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5月号目次

閻魔帳

「全員当選」を謳う前に公明党がやるべきこと/段 勲

 

特集/統一地方選総括──宗教と政治の現場から

衆院補選で自公が2連敗 参院選の結果で学会・公明は大揺れも/川﨑泰資

「衆院補選・2戦全敗」のキモにある「公明党=創価学会」のコウモリ飛行の激化ぶり/古川利明

維新圧勝で巨大コウモリと化す公明党!?/吉富有治

統一地方選での幸福実現党の「躍進」は地方空洞化の弊害/藤倉善郎

切所・参院選を目前に──敗北を糊塗し「大勝利」を鼓吹する創価学会/乙骨正生

 

トピックス

暗闘! 神社本庁の役員改選/橋本征雄

 

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

新・現代の眼(第33回)

苟しくも恒心無ければ、放辟邪侈、為さざる無きのみ。/菅野 完

ヨーロッパ・カルト事情253

なぜノートルダムを国が修復できるのか/広岡裕児

執筆者紹介  編集後記

 

編集後記から

統一地方選挙が終了しました。創価学会は「大勝利」宣言していますが、その実態は、前回比議席減の敗北でした。その統一地方選では、各地の首長選で現職しか候補が立たなかったり、各種の議会議員選挙でも候補者が定数に満たず、無投票当選が目立ちました。

創価学会・公明党が自民党と連立・連携したことで生み出された安倍一強なる政治状況。国会軽視に民意無視と、独善的かつ独断的な政治手法を繰り広げる安倍首相(政権)と、これに迎合・追従する官界・司法界・マスコミ界の姿勢に、多くの国民・有権者が失望し、政治的諦観や無関心が広がっていることが、無投票を生み出す要因となっているとの分析もあります。諦観と無関心の先には独裁があることを私たちは歴史的教訓として知っているだけに、いま日本は極めて憂慮すべき政治状況にあると言えるのではないでしょうか。

そうした政治状況下で、2020年の改憲実現に強い意欲を示す安倍首相は、天皇代替わりと改元を政治的に利用、支持率を上げることで夏の参院選に勝利し、悲願の改憲を実現しようと企図しています。そして創価学会もまた、ポスト池田の組織の延命と保身のために、統一地方選・参院選の必勝を期しています。

改憲と組織の延命・保身では、その目的は異なるものの、参院選の勝利を夢想する点では両者は一緒。しかし同床異夢の悲しさか、安倍首相は改憲のためには創価学会・公明党が嫌がる衆参W選挙も視野に入れていると伝えられます。さらには、改憲に慎重姿勢を見せる公明党・創価学会から、大阪府知事・大阪市長のW選挙をはじめとする大阪の各種選挙で圧勝し、大阪での存在感を高める一方の改憲派・大阪維新の会に、連立対象を変更する意図もあるとの観測もあります。

今年11月に会長の任期切れを迎える原田会長は、参院選の勝利を梃に会長続投を図る腹積もりと見られていますが、参院選を勝利する上での頼みの綱は、比例区での自民党との選挙協力です。しかし衆参W選挙となれば、創価学会は極めて厳しい局面に立たされることになります。ましてや統一地方選後、橋下前代表が公言しているように、大阪維新に公明党現職のいる大阪・兵庫の衆院小選挙区に候補を立てられるとなれば、「常勝関西」という創価学会の神話は崩壊の淵に立たされます。

「当て事と畚(もっこ)褌(ふんどし)は先から外れる」との俗諺(ぞくげん)がありますが、昨年、沖縄には「核も基地もいらない」との池田名誉会長の持論に反してまで、陣頭指揮で辺野古新基地建設容認・推進候補を支援した原田会長とすれば、W選挙となれば憤懣やるかたないことでしょう。果たして参院選をめぐる駆け引きがどうなるのか。その帰趨が注目されます。

特集/統一地方選総括──宗教と政治の現場から

 

衆院補選で自公が2連敗 参院選の結果で学会・公明は大揺れも

川﨑泰資

元・NHK記者

 

統一地方選挙と参院選挙が12年に一度重なる、注目の「亥年選挙」は4月21日後半戦を終わった。前半戦で与野党対決となった北海道知事選挙で自公が勝利し安倍政権の強さを見せつけたが、その勢いは後半戦では見事に吹き飛んだ。統一地方選と合わせて行われた沖縄3区と大阪12区の衆院の補欠選挙で自公勢は連敗し、第2次安倍政権誕生以来続けていた衆院補選の連勝記録が止まった。沖縄の基地問題、大阪の維新旋風とこの地域の特殊事情はあったにせよ、敗戦の内容自体に大きな問題があり自公勢力の抱える問題が一気に噴き出た感がある。

 

