9月号目次
閻魔帳
「天に向って唾す」消費税増税/浦野広明
特集/不寛容かつ不自由な社会招いた創価の罪
池田大作の無責任体質を浮かび上がらせる日韓関係の悪化/段 勲
「表現の不自由展・その後」中止事件 安倍政権が壊した日本の民主主義の現実/川﨑泰資
『表現の不自由展・その後』の中止を後押しする「公明党=創価学会」という桎梏/古川利明
トピックス
ワールドメイトに群がる政治家たち/藤倉善郎
- 連載
信濃町探偵団──創価学会最新動向
ナニワの虫眼鏡(第3回)
博打国家、日本! ギャンブルで自治体の運命を委ねる愚/吉富有治
新・現代の眼(第37回)
小人の交わりは甘きこと醴の如し、君子の交わりは淡きこと水の如し/菅野 完
ヨーロッパ・カルト事情(257)
フランスの創価学会の現状と会員の意識(2)/広岡裕児
執筆者紹介 バックナンバー一覧 編集後記
編集後記から
戦後最悪とまで評される日韓関係。こうした時にこそ、「韓国は、日本にとって『文化大恩』の『兄の国』である。『師匠の国』なのである。その大恩を踏みにじり、貴国を侵略したのが日本であった。ゆえに、私は、永遠に貴国に罪滅ぼしをしていく決心である」(2000年5月22日付『聖教新聞』)と述べている、政権与党・公明党の創立者である池田大作創価学会名誉会長の出番なのではないでしょうか。
しかも池田氏のこうした決意は、昨日や今日に醸成されたものではなく、「韓国と日本の文化交流に微力ながら尽くしたい。これは、私の若き日からの誓いであった。いな、少年の日からの決意でもあった」(『大白蓮華』2000年3月号「私の人生記録・韓国初訪問」)というのですから、人生最晩年に差し掛かっているいまこそ、命をかけて発言すべきと思うのですが、池田氏は日韓関係を憂慮する発言をするでもなく、関係改善を促すこともありません。
発言しないのは、すでに「少年の日からの決意」など忘れてしまったからか、あるいは憶えていても実行する気力がないのでしょう。というのも8月23日付『聖教新聞』に載った1年ぶりの池田氏の「近影」には生気が感じられず、まるで「生ける屍」がそこにいるかのような印象だったからです。
仮にそうであったとしても、池田氏や創価学会が大好きな「三国志」には、「死せる孔明、生ける仲達を走らす」との故事があるのですから、ぜひともその影響力を駆使して嫌韓を煽る政治勢力やメディアを一喝して欲しいものです。もっとも韓国礼讃発言自体が本気ではなく、ご都合主義的なものかもしれませんが。
ところで次期衆院選の前哨戦として注目された埼玉県知事選挙(8月25日投開票)で自公推薦候補は、野党推薦候補の前に敗北。小誌発行時点には結果が出ている岩手県知事選挙(9月8日投開票)も、野党共闘を推進する小沢一郎元民主党代表に近い現職知事が優勢といわれています。
両選挙に敗北すると政権の求心力が落ちることを恐れたか、埼玉県知事選前には池田氏が埼玉入り。岩手には原田会長が出張し、必勝を檄しました。しかし神通力は効かなかったようです。嫌韓を政権の浮揚に利用する安倍自公政権ですが、そろそろ政局の潮目が変わりそうです。
特集/不寛容かつ不自由な社会招いた創価の罪
池田大作の無責任体質を浮かび上がらせる日韓関係の悪化
段 勲
ジャーナリスト
相互礼讃の関係──韓国と池田氏
「文化大恩の国」「兄の国」──。隣国・韓国をこう宣揚してきた人物は創価学会の池田大作名誉会長である。著書『ありがとう韓国』(2012年)に明記し、身内の施設である福岡研修道場内に設けた「韓日友好の碑」にも、「永遠に貴国と友情を結び、貴国の発展につくしていくことを決心する」と、文字を刻んでいる。
