」は司直に堕ち、「エース」は顰蹙を買う。人材払底気味の公明党、参院選は厳しいものとなるでしょう。

小誌は宗教と社会・宗教と政治の事実と真実を追究し続けます。

特集/混迷する創価学会の内実を投影する「SGI提言」

 

「創価学会=池田大作」が今年も垂れ流す「言うだけならタダ」のSGI提言

古川利明

ジャーナリスト

 

核禁止条約に「即、批准せよ」と迫れない提言

今年も1月26、27日の聖教新聞に、創価学会名誉会長でSGI(創価学会インタナショナル)会長でもある池田大作が、今なお書いているということになっている「『SGIの日』記念提言」が掲載された。まずは、その池田の動静だが、最近の同紙をめくると、昨年11月19日と今年1月9日に、信濃町は総本部の創価学会恩師記念会館で、昨年12月2日には、妻の香峯子と一緒に八王子の創価大キャンパスを車で視察した後、東京牧口記念会館でそれぞれ「勤行・唱題した」とあるものの、その写真の掲載はない。同紙(昨年12月27日付)の随筆「『人間革命』光あれ」には、昨年11月、池田が都内でカメラ撮影したという紅葉の写真が載っていて、これらを額面通り受け止めるなら、完全な寝たきりとかではなく、外も出歩けるということである。しかし、「池田本人を撮影した写真」がないというか、正確には「出せない」ということだろうが、推測するに、この1月2日で満94歳を迎えたことに集約されるが、相当、老化が進んでいるということではないだろうか。

そこで、今年のSGI提言だが、上・下2回で計9頁の分量は例年通りで、トップの見出しが「人類史の転換へ 平和と尊厳の大光」と、19年以来、3年ぶりに「平和」の文字が復活した。ここのところ「平和希求のトーン」が弱まっていたが、「新型コロナ」を前面に出していた昨年と比べると、今年は感染が収まっていることに加えて、本文でも触れているが、核兵器禁止条約の発効からまる1年を迎える前日の1月21日に、日米両政府が出したNPT(核拡散防止条約)に関する共同声明の中で、「核兵器の悲劇への理解を広げるため、各国の政治指導者や若者たちに広島・長崎への訪問を要請する」と盛り込んでいたことが、後押ししたとみられ、さらには、今夏の参院選との絡みで、あの「遠山清彦の在宅起訴」も、少なからず、影響していると思われる。

で、SGI提言では、そもそも「私(=池田大作)も以前から、政治指導者の被爆地訪問の重要性を訴えてきました」とのことで、去年も触れていたが、今年3月にウィーンで開かれる核兵器禁止条約の第1回締約国会合(延期)に、ドイツなどとともに日本も、未批准でもOKであるオブザーバー参加するよう呼びかけてはいる。しかし、より本質的な問題である「同条約の批准」については、「こうした努力を尽くしながら、日本は早期の批准を目指すべきだ」に留まり、本来なら「即、批准せよ」でなければならない。そもそも、日本が顔色を窺っているアメリカ以下、核保有国はどこも未批准だが、拙著『核と原発 ヒロシマ・ナガサキ、ビキニ、そしてフクシマを繋ぐ悲劇の誕生』(アメージング出版)で詳述した通り、一連の安保法制(=日米同盟)の最奥に「核使用の共同作戦」が埋め込まれていることに疑いの余地はなく、日本が批准を渋る最大の理由は「これ」である。

 

「SGI」と「日蓮世界宗」で主導権争い?

このSGIに絡んでだが、昨年の「11・18」を機に、信濃町は「95年11月制定の『SGI憲章』を改定し、新たに『創価学会社会憲章』を制定した」ということで、であれば「SGI憲章は消滅した」とも読めることから、「創価学会の公式サイトを見ると、双方、掲載されたままで、奇っ怪極まりない」と、本誌(昨年12月号)の拙稿で指摘したところ、聖教新聞(昨年12月11日付)が「公式サイトの全面リニューアル」を告知していた。さっそく、閲覧すると、社会憲章の方は「基本情報」のアイコンをクリックすると、「会憲・会則」とともに非常に目立つ扱いで、すぐに出てくるのに対し、SGI憲章の方は、まず、「世界の創価学会」をクリックし、そこからさらに「世界の創価学会の歴史」へと入ると、「1995 『SGI憲章』を制定」がやっとこさ出てきて、ここにその条文をリンクで貼り付けているだけで、要は、ウラに埋め込んで目立たなくしているのである。

