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12月号目次

 

閻魔帳

カルロス・ゴーン氏と池田大作氏の共通点/段 勲

 

特集/空騒ぎに終わった11・18の背景にある創価・公明の地雷原

 

「11・18」を機にいじった「新総務人事」は原田稔の「会長再任」への布石か/古川利明

20世紀最後の本幹での池田スピーチを放映した創価学会執行部の焦燥と危機感/乙骨正生

 

トピックス

神社本庁のモラルハザード/橋本征雄

トピックス

国際勝共連合50周年大会に馳せ参じた自民党国会議員たちの裏事情/鈴木エイト

トピックス

幸福の科学・教祖長男騒動に見る「カルト2世問題」/藤倉善郎

 

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

新・現代の眼(第28回)

一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う/菅野 完

ヨーロッパ・カルト事情248

ニューエイジとインターネット/広岡裕児

執筆者紹介  編集後記

 

編集後記から

今年も早、師走となりました。毎年、毎年、光陰矢の如しなどと形容しますが、来年には今上天皇が退位し、新天皇が即位することから、今年の師走は平成最後の師走となるため、ひときわ時の流れが速いことに感慨を覚える昨今です。

そんな師走に入る直前、新天皇の即位によって皇嗣となる秋篠宮が、誕生日に先立つ記者会見の席上、大嘗祭の在り方について、政教分離の観点から一石を投じました。宗教的色彩の濃い大嘗祭に国費を投じることを問題視されたのです。

政府はこの秋篠宮発言を無視黙殺しようとしていますが、日本における政教分離を考える契機となれば幸いです。

政教分離といえば小誌が創刊以来、追究し続けている創価学会・公明党の問題ですが、11月17日開催の創価学会の総県長会議の席上、原田稔会長は、池田大作名誉会長の代表的著作とされる『新・人間革命』を引用して、あらためて公明党設立の宗教的意義を強調。その上で、来年の統一地方選・参院選を、再来年2020年の創価学会創立90周年を勝利で迎えるための「勝ち越えなければならない広布の山」であるとして、学会員に対して「完全勝利・連続勝利」を檄しました。

今年9月の沖縄県知事選挙では、沖縄の多くの学会員が、辺野古新基地建設を容認する候補を支援した学会本部の指示に反して、基地建設に反対する玉城デニー候補に投票したことが分かっています。こうした沖縄の学会員の動きが本土の学会員に伝播することは、創価学会の組織的崩壊を招きかねませんから、執行部としてはなんとしてもこれを防がねばなりません。その予防線として原田会長は、池田名誉会長の言説を引く形で、公明党の宗教的正当性を強調。執行部の政治判断の正当性をアピールしたものと思われます。

現在、創価学会は「財務」と称する集金活動の真っ最中ですが、「財務」が終了すれば、すぐさま選挙態勢に突入し、「広布の山」だとする統一地方選・参院選に学会員を駆り立てる腹積もりなのでしょう。詳しくは特集記事をご参照ください。

 

特集/空騒ぎに終わった11・18の背景にある創価・公明の地雷原

 

20世紀最後の本幹での池田スピーチを放映した創価学会執行部の焦燥と危機感

 

乙骨正生

ジャーナリスト

 

「異体同心の団結」を強調

11月18日に創価学会は、「広宣流布大誓堂完成5周年」と「学会創立の日」を記念する「本部幹部会」兼「SGI(創価学会インタナショナル)総会」を、東京・巣鴨の戸田記念講堂で開催した。

「世界広宣流布の中心道場」(11・19付『聖教』)と、創価学会の総本山的位置づけの大誓堂。その完成5周年を記念しての本部幹部会は、全国各地の会館に同時中継されたが、参加資格は壮年部・婦人部が地区幹部以上、男子部・女子部が部幹部以上と限定され、しかも服装はラフなものではなく「正装」とされたことから、本部幹部会ではなにか新たな方針や人事の発表があるのではと見られていた。