日本と同様に、戦後のどん底生活圏からミラクルの発展を遂げた韓国は、他方、SGI(創価学会インタナショナル)でも、米国組織をはるかに凌ぐ最多の会員数を誇るトップ組織国として独走している。
韓国全土に300カ所を超える会館を有し、首都・ソウルには「池田」の名を冠にした豪華な文化会館もある。ソウルに池田文化会館があるのは、韓国で新宗教「世界基督教統一神霊協会」(現・世界平和統一家庭連合)を起こした教祖・文鮮明の名前を付けた立派な会館が、東京に建設されているようなものだ。
公称会員数、100万人強という。この数値が事実なら、韓国人の50人に1人が、「韓国SGI」のメンバーということになるだろうか。
半世紀前の1970年代、すでに会員数は100万人と推定された。その後、組織分裂など浮き沈みがあったものの、教勢をじわじわと伸ばしてきた。実際、何年か前に訪韓したときのこと。ソウル・仁川国際空港から都市部に向かうタクシーの中で、こんな“貴重な”経験をした。乗客の私が日本人と知ると、日本語の達者なタクシー運転手が、「お客サン、創価学会を知っていますか?」と、声をかけてきた。「知っています」と返事すると、こう折伏(布教)されたのである。「日本の池田センセイがもうすぐ広宣流布をしてくれます! 広宣流布になってから創価学会に入っても、もう手遅れですヨ!」
ハンドルさばきが上手な若い運転手は、熱心な「SGI韓国」のメンバーのようで、助手席には、機関紙「和光新聞」も束ねて置かれていた。
韓国を「兄の国」と敬意を表している池田氏は、これまで韓国の各大学から文学博士、経営学博士など20を数える名誉称号を贈与された。少しランクが落ちるが、地域から贈られた名誉称号にいたっては、300件ほどを数える。韓国からこんなにも各種の栄誉賞を授与されている日本人は、前例を見ない。
韓国とそうした懸け橋にもなってきた池田氏である。戦後最悪の衝突と言われる今回の泥沼化した日韓問題に、胸を痛めているかも知れない。
幕が閉じることのない韓国の国民感情
もっとも池田氏の時宜に適った格調高い各種提言を精査すると、「原水禁」や「防衛問題」、さらには一連の「沖縄基地問題」にしてもそうだが、“希望”と“現実”が佃煮状態になっている。美辞麗句を重ねて、受けのいい「希望」を提言することには得意でも、「現実」を直視し、どうしたら解決するのか具体的な活動にまでは触れることがない。韓国に対しても「永遠に貴国と友情を結び、発展につくす」と、「希望」を提示した。ではどうしたら韓国と友情を結べて、発展に寄与できるのか。双方の国民が納得できる提案に乏しい。
現在、進行している日韓の大きな軋轢は、「慰安婦問題」や「徴用工問題」等に端を発した。日本から見ると、1965年、日韓請求権協定の終結で、韓国との対立に終止符を打ち、解決済みと思われていたのである。ところが2018年10月、日本の最高裁に当たる韓国の大法院が、「新日本製鉄(現・日本製鉄)に韓国人1人当たり、1億ウォン(日本円で約1千万円)」の損害賠償を命じる判決を下した。韓国も三権分立の民主国家だが、政府と司法の見解は違うということだろうか。つまりは、外交的には決着していたはずだが、個別の請求権は等閑視されていたこともあり、戦後から70余年が経過しても、日本に対する反感の根強い韓国の国民感情は収束を見せない。
「慰安婦」問題もまたそうで、史実的には不鮮明なところもあるが、当事者やその家族が受けた深い傷跡は、金で癒されることがなかった。