そもそも、このSGI自体が、その成り立ちからして幽霊そのもので、その役員人事も、全面リニューアルされた創価学会の公式サイトでは、SGI規約とともに引き続き非公開で、日頃の聖教新聞の記事から分かるのは、SGI会長が池田大作であることに加えて、副会長が長男の博正であるぐらいのもので、ちなみに、ウィキぺディアには、SGIの会長代行に原田稔、理事長には大場好孝(主任副会長)の名前が載っている。大手都市銀行担当者による「学会マネーの預け先としてズバ抜けて多いのが『SGI名義』」との証言にもある通り、「SGIの実態とは銀行口座」なのだが、本来であれば、17年11月に制定された創価学会会憲の第11、12条で明記したように、「作った仏に魂を入れる」がごとく、SGIはその幽霊状態から脱し、創価学会の上に君臨する格好で、その存在感を強めたはずだったが、あに図らんや、それとは真逆の事態が進行しているのである。

そこで、日蓮正宗の破門からまる30年を迎えた日の聖教新聞(昨年11月28日付)に載っていた、その破門から約半月後の91年12月15日に東京・大田池田文化会館で、池田が原稿用紙にサインペンのようなもので「日蓮」「世界宗 創価学会」と、傍目には書き殴ったとしか見えない例の代物だが、その会憲の前文で謳い上げたことでクローズアップされている「日蓮世界宗創価学会」の由来が、恐らく「これ」のようである。ただ、「世界に向けた広宣流布」の謳い文句としては、既に「SGI」があり、双方で主導権争いをしていると見えなくもない。「SGI」や「日蓮世界宗」「日蓮世界宗創価学会」も、「創価学会」などとともに商標登録されていることに象徴されるように、所詮、これらは「カネ儲けのダシ」でしかない。19年11月の原田の3期目の会長任期切れを前に、主任副会長の1人である谷川佳樹の次期会長就任説が流れた際、「『日蓮世界宗』への名称変更が間近にあるのでは」との憶測が流れていたが、そのウラは「創価学会やSGI名義のカネを『こっち』に移し替える」とは、筆者の穿ち過ぎだろうか。池田の死後は、SGIの次期会長が有力視される博正が、ここのところ、存在感が薄いことと合わせて、要注視である。

 

参院選見据え遠山除名で「トカゲの尻尾切り」

折しも、新型コロナ対策の融資への口利きを巡り、昨年12月28日に東京地検特捜部から貸金業法違反で在宅起訴された、池田大作を創立者とする公明党(=創価学会)の衆院議員で財務副大臣でもあった遠山清彦だが、年が明けて1月12日付で党から除名された。公明新聞(1月14日付)によれば、党規約90条1項の「党の名誉を傷つける行為をしたとき」に該当したとのことだが、それでも世間ではまだ「クリーンと言えば、公明党」のイメージがあるので、これは今夏の参院選を見据えての「トカゲの尻尾切り」に他ならない。

これまでの新聞報道などを突き合わせると、遠山は取り調べに対し、大筋で容疑を認めたとのことだが、しかし、事件の本筋は、あくまで「汚職」だった。遠山は財務副大臣に就任した翌月の19年10月頃、銀座の高級クラブで太陽光発電関連会社「テクノシステム」社長の生田尚之(詐欺罪などで起訴)から、池田大作の御庭番だった藤井富雄の元側近で同社顧問の牧厚も同席したうえで、100万円が渡され、その後、同社は財務省の所管で政府が全額出資する日本政策金融公庫から、4億円の融資が実現している。刑法の単純収賄罪は「議員も含めた公務員が、職務に関し、贈賄側に便宜を図る目的で賄賂を受け取った時点」で成立する。つまり、財務副大臣として同公庫に対してあれこれと指示できる職務権限を持つ遠山が、「融資実現をよろしく」といった個別具体的な請託がなくても、「とにかく、何でもいいから、テクノ社に有利になるように」との趣旨でカネを受け取った時点で、完全にアウトなのである。ましてや、遠山はこの100万円を政治資金収支報告書には記載しておらず、「到底、オモテには出せない裏金だった」ということである。特捜部が貸金業法違反での立件で止めたのは、政権与党に対する忖度からだろう。

今回、遠山が貸金業法違反による口利きで起訴されたのは、20年3月頃から21年6月頃までの計111回(これに伴う謝礼受取額は計約1千万円)だが、昨年1月に緊急事態宣言下であるにもかかわらず、銀座の高級クラブで飲んだくれていたことを文春オンラインにスッパ抜かれたことで、さらに不可解なのは、議員辞職に追い込まれた後も、「これ」に手を染めていたことである。「サルは木から落ちてもサルのままだが、政治家は選挙で落ちたらサル以下だ」とは永田町で囁かれる戯言だが、遠山が議員バッジを外してもなお、このテの口利きビジネスに嘴(くちばし)を挟めていたこと自体、驚きである。そもそも、公明党議員は、選挙も日常の議員活動も創価学会員がすべて「タダ」でやってくれるのだから、遠山が、なぜ、ここまでカネ稼ぎのために身を粉にしなければならなかったのか、さっぱり、分からず、遠山も事件の全貌を「うたいきった」とは言い難い。(文中・敬称略)