というのも創価学会はここ数年、根本規範とする会憲の制定・施行による会長権限の強化や、会則変更による本尊・教義の改変、会長任期の変更や理事長交代人事などなど、ポスト池田体制に向けたドラスティックな動きを、創立記念日である11月18日前後に見せることを常としていたからだ。

創価学会内部やその周辺では、昨年制定された会憲に明記された「日蓮世界宗創価学会」の旗揚げや、池田大作名誉会長の病状発表と引退、そして子息の池田博正主任副会長のSGI会長就任など、さまざまな予測・憶測がなされていた。

だが蓋を開けてみれば、芸術部の田中美奈子と彦摩呂が司会を務めたことに注目が集まったくらいで何の発表もなし。参加した多くの学会員も拍子抜けだったようだ。

事前のさまざまな予測や憶測に反し、今回、創価学会がなんらの発表も行わなかったのは、9月末の沖縄県知事選挙での敗北が影響していることは間違いない。同知事選で創価学会は、米軍海兵隊辺野古新基地の建設を容認する自公推薦の佐喜真淳候補を組織あげて支援した。だが多くの沖縄の学会員は、学会本部の指示に反して、辺野古新基地建設に反対する玉城デニー候補に投票した。マスコミの出口調査では、玉城候補に投票した公明党支持者=学会員票は約3割と報じられたが、その後のさまざまな情報を勘案すると、投票に赴いた学会員の4割から5割は玉城候補に投票したものと類推される。しかも「造反有理」の根拠となっていたのは、戦禍に見舞われた沖縄こそ「平和の島」であって欲しいと念願し、「核も基地もいらない」と主張してきた池田名誉会長の言説だった。

池田名誉会長の言説によって執行部の指示の正当性が否定され、「鉄桶(てっとう)」を誇った団結が崩れたことは、組織の崩壊を意味するだけに、執行部が強い危機感を抱いたことは想像に難くない。そのことは11月18日の本部幹部会で執行部が、新たな発表は控える一方で、20世紀最後の本部幹部会(2000年12月14日)における池田スピーチを放映し、その全文を11月27日付『聖教新聞』に掲載して会員に周知徹底を図っていることからも分かる。

なぜなら20世紀最後の本部幹部会における池田スピーチの内容とは、21世紀の創価学会の勝利を託宣し、創価学会の永続性をアピールするために23世紀にまで及ぶ「七つの鐘」構想に言及。勝利と永続性の要諦として「異体同心の団結」を強調するものだったからだ。

冒頭で「21世紀も、大勝利の歴史を、ともどもに築き残してまいりたい」と、21世紀における創価学会の勝利を託宣した池田氏によれば、23世紀に至る創価学会のロードマップとは次のようなものだという。

〈ご存じの通り、これまで創価学会は、「七つの鐘」を7年ごとに打ち鳴らしながら前進してきた。「七」は「南無妙法蓮華経」の七字にも通ずる。

第一の「七つの鐘」は、学会創立の昭和5年(1930年)から、昭和54年(79年)までの50年間であった。

第二の「七つの鐘」を打ち鳴らす、21世紀の前半の50年では、アジアをはじめ世界の平和の基盤をつくってまいりたいと、私は申し上げた。そのとおりに私は祈り、一つまた一つと、手を打ち続けてきた。今回、私がアジアの各地を訪問したのも、この21世紀の構想の上からの新たな第一歩である。

続く第三の「七つの鐘」を鳴らす21世紀の後半では、「生命の尊厳」の哲学を時代精神にし、世界精神へと定着させたい。

さらに、第四の「七つの鐘」に当たる22世紀の前半には、世界の「恒久の平和」の崩れざる基盤をつくりたい。

その基盤の上に、第五の「七つの鐘」が高鳴る22世紀の後半には、絢爛たる人間文化の花が開いていくであろう。

それが実現すれば、第六の「七つの鐘」、第七の「七つの鐘」と進みゆく。日蓮大聖人の立宗1000年(2253年)を迎える23世紀の半ばごろから、新たな展開が始まるであろう〉

