10月号目次
閻魔帳
違憲・権力濫用の安倍冒頭解散と、その片棒を担ぐ公明党/柿田睦夫
特集/降って湧いた創価学会会憲制定&解散総選挙
解散・総選挙でかき消される「創価学会会憲」に込められた「本尊問題」/古川利明
亡国、自公連立政権に幕を 「国家の破滅に近づく」と福田元首相が警鐘/川﨑泰資
衆院解散と「創価学会『会憲』」制定の深層/段 勲
トピックス
幸福の科学、“第2の清水富美加”騒動から衆院選へ/藤倉善郎
トピックス
統一教会・家庭連合と衆院候補者の関係実態/鈴木エイト
- 連載
信濃町探偵団・拡大版──創価学会最新動向
新・現代の眼(第14回)
希代の詐欺師/菅野 完
ヨーロッパ・カルト事情(235)
国会報告「健康の分野におけるセクト的性格の運動の影響」(2)広岡裕児
執筆者紹介 編集後記
編集後記から
9月28日招集の臨時国会の冒頭に安倍晋三首相が解散に踏み切りました。国会冒頭の解散は戦後3回目だそうですが、改造した新内閣が、所信表明も代表質問も行わないまま解散するのは戦後初のこととか。
しかも先の通常国会で、森友問題や加計問題、さらには陸上自衛隊のPKO部隊の日報隠しで厳しい野党の追及を受け、支持率が急落した安倍政権は、内閣改造を行って国民の目をくらますとともに、憲法53条に基づく野党の国会開会要求を無視し続けたあげく、ようやく国会招集となったら、その冒頭に解散するというのですから、議会制民主主義を踏みにじる、国民を愚弄した暴挙としかいいようがありません。
おそらく野党の混乱・準備不足の隙をついて、いまなら勝てるとの目算で解散に踏み切ったのでしょうが、小池百合子都知事率いる希望の党の登場で、選挙の帰趨はにわかに混沌としてきており、あるいは自民党は大幅に議席を減らすかもしれません。
もっとも自公連立の維持を企図する公明党そして創価学会は、仮に自民党が敗北し、あるいは希望の党を核とする政界再編を招いても、困ることはないとたかをくくっていることでしょう。なぜかならば小池知事もまた、都知事就任直後から公明党と連携した事実、あるいはそれ以前の日本新党・新進党そして保守党・自民党時代も、小池知事は、各種選挙で公明党候補の応援に尽力してきた事実が示すように、政治信条や政策以前に、そもそも創価学会・公明党と連携することを、「初の女性宰相」を目指す自らの権力奪取に向けた政治手法にしている、狡猾な政治家に過ぎないからです。
「寛容な改革保守」を唱える小池知事の方が、ゴリゴリの右翼である安倍首相よりも与(くみ)しやすい、あるいは公明党・創価学会がそう判断しないとも限りません。小池知事が非自民連立政権を組んだ日本新党出身であり、新進党でも同じ釜の飯を食った間柄であることも、公明党にとってはマイナス材料にはならないはずです。
かつて池田大作創価学会名誉会長は、松下幸之助氏との対談において、創価学会票を紐帯とする保守2党論に言及している事実もありますが、創価学会票が選挙の帰趨や、政界再編の動向を左右するという日本の不幸な政治的現実を変えることが急務であることを、小誌は今後とも訴え続けたいと思います。
特集/降って湧いた創価学会会憲制定&解散総選挙
解散・総選挙でかき消される「創価学会会憲」に込められた「本尊問題」
古川利明
ジャーナリスト
破れかぶれ解散は安倍の焦りと打算から