ちなみに戦時下における女性の性被害という点では、日本人も多大な犠牲を被っている。例えば、戦争末期の満州国(現・中国北東部)で、生活を営んでいた岐阜県から満州に渡った黒川開拓団が、侵攻してきたソビエト兵たちとどう向き合ったか。命を守ってほしいという引き換えに、15、16歳という未婚の女性たちが衣服を脱いだ──。証言者がまだ現存しているが、この問題で日本がソビエト(現・ロシア)に損害賠償を求めたとか、双方国に亀裂が走ったという話は聞かない。だから韓国も、というわけではむろんない。「慰安婦」は、国家が命じた殺し合いという残虐な戦争の中で発生したこと。こんな戦争など二度と繰り返してはならないと、双方間で対話し、知恵を出し合い続けることを、最優先させるべきではないだろうか。
しかし、戦前・戦中の日本統治下の問題を盾にして、韓国は日本に、次から次とカードを切ってきた。貿易を中心にした輸出入の経済問題から、GSOMIAの防衛問題に至るまで。これなどは韓国の防衛環境に不利益をもたらすかと思うが、同国は強気である。果ては、福島による食品の放射能汚染問題にも横やりを入れてきた。来年の東京オリンピックをボイコットするような姿勢も見せており、はてはパラリンピックのメダルにまで戦前の軍旗・旭日旗を想起させるとして批判を加えている。
これに対して日本でも、韓国批判が沸騰。テレビのワイドショーなどでは、安倍首相を翼賛するコメンテーターたちが、嫌韓を煽っている。
韓国礼讃発言の欺瞞性
こうした時にこそ日韓双方の国民は冷静になるべきであり、韓国を「文化大恩の国」と公言している池田氏と、池田氏を「永遠の師匠」と仰ぐ創価学会、そして池田氏が創立した公明党は、積極的に日韓の関係改善に動くべきだろう。それが数百にのぼる各種の名誉称号を授与されている池田氏の、韓国への貢献であり、「永遠に貴国(韓国)と友情を結び、貴国の発展につくしていく」ことを表明した池田氏の責務なのではないか。
そうであるならば、今回、安倍自公政権が決定した半導体製造に不可欠な3素材の輸出規制強化と、韓国のホワイト国からの除外は、韓国の経済的「発展」に直結しているのだから、これを黙視することなど、とうていできないはずだ。
だが池田氏は悪化する日韓関係や、安倍自公政権による経済制裁に言及することはない。創価学会も、たとえば8月1日付『聖教新聞』1面に、「韓国 京畿道漣川郡から特別顕彰牌」と題して、韓国の一地方から池田氏に「特別顕彰牌」が贈られたことを大々的に報道。授与式では、漣川郡の郡守が「反戦への強い信念のもと、青年を育成し、韓半島の平和はもちろん、人類の幸福と平和のために行動を続ける池田先生に敬意を表します」との祝辞を述べていることは伝えるものの、悪化する日韓関係の打開を訴えることはない。
同様に池田氏を創立者と仰ぐ公明党は、安倍自公政権の一角を占めているにもかかわらず、韓国をホワイト国から除外する閣議決定に異を唱えることはない。
一連の経緯から見えてくるのは、本誌でもたびたび指摘している池田氏ならびに創価学会・公明党の言行不一致、二枚舌ともいえる欺瞞的な体質である。池田氏は戸田城聖二代会長の原水爆禁止宣言を恩師の遺訓だとして、核兵器廃絶を声高に唱えてきた。だが、公明党が政権の一角を占める日本政府が、国連の核兵器禁止条約に反対しても、これを厳しく批判することはなく、公明党に連立離脱を指示することもない。
同様に、戦禍に蹂躙された沖縄には核も基地もいらないと主張してきたにもかかわらず、安倍自公政権が辺野古新基地の建設を強行し、公明党の石井啓一国交相が、新基地建設のお先棒を担いでいるにもかかわらず等閑視を決め込んでいる。
戦後最悪と評されるまでに悪化した日韓関係についてだんまりを決め込むのも、核廃絶や沖縄に関する発言と同根、軌を一にするものと見ることが可能だ。おそらく韓国を「文化大恩の国」「兄の国」と礼賛する池田氏の狙いは、SGI中最多の会員数を誇る「韓国SGI」の組織維持と、自らの身を飾るための韓国からの各種名誉称号の獲得にあるのだろう。
