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11月号目次

閻魔帳

自公連立政権発足20年──税務調査妨害と1本のビデオテープ/乙骨正生

 

特集/自公連立20年──創価・公明の罪と罰

 

ウソにウソを積み重ねた20年/溝口 敦

国政を欺き続けた自公連立20年 『ビューティフル・ハーモニー』の実態/川﨑泰資

インタビュー

日本の政治史に「重大な汚点」  罪深き自公連立「亡国の20年」/二見伸明

「公明党と創価学会」を考える(第1回)

亡国路線を歩む「創価・公明」政界進出の淵源/平野貞夫

 

トピックス

カルト問題まみれの安倍内閣──菅原一秀前経産相と萩生田光一文科相/藤倉善郎

 

  • 連載

ナニワの虫眼鏡(第5回)

関電の3億円ウラ金事件 事件の最先端は常に大阪発か!?/吉富有治

新・現代の眼(第39回)

未だ覚めず池塘春草の夢/菅野 完

ヨーロッパ・カルト事情259

セクト的逸脱対策警戒関係省庁本部(MIVILUDES)廃止か/広岡裕児

 

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編集後記から

10月31日、かつての琉球王国の王城で、沖縄の人々のアイデンティティの象徴でもある首里城が焼失しました。焼け落ちる正殿や北殿・南殿の映像に心を痛めた人も多かったのではないでしょうか。

太平洋戦争で唯一、日本本土で地上戦の惨禍に見舞われた沖縄。首里城には日本陸軍第32軍の総司令部が置かれたため、「鉄の暴風」といわれた米軍の猛攻を受けて焼失・破壊されましたが、多くの県民の再建の熱意の結晶として復元されたのが今回、焼け落ちた正殿等でした。

周知のように戦後の沖縄は、米軍の統治するところとなり、戦前同様、戦後も本土防衛の「捨て石」的役割を押し付けられました。そうした沖縄の歴史を踏まえて、創価学会の池田大作名誉会長は、小説「新・人間革命」において、沖縄を「平和の島」であってほしいとして、沖縄には「核も基地もいらない」と主張しています。

しかし池田氏が創立した公明党は、米軍海兵隊辺野古新基地の建設を推進、創価学会もまた沖縄県知事選・名護市長選で、建設推進・容認派の候補を支援してきました。もし池田氏や創価学会・公明党が、「沖縄には核も基地もいらない」とした、かつての思いを一分でももっているなら、「過ちては改むるに憚ること勿れ」(論語)なのですから、辺野古新基地の建設を中止し、基地建設に投入すべき資金を、焼け落ちた首里城の復元に使うよう計らったらどうでしょう。なんといっても公明党は連立政権の与党、そして創価学会は自公連立政権最大の組織母体ならびに支持母体なのですから。

その自公連立政権は10月5日で、発足20年を迎えました。山口那津男公明党代表は、自公連立政権は「日本の政治史上、大きな業績」を残したと自画自賛。安倍晋三首相も、自公連立政権を「ビューティフル・ハーモニー」と形容しました。

だが、自公連立政権の20年で、平和国家・日本は大きく変容しました。いったい自公連立政権とはなんだったのでしょうか。特集で検証しましたのでご一読ください。

また、今号から「公明党の指南役」といわれた平野貞夫元参院議員による「『公明党と創価学会』を考える」という新連載を掲載します。今後、さまざまな秘話が明らかになるものと期待されます。すでに5回を迎えましたが、関西・大阪から現代日本の実相を俯瞰する吉富有治氏の「ナニワの虫眼鏡」同様、ご愛読ください。

特集/自公連立20年──創価・公明の罪と罰

 

インタビュー                                                                 (聞き手・乙骨正生)

日本の政治史に「重大な汚点」  罪深き自公連立「亡国の20年」

二見伸明

元衆議院議員

 

1999年10月5日に発足した自公連立政権は、今年の10月5日で20年の節目を迎えた。その節目を目前にした10月3日に山口那津男代表は、自公連立政権を「日本政治史に大きな業績を残した」として、公明党が連立政権に参画していることが、日本の政治を安定させていると自画自賛。安倍晋三首相も10月1日と4日、自公連立政権を「ビューティフル・ハーモニー」と形容した。だが、自公連立政権が発足してからの20年の間に、平和国家・日本は激変した。いったい自公連立政権とは、そして公明党=創価学会の政権参画とはなんだったのか。非自民連立政権の羽田内閣で運輸大臣も務めた二見伸明元公明党副委員長に話を聞いた。

 

