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2022年1月

1月号目次

 

閻魔帳

公明党議員もコロナ助成金受給 税金の使い道を監視せよ/段 勲

 

特集/創価・公明が破壊・歪めた無残な「この国のかたち」

この20年余で「公明党=創価学会」が破壊してきた「民主主義たる『この国のかたち』」/古川利明

2つの“予言”と自公連立 憲法形骸化と国会機能封殺/柿田睦夫

「公明のホープ」が体現していた自創野合の闇と深淵/乙骨正生

 

トピックス

複雑化するカルトの政治運動 反カルト関係者との交錯も/藤倉善郎

 

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「公明党と創価学会」を考える(第27回)

公明党の自立路線時代(13)/平野貞夫/平野貞夫

ナニワの虫眼鏡第(31回)

“維新キラー”の女性議員が登場 れいわが持つ「熱」と落とし穴/吉富有治

ヨーロッパ・カルト事情(284)

市民運動が支えるセクト(有害カルト)対策/広岡裕児

 

執筆者紹介 編集後記

 

 

編集後記から

2022(令和4)年が幕をあけました。

創価学会にとって昨年は、「遠山で始まり(1月の銀座豪遊)、遠山で終わった(御用納めの在宅起訴)」1年となりましたが、今年はどうなることでしょうか。

ところで、今号で312号となった小誌の創刊は2002(平成14)年3月1日。今年3月発行の314号をもって小誌は創刊満20年の節目を迎えることとなります。

小誌の発行動機は、創刊号の「編集後記」にある通り、自公連立政権の発足によって、創価学会の政治的・社会的影響力が増大し、政界やマスコミ界が創価学会の膝下に屈することで、憲法の政教分離規定が有名無実化されるとともに、創価学会・公明党に関する正確な情報の発信が妨害される可能性が高くなることへの危機感にありました。

以来20年の月日が流れましたが、小誌の創刊動機となった危機は減少するどころか増大し、小誌に「『公明党と創価学会』を考える」を連載中の、公明党の指南役・裏の国対委員長などと呼ばれた平野貞夫元参院議員によれば、「カルト・ファシズム」が、政界を壟断する極めて危うい政治状況が現出しています。

昨年末の御用納めの日に東京地検特捜部は、遠山清彦元公明党衆院議員(元財務副大臣)らを貸金業法違反で在宅起訴しましたが、逮捕もせずに在宅起訴、それも年末の御用納めの日を狙っての起訴は、年末年始で国民・有権者の関心が薄れることを計算に入れてのこととしか考えられず、危機的な政治状況の一端が、司法畑に露出したと言えるでしょう。

そうした政治状況を打開するためには選挙での賢明な選択が必要です。昨年10月の衆院選で自公は安定多数を確保しましたが、今年夏に予定されている参院選挙で、自公政権に厳しい審判が下れば、政治状況が改善する可能性が高まります。もっとも参議院選挙を創価学会の「永遠性を確立するための」重要な「法戦」と位置づける創価学会は、自公連立政権を維持するために、公明党比例区800万票、比例区・選挙区それぞれで7議席の合計14議席の獲得を目指して、早くも眦(まなじり)を決して選挙態勢に入っています。

3月に創刊20周年を迎える小誌は、有権者の選択に資する情報を提供するために、今年も創価学会・公明党の動静を監視し、宗教と政治・宗教と社会の事実と真実をお伝えする所存です。

特集/創価・公明が破壊・歪めた無残な「この国のかたち」

 

「公明のホープ」が体現していた自創野合の闇と深淵

乙骨正生

ジャーナリスト

 

不可解な御用納めの在宅起訴

暮れも押し詰まった御用納めの12月28日、東京地検特捜部は、遠山清彦元公明党衆院議員ら4人を貸金業法違反で在宅起訴した。同日付『東京新聞 Web』は、事件の概要を〈「公明のホープだった」…遠山清彦元副大臣らを在宅起訴 コロナ関連融資で違法仲介、謝礼1000万円余受領か〉との見出しで、次のように報じている。