自己利益に執着し、他を顧みない独善的で排他的な体質、それが言論出版妨害事件や盗聴事件を生んだ。そうした池田氏ならびに創価学会そして公明党が、政権の一角を占め、その最大の支持基盤となっていることが、今日の不寛容で不自由な日本社会を招いた大きな要因であることは明らかだろう。
段 勲(だん・いさお)フリージャーナリスト。1947年生まれ。週刊誌記者を経て、創価学会・公明党など宗教問題をはじめ社会・世相、医学・健康等をレポート。『私はこうしてがんを克服した』(日本能率協会)『宗教か詐欺か』『創価学会インタナショナルの実像』(共にリム出版)『定ときみ江 「差別の病」を生きる』(九天社)『鍵師の仕事』『高額懸賞金付き!未解決凶悪事件ファイル』(共に小学館文庫)など著書多数。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- 1年ぶりの永遠の師匠・池田大作「近影」
・8月23日付『聖教新聞』「随筆『人間革命』光あれ 池田大作」
「紺碧の夏空が広がった今月上旬、埼玉の研修道場へ足を運んだ。埼玉の天地はいずこも懐かしい。あの友この友の顔が、あふれるように浮かんでくる。
埼玉といえば『鉄桶の団結』である。わが同志は、このモットーを掲げて半世紀、いつも一丸となって正義の大行進を続けてきた。この道場で、『破邪顕正』の精神の神髄を語り合ったことも蘇る。(中略)
私は歴史の街道の近傍を北上し、長野研修道場も訪問した」
「初訪問から40周年――一緒に人材練磨の歴史を築いてきた役員の友に、感謝の挨拶を(今月9日、長野研修道場で)」
※池田大作名誉会長の入信(入会)記念日である8月24日を前にした23日付『聖教新聞』が、「随筆 『人間革命』光あれ」なる池田大作名義の記事を掲載。その中で池田氏は8月上旬に埼玉県日高市にある創価学会施設・埼玉研修道場と、長野研修道場を訪れたことを記述。紙面には、8月9日に長野研修道場の玄関先で、100名ほどの幹部らに見送られる、ゴルフ場などで使用する電気カートを改造したと見られる軽自動車様の乗り物に乗った、池田夫妻と思しき人物の写真が載っていた。
池田氏の近影写真が『聖教新聞』に掲載されるのは、昨年の軽井沢での写真以来、1年ぶりのこととなる。昨年の写真の構図も今年同様、カート様の乗り物の後部座席に座っている姿である。だが、昨年と今年で異なるのは、昨年の写真では池田氏が創価学会の三色旗を握り振っている姿であるのに対して、今年の写真では池田氏に動きが全く見られないことといえよう。
今年の写真に写っている池田氏と思しき人物は、帽子をかぶりサングラスをかけているが、池田氏といわれれば池田氏の風貌に見える。しかし前の席に座る運転手(三男・池田尊弘氏か)と、後部座席に池田氏とともに乗車している女性(かね夫人か)は、見送る人々の方を向き、女性は手を振る仕草をしているのに、池田氏と思しき人物は、見送る人々の方を向くでもなく、前を向いたままのさながら木偶(でく)のような様相である。
創価学会は、「池田先生はお元気」と喧伝していることから、8月23日付『聖教新聞』掲載の近影も、「お元気」の証拠ということなのだろう。しかし昨年はまだ動きを感じさせたにもかかわらず、今年は動きすらない。年々衰えていることは明らかであり、とても「お元気」の証拠写真とは思われない。むしろ毎年、入信(入会)記念日という定点に、衰えていく池田氏の姿を公開するのは、学会員に来るべきXデーに備える心構えを涵養していると見ることも可能だ。