――10月5日で20年を迎えた自公連立をどう評価されていますか。

二見 端的に言えば「亡国政治の20年」でしょう。

創価学会という宗教団体を母体に宗教政党として結党した公明党は、「大衆とともに」という立党精神に基づき、さまざまな紆余曲折を経ながらも、まがりなりにも平和・福祉を党是とする道を歩んできました。しかし自公連立政権がこの20年でやってきたことは、小泉政権以来の新自由主義的経済政策に基づく貧困と格差の拡大、そして改憲ならぬ“壊憲”を悲願とする安倍晋三首相のもとで、立憲主義と議会制民主主義を破壊・破綻させ、集団的自衛権の行使容認や戦争法案と批判された安保関連法を成立させ、平和国家・日本を戦争ができる国に変容させてきたのですから無慙無愧としかいいようがありません。

――そんな自公連立政権を、安倍首相は「ビューティフル・ハーモニー」、山口代表も、「日本の政治史に大きな業績を残した」と自画自賛していますが。

二見 外務省が「令和」を「ビューティフル・ハーモニー」と英訳していますから、安倍首相は、「ビューティフル・ハーモニー」とかこつけたのかもしれません。悲願の改憲を実現するために今後も連立を維持する姿勢を見せていますから、「令和」の時代も引き続き連立を維持しろとの隠喩なのでしょう。しかし自公連立政権はとてもじゃないが「ビューティフル」と言えるような代物じゃない。むしろ「ダーティ」と形容するにふさわしい野合政権です。

政党というのはご都合主義的で手前勝手な主張をするものですが、山口代表の「日本政治史に大きな業績」との言い草は笑止千万です。公明党が連立政権で果たした役割は、「大きな業績」じゃなく、むしろ「大きな汚点」として政治史に刻印されることになるでしょう。

というのも自公連立政権下の国会では、衆参両院で多数を握った自公による数の暴力が常態化しました。ことに2014年7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定から、15年9月19日の戦争法案とも批判された安全保障関連法案の参院通過までの動きは、「立憲主義の破壊」「議会制民主主義の破壊」との厳しい批判が浴びせられましたが、一連の動きを多くの法学者らが、「法学的にはクーデター」(石川健治東京大学教授)「憲法クーデター」(小林正弥千葉大学教授)と規定しており、改憲論者の小林節慶応大学名誉教授も、安倍自公連立政権の改憲の動きを「憲法擁護義務のある権力者が憲法を擁護せず、違憲立法まで行うこの状況は、クーデターと言っていい」(『「憲法改正」の真実』集英社新書)と指摘しています。

こうした改憲ならぬ“壊憲”クーデターを可能にしたのが公明党です。この事実は「日本政治史」に刻印され、厳しい歴史の審判を受けることになるでしょう。

――創価学会の前身である牧口常三郎創価教育学会会長が獄死するに至った、治安維持法の再来ともいわれる共謀罪にも公明党は賛成しました。

二見 安保関連法案の強行採決もひどいものでしたが、それに輪をかけてひどかったのが改正組織犯罪処罰法いわゆる共謀罪の審議でした。特に参議院法務委員会では、委員長の職権で委員会裁決を省略して審議を打ち切り、本会議に持ち込む「中間報告」という異例中の異例の議会政治を冒瀆する手法で共謀罪の成立を強行しましたが、それを許したのが公明党の秋野公造委員長です。

公明党は、1965(昭和40)年に創価学会の理事長だった和泉覚参院議員が法務委員長に就任して以来、今日まで54年もの長きにわたって参院の法務委員長ポストを握り続けており、その間に、池田大作名誉会長や創価学会に対する批判を封じるために、名誉棄損の損害賠償の高額化や名誉棄損罪の速やかな適用を図るなどしてきましたが、共謀罪審議における「中間報告」は、「良識の府」と言われる参議院の自殺行為ともいえるひどいものでした。

私は衆議院の常任委員長を3回務めましたが、委員会の運営は委員長の裁量・権限にまかされていますから、国民のためにならないと判断したら審議を止め廃案にするだけの見識と矜持、そして気概を持たなければいけません。仮に公明党が「これはダメだ」と本気で反対すれば自民党も無理はできないはずですよ。公明党は「政権のブレーキ役」などと称していますが、こんなことをしていてブレーキなどとはおこがましい。ブレーキどころか悪法の成立に積極的に加担するアクセルですよ。

――その共謀罪を所管し国会で迷走答弁を繰り返した金田勝年法務大臣を、創価大出身の佐々木さやか議員は、参院本会議で「昨年8月に大臣に就任して以来、誠実かつ真摯な答弁を行うなど国民のために尽くしてこられました」と翼賛。この発言には、学会シンパの田原総一朗氏でさえ「皮肉じゃなかったら本人はばかだよ」と呆れています。

二見 恥ずかしいね。学会員ばかりじゃない。国民は冷静に見ていますよ。先の参院選比例区で公明党は前回比で100万票も得票を減らしましたが、むべなるかなというところでしょう。