創価学会の永続性を意味する「七つの鐘構想」は、21世紀も勝ち続けることが前提。その要諦は「異体同心の団結」だと池田氏はこう強調する。

「21世紀の100年間、創価学会は、さらに『異体同心の団結』で、勝利のスクラムを組みながら、素晴らしき前進の歴史をつくってまいりたい」

俗諺(ぞくげん)にも「来年のことを言えば鬼が笑う」というが、不確実性の時代に100年どころか23世紀にまで言及するお気楽さ、荒唐無稽ともいえる言説には呆れるしかない。なぜなら池田氏が「南無妙法蓮華経」の七文字に通じるとする「七つの鐘」なる大目標。その「第一の鐘」の終着点である昭和54年を池田氏は、昭和41年の本部総会の席上「広宣流布の一つの目標」であるとしたが、その昭和54年になにがあったかといえば、日蓮正宗との対立に起因する内外からの批判の前に、池田氏は会長を辞任せざるをえなくなったのである。

この昭和41年の本部総会で池田氏は、昭和54年ではあまりに性急すぎるので、昭和65(平成2)年を昭和54年にかわる「目標にして、広宣流布の大総仕上げにかかりたい」とも発言しているが、その昭和でいえば65年となる平成2年に何があったかといえば、「広宣流布の大総仕上げ」どころか、日蓮正宗との第二次対立の結果、池田氏は日蓮正宗から法華講総講頭(信徒総代)を事実上、解任され、翌年には破門の憂き目にあっている。また同時に平成2年からの3年間にわたって創価学会は、国税庁による税務調査に晒され、その金権体質に厳しい社会的批判が加えられ、その後の池田氏の国会喚問問題と宗教法人法改正へとつながることとなった。

昭和54年と平成2年に起こった二つの事実は、池田氏の予言・託宣なるものの信憑性が皆無に等しいことを示唆して余りあるが、執行部はそうした事実に頓着することなく、21世紀における創価学会の勝利と永続性の要諦は「異体同心の団結」にありとする池田スピーチを放映することで、組織の引き締めに躍起となっている。その求心力の要が、原田会長を中心とする執行部にあるのは当然のこと。

 

公明党結党の宗教的意義を強調する執行部

そうした執行部の意図は、本部幹部会直後の11月22日付『聖教新聞』掲載の、「創立90周年を勝ち開く!」なる座談会記事にも色濃く投影されていたので紹介しよう。

「原田(会長) 総県長会議でも、お伝えをしましたが、私たちが目指す次なる目標である2020年の学会創立90周年に向かって、明2019年は、勝ち越えなければならない広布の山が連続して訪れる年です。創立90周年の勝因を築く重要な年となります。私たちは、いよいよの信心、いよいよの決意で進んでいきたい。

永石(婦人部長) 明年の活動の第1項に、『創価の勝利を開く「対話拡大」「友好交流」に全力!』とある通り、立正安国の前進へ、皆で対話拡大・友好交流に動き、仏縁と友情を大きく広げ、創価勝利の歴史を開いていきたいと思っています。

竹岡(青年部長) 明年は、『平成』の時代が終わりを告げ、新元号となります。それと前後して、統一地方選・参院選が連続して行われます。(中略)

原田 『一人の勝利』『私の勝利』なくして、『創価の勝利』はありません。リーダーは、この点を肝に銘じ、どこまでも『一人を大切に』『皆を人材に』と、励ましを広げていきたい。そして、『異体同心の団結』で、断固として完全勝利・連続勝利を開いていこうではありませんか」