ところで「随筆 『人間革命』光あれ」の中で池田氏は、8月上旬に埼玉県にある研修道場を訪れたと書いている。池田氏が、暑い夏に避暑地である軽井沢に赴くのは例年のことだが、その途次に毎回、埼玉県を訪問するわけではない。では、この暑い時期に、なぜわざわざ埼玉県を訪れたのか。その理由として考えられるのが、8月25日投開票で実施の埼玉県知事選挙だ。
今回の埼玉県知事選挙は、参院選後、初の大型選挙で、自公推薦候補と野党が一本化して支援する候補の事実上の一騎打ちであることから、来る衆院選の前哨戦と見られていた。その知事選では、当初、元プロ野球選手でスポーツライターとしても知られる自公推薦の青島健太候補が、野党が支援する元国民民主党参議院議員の大野元裕候補を、その知名度と自公の組織力を背景に圧倒的にリードしているといわれていた。だが大野候補が激しく追い上げ、告示前後には横一戦となり、最終的に大野候補が青島候補を破って当選した。
池田氏が軽井沢への途次、わざわざ埼玉入りしたのは、告示の直前と思われるのだが、選挙戦の水面下では、こんな動きもあったと『日刊ゲンダイ』8月20日号・26日号が次のように報じている。
〈青島陣営は菅官房長官の大号令の下、“官邸主導”の色彩が濃い。三原じゅん子ら国会議員が連日応援に入るだけでなく、超多忙の官房長官自身も18日、2度目の埼玉入りで街頭に立った。
「それだけじゃありません。菅さんは、新潟や沖縄の知事選でも連携してきた創価学会幹部に今回も直接電話を掛け、支援を頼んだようです。以降、学会がフル稼働しています」(自民党関係者)〉(8月20日号)
〈参院選後初の知事選のうえ、当初「青島圧勝」とされていたため、「勝てば政権への追い風になる」と考えた自民は党を挙げて青島氏を支援。告示前から二階幹事長や岸田政調会長が応援に入り、告示後も三原じゅん子氏ら国会議員が連日、街頭に立った。
特に力が入っていたのは菅官房長官だった。超多忙の中、2度も埼玉入り。大野氏に追い上げられ、青島氏と横一線に並ばれると、菅官房長官は創価学会の幹部に直接支援を頼んだとされる〉(8月26日号)
だが青島候補は落選。池田“大将軍(原田会長発言)”の神通力は効かなかったとみえるが、その背景を8月29日付「NetIBNews」は、次のように報じている。
〈菅氏が選挙において常用する「2枚の切り札」は、懇意な佐藤浩・創価学会副会長を通じての“学会員フル稼働選挙”と、官邸御用達選挙プランナー・三浦博史氏(「アスク社長」)の登用だ。自公推薦候補が勝利した昨年6月の新潟県知事選、さらに4月の北海道知事選でも、『洗脳選挙』の著者であり争点隠し選挙が得意な三浦氏が現地に張り付き、創価学会もフル稼働していた。司令塔役・菅氏の息のかかった人たちが動いて、野党系候補に競り勝ってきたのだが、なぜか、埼玉県知事選では通用しなかった。
「今回も、菅官房長官・佐藤副会長ラインで支援要請が発せられたようですが、参院選後の選挙疲れと夏休み期間でもあったことから、高齢化が進む創価学会員はフル稼働に程遠かった。しかも参院選で公明党は比例票を約百万票も減らし、安倍政権を下駄の雪のように支え続ける佐藤副会長に対する学会員の反発も強まっています。今後も創価学会の集票力が右肩下がりで落ちて行き、菅官房長官の選挙での“神通力”も効きにくくなっていくのは確実です」(永田町ウォッチャー)〉
もっとも「選挙・埼玉・池田大作」という三題話でいえば、2007年の参院選を前にして池田氏は、今回同様、埼玉県日高市にある埼玉研修道場を訪問し、選挙必勝の檄を飛ばした。だが、埼玉選挙区に公明党が立てた高野博師候補はあえなく落選。その後、高野氏は創価学会・公明党と仲違いする事態にいたった経緯がある。その意味では、すでに07年時点で、池田“大将軍”の威光は衰え始めていたものと見える。