〈日本政策金融公庫の融資を貸金業の登録がないまま仲介したとして、東京地検特捜部は28日、公明党元衆院議員の遠山清彦元財務副大臣(52)ら4人を貸金業法違反(無登録営業)の罪で在宅起訴した。遠山被告は仲介の謝礼として1000万円余を受け取ったとされ、起訴内容と金銭の受領を認めているとみられる。

ほかに在宅起訴されたのは、同党の太田昌孝前衆院議員の元政策秘書だった渋谷朗氏(61)、いずれもブローカーの環境関連会社役員の牧厚(74)、コンサルタント業の川島裕(78)の両氏。

起訴内容によると、遠山被告は昨年3月~今年6月、新型コロナウイルスの影響を受けた事業者を支援する公庫の特別融資などを、無登録で計111件仲介。うち29件は牧被告から事業者のあっせんを受け、共謀したとされる。遠山被告は自身の元秘書らを通じて公庫に連絡し、公庫の担当者を依頼主の個人や企業に伝えていた。特捜部は元秘書2人も同ほう助容疑で捜査したが、遠山被告の指示で行われ、従属的な立場だったことなどから起訴犹予とした。

一方、遠山、牧両被告とは別ルートで、渋谷、川島両被告は共謀して2019年6月~今年4月、コロナ特別融資など87件を仲介したとされる〉

財務省が所管する日本政策金融公庫に、財務副大臣が融資を仲介して謝礼金を受け取っていた事実は、職務権限がらみで受託収賄の疑いが濃厚。だが、東京地検特捜部は、受託収賄での立件はせずに貸金業法違反で起訴。しかも逮捕もせずに在宅起訴したことには、政権与党公明党への配慮・忖度が働いているとの指摘がある。

例えば、遠山被告が在宅起訴される直前の12月26日付『AERA dot.』には、元東京地検特捜部検事の若狭勝弁護士の次のようなコメントが掲載されている。

「来年は参院選挙があるので、政治日程に配慮して特捜部は遠山氏らを年内に在宅起訴にしたのだろう。逮捕すれば、捜査は年明けまで長引き、公明党に大きな影響を与える可能性が高いので避けたのだと思う」

まさに忖度としかいいようがないが、そうした背景には、公明党が政権与党であるということに加えて、1965年から今日までの約56年もの間、裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政を審議対象とする参議院の法務委員長ポストを、公明党が握り続けている事実があることも指摘できよう。

ちなみに遠山被告自身も、第168国会(07年9月10日~08年1月15日)と第169国会(08年1月18日~6月21日)で、参議院の法務委員長を務めている。

その遠山被告は、緊急事態宣言下の昨年1月に、銀座の高級クラブで飲食していた事実を『週刊文春』にスクープされ、議員辞職するに至ったが、この銀座の高級クラブやいきつけの六本木の高級クラブでの遊興費に、融資仲介の謝礼を使っていたことも分かっている。しかしそんな遠山被告は、公明党にあって「ホープ」「次の次の代表」とまで言われていたと、『東京新聞 Web』は報じている。

〈◆「次の次は党代表と言われた」

遠山清彦被告は千葉市出身。創価大卒業後、英大学院で平和学博士号を取得した。「『創価の代表』と本人も自負し、博士号取得に強い使命感を抱いていると感じた」と同大元講師の中村久司さん(67)。指導教官だったピーター・バン・デン・デュンゲン氏は「彼が政治の道に進んだことは驚きではない」と話す。

2001年参院選で初当選。衆参で計6期務め、「公明のホープだった。次の次は党代表と言われた」(公明元議員)。比例九州ブロックからくら替えし、今年の衆院選で神奈川6区から出馬予定だったが、緊急事態宣言中の高級クラブ訪問が発覚。今年2月に議員辞職に追い込まれた〉