ちなみに池田氏は、前出の20世紀最後の本部幹部会から5カ月後の2001年4月27日開催の全国総県長会議に送ったメッセージでも、再び「第二の七つの鐘」に言及。その中で「創立90周年の2020年の5月3日。そして創立100周年の2030年の5月3日を絢爛たる勝利で飾りたい」と託宣している。それだけに創立90周年を「絢爛たる勝利」で飾るためには、なんとしても統一地方選と参院選を「勝ち越えなければならない」。その要諦として原田会長は「異体同心の団結」を掲げ、「断固として完全勝利・連続勝利」しようと檄を飛ばしているのである。

統一地方選と参院選を勝利するためには、執行部の政治判断に対する学会員の批判や不信を払拭する必要がある。沖縄県知事選における現地の学会員の造反行為が、日本本土に拡大・拡散することだけは防がなければならない。そのために執行部はこんな仕掛けも施している。

創価学会の創立記念日前日の11月17日は、本体の創価学会に先駆けて広宣流布に挺身するとの意を込めて公明党が結成された結党記念日だが、この日開催の全国総県長会議において原田会長は、池田氏の代表的著作とされる小説『新・人間革命』の記述を引用する形で、公明党支援の正当性を次のようにアピールしたのだ。

「きょう11月17日は、1964年に公明党が結党された日であります。そして、その翌月の12月2日、先生は沖縄の地で小説『人間革命』の執筆を開始されます。その様子は、小説『新・人間革命』第9巻『衆望』の章に描かれています。『多様な大衆に深く根を下ろし、大衆の味方となり、仏法の慈悲の精神を政治に反映させゆく政党が、今こそ躍り出るべきであろう。それが衆望ではないか。――山本伸一(※池田大作氏のこと)は、こう結論したのである。彼は、日本の政治の現状を検証していくなかで、公明党の結成の意思を固め、あえて嵐に向かって、船出しようとしていたのである』と」

あたかも公明党の結党は、沖縄の大衆の輿望を受けてのものであるかのような強引なこじつけ。今回の沖縄県知事選での、多くの沖縄の学会員の止むに止まれぬ造反の心情を逆なでするような冷酷で狡猾なレトリックだが、この引用で沖縄に対する池田氏と執行部の認識の相違や造反問題を糊塗しようとの意図なのだろう。その上で原田会長は、公明党結党の宗教的意義を『新・人間革命』に基づいて次のように強調している。

「さらに、こうもつづられています。『山本伸一は、公明党の結党大会が開会される時刻になると、学会本部の広間の御本尊に向かい、深い祈りを捧げた。彼は、立正安国の実現のために、政治の分野に、いよいよ、本格的な開拓の道が刻まれたことがなによりも嬉しかった』」

公明党は創価学会の「永遠の師匠」(会憲)である池田氏が結党した政党であること。しかも結党時、池田氏が本尊に祈りを捧げ、立正安国を実現するための政党として結成されたのが公明党であると強調した原田会長。結党記念日にあたって原田会長が、あらためて公明党の宗教的意義を強調したのは、執行部の公明党支持が宗教的に正当なものであることを池田氏の言説をもってアピールすることで、池田氏の言説を根拠にした執行部批判を封じるためのものであることは明らか。

『週刊ダイヤモンド』10月13日号の特集記事「『最強教団』創価学会の焦燥、進む内部崩壊の実態」は、創価学会が「執行部批判」を理由に、多くの幹部・活動家を除名している事実を報じている。同記事では除名処分を受けた埼玉県坂戸市と、東京都八王子市の二人の地域幹部・活動家の事例を紹介しているが、それによれば二人が執行部批判を始めたきっかけは、集団的自衛権の行使と安保法制を公明党・創価学会が容認したことだった。このうち副支部長兼地区部長を務めていた壮年部幹部が、執行部批判の根拠としたのは池田氏の言説だったようだ。記事には次のようにある。