――公明党は、創立者である池田大作創価学会名誉会長の核廃絶や、太平洋戦争の惨禍にあった沖縄には「核も、基地もいらない」との主張にも反して、国連の核兵器禁止条約に反対する日本政府を叱咤することも、辺野古新基地建設に反対することもしていません。これには創価学会員ですら批判の声をあげています。

二見 今回の内閣改造で交代しましたが、石井啓一国土交通大臣は、防衛省沖縄防衛局が求めた行政不服審査請求で、沖縄県の埋め立て承認撤回を違法とするなど、一貫して辺野古新基地建設のお先棒を担いだ。また創価学会も、昨年の沖縄県知事選で基地建設推進派の候補を支援した。矛盾です。言っていることとやっていることが全く違う。創価学会はいま、公明党の政治姿勢や、これを支持する創価学会執行部を批判する学会員を査問し、処分していると伝えられますが、人を救うべき宗教団体が査問・処分とは異常としかいいようがありません。おかしいと声をあげている学会員の方がまともであることは明らかです。

――自公連立政権が成立したきっかけを、矢野絢也元公明党委員長は著書『乱脈経理』で、「我々は自公政権の功罪を論じる前に、そもそも連立政権誕生の動機が、税務調査逃れと国税交渉のトラウマにあったことを確認しておく必要がある」と指摘。また「公明党の指南役」と言われた平野貞夫元参院議員は、著書『公明党・創価学会の真実』において、「暴力団が作った自公連立」として、創価学会と暴力団との「抜き差しならない関係」を象徴するビデオテープの存在、すなわち藤井富雄元都議会公明党幹事長(公明代表)と、山口組系後藤組の後藤忠正組長との密会テープの存在が、自公連立の引き金になったと指摘しています。この事実は重いと思いますが。

二見 矢野元委員長、平野元参議院議員の指摘は重大です。それに加えて私は、非自民連立政権の誕生によって政権を失った自民党の反創価学会キャンペーン、ことに宗教法人法改正と池田国会証人喚問が、組織防衛の上から公明党・創価学会を自民党との連立に走らせたという事実を指摘しておきたいと思います。

宗教法人法改正に伴う池田証人喚問問題は、秋谷栄之助会長(当時)の参考人招致で切り抜けることができましたが、新進党で政権の奪還を企図していた公明党・創価学会には自民党側からさまざまな揺さぶり・圧力がありました。そうした中に密会ビデオ問題があったことは事実です。

新進党から公明党そして創価学会が離れていき、自公連立に至る流れの中でこんな動きがありました。97(平成9)年6月に公明党の政審会長などを歴任した正木良明さんが亡くなりました。その葬儀は正木さんの地盤を継いだ北側一雄君が取り仕切ることになっていましたが、竹下元総理が参列すると連絡があったのです。そこで慌てた旧公明党・創価学会は、後に公明党代表となる神崎武法代議士を派遣しました。その神崎君に対して、竹下首相が「小沢一郎と手を切りなさい。小沢と手を切って自民党と組めばもう池田喚問はなくなるし、大臣にだってなれるよ」とささやいたのです。

驚いた神崎君は、帰京してから秋谷会長らと相談。そこで小沢代表と手を切ることを決めたのです。その後、神崎・坂口力・冬柴鉄三・太田昭宏の各代議士が中心となって、同年暮れの新進党党首選で突然、元自民党の鹿野道彦代議士を擁立、小沢代表の追い落としを図りました。議員会館の神崎事務所に中堅・若手の元公明党国会議員を呼んで、冬柴・太田君らが「池田先生の思いは鹿野だ」と説得したのです。私は「システムの上からも、池田名誉会長が直接、そんなことを言うわけがない」と批判し小沢代表を支持。代表選は小沢氏が当選しましたが、旧公明党は新進党を割って自民党と組む道を選びました。

結局、公明党は自民党と組んで創価学会ならびに池田名誉会長を守ったのですが、それは党利党略の組織防衛であって国民のためではありませんでした。

私は宗教者ならびに宗教団体が政治活動を行う場合は、平和・福祉・人権などに特化すべきだと考えます。戦争や原発に反対し、命を守る発進基地になるべきでしょう。その意味で少なくとも政権をめぐる権力闘争の場である衆議院に出るべきではないと考えますが、組織防衛のために国民不在の権力闘争に明け暮れた公明党の連立参画は罪深いものだったと思っています。

 

二見伸明(ふたみ・のぶあき)元衆議院議員。1935年生まれ。早稲田大学大学院卒。公明新聞記者から衆議院議員10期(公明党・新進党・自由党)。公明党政審会長・副委員長等歴任。羽田内閣運輸大臣。新進党解党時に公明党に戻らず小沢一郎氏と行動を共にする。政界引退後は、原発推進や集団的自衛権の行使容認・安保関連法などを推進する安倍自公政権を批判する論評を続けている。

 

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