遠山被告が公明党内で「ホープ」視されていたことは、参議院議員から衆議院議員(九州比例区)へと鞍替えした事実や、議員辞職によって立ち消えとなったが、昨年10月の衆院総選挙で、九州比例区選出から小選挙区神奈川6区の候補へと抜擢されたことからも裏付けられる。

それも前回18年の沖縄県知事選で遠山被告は、辺野古新基地移設に反対する玉城デニー候補の当選を阻むべく、玉城候補に対するデマまで飛ばしたことから、「遠山デマ彦」などと非難されていたにもかかわらず、高い評価を得ていたことになる。

さらには2017年5月3日開催の日本会議系の改憲集会、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」と「民間憲法臨調」共催の公開憲法フォーラムに出席し、司会の櫻井よしこさんから「公明党の婦人部(ママ)の方々、足元、支持者をどうやって説得できるのか」と質された際に、「安保法制の時、御婦人方の会合に70回以上説明してまわった。最初は2割でも1時間説明すれば8割の方々が賛成となった。(いざ改憲となれば)自信を持って説明させていただきたい」と、改憲に前向きな姿勢を見せるなどしたことから、公明党内部ばかりか創価学会内部からも批判の声があがっていたにもかかわらず、当選すれば党幹部への登用含みで小選挙区への転身が図られていたことは、公明党そして創価学会の執行部レベルでの遠山被告への評価が高かったことを示唆している。

そして辺野古新基地反対派を叩く行為も、改憲のお先棒を担ぐ行為も、ともに安倍晋三首相(当時)の政治姿勢に迎合するものであることから、遠山被告の一連の言動は、創価学会ならびに公明党執行部の意向を受けての、自民党のタカ派・右翼勢力と野合・提携するためのパイロット的行為だったといっても過言ではあるまい。

しかも遠山被告に融資の仲介を依頼し、謝礼を渡していた牧被告は、「池田大作のお庭番」とか「都議会のドン」などと言われた藤井富雄元公明党都議会幹事長(昨年7月死去)の側近として知られ、藤井元都議と各界の人脈を取り持つ役割を果たしていた人物。その意味で遠山被告は、まさに創価・公明の奥の院、自創野合の深淵に足を踏み入れていたと言えるのではないか。

また遠山―牧ルートとは別ルートの、もともとは漆原良夫元公明党国対委員長の秘書から太田昌孝元公明党衆院議員の秘書に移動していた渋谷朗被告は、公明党秘書会のまとめ役だった人物。それだけに今回の事件は単なる遠山被告個人、あるいは渋谷被告個人の営利目的や金銭欲に根差す事件というよりは、公明党の構造的体質の一端が露出したものと見ることが可能だ。

 

“口利き&仲介”は公明のDNA

というのも、『週刊朝日』2008年9月12日号が、「追及スクープ 新銀行東京 公明党の『口利き案件』」「600件を超える『口利き』のなんと3分の1は公明党関係者から」との見出しで報じたように、2005年に石原慎太郎都知事肝いりで都民の血税1000億円を投入して設立された新銀行東京が、多額の赤字を抱えて事実上経営破綻していく過程で、多くの公明党都議会議員や元都議、国会議員や区議らが、融資を仲介する「口利き」を行っていた事実があるからだ。

『週刊朝日』によれば、「口利き」を行っていた公明党関係者は、公明党現役都議22人中21人、さらには太田昭宏代表(当時・衆院議員)や石井啓一衆院議員(現幹事長)の現役国会議員2人、藤井氏ら元都議9人、現役区議3人の合計35人に上るが、これに加えて公明党は、なんと「公明党政調会」という組織で、融資の「口利き」を行っていたことが分かっている。

そうした都議や元都議の中には、献金受領後に「口利き」を行ったり、相談役として100万円の報酬を受けていた人物もいる。この新銀行東京の「口利き」には、藤井元都議もかかわっていたが、牧被告とともに藤井氏とも強い関係を結んでいた遠山被告は、藤井氏が保持していた創価学会・公明党の本当のDNAを引き継ぐ「ホープ」として成長することが期待されていたのだろう。