「よりどころにしたのは『先生』と仰ぐ学会名誉会長、池田大作氏の過去の著書や対談集だった。その中で池田氏が『集団安全保障』への参加に否定的だったことを知った。安倍政権の一翼を担う公明党は、翌15年の安保関連法案採決も賛成に回る。『先生の指導からすれば公明党や学会は間違っている』と確信した」

以後、公明党の支援はできないと宣言すると役職解任となり、今年8月に除名の通知が来たという。ここには沖縄県知事選で、沖縄の学会員が学会本部の指示に反したことと通底する意識構造がある。

11月17日の原田発言は、執行部にとって不都合なこうした動きを封殺するために、今後、執行部の政治的判断への批判は許さないとの強い意志を、池田氏の権威を背景に闡明化したものということができる。「永遠の師匠」である池田氏との「師弟不二」を信仰の基軸とする創価学会にあっては、池田氏の宗教的指導に反することは、「師敵対」という悪行であり、異端行為にほかならないからだ。

 

組織防衛目的の“改憲発議”回避

それにしても懲りない面々である。沖縄県知事選の敗北を受けて創価学会は、那覇市長選では敵前逃亡を図ったにもかかわらず、また「立正安国」「創価の勝利」を掲げて選挙に突っ込んでいくのだから呆れるほかない。おそらく執行部としては、沖縄の敗北は、沖縄の歴史的かつ地政学的な特殊性と、池田氏が「核も基地もいらない」と繰り返し主張してきたという特別な事情に起因するものであり、そうした前提のない本土では、一部の批判者を処分し批判的言論を封殺すれば、従来通り学会員を選挙闘争に駆り出すことが可能と判断しているのだ。

11月22日、原田会長は茨城県の本部長会に出席。「“自身の行動で勝利を決する”との強き一念で前進をと力説」したと23日付『聖教新聞』が報じているが、この事実からも執行部の意識を垣間みることが可能だ。なぜなら、この時期に原田会長がわざわざ茨城県まで出向いたのは、11月30日告示・12月9日投開票で実施の県議会議員選挙をテコ入れするためだからである。

茨城県では、昨年来、公明党県議の政務活動費の不正支出が問題となり、市民オンブズマンいばらきが、公明党の政務活動費は「選挙応援などの政治活動や、事実上の観光に使われた」として、昨年八月、返還を求める住民訴訟を水戸地裁に提訴。今年5月に公明党は「適切な政務活動費だという認識は変わらない」(井出義弘県本部代表)としたものの、オンブズマンが指摘した66万円全額を県に返還するという問題が生じていた。

公明党議員による政務調査費・政務活動費の不正使用・不正支出は、目黒区議会公明党の議員団が全員辞職したケースを嚆矢として、それこそ枚挙に暇のないほど指摘することが可能であり、今回の茨城のケースも、そうした公明党ならびに同党議員の政治的資質の悪さ、モラルの低さを象徴する事例にほかならない。

県議選にあたって公明党は、「適切な政務活動費だという認識」と主張していたにもかかわらず、姑息にも不正支出を指摘された議員に代わって新人を擁立した。だが苦戦は免れないことから、原田会長直々の茨城入りに至ったのだろう。来年の統一地方選・参院選の必勝を期す執行部としても、前哨戦となる地方選挙での敗北は許されないからだ。

そんな執行部にとって最大の不安要素は、改憲発議だろう。沖縄の学会員の多くが辺野古新基地建設に反対する玉城候補に投票したように、仮に来年の参院選を前に、改憲を悲願とする安倍首相と自民党が改憲を発議した場合、さすがに能天気な本土の学会員の間からも安倍自民党との連立に対する反発が生まれないとは限らない。

不安要素を回避するためには、改憲発議を遅らせることが必要不可欠。11月26日の山口那津男公明党代表の発言は、そうした創価学会の意向を反映したものといえるだろう。同日付「時事ドットコム」は、山口発言を次のように伝えている。

「公明党の山口那津男代表は26日、東京都内で講演し、憲法改正について『来年は政治課題が目白押しだ。しっかり合意を熟成していく政治的な余裕はなかなか見いだし難い』と述べ、来年の国会発議は困難との考えを示した。