衆院補選2連敗と公明の衝撃

二つの選挙区に共通するのは、創価学会・公明党が自民党の推した候補に同調する素振りは見せたものの全力を傾注しなかったことにある。沖縄3区ではすでに知事選で学会員の面従腹背が顕著で、三色旗を持った学会員が玉城候補の演説会に公然と現れたのに象徴されるように、多数の学会員が玉城候補に投票したことが確認されている。

また辺野古埋め立ての是非を問う2月の県民投票では反対票が7割を超えたのに工事を継続、今回の補選では辺野古基地建設反対派が政党支持に関わりなく屋良候補に集まる結果を招いた。普天間基地の全面返還には辺野古基地建設以外にないと根拠すら示さず、米国一辺倒の政府与党に県民はあきれ、この方針に加担した公明党が県民の支持を失ったのは当然だ。

一方大阪12区の補選では4人の候補者が出たが、統一地方選前半戦で知事と市長が辞任して候補者が入れ替わるという奇策を講じた大阪維新が圧勝し、その旋風の収まらない中での補選で自公の推す候補は当初から押され気味だった。自民党の北川候補は絶対有利と言われる弔い選挙であるのに、大阪維新の新人、藤田候補に敗れて2位にとどまった。

大阪維新が大阪都構想実現のために公明党に協力を求めたのに、公明党は一度は協力を密約しながらこれを破ったとして全面戦争の中での補選だった。維新側は知事・市長のW選挙での勝利後、約束を守らないなら衆院選で大阪など関西の6選挙区で、これまで公明党の候補を当選させるためあえて維新の候補者を立てなかった「配慮」を取りやめると厳しく申し入れている。この結果、学会・公明党は正念場に立たされた。維新の衆院選での「配慮」がなければ公明党の関西の小選挙区での当選は絶望的になる。公明党は衆院選を比例区だけで戦うのか、維新の選挙での「配慮」を期待し続けるのか、衆院から撤退し参院だけの政党に戻ることを含めて、最後の選択を迫られる可能性さえある。

 

ポスト池田で学会公明に内紛

創価学会・公明党については大メディアがタブーのような扱いを続けてきた結果、政治に与える影響が大きい割に創価学会の真実が語られていない。このところ10年近くも学会員の前からも姿を消している池田大作名誉会長に異変が近づいたのか、創価学会内部でポスト池田の体制づくりが急ピッチで進んでいる。安倍首相の悲願は憲法改正の改憲だが、今や創価学会にとって平成17年11月から施行された「創価学会会憲」こそが注目の的になっている。この改憲ならぬ「会憲」では創価学会会長の権限が大幅に強化され、今では原田稔会長の権限が学会で最大になり、これまで実質的に学会を支配していた池田大名誉会長も制度的には原田会長の配下に属することになった。この「会憲」によって創価学会そのものを創価学会仏として仏様にしているくらいで、池田がいなくなっても学会は支障なく運営できるよう仕組まれているのだ。

池田は1977年(昭和52年)宗門の日蓮正宗と激しい争いを展開し、僧侶の吊るしあげ事件などが頻発した。創価学会が日蓮正宗の制圧を狙ったいわゆる「52年路線」の始まりである。79年に学会は宗門の反撃にあい、池田は教義違背の責任をとって創価学会会長を辞任し名誉会長に就任した。今年はそれから40年の節目にあたっている。その後91年に日蓮正宗は、学会に解散勧告を行い学会とSGI(創価学会インタナショナル)を破門し、池田は信徒除名処分になった。ここから創価学会は、日蓮正宗から教義違背とされた池田本仏論といわれる、事実上池田を生き仏とする教義・信仰を強化。独立教団である「日蓮世界宗」だとして、創価学会の初代と2代それに3代目の会長だった池田を学会の「永遠の師匠」と位置付け不動の地位を与えた。

ところが池田が病に倒れた後のこの10年間は、学会指導部の中で激しい権力争いが起き、その争いが公明党に波及し、自民党と公明党の連携の強化の中で安倍一強体制が生じた。それは秘密保護法や共謀罪、憲法無視の安全保障体系への傾斜、さらに直近ではカジノ法案の成立にまで公明は手を貸し、安倍の復古強圧路線を推し進めた。公明党は安倍路線が強圧的なものにならないよう法案成立にはブレーキを掛けてきたと主張するが、実態は悪法の成立のアクセルの役割を演じてきた。

創価学会内部では、宗教を主体に考える派と政治優先路線派に分かれ、現在は原田会長以下の政治路線派が執行部の主流となっている。自公連立の深まった安倍政権は、かつて学会・公明党が起こした言論出版妨害事件の被害を受けた藤原弘達明大教授が「学会の宗教的ファナシズムと自民党の右翼的体質が結び付いた時、日本の民主主義はアウトになる」との指摘の現実化を意味する。