ちなみに新銀行東京は、最終的に東京都民銀行と八千代銀行に吸収合併される形で消滅するが、その過程の08年には、多くの都民が追加融資に反対していたにもかかわらず、自民・公明両党の賛成によって、さらに400億円の血税が公的資金として注入されている。

矢野絢也元公明党委員長は、著書『乱脈経理』において、「我々は自公連立政権の功罪を論じる前に、そもそも連立政権誕生の動機が、税務調査逃れと国税交渉のトラウマであったことを確認しておく必要がある」と、自公連立政権成立の動機を喝破し、1990年から92年にかけて行われた創価学会に対する国税調査が、矢野元委員長らの政治工作によって不発に終わった直後、池田大作創価学会名誉会長が「やはり政権に入らないと駄目だ」と述懐していた事実を明かしている。

公明党が自民党との連立政権に参画していることによってもたらされる、創価学会・公明党にとっての“ご利益”と歪みを、遠山問題を通じて私たちは、まざまざと見せつけられているのかもしれない。

 

乙骨正生(おっこつ・まさお)フリージャーナリスト。1955年生まれ。創価中学・創価大学法学部卒。宗教・政治・社会分野などを取材、週刊誌・月刊誌を中心に執筆。著書に『怪死』(教育資料出版会)『公明党=創価学会の野望』『公明党=創価学会の真実』『司法に断罪された創価学会』(かもがわ出版)など。

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

 

  • 聖教&公明―遠山清彦元議員在宅起訴の記事は同一

・12月29日付『聖教新聞』&『公明新聞』

「遠山元議員ら在宅起訴 貸金業法違反 無登録で公庫融資仲介」「『誠に遺憾、許されぬ』深くおわび 信頼回復へ総力 公明党石井幹事長」

「東京地検特捜部は28日、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス関連の融資を違法に仲介したとして、元財務副大臣の遠山清彦・元公明党衆院議員(52)ら4人を貸金業法違反(無登録)罪で在宅起訴した。

他に在宅起訴されたのは、太田昌孝・同党前衆院議員の渋谷朗元政策秘書(61)、太陽光発電関連会社「テクノシステム」の牧厚元顧問(74)、川島裕元相談役(78)。

起訴状によると、遠山元議員らは2019年6月~今年6月ごろまでの間、貸金業の登録を受けずに、新型コロナの影響で売り上げが減少した企業などへの融資を計198回仲介したとされる。4人とも起訴内容を認めているという」

 

※遠山清彦元公明党衆院議員(元財務副大臣)らが、貸金業法違反で12月28日に東京地検特捜部によって在宅起訴された事件についての、創価学会の機関紙『聖教新聞』と公明党の機関紙『公明新聞』の記事は、石井啓一幹事長の「お詫び」コメント掲載の有無を除いて、一字一句同じだった。

公明党は石井幹事長が遺憾の意を表し、

「一、遠山氏は既に議員辞職をしておりますが、今回のことは公明党の議員として、また公明党の議員秘書として決してあってはならないことであり、誠に遺憾であります。到底許されることではありません。

一、私どもは、政治の信頼を揺るがしかねない問題を招いてしまったという責任を深刻に受け止めております。国民の皆さま、党員・支持者の皆さまに誠に申し訳なく、心から深くお詫びを申し上げます」

とのお詫びのコメントを発表したが、8月に東京地検特捜部が遠山元議員の自宅と会社事務所、太田昌孝・吉田宣弘両公明党代議士の議員会館事務所を家宅捜索した際、「容疑者は公明党の議員でも秘書でもない」などと開き直っていた山口那津男代表のコメントはない。

同様に遠山被告を国会議員とすべく、学会員に遠山支援を煽り続けた創価学会も、『聖教新聞』に『公明新聞』と同一の記事を掲載したのみで、自らの支援責任を明らかにすることも、遺憾の意を表明することも謝罪もせず、無視黙殺を決め込んでいる。