ちなみに高野氏は、参議院議員在職中、国会審議をスルーしてフランスに渡り、フランスの国民議会報告書が創価学会を「有害セクト」にリストアップしていることを打開すべく、「基本的人権と自由を侵害するセクト的集団に対する予防と取締強化のための法」の作成を担当した元セクト対策責任者を、日本大使館員に案内させて訪問し、創価学会をリストからはずすように交渉に及んだ事実がある。福本潤一元公明党参議院議員は、この高野議員の行為は、池田氏の側近である長谷川重夫第一庶務室長(現・創価学会理事長)が、福本議員の面前で高野議員に対して、フランスでの「有害セクト」の認定をなんとかして欲しいと依頼した事実に基づいていること明らかにしている。
本誌連載「ヨーロッパカルト事情」の筆者・広岡裕児氏は、元セクト対策責任者の要請でこの高野氏との面談に陪席。その時の模様を本誌70号で詳報している。
- 県知事選への注力か!? 池田名誉会長の埼玉訪問に続き原田会長が岩手訪問
・8月9日付『聖教新聞』「岩手 代表幹部会 原田会長が出席」
「総岩手の代表幹部会が8日、盛岡市の岩手文化会館で意気高く開催された。『希望と開拓』――岩手の永遠の指針を池田先生が贈ったのは、1972年7月。その意義について先生は、後に次のようにつづった。『「希望」はいずこより来るか。それは「必ず勝つ」「必ずこうしてみせる」という強き一念から起こる』(中略)第1岩手総県の富田総県長、山口婦人部長は圧倒的な正義の対話の拡大をと訴え、鷹嘴総岩手長が不屈の祈りと行動で岩手新時代を開こうと呼び掛けた。(中略)原田会長は、人一倍の労苦に挑む『陰徳』に、大きな福運の『陽報』が輝くと述べ、明年の学会創立90周年、そして100周年への常勝の快進撃の勢いを決する、先駆けの大闘争をと望んだ」
※創価学会が開催した岩手県代表幹部会に原田会長が出席した。原田会長の岩手訪問の背景に、8月22日告示・9月8日投開票で実施の岩手県知事選挙への支援があることは間違いない。岩手県は「小沢王国」ともいわれるように、小沢一郎元民主党代表の政治的影響力が強く、先の参院選でも当選した野党統一候補と自公推薦候補が激しい選挙戦を展開したように、各種選挙で自公vs.小沢+野党との激しい政治的対立が続いている。
今回の県知事選でも、県政奪還を悲願とする自民党は、公明党と一体となって小沢氏に近い達増拓也知事を打倒し、自民党候補の当選を企図している。
参議院選後、初の大型選挙となった埼玉知事選では、自公推薦候補が楽勝と見られていたが、前述のとおり野党推薦候補の前に敗北した。原田会長が岩手を訪問した8月8日の時点では、埼玉県知事選はまだ拮抗状態だったが、埼玉に続いて野党共闘を強調しその取りまとめ役を自認する小沢氏に近い達増候補を破り、野党共闘を挫くことができれば、自公連立政権の継続を願う創価学会執行部にとっては願ったり叶ったり。
それだけに代表幹部会では、池田名誉会長が岩手に与えた「永遠の指針」の意義である「必ず勝つ」が強調され、各種幹部も選挙の常套句である「圧倒的な正義の対話の拡大」を訴え、原田会長も「常勝の快進撃の勢いを決する、先駆けの大闘争を」と、県知事選での大闘争を檄している。
だが池田氏がわざわざ立ち寄った埼玉の県知事選で自公推薦候補は敗北。原田会長が出向いた昨年秋の沖縄県知事選挙でも自公推薦候補は落選した。岩手県知事選でも、野党各党が推薦する達増候補の優勢が伝えられており、原田会長の岩手入りは徒労に終わる可能性がある。