首相の安倍晋三が、9月28日に召集された臨時国会の冒頭、衆院を解散したことで、総選挙に突入した。今回の安倍の衆院解散が、森友、加計学園問題の国会での追及を封じ込めるための「疑惑隠し」が目的であることは、誰の目にもわかる。森友学園が設立しようとしていた小学校の名誉校長には、当初、安倍の妻・昭恵が就いていたし、大学獣医学部の新設を目指す加計学園は、安倍の刎頚(ふんけい)の友である加計孝太郎が理事長として仕切っている。しかし、安倍は「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と大見得を切る一方で、今年6月19日の会見では「(疑惑解消に向けて)必ずしも国民の理解を得られていない。率直に認めなくてはならない」と低姿勢を見せ、「今後、真摯に説明する」と約束していた。にもかかわらず、安倍は、野党からの臨時国会の早期召集要求を無視した挙げ句、所信表明演説も、それに対する各党からの代表質問も受け付けないまま、いきなりの解散劇である。戦後、こうした国会冒頭での衆院解散は、過去に3例あるものの、今回のように改造を含めて新内閣が発足後に、所信表明演説をせず、そして、それに対する質問も受けずに解散した例はない。ましてや、安倍は「真摯な説明」を国民に誓ったのに、それを完全に放棄したわけである。
ただ、安倍が今回、追い込まれる形で、再び「大義なき解散」に打って出た背景には、今年7月の東京都議選での自民大惨敗を機に、池田大作を創立者とする公明党がコウモリ飛行をおっ始めたことで、安倍の悲願である「改憲」に赤信号が点っていたことが大きい。このことを報じた朝日新聞(9月18日付朝刊)によれば、「自民党関係者の話」として、公明党は「衆院選を経ないと発議を認めない」とまで突きつけていたというのである。憲法改正の発議には衆参両院の3分の2以上の賛成が必要だが、それでも敢えて「議席減のリスク」を承知の上で、安倍が解散に打って出たのは、そうした膠着した状況を打開せんがための焦りと、とにかく、「内閣支持率がやや持ち直し、野党の選挙態勢が整っていない今なら、傷が最も少なくて済む」との打算からである。しかし、傍目には、旧日本軍のバンザイ突撃そのものであり、それで言えば、「解散権の私物化」を極めた「アベによる、アベのための、アベの延命だけが目的」の破れかぶれ解散に他ならない。
屋上屋を架す創価学会の憲法「会憲」を制定
そこで、創価学会である。
創価学会の選挙は「K」と呼ばれる活動家が、学会内隠語で言うところの「寝てる人(=活動を休眠中の学会員)」もいるので、まず、そういう人たちを叱咤激励して喝を入れたのち、「F(フレンド)票」と呼ばれる、学会員以外の外部の人間に投票を呼びかけていくものである。そうやって、本番に向け、まず、寝てる人を起こし、内部を固めるにあたり、日頃の座談会や聖教新聞の拡張といった活動を通じて、「池田大作に対する信心」を溜めていくことが、選挙を戦い抜くエネルギーの源泉になるのである。
それを考えると、この7月に国政選挙並みに力を入れた東京都議選を終えたばかりの状況では、本来であれば、学会員を少し休ませ、リセットする期間であった。それで言うと、信濃町としては、再来年の19年夏に参院選があることから、諸々の準備期間を考慮すると、衆院選は来年中の、通常国会終盤か、自民党総裁選を挟む秋以降が、ベストだったのだが、その安倍の大義なき破れかぶれ解散に、まさに「どこまでも付いて行きます下駄の雪」とばかり、追従するだけだったのである。