 

  • 混迷する独立教団―「破門(魂の独立)」30周年に

・11月28日付『聖教新聞』「魂の独立から30周年 師弟正義の連帯が地球を照らす」「池田先生の指揮で世界広布は実現」「学会こそ仏意仏勅の唯一の教団」

「本年は日蓮大聖人の御聖誕800年。今月18日には『日蓮大聖人御書全集 新編』が発刊された。『大聖人直結』『御書根本』の信心を貫いてきた仏意仏勅の創価学会によって、太陽の仏法は世界192カ国・地域に広がり、地涌の人華の輝きは全地球を照らしている。この大いなる飛躍の転換点こそ、時代錯誤の権威主義、差別主義に固執し、広布を阻む障魔と化した邪宗門との決別だった」

「(1991年)12月15日、池田先生は東京・大田文化会館で開かれた神奈川・川崎の音楽祭に出席。同日、『日蓮世界宗創価学会』としたためた。これは、大聖人の仏法を世界に広宣流布する、唯一の仏意仏勅の教団が創価学会であることを再確認する意味を込めて、後世のために書き記されたものである」

11月29日付『聖教新聞』「創立100周年へ――希望の橋を架ける 座談会」「魂の独立から30年 仏意仏勅の学会は世界へ飛翔」「宗門は没落の一途」

「沼倉(女性部書記長)昨日28日は、仏意仏勅の学会が、日顕宗(日蓮正宗)から『魂の独立』を果たして30年でした。―中略―

永石(女性部長)この30年で創価の連帯は、当時の『115』から『192』の国と地域へ広がりました。全ては池田先生が矢面に立って学会を守り、死身弘法で世界広布の道を開いてくださったおかげです。

西方(男子部長)一方、日顕宗は、信者数が全盛期の2%まで激減。見るも無残な没落の一途をたどり続けています。正邪は歴然です」

 

※1991年11月27日に日蓮正宗が、当時、信徒団体として所属していた創価学会に対して、教義違背と社会的不正を指摘して「破門通告」を送付してから、昨年11月27日は30年の節目だった。そこで「破門」を「魂の独立」とする創価学会は、「破門」の不当性を強調するとともに、日蓮正宗は没落する一方、創価学会は「日蓮世界宗創価学会」として、世界に発展しているとするキャンペーン記事を、『聖教新聞』に複数回にわたって掲載した。

その記事中に、破門直後の91年12月15日に池田大作名誉会長が、原稿用紙に揮毫したという「日蓮世界宗創価学会」の写真を載せている。記事によればこの揮毫は、「(日蓮)大聖人の仏法を世界に広宣流布する、唯一の仏意仏勅の教団が創価学会であることを再確認する意味を込めて、後世のために書き記されたもの」だとのこと。

掲載写真を見ると、たしかに「池田大作用箋」と印刷された原稿用紙に、吉田松陰を真似たかと思われる書き癖の強い右肩上がりの字で、「日蓮 世界宗創価学会 一九九一年十二月十五日 大田にて 大作」(空白部分は改行)とあるから、池田氏が書いたものなのだろう。

創価学会は2017年に、教団の最高規範だという「会憲」を制定。その「前文」に、「池田先生は、創価学会の本地と使命を『日蓮世界宗創価学会』と揮毫されて、創価学会が日蓮大聖人の仏法を唯一世界に広宣流布しゆく仏意仏勅の教団であることを明示された」とあるが、この揮毫がその根拠なのだろう。

だが「創価学会の本地と使命」を明示したという、創価学会にとって最も重要な宗教的根拠を明示する揮毫が、原稿用紙に万年筆でサラッと書いたような体裁の、しかも署名も「池田大作」ではなく、「大作」と略されたものであることに違和感を禁じ得ない。