参院選で9議席減の自民党と100万票減の公明党が推す知事候補の連敗は、各種選挙での勝利を政権の求心力としてきた安倍政権に大きな翳りを落とし、潮目が変わる可能性がある。本誌発行時点ではすでに結果は出ているが、その選挙結果が注目される。
- 創価勝利・連続勝利を鼓吹し聖教新聞の拡販を指示
・8月31日付『聖教新聞』「総県長会議での原田会長の指導(要旨)」
「上半期は、連続勝利で、年間テーマの通り、『創価勝利』の歴史を開くことができました。下半期は、さらに勢いを増して、創価勝利の総仕上げをしてまいりたい。(中略)
この夏の全国最高協議会では、明2020年の『池田先生の会長就任60周年』の『5・3』、栄光の創立90周年の『11・18』という大きな佳節を目指して、拡大の大波を起こそうと決意し合いました。その第一歩は、『世界聖教会館』がオープンする本年の『11・18』に向けての聖教拡大です。(中略)わたしたちは、先生の心をわが心として、世界聖教会館の完成を、聖教新聞の拡大で祝賀してまいりたい。(中略)
そして何よりも、『聖教拡大に挑戦する方』を増やしていきたい。『仏は文字に依って衆生を度し給うなり』の御聖訓の通り、『人を救う文字』を広める聖教の拡大に、功徳は厳然です。皆で励まし、皆で聖教を読み合いながら、聖教拡大を楽しく、朗らかに進めてまいりたい」
※「広宣流布のバロメーター」である参院選挙の公明党比例区票が、前回比で104万票も減少したにもかかわらず、統一地方選・参院選の「連続勝利」で、年間テーマである「創価勝利」の歴史を開くことができたと強調する原田会長。
8月5日付『聖教新聞』掲載の「創立90周年を勝ち開く!」と題する座談会記事でも、「先月の参院選で、私たちが支援した公明党は、選挙区7議席、比例区7議席の合計14議席を獲得し、大勝利しました」「参議院公明党として、現行制度で過去最高の議席数へ躍進しましたね」「投票日翌日の新聞では『公明好調』(讀賣)、『公明安定』(産経)などの見出しが躍りました」「兵庫、大阪の両選挙区で激戦を勝ち抜いたことを通して、『公明「常勝関西」健在』(讀賣大阪版)などとも報じられていましたね」などと自画自賛するものの、比例区票が激減したという不都合な事実には一言も触れようとはしない。
あいかわらずの手前勝手でご都合主義的な体質だが、連続勝利で「創価勝利の年」の歴史を開いたとする創価学会が、「創価勝利の年」の総仕上げを図るべく、下半期の活動においてまず注力するのは、聖教新聞の拡大だという。
創価学会は、東京電力が福島第一原発事故後に売り出した新宿区信濃町にある東電病院跡地を買収。その跡地に世界聖教会館を建設中であり、今年11月18日にオープンさせる予定なのだが、そのオープン記念として聖教新聞の拡販運動を展開するのだ。
先の統一地方選・参院選の過程で、原田会長らは「立正安国の大闘争」すなわち選挙闘争には大なる「福徳」があるとして、学会員の尻を叩いたが、聖教新聞の拡販についても、「『仏は文字に依って衆生を度し給うなり』の御聖訓の通り、『人を救う文字』を広める聖教の拡大に、功徳は厳然です」などと、手前勝手な理屈をつけて、新聞の拡販に「功徳」すなわち宗教的利益があると、学会員を煽っている。
古今、さまざまの教団が、自らの宗教・信仰に「功徳」や「現世利益」があることを主張してきたが、選挙活動や新聞拡販に「功徳」があるなどと主張するのは、創価学会くらいのものだろう。そして11月18日が終われば、今度は年末に実施の「財務(寄付)」に「功徳」があるとして、集金活動を煽るのだろう。
選挙・集金・新聞拡販、そして新たな顧客を獲得するための会員勧誘(折伏)が、宗教コングロマリット創価学会の活動の基軸なのである。