 

古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』最新刊『「自民党“公明派”」20年目の大失敗』(いずれも第三書館刊)『核と原発 ヒロシマ・ナガサキ、ビキニ、そしてフクシマを繋ぐ悲劇の誕生』(アメージング出版)など著書多数。

 

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

 

  • 遠山清彦元公明党代議士(元財務副大臣)を除名

・1月14日付『聖教新聞』「遠山元議員 除名処分に 公明党」

「公明党は、昨年12月に貸金業法違反の罪で在宅起訴された遠山清彦元衆院議員を除名処分にした。党規約に基づき遠山氏が所属していた党神奈川県本部の県規律委員会が12日付で決定し、13日の中央幹事会で報告された。

中央幹事会の記者会見で北側一雄中央幹事会会長は、処分理由について『党の名誉を傷つけた』と説明。その上で、『公明党の議員として、あるまじき行為と言わざるを得ない』と強調した」

 

※年末の御用納めの日に、東京地検特捜部から貸金業法違反罪で在宅起訴された遠山清彦被告の初公判が、2月14日のバレンタインデーに行われることとなった。すでに取り調べ段階で罪状を認めていることから、公判でも素直に罪状を認め、情状酌量を求めた上で、7月の参院選に悪影響を及ぼさないように早期結審を図るものと予想される。すでに一部の報道では3月中にも判決が出されるとも予測されている。

その遠山被告を公明党が1月12日付で除名処分とした。処分理由は「党の名誉を傷つけた」というもの。13日に記者会見した北川副代表は、「公明党の議員として、あるまじき行為と言わざるを得ない」と、厳しく遠山被告を非難したが、要は参院選対策の一環として、公判が始まり、有罪判決が出る前にさっさと除名しておこうとのご都合主義以外のなにものでもない。

そして遠山被告を国会に送り続けた組織母体の創価学会も、機関紙のニュース面の片隅に起訴と除名の事実こそ載せたものの、遠山被告の責任を問うことはなく、司直に堕ちるような人物を多くの会員に支援させた自らの責任についても頬被りを決め込んでいる。

竹入義勝・矢野絢也の両元委員長をはじめ、大橋敏夫元代議士・藤原行政元都議・龍年光元都議・福本潤一元参院議員など、創価学会と公明党の政教一致問題をはじめとする、創価学会に都合の悪い事実を明らかにした元公明党議員に対しては、激しい攻撃、誹謗中傷を加える創価学会だが、リクルート汚職の池田克也元代議士や利権まみれと報じられた藤井富雄元都議、そして今回の遠山被告らを指弾することはない。

「人物本位」を掲げる創価学会の政治的プライオリティが奈辺にあるかを、遠山事件に関する創価学会の報道姿勢はあらためて示している。

 

  • 参院選選挙協力で自公&創価に齟齬・ひずみ

・1月28日付「共同通信」「創価学会、『人物本位』で支援判断 公明との選挙協力めぐり自民けん制か」

「公明党の支持母体・創価学会(原田稔会長)は27日、東京都内で中央社会協議会を開き、国政選挙や地方選での支援方針について、党派を問わず候補の政治姿勢、政策や実績を中心に『人物本位』で判断すると確認した。夏の参院選を巡り、自民、公明両党による選挙協力の調整が難航しているのを受け『自民側をけん制する狙いがある』(公明関係者)とみられる。

創価学会によると、人物本位を重視する判断基準は、公明党の一部が分党して新進党結成に参加した1994年に決定した。27日の協議会では、こうした方針を改めて確認した。候補の人格や見識、有為な人物かどうかに関し『今後より一層、党派を問わず見極める』とも申し合わせた。

自公両党は参院選に関し、選挙区候補を相互に推薦する方向で調整していたが、公明側は自民の作業の遅れを理由に、単独で選挙準備を進める方針を確認。公明の北側一雄中央幹事会長も27日の記者会見で『推薦を求めないとの山口那津男代表の方針に何ら変更はない』と述べた。

これに対し、自民は公明側との協議再開を求めているが、難航が予想される」

 

※1999年に発足した自公連立政権は、衆参両院選挙をはじめとする各種選挙の選挙協力を通じて、その紐帯を深めてきた。だが今年7月の参院選挙での選挙協力を巡って自民・公明両党さらには公明党の組織母体である創価学会との間で、齟齬・ひずみが生じている。