そうした折り、聖教新聞(9月2日付)によると、創価学会では、この9月1日に開かれた総務会で、会長の原田稔から提案された「創価学会会憲」なるものが、全員の賛同で可決された(今年の11月18日より施行)。創価学会においては、組織運営の根本を定めたものとして、既に「創価学会会則」があるが、前文と15条の本文からなる今度の会憲は、第14条で「この会憲は、この会の根本規範であり最高法規であって、他の規定に優先する」とある。その総務会に続いてあった全国総県長会議で、原田が「会の憲法ともいうべき」と言及しているように、効力においては、既にある会則より、こっちの会憲の方が優先されるということになる。ただ、会憲の中身を精査すると、前文は会則と一字一句違わず、全く同一で、その後、本文の第1条(名称)から第4条(目的)まで、これもまた会則と同じ文言なのである。第5条(構成)は、会憲で新たに出てきているものだが、とはいえ、全体のかなりの部分において、じつは会則と内容がダブっており、それで見る限り、「屋上屋を架した」ようにも思える。
今回、制定された会憲では、原田がその全国総県長会議で「世界教団としての体制を構築していく」と触れているように、見た目には、第10条で「世界広宣流布諮問会議」の新設を謳い、続く第11条で、それまで会則の最後の方にある補則の第83条で、要は付け足しとして放り込んでいた「創価学会インタナショナル(SGI)」を、会憲では、こうして目に付く場所に持ってきたことで、もっと大々的に認知した格好にはなっている。しかし、この「世界に向けての広宣流布」というお題目自体は、91年に宗門である日蓮正宗から破門されて以降、「宗教的なレゾン・デートル」を喪失した創価学会が、それに代わるものとして、ずっと声を大にして唱え続けていることで、真新しさは、何もなく、むしろ、本心を悟られないための「目くらまし」として使っているところがある。
独断で新本尊制定を可能にする会長の権限強化
そこで、会憲における最大のキモは、既に会則に規定されている「創価学会会長」の職務について、上書きした形の「第9条」である。会則との決定的な違いは、その「第9条の3」で、「会長は、この会の教義および化儀を裁定する」としているところである。従来の会則では、第11条(教義・化儀の裁定)で、「それ(=教義・化儀の裁定)」にあたって、「師範会議および最高指導会議に諮るものとする」とあるのだが、会憲では、この部分がすっぽりと抜け落ちてしまっているのである。ちなみに、従来の会則では、その「教義および化儀の裁定」にあたっては、第30条で重ねて「最高指導会議の意見を聞かなければならない」と規定されており、もし、今後、創価学会が、池田大作が書写したものを正式な本尊としようとする場合、当然、「教義および化儀の裁定」に関わる事項のため、内部手続きにおいては、その「最高指導会議」と「師範会議」に必ず諮らなければならない。ところが、これまでの会則に代わる今度の会憲では、そこの部分がバッサリと削られているため、要は「会長の独断で新本尊の制定」が可能なのである。わかりやすく例えるなら、今度の「究極の悪法」こと、共謀罪法案の採決劇でクローズアップされた、「委員会採決の省略」を規定した国会法の「中間報告」と、全く同じなのである。
これは、どこの教団もそうだが、「教義の純粋化」を図るため、そうした専門集団を組織内に置いて、日夜、研鑽させているのだが、それが創価学会においては、会則の第52条で「教義および化儀を研究し、教学の振興をはかる」と規定されている、この「師範会議」なのである。ところが、今度の会憲においては、この師範会議の存在が骨抜きにされており、それに変わる形で、何やら、現時点では正体不明の「教師および准教師」なるものが第13条で新設されている。さらには、この会憲の改正にあたる「会憲改正会議」の会議員は、「全員、この教師の中から会長が、30名以内で任命する」というのである(第15条)。師範によって構成される師範会議とは、あくまで教義面における職務だったが、その新設される教師の中から会長がさらに選抜して作る「会憲改正会議」の方は、そこから飛び越えて、よりもっと組織運営の中枢に参画していく可能性があり、とにかく、そうしたことも含め、今度の会憲では、会長の権限が強化されているのが、大きな特徴である。