そのひとつが衆院選挙での選挙協力。「学会票は小選挙区では自民党、比例区では公明党」へと言うあからさまな誘導が自民党と公明党の議員を膨れ上がらせた。この自公の闇取引を創価学会・公明党と大阪維新の会に適用した結果が、関西の6選挙区での公明党の候補者が立つ選挙区には維新が候補者を立てずに公明議員の誕生を促すという民主主義のルールを無視する異様な結果を生んでいる。公明党と維新の会をとりもつスキームを成立させたのは首相官邸の菅官房長官で、菅は公明党ではなく創価学会の原田会長と選挙対策を担当する佐藤浩副会長と直談判するというから穏やかでない。これでは政府自民党の掲げる「政教分離」に真っ向から反するばかりか、憲法違反の疑いが濃厚となる。まさに藤原教授が指摘した、危険な自公連立の末のファシズム体制への移行ではないか。

 

参院選挙の結果が公明の行方を決める

創価学会・公明党は宗教と政治の2頭立て馬車で政界での長期安定体制を維持してきた。国政選挙での公明票の伸びが創価学会の勢力のバロメーターとされ、2005年の衆院選挙で898万票と史上最多の数字を記録した。しかし、17年の衆院選では697万と大幅に減り700万票を割り込んだ。従って今年の参院選では700万の大台を超えることを最大の目標に置き、比例区で6人を当選させる他、選挙区で山口那津男代表ら7人の当選を目指すとしている。しかし選挙区では愛知・大阪・兵庫・福岡では新人を立候補させる方針で知名度が低い上に、沖縄・大阪での衆補選での公明党の不可解な動きに批判も強く厳しい局面も予想される。

こうした情勢から比例区で当選者が6人を割ればもちろん、選挙区でも一人でも落選すれば次の衆院選への展望も苦しく、先に指摘した関西地区の6人の公明議員がどうなるかも分からない。こうした情勢から、参院選で敗北すれば創価学会は衆院から撤退し、党が出発したときの原点の国政は参院だけにするという考えも無いではないという。

 

衆参のダブル選挙論も浮上

補選の2連敗やアベノミクスの評判の悪さから10月に予定されている消費税の値上げも雲行きが怪しくなり、安倍首相の側近の萩生田幹事長代行が値上げを3度延期し、そのことで信を問う解散もあり得ると述べ永田町を騒がせている。その場合、国会の会期を延長した上での参院選挙とのダブル選挙もあり得るとの観測も流れている。公明党・創価学会はなんとしても衆参のダブル選挙だけは避けたいとしている。

その理由は毎度のことながら、衆参とも選挙区と比例の合計4人の名前を書くとなると、高齢の支持者に4人の名前を覚えてもらうことが困難な上、創価学会員以外のフレンド票の獲得運動にも支障が出るからとされる。

しかし、それより沖縄での辺野古基地の建設を頑なに主張し続け、県民の意を汲もうとしない安倍政権にべったりの上、埋め立て停止を求める沖縄県の申し立てに、国地方係争処理委員会が県の申し出を却下するなど強権的な決定を下している国土交通大臣が、公明党の石井啓一衆院議員とあっては、まともな学会員が引き気味になるのは当然だ。

文字通り創価学会・公明党は内外ともに厳しい局面を迎える中で参院選を迎えることになる。(文中・一部敬称略)

川﨑泰資(かわさき・やすし)元NHK記者。1934年生まれ。東京大学文学部社会学科卒。NHK政治部、ボン支局長、放送文化研究所主任研究員、甲府放送局長、会長室審議委員、大谷女子短大教授、椙山女学園大学教授等を歴任し、現在同学園理事。NPO法人マスコミ市民フォーラム理事長も務めている。著書に『NHKと政治─蝕まれた公共放送』(朝日文庫)『組織ジャーナリズムの敗北─続・NHKと朝日新聞』(岩波書店)など。

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

 

  • 天皇代代わりと改元報道

・4月2日付『聖教新聞』「新元号は『令和』5月1日改元 出典は『万葉集』国書で初」

「政府は1日の臨時閣議で、新たな元号を『令和』と決定した。(中略)

菅義偉官房長官が記者会見で、墨書された新元号を発表。安倍晋三首相も会見して談話を読み上げた。首相は『日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継ぎ、日本人がそれぞれの花を大きく咲かせることができる日本でありたいとの願いを込めた』と説明した」

・5月2日付『聖教新聞』「新天皇陛下即位『令和』始まる」「皇居で『剣璽等承継の儀』『即位後朝見の儀』」

「原田会長の謹話 国民統合の象徴である天皇陛下の御即位に当たり、謹んで祝賀の意を表させていただきます。

上皇陛下におかれましては、多くの自然災害に襲われた『平成』の30年余にわたって、常に国民の悲しみと喜びに寄り添い、我が国の平和と繁栄のためにお心を砕いてこられました。