池田氏は揮毫がお好きなようで、過去には数多の墨書による揮毫を認めている。そうであれば、わざわざ「後世のために書き記」した重要な揮毫に、墨書ではなくインクで書かれたペン字を選択するものだろうか。だいたい揮毫の「毫」とは、毛筆で文字や絵を書くことを意味する文言である。しかも和紙への墨書なら千年以上の長期保存に耐えるが、アメリカの独立宣言文書が、経年劣化によるインクの退色や剝離を防ぐために、不活性のアルゴンガスを満たした特殊なチタニウム製容器で密閉されているように、インクは長期保存に適さない。

創価学会は、昨年の東京都議選や衆院選を、創価学会の「永遠性を確立」するための法戦と位置づけていたように、いまや「永遠性」という名目で、組織を延命・維持することを自己目的としている。その「永遠性」のシンボルともいえる揮毫を、墨ではなく経年劣化の激しいインクを用いたペン字で行うとは考えにくく、「創価学会の本地と使命」を揮毫したとは、執行部による意義の後付けの可能性が高い。

2014年の「弘安二年の大御本尊を受持しない」宣言に始まる本尊・教義の変更や、17年の会憲制定に至る創価学会執行部の動静を詳細に記した「教学部レポート」(本尊変更に関する創価学会の小委員会に出席していた教学部幹部が作成し、流出したとされる文書)や、「遠藤文書」(教学部レポートの流出を受けて、遠藤孝紀総合教学部長が査問を受ける前に執行部あてに提出したとされる質問書)には、本尊・教義の変更ならびに会憲制定等の一連の動きは、池田氏の承認と支持を受けていない原田稔会長ら執行部による独断専行であり、創価学会に混乱をもたらすと批判している。例えば「教学部レポート」の「総本部の御本尊と日蓮世界宗創価学会会憲の問題点」には、次のようにある。

〈1.御本尊教義変更と会憲制定の計画

■ いわゆる「戒壇の大御本尊」から決別し、総本部に安置される「学会常住御本尊」をもって創価学会の根本の御本尊とする。教義上の大転換の計画が進んでおります。その大転換が、総本部完成という今の時に合わせ、「池田先生の強い意向」として発表されるのです。総本部である「広宣流布大誓堂」に設置される池田先生の碑文にも、「学会常住御本尊」が「大御本尊」であると明記されています。

■ さらに、総本部完成とともに世界宗教としての体制も完成させるという構想のもと、全世界の創価学会の憲法である「日蓮世界宗創価学会会憲(世界創価学会会憲)」が制定され、これに合わせて「創価学会会則」も改定される運びとなります。「会憲」には、「学会常住御本尊」や「広宣流布大誓堂」を信仰の根本にする旨が謳われています。また、「日本創価学会会長」が「世界創価学会会長」に就任するという規定が明文化され、「日本創価学会会長」一人が、教義・人事・財政・活動方針の全てにおいて世界のSGI組織をコントロールする体制が打ち立てられることになります。

■ 計画は十分な検討も準備も欠いたまま、拙速に進められており、学会にとって非常事態です。

① 実現すれば、国内外の会員の信仰が根本から動揺し、組織も混乱し、日本と各国のSGIとの関係も悪化し、結果として創価学会が衰退を余儀なくされることは必至です。

② 全てが「池田先生の強い意向」として推進されているため、池田先生の歴史と業績が致命的に汚され、一切の混乱の責めが池田先生一人に集中する事は確実です〉

同様に「日蓮世界宗」の普遍性や、日本の創価学会会長の権限が拡大されることの問題性についても、「教学部レポート」は次のように批判している。

〈「日蓮世界宗」は「世界宗教」なので、その「世界性」「普遍性」「平等性」が問われます。海外から「世界の会長を日本の会長が務めるという条文は、なぜあるのか。仏教の平等の精神に悖るのではないか」と疑問が呈された場合、全く答えようがありません。日本の侵略戦争の犠牲になった国々から、特に、治安当局や悪意をもったマスコミから、日本優越主義と受け止められることも懸念されます。特に、韓国や台湾では、「日本宗教である」ことが弾圧の口実になっています。日韓関係、日中関係も悪化の一途を辿っておりますので、更に事態が悪化した場合、再び弾圧や迫害が起きないとも限りません。