で、ここから先は、あくまで筆者の推測だが、例の「本尊問題」について、原田は池田から「どうなっているのだ」とせっつかれるなかで、泥縄式にこうしたしくみを構築したのではないだろうか。それで言うと、これまで池田大作がさんざんやってきた「組織の私物化」の最終段階としての、まさに「教義の私物化」に他ならない。本来であれば、この本尊問題は、大きく炸裂して組織に激しい動揺をきたすのは間違いないのだが、降って湧いたように起こった解散・総選挙によって、ウヤムヤのままかき消されそうな気配であるため、今後、さらに凝視していく必要がある。(文中・敬称略)
古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』(いずれも第三書館刊)など著書多数。
信濃町探偵団・拡大版──創価学会最新動向
9月1日、創価学会が教団の最高規範・最高法規として「会憲」を制定した。平成22年5月以来、大衆の前に姿を見せない池田大作名誉会長の健康状態の悪化を背景に、ポスト池田体制の確立に腐心してきた創価学会。今回の「会憲」制定は、平成25年以来、本尊・教義を変更するなどしてきた一連の作業が最終段階に入ったことを示唆している。
というのも「会憲」の肝は、会長権限の強化と創価学会総本部の中央集権体制の確立にあったからだ。「生き仏」の消滅に備えて組織そのものを仏とする「創価学会仏」なる概念を提示した創価学会は、その組織の要である会長権限と、中央集権体制を強化することで、カリスマの喪失に備え延命を図ろうとしている。
そして「創価学会仏」の正当性や、本尊・教義・会則・機構の改革など一連の措置の正当性、さらには集団的自衛権の行使容認から安保法制、共謀罪などの安倍自公政権が推進してきた政治決定を支持ないしは是認してきた政治選択の正当性を強調するためには、来る衆院総選挙になにがなんでも勝たなくてはならない。9月17日に緊急の方面長会を開き、衆院の冒頭解散・総選挙に備えて選挙態勢に入ることを確認した創価学会は、以後、「圧倒的なスピードと勢い」(原田稔会長)で選挙闘争を展開している。
本誌では、選挙の勝利を宗教的勝利・宗教的正当性の根拠と位置づけて選挙活動・政治活動を展開し、国・地方を問わず日本の政治に多大な悪影響を及ぼしている創価学会の実態を追及し続けてきた。そこで今号の「信濃町探偵団」は拡大版として、「会憲」を制定した創価学会が、組織の維持と延命を目的に、7月実施の東京都議選に続いて、政権選択選挙である衆議院総選挙に突き進んでいる実態を、機関紙報道を通じて検証してみたい。まずは「会憲」制定の目的と狙いから。
- 「会憲」で会長権限を強化
・9月2日付「聖教新聞」「万代に崩れぬ世界広布の基盤」「『創価学会会憲』を制定=総務会で可決、SGI常任理事会・理事会で承認=世界教団としての体制を確立」
「第73回総務会が1日午後2時から、東京・信濃町の広宣会館で(学会本部別館内)で開かれた。席上、原田会長から、『創価学会会憲』の制定について提案があり、全員の賛同で可決した。