山口氏は『まだ憲法審査会で議論を行っていないし、国民の理解も十分でない。冷静に見据えるなら、しっかりと議論を深め、国民の理解を広げるべきだ』と強調した」

宗教的呪縛と政治的駆け引きを駆使して、創立90周年の2020年に向けて「勝ち越えねばならない山」である統一地方選と参院選の「完全勝利・連続勝利」を目論む創価学会だが、その前途は多難。地雷原だらけといって過言ではなかろう。

 

 

乙骨正生(おっこつ・まさお)フリージャーナリスト。1955年生まれ。創価中学・創価大学法学部卒。宗教・政治・社会分野などを取材、週刊誌・月刊誌を中心に執筆。著書に『怪死』(教育資料出版会)『公明党=創価学会の野望』『公明党=創価学会の真実』『司法に断罪された創価学会』(かもがわ出版)など。

信濃町探偵団──創価学会最新動向

  • 本尊・選挙・STB・財務―原田発言から見える創価学会の現状と近未来

・11月18日付『聖教新聞』「総県長会議での原田会長の指導(要旨)」「我らは永遠に三代会長と共に進む」

①「広宣流布大誓堂に御安置されている『大法弘通慈折広宣流布大願成就』の学会常住の御本尊は、戸田先生が学会前進の『金剛不壊の大車軸』として発願され、池田先生が『広宣流布の希望の道を無限に開かせたまえ』と祈り抜かれてきた御本尊です。その強き祈りを根本に、池田先生は、世界広布への雄渾の指揮を執ってきてくださいました。……大聖人仏法の根幹は『誓願』です。……創価学会の魂は『師弟』です。そして、広宣流布誓願勤行会は、広布大願の御本尊のもと、永遠の師匠である三代会長と同じく、広宣流布を断行する誓いを打ち立て、さらに、その誓いを行動へ、実践へと移すべく出発を切る――その『師弟誓願の会座』であります」

 

※11月17日の創価学会全国総県長会議で、前日開催の「広宣流布誓願勤行会」の意義を強調した原田会長。その中で創価学会の宗教的眼目は「誓願」と「師弟」であるとし、創価学会の「中心道場」である大誓堂安置の本尊に「三代会長」と「師弟不二」の祈りを捧げて誓願することを「師弟誓願の会座(えざ)」だと位置づけている。

創価学会が所依(しょえ)の経典とする法華経には、「法華経の会座」として、「二処三会」が記述される。これは霊鷲山と虚空会という二つの場所で法華経が3回にわたって説かれたというものだが、原田会長は、大誓堂での誓願勤行会を「法華経の会座」に通じる宗教的儀式だと主張しているのだ。

大誓堂安置の本尊を中心に、「師弟不二」の誓願を祈念する。これが自らを「創価学会仏」とする創価学会の当面の信仰形態の基軸ということらしい。

 

②「私たちが目指す次なる目標は、2020年の創立90周年です。明年は、創立90周年を目前にして、広布の山を連続して勝ち越えなければならない重要な年であり、創立90周年の勝因を築く年となります。

明年の活動の第1項目に『創価の勝利を開く『対話拡大』『友好拡大』に全力!と掲げた通り、一人一人が自身の殻を破る対話・拡大に挑戦してまいりたい。明年は、社会的にも、『平成』の時代が終わりを告げ新元号となり、それと前後して、統一地方選・参院選が連続して行われます。

きょう11月17日は、1964年に公明党が結党された日であります。そして、その翌月の12月2日、先生は沖縄の地で小説『人間革命』の執筆を開始されます。その様子は、小説『新・人間革命』第9巻『衆望』の章に描かれています。

