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3月号

3月号目次

 

閻魔帳

国税庁長官逃亡の真実/浦野広明

 

特集/有言不実行の典型──アリバイのためのマンネリ提言

 

もはや“代作”でもない提言 辺野古で見せたその役割/柿田睦夫

池田「死に体」を垣間見せた「SGIの日」記念提言/乙骨正生

迫力に欠けた「核兵器禁止条約」への「SGI」提言/段 勲

 

トピックス

幸福の科学の圧力で学生制作のドキュメンタリーが上映中止に/藤倉善郎

トピックス

宮司任命権の掌握を図る神社本庁/橋本征雄

トピックス

芸能界への本格復帰を狙う桜田淳子 説明責任は果たされるのか/鈴木エイト

 

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

新・現代の眼(第19回)

「偉大な兄弟」/菅野 完

ヨーロッパ・カルト事情240

国会報告「健康の分野におけるセクト的性格の運動の影響」(7)/広岡裕児

執筆者紹介  編集後記

 

編集後記から

韓国の平昌で行われていたオリンピック冬季大会が無事に終わりました。小誌3月号発行時には、パラリンピックが開催されており、雪上あるいは氷上での熱い戦いが続いていることでしょう。

今回のオリンピックでは、日本選手団が活躍し、過去最高のメダル数を獲得しました。羽生結弦選手の故障を克服しての2連覇や、大本命だったソチで4位だった高梨沙羅選手が銅メダルを獲得したこと、さらにはカーリングの女子チームが初のメダルを獲得したことなどが大いに話題となりましたが、特に印象深かったのは、日本選手団の主将を務めたスピードスケートの小平奈緒選手の言動でした。

女子500メートルのレースで、小平選手がオリンピック新記録を出した後に、後続の選手のために観客に静粛を求めた姿、またレースが終了し金メダルが確定した後、バンクーバーとソチのチャンピオンで、地元韓国でのオリンピックに三連覇をかけていたにもかかわらず、2位と惜敗したイ・サンファ選手に寄り添い、互いに健闘を讃えあった姿は、オリンピック史にも刻まれる名場面だったのではないでしょうか。

日韓関係には、歴史認識問題や領土問題があり、かならずしも良好な関係ではありませんが、小平選手とイ選手のお互いをリスペクトするスポーツマンシップにのっとった友情溢れる姿からは、そうした国家間あるいは民族間の対立や相克を乗り越える気高い人間性の発露を垣間見ることができました。

思えば今回のオリンピックは、北朝鮮とアメリカの軍事的緊張が高まる中での開催であり、パラリンピック終了後には米韓合同軍事演習をめぐる対立から、再び緊張が高まることも懸念されていますが、国際紛争を軍事力で解決しようとの動きを批判する声や、反核の声は、世界各国の市民の間に満ち満ちており、そうした声を背景に、昨年7月には国連で核兵器禁止条約が採択されました。しかし、唯一の戦争被爆国である日本は、アメリカの核抑止力に依存していることを理由に、条約に反対の立場をとっています。

そうした日本政府を、核兵器廃絶を悲願とする創価学会の池田大作名誉会長は厳しく批判すべきですが、今年1月に発表された提言の内容は、物足りないの一言に尽きます。もっとも、すでに「死に体」で、誰が書いているのか分からない提言では、政府・与党に与えるインパクトも限られているでしょう。詳しくは特集をご一読ください。

特集/有言不実行の典型──アリバイのためのマンネリ提言

もはや“代作”でもない提言 辺野古で見せたその役割

柿田睦夫

ジャーナリスト

 

 

質的にも変化する“代作”

相変わらずの超長大論文だ。聖教新聞が1月26・27日の両日にわたって掲載した「創価学会インタナショナル会長 池田大作」の「『SGIの日』記念提言」。上・下あわせて8ページにのぼる。

長大論文であるけれど、その3分の2近くは古今東西の学者・文化人や著名な平和・人権運動家の発言で埋まっている。これもいつもの通りだ。しかも登場人物の多くと「私は〇年〇月に会った」という記述が並ぶ。「私はこんなに高名な人士と交友しているんだぞ」という、さりげない自慢話にも思えてくる。

ところが、登場人物の一人であるICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のフィン事務総長が1月17日に創価学会本部を訪問したにもかかわらず、池田氏は対面も会話もしていない。著名人好みで、90歳とはいえ旺盛な執筆活動もしているはずの池田氏はなぜ会わなかったのか。それとももはや会える状況にはないのだろうか。

