6月号目次
6月号目次
閻魔帳
僭主独裁が政治的独裁に親近する理由/乙骨正生
特集/民主主義の危機──改憲・共謀罪に加担する創価・公明
改憲に共謀罪法案とわが国の民主主義を破壊する「公明党=創価学会」の大罪/古川利明
“テロの温床”への視座欠くテロ等準備罪議論/広岡裕児
安倍独裁政権、官邸主導で暴走 無法国家へ改憲、共謀罪、森友・加計事件/川﨑泰資
「平和・人権」の看板を捨てた公明党/段 勲
トピックス
筆者寄稿記事に統一教会/家庭連合が激昂 主要全メディアに抗議のプレスリリース/鈴木エイト
●連載
信濃町探偵団
──創価学会最新動向
新・現代の眼(第10回)
凡庸な悪/菅野 完
ヨーロッパ・カルト事情(232)
ジハード主義の精神操作(マインドコントロール)、セクト対策市民団体担当者に聞く(2)/広岡裕児
執筆者紹介 編集後記
編集後記から
共謀罪(テロ等準備罪)の審議が続く参議院。政府・与党は6月13日の成立を期すとも伝えられ、小誌発行時には緊迫の事態を迎えているものと思われます。内心の自由を脅かす恐れがあり、治安維持法の現代版とも批判される共謀罪の導入を、戦前の昭和軍国主義体制の下で、治安維持法違反容疑で逮捕・拘留され獄死した牧口常三郎創価教育学会会長を、「永遠の師匠」(会則)と仰ぐ創価学会を組織母体とする公明党が推進するとは、歴史の皮肉としかいいようがありません。
牧口初代会長・戸田城聖2代会長とともに、創価学会の「永遠の師匠」とされ、公明党の創立者でもある池田大作名誉会長は、「私ども創価学会の人権闘争の原点は、国民から精神の自由を奪い、戦争に駆り立てようとした軍国主義ファシズムに、断固として戦い抜いた牧口初代会長と戸田城聖第2代会長の精神闘争にあります。両会長の精神を受け継いだ私も、創価学会の社会的使命の一つはそこにあると考え、行動を貫いてきました」(「教育提言」平成13年1月)と、自らと創価学会の平和主義や人権尊重の原点は、牧口・戸田両会長の戦時下の「抵抗」にあると表明。治安維持法を「稀代の悪法」と非難しています。
しかし池田氏は、現代版治安維持法と批判される共謀罪の導入に反対の声をあげることはなく、「池田門下生」である創価学会の執行部や公明党議員も、これに反対することはありません。小誌は創価学会の社会的レーゾンデートルは崩壊していると指摘してきましたが、初代会長・2代会長の「闘争」に反して、「社会的使命」を放擲した創価学会に、社会的レーゾンデートルがないことはこの一事からも明白でしょう。
ちなみに共謀罪審議が行われている参議院法務委員会の委員長ポストは、昭和40年に和泉覚公明党副委員長(創価学会理事長など歴任)が就任して以来、現在の秋野公造委員長にいたるまで44代52年間にわたって公明党議員が独占しています。多くの刑法学者、各地の弁護士会、マスコミ、さらには国民各層から強い批判や反対の声があがっている共謀罪ですが、公明党はそうした声を歯牙にもかけず一瀉千里、共謀罪の成立に邁進しています。
特集/民主主義の危機──改憲・共謀罪に加担する創価・公明
“テロの温床”への視座欠くテロ等準備罪議論
広岡裕児
国際ジャーナリスト パリ在住
イタリアのG7が終わった。記念写真を見て思った。果たして日本の首相はここにいる資格があるのだろうか? 経済だけの先進国なのではないか。トランプ大統領も疑問符が付くが、アメリカという国そのものではしっかりと民主主義が機能している。
ファヴォリティズムに該当する公算大
加計(かけ)学園問題について内閣府の最高レベルの意向を証明する文書が確かに存在すると文科省の前川前事務次官が名乗りを上げた。これに対して、「民間人が言ったことだから」信ぴょう性がないという発言が相次いでいる。カルト問題でもよく言われるが、元関係者でもいまは外部の人だからというのは理由にならない。それに、公務員の場合、現役の人間が言ったら、守秘義務違反になってしまうから内部からは絶対に出ない。だからこそ外の人間や情報源を絶対明かさないマスコミの役割が大切だ。
先に終わったフランス大統領選挙で最有力候補とされていた共和党のフィヨン元首相の落選の原因となった家族の架空雇用疑惑もきっかけはマスコミの報道で、捜査当局が動いたのだった。サルコジ大統領のリビア・ゲートでもそうだし、アメリカのニクソンのウオーター・ゲート事件でもそうだった。