創価学会は世界に広がる世界教団であり、『創価学会会憲』は創価学会の最高法規として、全世界の創価学会の団体と会員に適用される。会憲は、前文と15条の本文からなっている。前文の内容は、『三代会長』の広宣流布における偉大な事績を通して、世界に広がる創価学会の不変の規範として、『三代会長』の指導及び精神を永遠に創価学会の根幹とすることを確認し、創価学会の宗教的独自性を明確にするものとなっている。本文には、創価学会の名称、教義、目的、三代会長、広宣流布大誓堂、名誉会長、会長など創価学会の根幹をなす、世界共通の事項とともに、世界教団の運営に関する事項や、会憲が根本規範・最高法規であること等が明記されている。
なお同日午後3時からSGI常任理事会並びに理事会が、広宣流布大誓堂内の三代会長記念会議場で開かれ、『創価学会会憲』が参加者の全会一致で承認された」
※「世界教団」としての「宗教的独自性」を明確にしたとする創価学会の「会憲」の制定について、原田会長は9月1日の全国総県長会議の席上、「池田先生にご報告申し上げ、ご了解をいただき」と、まずは「会憲」の制定は池田氏の了解の下、実施したものであることを強調。同時に、「会憲」制定にいたる本尊・教義等の一連の変更もまた、「池田先生のご指導のもと」進めたとアピール。その上で、「創価学会が、未来と世界に向かって、さらなる発展を遂げるためには、三代会長のご指導・ご精神を根幹に、それを正しく継承し、発展させていくことが不可欠」「私たちは、どこまでも広宣流布の永遠の師匠である池田先生のご指導を根本に、世界の同志との異体同心の団結をもって、広宣流布を断行していきたい」と、創価学会は池田氏の指導を根幹に進んでいくことを繰り返し強調した。
執拗なまでの池田準拠発言の背景には、創価学会の執行部に対する、幹部・活動家らの根強い不信感がある。
それだけに今回の「会憲」報道でも、会長権限の強化について「聖教新聞」は一行も報じておらず、そもそも「会憲」の条文自体も、「聖教新聞」には掲載せず、「※会憲は創価学会公式ホームページ『SOKAnet』で閲覧できる」としている。
「会憲」の前文は、昨年、変更した「会則」の前文と同一であり、基本的には看板の架け替えにすぎないのだが、会長権限の強化と総本部への中央集権化だけは周到に図られている。特に、会長権限の強化は大幅で、「会則」では創価学会を「統理する」だけだったものが、「会憲」では「指導し、統理する」と、実務的権限に加え指導権まで付与している。
さらに指導権と密接に関連する「師範会議および最高指導会議に諮問」して行うこととなっていた教義および化儀についての裁定権も、「会長は、この会の教義および化儀を裁定する」とフリーハンドとなった。
この条文に基づけば、今後、会長は独自の判断で本尊・教義を自由に裁定することが可能となる。だが、執行部に不信感を抱く会員の目を意識してか、「聖教新聞」は、こうした会長権限の強化には触れず、ひたすら池田氏に拝跪・準拠するかのような体裁をとっている。
今年7月の東京都議会議員選挙を、創価学会は、自らの「永遠性を確立」し、「立正安国の大連帯」を築く師匠・池田先生の「総仕上げの戦い」と位置付け、熾烈な選挙闘争を繰り広げた。本誌は、そこには「創価学会仏」をはじめとする一連の「会則」変更や、自公政権支持の政治決定の正当化を都議選の勝利で図ろうとの狙いがあると指摘したが、その目論見は、都議会自民党と手を切り小池百合子都知事と連携した公明候補23人が全員当選したことで、いちおう成功したといえよう。