「池田大作著」とされるものの多くが“代作”だということは、すでに公知のこととして語られている。創価学会本部を懲戒解雇され、除名されてもなお池田氏を師匠と仰ぐ3人の元本部職員は『実名告発創価学会』で「私たちは『新・人間革命』をはじめ、師匠の指導や会合へのメッセージが、本部職員によって作られている実態を知っていた」と述べ、次のような事実を明かしている。

「(聖教新聞連載の)『新・人間革命』は聖教新聞社の中に作成チームがあり、資料集めから原稿作成に至るまで担当し、最終的に第一庶務(池田秘書室)がチェックをして完成させている。『わが友に贈る』も聖教新聞の記者が作成し、やはり第一庶務がチェックして完成させる」

「『法華経の智慧』や、師匠と世界の識者との対談集の作成も、実際は師匠が『聖教』の局長、部長クラスの新聞記者に著書の大方針を伝え、その後は担当した弟子(『聖教』記者)が作成したと職場上司から聞いていた。前述したが、ローマクラブ共同代表のヴァイツゼッカー博士も、『池田名誉会長との対談集は、直接名誉会長と会って作っている訳ではなく、ドイツSGIが日本の学会本部との間に入ってくれて作っている。池田先生とは数年前に創価大学の卒業式で一度会っただけなのです』と証言している」

“代作”を一律的に非難する気は毛頭ない。多忙な人にはよくあることだ。著名な作家の作品にもスタッフが執筆したものがある。もちろん作家自身が最終的にチェックし、筆も入れるのだが。

「SGI提言」はどうか。本誌2月号の「信濃町探偵団」が、全国紙が同提言をどう報道したのかを詳しく紹介している。

朝日・毎日・産経などはすべて「創価学会の池田大作名誉会長は平和提言を発表する」というスタイル。つまり提言は池田氏作成のものだとして伝えている。

読売新聞はそうではない。「創価学会は、(提言を)まとめた。『平和提言』として池田大作名誉会長名で26日に発表する」と書いた。提言を作成したのは創価学会であり、池田氏の名前を使って発表するという内容だ。

どちらが正確なのか、いうまでもないだろう。読売新聞は昨年からこの記述に変えている。少なくても昨年1月以前の段階で、「池田大作著」の実相を見切ったということだろう。

それにしても朝日や毎日などの報道姿勢はいかがなものか。創価学会がそう言ったからといってそれを鵜呑みにするのでなく、事実はどうかの確認くらいはすべきではないのか。これでは首相官邸の言い分を丸ごとタレ流すNHKニュースと同じではないか。

ところでこの池田“代作”についてはここ数年の間に大きな変化があったように見える。前記『実名告発』の筆者たちが創価学会本部に在籍していた2012年ごろまでは、代作させる前に池田氏が論文の「大方針」を伝え、事後にチェックすることくらいはしていたという。それがいまも行われているのかという疑問である。

 

“池田抜き”路線の進行

創価学会執行部は2014年以降、教義・本尊規定の変更を皮切りに、会則と同前文の変更、「創価学会仏」の創設、「会憲」制定と矢継ぎ早に組織や制度の改変を進めてきた。それはまた、ポスト池田体制への移行作業である。

15年の会則前文改定(のち会憲前文)で、池田氏を新たな「日蓮世界宗創価学会」の開祖的存在に祀り上げ、前文の結び部分を「(世界広宣流布の)実現を代々の会長を中心とする世界の弟子に託された」と過去形に見える表現にした。池田時代は終わったとの印象である。

16年には会則3条を変え、牧口・戸田・池田の「三代会長」の呼称を「先生」に定めた。牧口・戸田はすでに故人であり、変更のポイントは創価学会名誉会長・SGI会長という池田氏の現職の肩書きを削除するということになる。

そんな流れを重ねあわせると、従来型の池田“代作”ではなく、読売新聞が指摘するように池田大作氏の名前を使って発表する形に変化したと見えるのだ。

16年の「創価学会仏」創設では、原田稔会長はこれが池田氏の指導であり、「ご指導を会則に加えた次第です」と説明した。ところが17年の「会憲」制定では「池田先生にご報告申し上げ、ご了解をいただき」と説明した。会の憲法ともいうべきものを池田氏の指導ぬきに決め、事後報告で済ませたということである。