情報源は命を狙われる危険さえあるから、是が非でも隠さなければならない。だから、当局はマスコミで情報源が公開されていなくても捜査に入るのだ。もちろん捜査でも守秘されることはいうまでもない。
こういうとき、たとえ大統領、政府高官であろうとマスコミに「情報源を明かせ」などとは絶対言わない。そんなことを言えば、見識が疑われ支持率が落ちるだけだ。次の選挙でも不利になる。いや、場合によっては罷免されるかもしれない。
フランスに「ファヴォリティズム」という罪がある。
「依怙(えこ)贔屓(ひいき)」ということで、正確には「不当な優遇罪」という。役人や政治家などが、公共調達や公共事業の民間委託などで、ある特定の者を優遇することを罰するものである。贈収賄とは違って、金品の受け渡しは必要ない。ただ優遇をしたという事実だけで十分である。破毀院(最高裁)の判例によって建設やサービス運営だけではなく、あらゆる公共がかかわる市場取引に関係するとされている。
加計学園のケースは、フランスであればこの罪に該当する公算が大である。もし該当しなくても、マスコミの集中砲火を浴びることは必至で、世論も動き、次の選挙に大きく影響することは間違いない。
森友学園は、公開入札をしなかったこと自体で不当な優遇とみなされ、さらに、価格の疑惑まであるのだから、確実にひっかかる。最終的に起訴されるかどうかは別として、トップの逮捕も十分にありうる。また、このあからさまな異常を調査しなかった会計検査院も共犯になる。実際、7年前、パリから50㎞ほど離れたC市にある国有地払い下げについて、公開入札を行わず相場よりもかなり安く売却することを許可したということで大臣秘書が逮捕されたという例がある。
ところで、森友学園や加計学園の問題について、さかんに「忖度(そんたく)」といわれるが、おかしい。忖度とは、他人の心を推しはかることである。だが、これらの事件では、検討案件の背後に何らかの大きな影が見えており、その無言の圧力に屈したのではないだろうか。「忖度」ではなく、「影響力の行使」ではないのか。「忖度」は権力者に都合のいい言葉である。「影響力」なら主語は影の権力者だが、「忖度」だと決定を下した当事者だ。だから役人の勝手な行為として、トカゲの尻尾切りで終わらせることができるのである。
「ファヴォリティズム」は、汚職の横行に対して従来の収賄罪では不十分なので90年代に作られた罪である。同じように、日本の共謀罪も従来の法律では十分な対策ができないからといって作られた。だが、その性格は正反対である。前者は権力者を束縛規制するのに対して、後者の対象は国民である。前者では権力は制限され、後者では拡大する。
詐術的主張繰り返す公明
公明党のサイトにあるQ&A「テロ等準備罪」法案(「公明新聞」2017年4月28日付の転載)は、次のように言う。
〈テロ等準備罪を新設する理由は、テロなどの組織的犯罪を未然に防ぐためです。(…中略…)世界各地でテロ事件が頻発する中、対策は喫緊の課題です。
テロの未然防止には、情報交換や捜査協力など国際社会との連携が必要です。このため政府は、すでに187カ国・地域が締結している国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の早期締結をめざしています。〉
政府も国際組織犯罪防止条約に入るために改正すると繰り返しているが、じつは、条約加盟には共謀罪は必要不可欠ではない。ほかならぬ先のQ&A「テロ等準備罪」法案がいみじくも言っている。
〈条約は、重大な犯罪(死刑・無期および長期4年以上の懲役・禁錮刑の罪)を行う「合意」、または組織的な犯罪集団の活動への「参加」の少なくとも一方を犯罪とするよう求めています。
しかし、国内には「重大な犯罪の合意罪」に当たる罪は一部の犯罪にしか規定がなく、「参加罪」は存在しません。〉