2月1日付『読売新聞』が、「自民支援は『自動的ではない』……態度硬化の創価学会、候補者支援は『人物本位』」として、さらに掘り下げているので同記事を紹介しよう。

「自民、公明両党による夏の参院選での選挙協力を巡り、公明党が『相互推薦』に応じない姿勢を強めている。同党の支持団体・創価学会は候補者支援を『人物本位』で判断するとけん制しており、自民は態度を硬化させる公明・学会側を解きほぐそうと懸命だ。

『自公は連立与党なので、これからも丁寧に議論を重ね、協力を進められるようにしていきたい』。自民党の茂木幹事長は31日の記者会見で、相互推薦の実現に向けて公明の理解を得ていく考えを強調した。

自民側は相互推薦に否定的だった地方組織を説得し終えて一つひとつ手続きを進めているものの、公明側は、幹部が相互推薦に否定的な考えを相次いで示し、にべもない状況だ。石井幹事長は1月28日の記者会見で『自力でしっかり勝てるようにやっていく』と淡々と繰り返した。

公明の態度硬化の背景には、学会による同27日の異例の発表も影響を与えている。発表では、候補者支援は党派を問わず、『人物本位』で判断するとした。1999年の自公連立より前、公明党の一部が新進党に合流した際の94年の方針をわざわざ確認する内容で、公明関係者は『原点に立ち返って、自動的に自民を支援するわけではないということだ』と解説する。

自民側は『これまでも人物本位だったと基本的に理解している』(茂木氏)などと冷静に対応しようとしているが、改選定数1の『1人区』を中心に、『公明・学会の協力がなくなれば候補者が震えるくらい困ってしまう』と危機感が募っている。(中略)

一方、学会の『人物本位』の条件は、『候補者個々の政治姿勢、政策、人格』や『学会の理念への理解』も挙げている。自民内では、仮に自公の選挙協力がうまくいかなかったとしても、立候補予定者や県連が公明、学会と良好な関係を築けていれば『地方レベルでの連携はできるのではないか』(自民幹部)と期待する向きもある」

1999年の自公連立政権成立以前、創価学会・公明党がその集票力を武器に自民党に接近していた時分、警察官僚出身の平沢勝栄自民党代議士は、創価学会票を覚醒剤にたとえ、「シャブは中毒になる。当初はいいがやがて体がボロボロになる」と、自民党が創価学会票をもらうようになるとやがて依存体質に陥ると警鐘を鳴らしていたが、いまや自民党が創価学会票の依存体質に陥っていることは、共同・読売の報道からも明らか。

昨年10月の衆院選でも多くの自民党小選挙区候補が、創価学会票によって当選もしくは比例復活当選を果たしているだけに、野党共闘に怯える参院選1人区の自民党候補が「震えるくらい困」るというのは偽らざる心情だろう。

もっとも両党が齟齬するにいたる経緯を見ると、仕掛けているのは公明党そして創価学会であり、その底流には創価学会・公明党の焦りと脅えがにじみ出ている。

というものもともと公明党は党勢の退潮を受けて、愛知・兵庫・福岡など、かつては議席を得ていた選挙区から撤退した経緯があり、前々回2016年参院選から再び3選挙区で候補を擁立したのは、「相互推薦」という形式で、それまで自民党を支持していた業界団体などの票を回してもらい嵩上げをはかることを前提としていた。

今回、公明党そして創価学会が自民党に対して不満を露わにしているのは、前回、定数3の兵庫選挙区で公明党は、菅首相の全面協力の下、港湾関係の業界団体票をもらって2位当選を果たしたが、今回、自民党兵庫県連は、自民党候補が3位当選だったことから、公明党への選挙協力に難色を示していたからである。

選挙区での全員当選を「創立100周年に向けての立正安国の法戦」の要諦とする創価学会としては、面子を維持するためにも引くわけにはいかない。まして「常勝関西」での敗北は、選挙闘争を指揮する創価学会執行部の権威失墜に直結する。それが1人区への協力を人質にとっての脅しの背景にあると指摘できる。

また公明党そして創価学会は、比例区800万票の獲得を掲げるが、現実的には昨秋の衆院選でからくも回復した700万票台の維持が目標であろう。しかし衆院289小選挙区に比べて46選挙区と、選挙区数が圧倒的に少ない参院選では、自民党候補からの選挙協力の票数は大幅に減少し、衆院選に比べて参院選の比例区得票数は、毎回40万票ほど少なくなっている。仮に711万票だった昨秋の衆院選から40万票を差し引くと、今年の参院選での得票数は670万票となるが、これに遠山問題というマイナス要因を加えるならば比例区票はさらに大幅に落ち込む可能性が高い。

公明党そして創価学会が、自民党に脅しをかけるのはこうした選挙事情を背景にした焦りの投影に他ならない。

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