“池田ぬき”路線を象徴的に示したのが2月4日投開票の沖縄県名護市長選挙だった。

「小さな町の大きな選挙」だった。政府・自民党は人口7万人のこの町に菅義偉官房長官、二階俊博幹事長ら100人規模の国会議員を投入。国家権力が総力をあげてこの選挙に襲いかかった。

理由はただ一つ。辺野古の基地建設に反対する稲嶺進市政の転覆だった。名護市には米軍基地キャンプ・シュワブがある。冷戦期に核兵器を貯蔵していた弾薬庫があり、実践訓練場となる森林やダムもある。これに加えて自然豊かな大浦湾を埋め立て滑走路や大型艦船停泊施設を造る。完成すれば米海兵隊第一級の出撃基地となる。使い古した普天間基地とは桁違いの規模と設備。普天間「移設」ではなく、耐用年数200年の辺野古「新基地」である。

だが工事は護岸工事の4%、工事全体の1%しか進んでいない。翁長雄志知事や稲嶺市長の許可権限に阻まれてきたからだ。政権がこの選挙に総力を注ぐ理由がそこにあった。

池田氏は繰り返し「核も基地もない、平和で豊かな沖縄を」と語ってきた。それはあの地上戦を強いられ、土地を基地に奪われ、事故や犯罪の危険にさらされている沖縄民衆の心を汲んだものだっただろう。少なくともこれまで、沖縄の創価学会や公明党もその立場を表明してきた。だが今回、創価学会はあっさりとそれを切り捨て、安倍政権の推す基地容認派についた。

「辺野古の『へ』も言わない」という争点隠しの選挙戦略や、政権がどのようにして公明党=創価学会を自陣営側に引き込んだのかという経過は、本誌2月号の乙骨正生氏のレポートに詳しいのでここでは省くが、選挙の当落に直結する役割を演じたのが創価学会票であり、学会が得意とし、基地容認派が組織ぐるみで行った期日前投票だった。

「公明党支持層」の投票は自主投票だった前回の2倍に増え、前回は二分された投票先が今回は9割が基地容認派候補に流れた。

投票日のNHK出口調査では基地反対の稲嶺氏が上回っている。にもかかわらず当落が逆転したカラクリが期日前投票である。今回投票総数の6割に当たる2万票超が期日前投票であり、投票日を待たずして当落がきまっていたのだ。

選挙本番に入って論戦が本格化する前に組織的に投票させてしまう。有権者の選択肢を制限するこのやり方こそ、創価学会が積み重ねてきたノウハウだといえよう。

 

柿田睦夫(かきた・むつお)フリージャーナリスト。1944年生まれ。業界紙記者などを経て1979年から「しんぶん赤旗」社会部記者。退職後「現代こころ模様」シリーズなどで「宗教と社会」の関わりを取材。葬儀や戦後遺族行政に関わるレポートも多い。『霊・超能力と自己啓発─手さぐりする青年たち』(新日本新書、共著)『統一協会─集団結婚の裏側』(かもがわ出版)『現代葬儀考─お葬式とお墓はだれのため?』(新日本出版社)『宗教のないお葬式』(文理閣、共著)『これからの「お墓」選び』(新日本出版社)『自己啓発セミナー─「こころの商品化」の最前線』(新日本新書)『現代こころ模様─エホバの証人、ヤマギシ会に見る』(新日本新書)など著書多数。

信濃町探偵団──創価学会最新動向

  • 戸田会長の誕生日を祥月命日と報じた教学理論誌

・『大白蓮華』2018年2月号「お詫びと訂正」

「1月号の企画『勝利を刻め! 本部幹部会とともに⑤』の21ページで、『戸田先生の祥月命日である2月11日』との記述は、『戸田先生の生誕の日である2月11日』の間違いでした。心からおわび申し上げ、訂正いたします。 大白蓮華編集部」

※創価学会が教学理論誌として、幹部・活動家に購読を推奨する「大白蓮華」。その目玉記事である池田大作名誉会長を礼賛する連載記事中で、創価学会会憲で「永遠の師匠」に位置づけられ、同じく「永遠の師匠」である池田大作名誉会長(三代会長)が、「恩師」と仰ぐ戸田城聖会長の誕生日である2月11日を「祥月命日」としてしまった編集部が、「お詫びと訂正」を載せている。