条約の原資料をたどってみても双方もたなくても、どちらか一方だけでいいと明記されている。共謀罪は「重大な犯罪の合意罪」にあたる。参加罪とは〈組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為 /a組織的な犯罪集団の犯罪活動 / b組織的な犯罪集団のその他の活動〉(外務省仮訳)である。共謀罪のように細かい例を出さなくても範囲は明確である。しかも「組織的な犯罪集団」とは、「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため」重大な犯罪や本条約で定めた犯罪をおこなうことを目的として「一体として行動するもの」に制限されている(この制限は合意罪でも同じだが日本ではなぜか無視された)。
公明党も共謀罪に慎重だったことから、これまでは廃案になっていた。もし、条約加盟が目的なら、濫用予防のしやすい参加罪にすればよい。しかも加計学園・森友学園への対応にみられるように、権力の濫用を阻止するセーフガードは全く機能していないのだからなおさらである。
ところが、そういう努力はせず、このほどテロ防止ということで共謀罪賛成に回った。だからこそ強行採決ができた。この点についてもしかるべき説明があるべきだが、Q&Aは、先の引用の次にいきなり〈そこで、どうしても「テロ等準備罪」の新設が必要です。〉と論理が飛躍してしまう。
じつは「テロ等準備罪」はテロには全く効果がない。
やはり公明党のサイトで、漆原良夫党中央幹事会会長が、「テロ等準備罪」法案の意義について誇らしげに次のように述べている。
〈「テロ等準備罪」の場合、まず、犯罪の主体が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」に限定されました。共謀罪の時は単なる「団体」でした。「組織的犯罪集団」とは存立の目的が重大犯罪を実行するための団体です。〉
ただの「団体」であると、宗教団体も入ってしまう。その点が改良されたから公明党も賛成に回ることができたのだろう。日本では公認非公認をとわず宗教団体の存立の目的が重大犯罪の実行だなどということは想定されていない。フランスのように、信教の自由と切り離して、たとえ宗教を名乗っていても悪事を働くことについては罰するような制度にもなっていない。オウム真理教も地下鉄サリン事件を起こしたから問題になっているだけで、その前に重大犯罪を実行することを目的としているための組織だ、などと言ったら、信教の自由の侵害だと袋叩きにあった。現在でも状況はまったくかわっていない。テロリストは精神操作(マインドコントロール)を受けるが、まさに、宗教を名乗る団体がそれを行うことは明白な事実で、テロリストの温床になりうるが、まったく野放しである。そしてなにより、喫緊の課題になっているジハード主義・イスラム過激派はまさに全身全霊で宗教を主張しているのだ。
広岡裕児(ひろおか・ゆうじ)国際ジャーナリスト。1954年生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。パリ第3大学(ソルボンヌ・ヌーベル)留学後、フランス在住。パシフィカ総合研究所(PSK)主任研究員。著書に『プライベート・バンキング』(総合法令)『皇族』(読売新聞社)『エコノミストには絶対分からないEU危機』(文春新書)最新刊『EU騒乱』(新潮選書)など。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- 東京都議選…宗教活動に名を借りた選挙闘争の欺瞞性
※創価学会が、7月2日投開票で実施の東京都議会議員選挙に向けて、組織あげての熾烈な選挙闘争を展開している。創価学会は、選挙の勝利を宗教的勝利として宗教的正当性の根拠とする特異なイデオロギーをもつだけに、宗教活動に名を借りた選挙闘争を繰り広げるのは毎度のこと。
もっとも今回の都議選は、昨年11月の会則変更で、「創価学会仏」という創価学会そのものを「仏」と位置づける、きわめて特異かつ独善的な教義を発表した後に行われる初の大型選挙だけに、「創価学会仏」の正当性を立証するための負けられない選挙となっている。
それは同時に、「本尊」の変更や、「創価学会仏」を導入するとともに、従来の平和主義や人権尊重の主張と齟齬する集団的自衛権の行使容認や安保関連法制、さらには共謀罪の導入に賛成ないしは是認する政治姿勢をとる原田会長を中心とする創価学会の現執行部の正当性がかかった選挙であることを意味する。