■ 「会憲」には、日本創価学会会長(=世界創価学会会長)の権力を制限する規定は一つも定められていません。池田先生のいらっしゃるかぎり、それでも何ら問題もありません。今の「創価学会会則」でも、日本の会長の権力を制限したり、会長を罷免したりする規定はありませんが、池田先生が上から厳しく指導されているので、実質的に権力が制限されているのと同じ状態です。しかし、遠い将来を考えれば、全世界の教義・人事・財政・活動方針といった重要事項について一人の人間が全権を操れる体制は極めて危険と考えられます。700年前の「日興遺誡置文」にさえ「時の貫首為りと雖も仏法に相違して己義を構えば之を用う可からず事」「衆議為りと雖も仏法に相違有らば貫首之を摧く可き事」と、「貫首」と「大衆」の双方の権力を抑制する規定が存在しています。各国のSGIの中心者たちは、「会憲」の反民主的・前近代的・権威的な内容に強い不安と恐怖を抱いています〉

さらに「遠藤文書」では、一連の改変を推進する執行部の姿勢を、戸田会長や池田会長に対する「分派活動」とまで非難している。

創価学会は、「教学部レポート」と「遠藤文書」を怪文書扱いしているが、「教学部レポート」と「遠藤文書」に書かれた内容は、一連の創価学会の動きを予見するものとなっており、両書は教学部最高幹部が創価学会の内情を正確に記載したものと見られている。

東京都議選直後の昨年7月の本部幹部会で原田会長は、「組織運営上の方法論や諸課題、あるいは公明党の政策などへの賛否」などについて、執行部の決定に反する者を「反逆者」と決めつけた。

破門30年にあたって執行部が、原稿用紙に書かれたインクペン字の「日蓮世界宗創価学会」を『聖教新聞』で披露したのは、執行部の進める改変路線は、池田氏の意向に基づく正当な行為と強調するために他ならない。遠山問題などでますます創価学会・公明党の抱えている矛盾や欺瞞が露わになる中で、求心力を維持しようと足掻く創価学会執行部。世界宗教として飛躍しているという創価学会だが、その混乱と混迷は深い。

 

  • 池田健在をアピール

・12月3日付『聖教新聞』「池田先生ご夫妻――創価大学キャンパスを視察」「小説『人間革命』起稿の日に 東京牧口記念会館で勤行」

「池田大作先生ご夫妻は2日、白雪の富士と紅葉輝く東京・八王子市の創価大学、創価女子短期大学のキャンパスを車で視察。(中略)併せて、キャンパスの近接地に建設中の創大駅伝部の新寮を視察した。

創大の視察に先立ち池田先生ご夫妻は、同市の東京牧口記念会館を訪問した。(中略)先生ご夫妻は先師・牧口常三郎先生の遺徳をしのび、勤行・唱題するとともに、『青年・飛躍の年』へ勢いよく前進した全国・全世界の同志の健康・福徳・勝利を祈念した」

 

※本尊・教義を含めた一連の改変の根拠として、池田氏が原稿用紙にインクで書いた「日蓮世界宗創価学会」の揮毫をアピールした創価学会。その直後に「池田先生ご夫妻―創価大学キャンパスを視察」と、池田氏の健在を強調したのは、一連の改変の根拠とする池田氏の“意思”が“存在”することをアピールするにあることは明らか。

車で視察したという創価大学訪問だが、箱根駅伝に出場した駅伝部の寮が含まれているのは、期待の表れだったのだろうが、残念ながら今年は目標の往路優勝・総合3位に届かず7位だった。また創価大学に隣接する東京牧口記念会館で勤行したということだが、写真は掲載されていない。池田氏の名のもとに改変を進める創価学会執行部だが、齢94を迎えた池田氏を利用することもそろそろ限界なのでは。

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