だが今度は衆院総選挙。衆院選は、政権選択選挙であり、ダイレクトに自公政権を支持してきたことの責任が問われる。しかも「会憲」制定後、初の国政選挙として、正当性の成否を占うものとなるだけに、創価学会にとって負けることは許されない選挙となる。その意味で、臨時国会の冒頭に、所信表明もしないで解散するという安倍首相の保身と延命を狙った、モリ・カケ隠しのご都合主義的で手前勝手な解散総選挙は、選挙に保身をかける創価学会執行部と魚心・水心の解散総選挙でもあるのだ。例年、「会則」の変更は創立月の11月に行っていたにもかかわらず、「会憲」制定を9月に実施したのは、解散総選挙で折り合いがついていた結果とみて差し支えあるまい。それだけに創価学会は、「圧倒的なスピードと勢い」を合言葉に、全組織あげての熾烈な選挙闘争に突入している。以下、そうした実態を概観してみよう。
- 解散総選挙――「立正安国の大闘争」と扇動する創価学会
・9月20日付「聖教新聞」「『11・18』へ本陣から広布の夜明けを」「東京 北 足立 豊島板橋など躍進の大会」
「さあ11・18『創価学会創立記念日』へ、本陣・東京から新しき広布の夜明けを!『異体同心なれば万事を成じ』との御聖訓通り、信心の団結で大躍を期す大会が19日、東京各地で開かれた。北総区の地区部長会は北平和会館で。藤村副会長の後、笠原総区長、細野同婦人部長は“大東京の凱歌の北極星”として、広布拡大の先陣をと力説した。金澤総東京長は、師と心一つに、われら北区の手で栄光の暁鐘を打ち鳴らそうと訴えた。
足立総区の支部長・婦人部長会は足立池田記念講堂で盛大に。上田総区総主事らのあいさつの後、竹内総区長、佐渡同婦人部長が、10・25『足立広布 師弟原点の日』へ快進撃をと強く訴えた。池田主任副会長は広布拡大の勢いを一段と加速させ、威風堂々の前進をと激励した」
※北・足立・豊島・板橋は、太田昭宏前公明党代表が、東京で唯一、小選挙区で立候補する東京12区の地域組織。全国に先駆けて出陣式を行ったことがわかる。
9月22日付「聖教新聞」「正義の神奈川よ勇み立て」「横浜 保土ヶ谷 旭で誓いの大会」
「正義の波動は、常に神奈川の天地から!『声仏事を為す』の大確信を胸に、立正安国の歴史的闘争へ勇躍船出する大会が、神奈川の各地で開かれた。横浜・保土ケ谷総区の集いは20日、横浜池田講堂で意気軒昂に。竹本総区長、堀井同婦人部長が、心を一つに合わせた電光石火の快進撃で、栄光の『11・18』を勝ち飾ろうと呼びかけた。
一方、横浜・旭総区の集いは21日、同講堂で勢いよく。(中略)永石婦人部長、池田主任副会長が出席した。永石婦人部長は、『今日も必ず勝つ!』という朝の祈りを根本に、大きく仏縁を広げる一日一日をと強調。池田主任副会長は、創価のスクラムこそ民衆の幸福を実現する源泉であると述べ、異体同心の団結で勇気の対話に挑み抜き、師弟勝利の暁鐘を高らかに打ち鳴らそうと語った」
「池田先生ご夫妻神奈川文化会館へ 全同志の幸福を祈念し勤行」
「池田先生ご夫妻は21日午前、横浜市中区の神奈川文化会館を訪問。(中略)記念展示室の仏間で厳粛に勤行・唱題を行い、神奈川をはじめ、全国・全世界の同志の健康と幸福と勝利を深く祈念した」
・9月23日付「聖教新聞」「随筆 永遠なれ 創価の大城 池田大作」「自信満々と学べ語れ!太陽の哲理を」「立正安国へ立つ」
「この二十一日、私は妻と共に、三年ぶりに神奈川文化会館を訪問した。(中略)『正義』の神奈川は、まさしく大聖人が『立正安国』の大闘争を起こされた天地に他ならない。『立正安国論』には、『言わずんばある可からず』とある。一宗一派のためではない。民衆の幸福と安穏のため、『今、真実を語らずして、いつ叫ぶのか!』との炎の仰せであられる。(中略)『立正安国論』の結論の段には『汝早く信仰の寸心を改めて速に実乗の一善に帰せよ、然れば即ち三界は皆仏国なり』と呼び掛けられている。『決意』は即『行動』である。立つべき時に立つ!時を逃さずに戦う!電光石火の共戦こそ、創価の師弟の心であり、楽土を築きゆく地涌の闘争なることを忘れまい。(中略)