周知のように集団的自衛権の行使容認や安保関連法制に関しては、創価大学のOB・OGらが反対署名を行い、一部会員が国会前デモに創価学会の三色旗をもって参加した事実が示すように、創価学会内部からも反対の声や疑念や不信の声があがった。また執行部の本尊・教義変更に異を唱え、批判する会員も一部存在する。
こうした会員に対し執行部は、各種の処分で対応し、組織の引き締めに躍起となっているが、処分者である執行部の正当性を立証するためには、なにがなんでも都議選に勝つ必要がある。
そのため執行部は、各種会合や機関紙誌で都議選必勝の檄を飛ばし、創価学会が政治活動・選挙活動を行うことの正当性や必要性、さらには公明党の実績や評価、そして重点政策などを繰り返し強調。選挙闘争に会員を駆り立てるための刷り込みを図っている。また同時に公明党をして、都議選候補23人全員の当選を勝ち取るべく、国政で自民党と連立政権を組んでいるにもかかわらず、都民に不人気の都議会自民党とは手を切らせ、都民の支持が高い小池ゆり子東京都知事にスリ寄らせ、小池都知事の人気を利用して全員当選を果たそうとしている。
以下、そうした選挙闘争の実態を示す機関紙の記事を紹介しよう。まずは都議選の選挙闘争に挺身する意義を強調した首脳による座談会記事。
・5月25日付「聖教新聞」「座談会 栄光の峰をめざして」「東京凱歌へ拡大の金字塔!強情な祈りと率先の行動を」
「志賀(男子部長)『東京凱歌』――池田先生は1983年(昭和58年)の5月3日に寄せて、このように揮毫されました。東京会館(現在は東京牧口記念会館が建つ)の開館を記念したものです。
長谷川(理事長)『凱歌』とは、戦いに勝った時に歌う喜びの歌のことです。本陣・東京の勝利は、広宣流布の新しい道を開いていくという意味だと思います。
永石(婦人部長)この先生の思いを胸に、東京の同志は本年を『東京凱歌の年』にしようと大奮闘しています。
伊藤(女子部長)聖教新聞で『東京凱歌の青年城』として連載していただいた通り、青年部も拡大に走っています。
原田(会長)先生は、その様子を喜んで聞かれていました。さらに、4月26日に東京戸田記念講堂を訪問された際には、『全同志に勝利の鐘よ響け!大東京に凱歌よ轟け!』との思いで、『七つの鐘』のオブジェを強く、また強く打ち鳴らされました。(中略)
長谷川 東京は日本の首都であり、政治、経済、文化の一大拠点です。日蓮大聖人が最晩年、『立正安国論』の講義をなされた地であり、学会発祥の場所でもあります。牧口先生、戸田先生が広宣流布の指揮を執られた東京は、学会の原点の地なのです。
伊藤 池田先生が戸田先生と出会い、運命的な闘争を開始されたのも、東京でした。
志賀 750年前、大聖人は政都・鎌倉で獅子奮迅の民衆救済の戦いをされました。それは、『時代と社会の焦点の地で叫びを上げてこそ、時代と社会を動かせる』との信念からの御行動であったのではないかと思います。
原田 学会は、三代会長が、この大聖人の御精神のままに、庶民の中に飛び込み、世界広宣流布という未聞の歴史を築いてきました。池田先生は、その本陣である東京の使命と責任について、『東京は、獅子として立ち、獅子として進まねばならない。獅子は、勝たねばならない。永遠の大河の流れを築くには、その源はあくまで清らかで、獅子の咆哮のような勢いがなければならない』と指導されています。(中略)
原田 特に、リーダーは、御本尊への絶対の確信に立った強盛な祈りが大切です。そして、組織の最前線の方々のところまで足を運び、徹して語り合うことです。何より自らが拡大の先頭に立ち、率先垂範の行動を貫くことです。『建設は死闘、破壊は一瞬』との指針を忘れることなく、『東京凱歌』の年に、拡大の金字塔を打ち立てていこうではありませんか」
・同「東京凱歌へ意気高く 原田会長が出席し総区長会」
「感激の同志と共に『東京凱歌』へ勇躍の前進を期する総区長会が24日、信濃町の広宣会館で意気高く行われた。冒頭、原田会長は、全国・全世界の模範となり、誇りとなるべき総東京の深き使命を強調。断じてわが地域に広宣勝利の旗を、との強盛なる一念と行動を貫き、『未来までの・ものがたり』と語り継がれる歴史を築こうと望んだ」