皇太子として、たゆみなくその歩みを支え続けてこられた天皇陛下は、国際性に富み、学問や文化を愛され、広く国民に敬慕されてきました。ここに、天皇陛下の御即位と、新しい『令和』の時代が晴れやかに開幕することをお喜び申し上げ、世界平和の伸展と日本の発展に、さらに貢献してまいります」

 

※原田会長の謹話が象徴するように、創価学会が天皇の代替わりを『聖教新聞』1面全面を使って報じている。『聖教新聞』掲載の元号や代替わりについての記事は、主として通信社配信記事に基づくものだが、そこに元号や代替わりを政治利用する安倍首相に対する批判は微塵もない。

4月30日付『朝日新聞デジタル』には、「即位巡る儀式『政教分離に違反』 キリスト教団体が会見」なる見出しで、プロテスタントやカトリックなどのキリスト教団が、30日に都内で会見し、「天皇代替わりの一連の儀式を国事行為・公的行事として行うことは『憲法上、国民主権の基本原理や政教分離原則に違反し、国家神道の復活につながる』と主張したことを報じているが、宗教的信念に基づく政治的発言とはこうしたものだろう。

安倍首相に阿諛追従し、かつての国家神道の復活を企図するかのような言動を続ける日本会議とも連携する創価学会。創価学会が唱える政治的主張の底の浅さは、改元・代替わりをめぐる姿勢からも一目瞭然だ。

 

  • 統一地方選挙の結果を「大勝利」と喧伝

・4月22日付『聖教新聞』「今週のことば」

「新時代開く凱歌、万歳! 全宝友の勇戦に最敬礼。 『心の財』は尊く輝く。 結び広げた信頼の絆で 地域の明日への幸の光を!」

・4月26日付『聖教新聞』「総県長会議での原田会長の指導(要旨)」「広宣流布とは間断なき闘争 リーダーが毎日の拡大 毎日の激励を」

「4月に行われた統一地方選挙において、私たちが支援する公明党は大勝利を収めることができました。全国の同志の皆さまの大奮闘に、心よりの感謝と御礼を申し上げます。本当に、ありがとうございました。

いよいよ新しい『令和』の時代を迎える時にあって、連立与党の一角を厳然と担う公明党の役割は、ますます大きくなっています。その評価の声も、多くの識者から寄せられています。(中略)ともあれ栄光の『5・3』を大勝利で飾ったことに対して、ともどもに大拍手を送り合いたい」

 

※統一地方選挙を「大勝利」と喧伝する創価学会。しかしその実態は、前回獲得した議席から立候補者数を絞っており、全員当選しても議席は減るという、はなから議席の拡大を放棄した「不戦敗」ともいえる選挙にほかならなかった(詳しくは本誌今号の特集記事を)。

だが統一地方選前半の大阪市議選・京都市議選で二人の現職候補が落選し、目標だった完全勝利=全員当選の目論見が崩れたにもかかわらず、後半の選挙での全員当選をもって、創価学会は「完全勝利」「大勝利」を鼓吹し、議席減であるにもかかわらず、あたかも勝利したかのような虚偽宣伝を続けている。

その上で原田会長は、全国総県長会議において、統一地方選勝利の勢いを来る7月の参院選につなげるべく、池田名誉会長の「閉幕即開幕」なる言を引いて参院選に向けて全力を投入するよう指示。その要諦を、全国の幹部が率先して「自分にしかできない立正安国の戦いを進めよう』と、勇んで対話に挑戦」していくことと、「一人でも多くの方を広布の陣列に」との思いで、「『広布拡大・立正安国への戦いで、福徳は大きく積まれる』ことを確信をもって語っていくことだと強調。創価学会の選挙闘争に挺身すれば、「福徳」すなわち功徳やご利益があると、学会員を毛バリで釣れと指示しているわけである。

統一地方選や参院選(衆参W選挙の可能性も)を「立正安国の戦い」と位置付け、その宗教的扇動や呪縛で、学会員を選挙に駆り立てる創価学会だが、その底意は、莫大な利権を生む創価学会という組織の延命と、そこに寄生する宗教官僚の保身以外のなにものでもない。

『週刊文春』5月2・9日ゴールデンウィーク特大号には、「インテリジェンス・レポート」として、「創価学会の暗闘」なる記事が掲載され、そこでは「原田続投か谷川新会長か、『ポスト池田』の最終戦争」として、来る参院選の帰趨が、近未来の創価学会の人事を大きく左右するとの見方が示されている。宗教的言辞という毛バリで釣られ続けてきた学会員も、そろそろ「不都合な真実」から目を背けるのではなく、現実を認識する必要があるのでは。

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