『多様な大衆に深く根を下ろし、大衆の味方となり、仏法の慈悲の精神を政治に反映させゆく政党が、今こそ躍り出るべきであろう。それが衆望ではないか。――山本伸一は、こう結論したのである。彼は、日本の政治の現状を検証していくなかで、公明党の結成の意思を固め、あえて嵐に向かって、船出しようとしていたのである』と。

さらに、こうもつづられています。『山本伸一は、公明党の結党大会が開会される時刻になると、学会本部の広間の御本尊に向かい、深い祈りを捧げた。彼は、立正安国の実現のために、政治の分野に、いよいよ、本格的な開拓の道が刻まれたことがなりよりも嬉しかった。しかし、公明党のめざす政治がいかなるものかを、人びとに正しく理解してもらうのは、決して、容易ではないはずである。公明党という政党も、その理念も、過去に類例を見ない、全く新しいものであるからだ』

非難や中傷、無理解の嵐は覚悟の上の、公明党の船出でありました。公明党には、今こそ立党精神に立ち返っての奮闘を、強く願うものであります。(中略)『創価の勝利』も『一人の勝利』『私の勝利』なくしてはありえません。この点を肝に銘じて、どこまでも『一人一人を大切に』『皆を人材に』と、励ましを広げていきたい。そして異体同心の団結で、断固として完全勝利・連続勝利を開いていきたい」

 

※再来年の2020年に迎える創立90周年を勝利で飾るために、来年の統一地方選・参院選の勝利を檄する原田会長。先の沖縄県知事選では多くの沖縄の学会員が学会本部の指示に反して、辺野古新基地建設に反対する玉城デニー候補に投票したことから、原田会長はあらためて公明党の宗教的意義、公明党結党の宗教的意義を強調し、執行部の政治判断の正統性を強調している。政教一体の宗教政治団体の面目躍如ともいえる発言である。詳しくは本誌今号の特集記事をご参照いただきたい。

 

③「来月から、モバイルSTBが拡充されます。各地区に2台、さらに支部にも2台、また本部以上の組織には各部の分として4台の新たなモバイルSTBが配布されます。先月の聖教紙上に、『「会合型」から「訪問型」に』と題し、少子高齢化が著しく進む地域にあって、3年前から『訪問・激励中心の活動』に力を注いでいる福岡・八幡東大勝区の取り組みが掲載されました。(中略)明年は、連続闘争を勝ち越えるためにも、さらに未来に向けて盤石な人材城をつくるためにも、本年にも増して訪問・激励に力を注ぎ、人材を、活動者を増やしていきたい」

 

※創価学会が、自ら配信するSOKAチャンネルVODを視聴するためのSTBの配布を開始した。SOKAチャンネルには100もの番組があり、「永遠の師匠」(会憲)である池田大作名誉会長の関連番組や、世界に発展しているという創価学会のPR番組が目白押し。芸術部所属のタレントらの学会推奨番組もある。そうした番組の視聴を通して活動者を育成、あるいは新規会員の獲得を目指すというのだが、その背景にあるのは、活動者・会員の大幅な減少。もはや会合すら開けない組織があることが分かる。人材・活動者を育成というが、その裏で、執行部を批判する活動者を除名しているのだから笑止だ。いずれ「青年創価学会」ならぬ「老齢創価学会」の活動の形態は、会合型から訪問型に変化を遂げることになるのだろう。

 

④「これから、財務納金が始まります。創価学会が世界宗教へと飛翔する中、広布の前進を支えてくださる真心からの財務に、福徳が燦然と輝くことは間違いありません」

 

※STBを配布するためにも金が必要なのだろう。年末恒例の集金活動である財務納金が始まった。今年も財務には「福徳」があると煽る原田会長。創価学会の活動の柱は、集金(財務)と集票(支援活動)、そして新聞拡販(聖教啓蒙)とあらたな顧客である会員の獲得(折伏)の四本柱。宗教コングロマリットのCEOとして原田会長は、先頭にたって社員・職員に集金活動を督励していることが分かる。

 

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