※本誌前号の「信濃町探偵団」でも紹介したように、創価学会は、今回の都議選を「永遠の師匠」(会則)である「池田大作先生」の「総仕上げ」の戦いであるとして、会員の尻を叩くとともに、首都・東京での政治闘争に宗教的意義を付与するために、宗祖と仰ぐ日蓮聖人が、「立正安国論」を上程するなどの宗教活動を展開したのが、当時の首都である鎌倉であったなどと、日蓮聖人の宗教活動に結びつけて正当化。さらに5月25日付「聖教新聞」掲載の座談会記事では、遷化の地である池上(東京都大田区)で、死の床にあった日蓮聖人が最後に講義したのが「立正安国論」であったと強調することで、あたかも都議選の闘争が、「立正安国論」に叶う活動であるかのようにアピールしている。
さらに東京は、創価学会発祥の地であるとともに、歴代会長が広宣流布の指揮を執った創価学会原点の地であると強調し、その東京が勝利することが広宣流布の勝利に結びつくと、都議選という世俗の政治活動の結果が、宗教的勝利の要因であると喧伝し、会員を宗教活動に名を借りた選挙闘争に駆り立てている。
原田会長は発言の中で、池田大作会長(当時)が発表した長編詩「建設の譜」の「建設は死闘、破壊は一瞬」との一節を引用しているが、この引用に、教義的・政治的変更を積み重ねてきた執行部判断の正当性が、都議選の敗北で一瞬にして崩壊へと転じることの危険性を、原田氏が危惧していると読むのは穿ち過ぎか。池田氏の健康状態の悪化を受けて、「創価学会の永遠性の確立」、すなわちポスト池田体制の構築に腐心してきた原田会長だが、その強権的ともいえる手法で打ち出してきた施策が、すべて裏目となることへの不安や恐怖が思わず口をついて出たのではないか。人間の本音は思わぬところで露呈するものである。
もっともそうであるがゆえに、原田会長らは公明党の実績を高く評価する学者等のコメントを引用してのアピールを続ける。当然のことだが、そこには石原知事と結託して進めた新銀行東京の大失敗や福祉の切り捨て、舛添知事を擁立した責任、汚染が明らかになった豊洲移転を推進したことへの言及はない。
・5月15日付「聖教新聞」「座談会 栄光の峰をめざして」「“都議会公明発”の実績が全国に」
「永石(婦人部長)さて、東京都議会が注目されるなか、あらためて、都議会公明党が成し遂げた『3つの挑戦』への評価が高まっていますね。
竹岡(青年部長)議員報酬の削減、私立高校授業料の実質無償化、街のバリアフリーの推進を短期間で実現し、都議会公明党のスピーディな『政策力実現』が発揮されました。(中略)
原田(会長)公明党は、これからも徹して『一人の声』『大衆の声』に耳を傾け、現場に根差した地方議員・国会議員の比類なきネットワークで、庶民のための政治を貫いてもらいたい」
・5月17日付「創価新報」「勇気の行動で一点突破、全面展開」「若き力が民衆勝利の歴史創る」
「志賀(男子部長)さて、GWが過ぎ、新聞各紙においては、この夏に実施される東京都議会議員選挙の行方を論じる報道も、熱を帯びてきました。
竹岡 同選挙は、これまでにないほど世論の注目の的となっています。都議選は都民のために真剣に働く議員を選ぶ大切な選挙です。是非とも、公明党には、全力を尽くしてもらいたい。
角田(創価班委員長)公明党には、現場第一主義で生活者の声を吸い上げ、政策へと実現してきた。『政治を動かす力』があります。公明党に期待する声は年々、高まっている。(中略)
前島(牙城会委員長)東京都議選の動向が注目される中、公明党がリードした改革も高く評価されています。公明党が提案した『身を切る改革』『教育負担の軽減』『人にやさしい街づくり』の『3つの挑戦』の政策の実現力に、各界から感嘆の声があがっています。
志賀 なかでも、相次ぐ『政治とカネ』の問題で都政への不信が高まるなか、信頼回復のため、公明党が議員自ら襟を正そうと、昨年11月、『身を切る改革』として、他党に先駆けて提唱した議会改革案は、一字一句変わることなく、全会一致で成立しました。(中略)
竹岡 公明党には長年、都政をリードしてきた実績がある。公明党には、『大衆とともに』との原点と実現してきた実績の数々を、力強く訴えていってもらいたい」
・5月22日付「聖教新聞」「座談会 栄光の峰をめざして」「東京改革へ公明が重点政策」
「永石 先日、公明党東京都本部が『都民とともに「東京改革」』と掲げて、都議会議員選挙に臨む『重点政策』を発表しましたね。(公明新聞5月12日・14日付など掲載)