広宣流布、立正安国の大闘争は、そのまま一人ひとりが宿命転換を加速し一生成仏の大境涯を開く戦いに他ならない。(中略)私たちは第一に、勤行・唱題の『誓願の祈り』の呼吸を深く合わせた。第二に、どこまでも『御書根本』の『法華経の兵法』で、智慧と勇気を湧き出して戦った。第三に、『異体同心の団結』をがっちりと固めながら前進した。(中略)創価の『一善』の陣列に恐れるものはない。我ら『行学の闘士』は、正義の勝利の太陽を、断固と勝ち昇らせようではないか」
※横浜市の保土ケ谷区と旭区も、神奈川で公明党候補が唯一小選挙区に立つ神奈川6区の地元組織。この神奈川には池田名誉会長夫妻もわざわざ足を運び、その内容を「立正安国の大闘争」に結びつけて「聖教新聞」に発表。選挙闘争の功徳・利益を強調するとともに、勝利の要諦をアピールし、選挙闘争の士気を鼓舞している。以下、池田氏に名を借りた檄文が続く。
・9月24日付「聖教新聞」「池田大作先生 四季の励まし」「今こそ『黄金の自分史を綴ろう』
「『いざ』という時が大事だ。その時にはじめて人間の真価が分かる。意気地なしであってはならない。圧迫が強ければ強いほど、朗らかに、堂々と正義を語り抜く――これが学会精神である。日々、前進だ!日々、決戦だ!日々、勝利だ!広宣流布に生き抜く我らに停滞はない。前進してやまぬ生命それ自体が常に勝利者である。時を逃すな!スピードが力だ。勢いで決まる」
・同「わが友に贈る」「私たち一人一人が 平和創造の主体者だ! 立正安国の大精神は 創価の連帯に脈々 誇り高く進みゆこう!」
・同「破竹の勢いで前進!総神奈川が原田会長と支部長会」
「さあ『立正安国』即『世界平和』の歴史的闘争がスタート!栄光の大海原へ船出する総神奈川の支部長会が23日、横浜市鶴見区の神奈川池田記念講堂で勢いよく開かれた」
・9月26日付「聖教新聞」「立正安国の大闘争を 意気高く各部代表者会」
「世界広布新時代第47回の各部代表者会が25日、東京・信濃町の広宣会館(学会本部別館内)で行われた。『9月25日』は、日蓮大聖人が弘安5年、御一代の総仕上げに池上宗仲邸で『立正安国論』を講義されたと伝えられる日である。また、昭和18年、権力の魔性によって投獄されていた牧口先生が警視庁から巣鴨の東京拘置所に移送され、戸田先生と今生の最後の対面をした日でもある。
原田会長は、日蓮大聖人の仏勅、さらに三代会長の悲願を受け継ぐ立正安国の大闘争を勝ち抜く拡大の要諦は、『誓願の祈り』『法華経の兵法』『異体同心の団結』であると強調。今という時を逃さず、電光石火の行動で目の前の一人と信頼を結び、折伏精神みなぎる声を勇気凛々と響かせて、圧倒的拡大で栄光の『11・18』を荘厳しようと呼び掛けた」
※選挙闘争を「三代会長の悲願を受け継ぐ立正安国の大闘争」と位置付け、先の随筆での池田氏の勝利の「要諦」なるものを披露する原田会長。政教一体の実態を彷彿とさせる記事だ。
・同「総本部で中央社会協議会」「衆院選比例区公明党の支持を決定」
「創価学会の『中央社会協議会(議長=原田光治主任副会長)』が25日、信濃町の学会本部別館で開催された。(中略)協議会では、①『大衆とともに』との立党精神を貫き、『軽減税率の導入』や『教育負担の軽減』をはじめ、生活者の視点に立った政策実現へ真摯に取り組んでいる②政治を安定させる連立与党の要であり、『景気経済の再生』や『激変する安全保障環境への対応』など日本が直面する諸課題を打開するために欠かせない存在である③国政を担うにふさわしい、見識と人格を兼ね備えた実力ある人材を公認候補として擁立する――などの党の基本姿勢と行動を評価した」