人間には誰しも間違いがある。したがって好ましいことではないが校正ミスも雑誌にはつきもの。しかし創価学会の教学理論誌が、「永遠の師匠」「恩師」の誕生日と祥月命日を間違えるとは噴飯もの。

このミスの背景には、すでに戸田会長の死去から60年。生前の戸田会長を知る人もほとんどいなくなり、池田教化を強める創価学会にあっては、教学理論を担当する部門の職員でさえ、戸田認識が希薄になっていることの証左にほかならない。「明治は遠くなりにけり」ならぬ「戸田は遠くなりにけり」なのだ。

 

  • 小説『新・人間革命』が完結

・2月11日付『聖教新聞』「小説『新・人間革命』第30巻を発刊 上・下2分冊」「師弟不二の大叙事詩が完結」

・2月23日付『聖教新聞』「総県長会議での原田会長の指導(要旨)」

「戸田先生の生誕の日である2月11日、池田先生は恩師記念会館で勤行・唱題をしてくださいました。その同じ日の聖教新聞に大きく報道された通り、小説『新・人間革命』第30巻は、上・下2分冊で刊行されることが決定しました。

『新・人間革命』執筆開始から25年、池田先生が命を削る思いで紡ぎ出してくださった“師弟不二”の大叙事詩は、いよいよ完結を迎えます。

私たちは、先生に心からの感謝を捧げるとともに、今この時、先生と同じ時代に生き、崇高なる師弟の精神を学ばせていただけることを最大の喜びとして、小説『新・人間革命』の研さんに取り組んでいきたい」

※昭和39年12月に沖縄で執筆が始まり、平成5年まで続いた『人間革命』(12巻)の続編として、平成5年11月18日から連載が続いている『新・人間革命』が、今年30巻で完結することを原田稔会長が発表した。現在、『新・人間革命』は、日蓮正宗と創価学会の第一次紛争渦中の昭和54年に会長を辞任した池田大作会長(『人間革命』『新・人間革命』では山本伸一)が、復権にむけて反転攻勢中という昭和55年から56年前後を描いている。

池田氏が会長を辞任した昭和54年の記述については、当時の創価学会執行部が日蓮正宗宗門からの批判に応じて、池田会長の辞任を求めたという経緯があるが、これを池田氏は「不満の中の大不満」として、復権後、執行部を構成していた秋谷栄之助五代会長や原田稔現会長らを激しく非難した事実がある。だが、『新・人間革命』は“小説”であることから、そうした生々しい事実や、歴史的事実にはほとんど触れず、池田氏と執行部にとって都合の良いストーリーだけが綴られている。

現在、創価学会は、日蓮正宗から破門され敵対関係に陥ったことから、日蓮正宗を礼賛していた『人間革命』の記述の改竄を続けているが、今後、破門に至る日蓮正宗との第二次紛争の過程や、非自民連立政権と自公連立政権で揺れ動いた姿を描くのは、あまりにも不都合という背景もあるのだろう。

すでに「死に体」と見られる池田氏には、もはや『新・人間革命』が続いているという認識があるのかどうかも、30巻という切りはいいが、ストーリーとしては中途半端な時期に完結する要因といえようか。

 

  • 新聞拡販に功徳?!

・2月23日付『聖教新聞』」総県長会議での原田会長の指導(要旨)」

「4月20日の創刊記念日に向けて、聖教新聞の拡大にも力を入れてまいりたい。先生はかつて、次のように随筆につづられました。

『「聖教なくしては、広宣流布はできない!』と高らかに宣言したい。仏法の真髄中の真髄を、現代の世界に展開しゆく聖教の拡大は、それ自体、大折伏に通ずる。功徳も計り知れない」

先生が“精神の正史”である小説『新・人間革命』を連載してくださっている今こそ、一人でも多くの友人・知人に、また激励に歩く中で未購読の内部の方に、新たに立ち上がった青年部などには『セイキョウオンライン』も活用しながら、聖教拡大に勇んで挑戦してまいりたい」

※創価学会の主要活動は、集金(財務)に集票(選挙支援)、顧客獲得(折伏)と新聞拡販(聖教啓蒙)の4本柱。このうち集金・集票・顧客獲得には「功徳」があるとの主張がなされていたが、ここにきて原田会長が、池田名誉会長の言を引いて新聞拡販にも「功徳は計り知れない」とアピールした。

宗教企業・創価学会ならではの特異な教義というか呆れるばかりの理屈である。

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