竹岡 三つの柱で構成され、15分野53項目の制作が掲げられています。地域に根差す公明党のネットワークで集めた『現場の声』が反映されています。(中略)
原田 『都政改革を、真に都民第一の方向へと形づけていける都議会公明党の役割は大きい』(淑徳大学・結城康広教授)など、公明党への期待は高い。『都民のため』の政治を貫き、『東京改革』をリードしていただきたい」
※地方自治の本旨に則り、住民自治を実現すべく実施される地方議会選挙。当然のことだが都議選も、都民が自らの意思を示すために実施される。それを宗教団体が自らの正当性をアピールするためのツールとすること、またそのために全国動員をかけて、東京都と関係のない地方在住の会員が、選挙の帰趨に影響を及ぼすような選挙活動を行うことは許されるものではない。だが、創価学会は都民の地方自治の選択に土足で踏み込む。それはまた会員の投票の自由のみならず、都民の投票の自由に容喙することにほかならない。宗教団体の選挙活動に一定の制限・制約を設ける必要があるのではないか。
- 北朝鮮の脅威を煽り安保関連法制の整備を正当化
・5月29日付「聖教新聞」「座談会 栄光の峰をめざして」「責任ある政治こそ」
「竹岡(青年部長)近年、北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返し、国際社会への威嚇を続けるなど、日本を取り巻く安全保障の環境は緊迫しています。日本、米国、韓国は関係諸国と連携し、北朝鮮に対して自制を促そうとしています。
河西(総東京青年部長)現実に起きている脅威に対応し、国民の生命と財産、暮らしを守るため、整備されたのが平和安全法制です。今では『あの時、整備しておいてよかった』と、その必要性への理解が広がっています。
竹岡 北朝鮮は、現体制以降、核実験を3回、50発に迫るミサイルを発射しています。平和安全法制の不要論を強調したいがために、日本共産党の志位委員長は『北朝鮮にリアルな危険はない』(2015年11月のテレビ番組)と発言しました。しかし、わずか2カ月後に、北朝鮮は水爆実験の実施を発表しています。
河西 09年4月、北朝鮮がミサイルを発射した際、日本として『断じて容認できない』と強く抗議する国会決議を採択しました。しかし、無責任なことに、『「ミサイル発射」と断定すべきでない』と唯一反対したのが共産党でした。
竹岡 政治には『リアリティ(現実感)』が必要です。今、現実に何が起き、何が求められているのかを受け止め、政治に反映することが重要です。公明党は、国民のために、未来のために、これからも『責任ある政治』を果たしてもらいたい」
※平成27年9月に、自民・公明両党らの強行採決によって成立した安保関連法制。その安保関連法制を公明党は平和安全法制と呼び、その制定・施行の正当性を強調し続けているが、創価学会もまた、東京都議選を前にした「聖教新聞」の座談会記事で、北朝鮮の脅威を引き合いに出して、「『あの時、整備しておいてよかった』と、その必要性への理解が広まっています」と、安保関連法制の制定・施行を評価。返す刀で、安保関連法制に反対した共産党を批判している。
周知のように安保関連法制については、多くの国民が反対し、創価学会の中からも、創価大学OB・OGらが反対の署名活動を行ったように、反対の声があがった。北朝鮮の脅威を根拠に、安保関連法制の制定を評価する今回の記事は、同法の制定を推進した公明党と、これを容認した創価学会執行部の正当性をあらためてアピールする狙いがあると見られる。同時にその底流には、現在、多くの国民が反対する共謀罪(テロ等準備罪)法案を、公明党が自民党と一体となって推進していることへの予防線が敷かれている。すなわち「北朝鮮怖いでしょ、“平和安全”法制を制定しておいて正解だったじゃない、“テロ等準備罪”も同じよ」という論法である。
都議選での当面の敵・共産党批判を展開するとともに、安保関連法制の正当性をアピール。同時に共謀罪を推進することへの不安と疑念の払拭を図り、選挙闘争に会員を駆り立てるためのレトリック記事。集団的自衛権や安保関連法制を創価学会が容認していることは、この記事からも明らかだ。