・同「寸鉄」「北海道・大空知総県、留萌創価県が乾坤一擲の闘争 開拓魂燃やして勝ち進め」
・9月27日付「聖教新聞」「『常勝の空』明年40周年 関西魂よ燃え上がれ」「西大阪 新大阪 常勝大阪 堺が誓願の集い」
「西大阪総県の大会は、西成文化会館で。吉田総県長、田中同婦人部長が『「負けたらあかん!」と祈り抜き、常勝の源流の地に圧倒的な拡大を』と語った。堺総県の大会では北吉総県長、中川同婦人部長が『獅子王の心で学会の正義を一人また一人へと語り、広布の布陣を磐石に』と訴えた。
いずれの会合も原田会長、高柳婦人部総合長、山内関西長、伊藤女子部長が出席した」
・同「寸鉄」「神奈川の保土ヶ谷・旭よ時は今。正義の声強く!勢いとスピードで勝利を」
※冒頭解散を前に大阪の小選挙区に公明党候補が立つ地域組織には、原田会長・谷川主任副会長が足を運び檄を飛ばした。また小選挙区候補の立つ北海道にも「寸鉄」で言及。さらには同じく小選挙区候補が2人立つ兵庫でも大会を開催した。
・9月28日付「聖教新聞」「世界の兵庫に勝鬨を!」「10・15『県の日』へ躍進の集い 原田会長が激励」
「10・15『兵庫の日』記念の総兵庫代表幹部会が27日、兵庫池田文化会館で行われた。(中略)谷川主任副会長、高柳婦人部総合長に続き、原田会長は『堂々と正義を語る勇気』『圧倒的なスピードと勢い』『たゆまぬ行動と前進』を強調しつつ、新たな広布史を断じて勝ち開こうと呼び掛けた」
・同「寸鉄」「東京の北・足立・豊島・板橋が一気呵成に拡大!獅子となって走り凱旋を」
・9月29日付「聖教新聞」「東京凱歌へ勇気の前進」「原田会長と共に北総区の友が集い」
・同「寸鉄」「大阪の大正・住之江・住吉・西成よ頑張れ!常勝の源流の誇り胸に勝ち捲れ」「大関西の電源地、堺市の堺・東・北区が大攻勢!民衆勝利の銅鑼を鳴らせ」
・9月30日付「聖教新聞」「御書と歩む84 池田先生が贈る指針」
「同志への指針 大聖人の『立正安国』の大闘争から七百五十余年。一切衆生の幸福と平和という大願を受け継いで、今、世界中で地涌の友が立ち上がっている。一閻浮提広宣流布の『天の時』が来た。乱世を照らす立正安国の哲学を、人類が渇仰している。我らは一歩も退かない。一人一人と確信の対話を広げ、民衆の笑顔が光る生命尊厳の社会を築きゆこう!」
※「三代会長悲願の立正安国の大闘争」という宗教的フレーズで、学会員をマインド・コントロールし、選挙闘争に駆り立てる創価学会は、その一方で、公明党ならびに自公連立政権の政治的成果を強調することも忘れない。9月28日付「聖教新聞」掲載の「大切なのは勢いとスピード 『決意』即『行動』で前進!」と題する座談会記事では、原田会長・長谷川理事長・永石婦人部長らが、「公明党が政治の安定を実現」したとして、①景気を回復させた、②北朝鮮の脅威が高まったことで、安保関連法制(創価学会は「平和安全法制」と呼ぶ)を実現させたことの正当性が証明されたなどと、公明党・自公政権を高く評価している。
当然のことだが、ここでは森友問題や加計問題、PKO日報隠し、核兵器禁止条約への反対、原発再稼働、防衛費増強、改憲などについての言及はいっさいない。
公明党ならびに自民党を支援する選挙闘争を、「立正安国の大闘争」と位置付け、宗教的呪縛で学会員の投票の自由や政党支持の自由を抑圧・阻害するとともに、一方的な政治情報をすり込むことで選挙結果に悪影響を及ぼす創価学会の選挙闘争。
自らの保身と延命のために政治を利用する宗教団体の選挙闘争を許容・是認することは、日本の民主主義・議会政治の危機を招来し増長することにほかならない。