12月号目次
閻魔帳
庶民直撃の「ドアホノタックス」(2018年度税制改定)/浦野広明
特集/創立87周年を迎えた創価学会の混乱と衰亡
クーデター進む池田創価学会──会長権限の強化と池田大作の相対化/溝口 敦
公明党の敗北は創価学会の落日 政治偏重路線の変更に転じる可能性も/川﨑泰資
「11・18」を機に浮かび上がる「絵に描いた餅」としての創価学会会憲/古川利明
2017年、創価学会を回顧する──2つの選挙と「会憲」/段 勲
「限界集落」の様相呈する創立87年の秋迎えた創価学会/乙骨正生
トピックス
安倍政権と連動する統一教会青年組織・勝共UNITE/鈴木エイト
- 連載
信濃町探偵団──創価学会最新動向
新・現代の眼(第16回)
罪証隠滅の現行犯?!/菅野 完
ヨーロッパ・カルト事情(237)
国会報告「健康の分野におけるセクト的性格の運動の影響」(4)/広岡裕児
執筆者紹介 編集後記
編集後記から
創価学会創立87周年の記念日を前にした11月10日、創価学会は今年9月1日に制定した「会憲」の署名式を、世界各国のSGI代表を東京都新宿区信濃町の創価学会総本部・広宣流布大誓堂に集めて実施。11月18日をもって施行させました。
「会憲」は「世界教団」である創価学会の「根本法規」「最高規範」だそうですが、その狙いは、小誌既報のとおり会長権限と、創価学会総本部の権限の強化にあります。この「会憲」により、創価学会の会長は、ほぼ独裁的権限を握り、創価学会総本部の中にある「世界本部」の下部組織に位置づけられたSGIの会長は、創価学会会長の風下に立つことになりました。そして名誉会長にはもともとなんの権限もありません。
要するに今回の「会憲」は、池田大作名誉会長・SGI会長の死去を視野に入れた原田稔会長を中心とする執行部のクーデターともいうべき動きなのです。詳しくは特集記事をご参照ください。
その創価学会は、先の衆院選での惨敗。ことに公明党比例区票が697万票と、700万票台を割り込んだ事実が示すように、勢力の減少・衰退が顕著となっていますが、そうした創価学会の現状を、11月24日夜のテレビ東京のワールドビジネスサテライトが、「独占取材!今なぜ創価学会の内部で離反の動き!?」と題して、創価学会執行部への批判活動を続けている元学会本部職員3名の集会の様子などを報道しました。
内容は、衆院選で勝利した安倍首相が改憲に前のめりになる中で、現在の創価学会執行部や公明党は、池田大作氏の平和主義に反して自民党に追随しており、これに疑問を抱く学会員が続出し、造反・離反が続いているというものでした。
学会員の造反・離反を防ぐために創価学会は、本部の指令に反する学会員への処分を続けています。その一方で、原田会長は、全国総県長会議で、活動家を増やすことこそが「最重要課題」と叫んでいます。“熱心”な活動家を処分する一方で、活動家を増やせと叫ぶ執行部。自己矛盾の極みといえましょう。これも特集記事をご参照ください。
矛盾と混乱の中で創価学会は、池田博正SGI副会長とローマ教皇の謁見を大々的に報じています。「世界教団」たる「日蓮世界宗」は、バチカンとも手を携えて新出発するというアピールでしょう。
特集/創立87周年を迎えた創価学会の混乱と衰亡
クーデター進む池田創価学会──会長権限の強化と池田大作の相対化
溝口 敦
ノンフィクション作家
会長の風下に置かれたSGI会長
創価学会は11月18日、「創価学会会憲」を施行した。会憲は創価学会「会則」の上位に位置づけられ、学会内での最高法規と規定される。全14条から成る簡単なものだが、名誉会長・池田大作が廃人化し、ほどなく緩慢な死を迎えようとする今、残された幹部たちがどう創価学会を引き継ぎ、どう組織を軟着陸させようとしているか、如実に窺わせる内容である。
池田を意味する名誉会長については、第8条に「この会に、創価学会会則の定めるところにより、名誉会長を置くことができる」と素っ気なく記すだけである。名誉会長の権限や責任などについてはなに一つ記されていない。
実質的に教義面、管理面で独裁的な権限を握るのは第9条に規定する「会長」であり、現在では原田稔である。
「第9条 この会に、会長を置く。
2.会長は、「三代会長」を継承し、その指導および精神に基づき、この会を指導し、統理する。
3.会長は、この会の教義および化儀を裁定する。
4.会長は、御本尊に関する事項を司る。
5.会長は、この会の儀式行事を主宰する。
6.会長の選出、代行および任期は、創価学会会則の定めるところによる」
世上、会長・原田稔が今回の「会憲」に託したのはクーデターの明示と合理化だといわれるが、それは理由のないことではない。創価学会は遠からず池田の死を発表することになる。そのとき、いかに混乱少なく、創価学会の受けるダメージを少なく、池田の財産である創価学会を引き継ぐか、会長・原田としては腐心せざるを得ない。それは原田が相続する遺産を最大化する方途でもあるのだ。
現在もSGI(創価学会インタナショナル)会長は池田大作だが、会憲はSGIに対して二段構えで規制を加え、信濃町に所在する「創価学会総本部」(あるいは総本部に置かれた「世界本部」)の下に置こうとしている。
まず10条でこの会に「世界広宣流布諮問会議」を置くと定め、その諮問会議員は会長(原田)が任命し、その任期は会長の任期中とすると定める。
しかる後、第11条でSGIやSGI会長について、当たり障りのないことを規定する。SGIは「総本部の下だ」という規定はないが、この二段構え論法で実質的に「下だ」と格付けし、池田に対する原田稔の優位を定める。
これもまた「会憲」は原田によるクーデターといわれる理由になっている。SGI会長・池田より創価学会会長・原田の方が会憲上、偉いのだ。
さらに会憲はことさら初代会長・牧口常三郎、二代会長・戸田城聖の功績を強調し、初、二、三代と続く会長たちの功績を平準化しようとしている。従来は連続三代の会長を立てて高みに置きながら、その中でもとりわけ池田が抜きん出ている印象を与えようとしてきたが、「池田尊し」はいくぶん薄められている。ポスト池田の当然の微修正なのだろう。
原田とすれば、クーデターといわれようと創価学会を引き継ぎ、次代に向けて学会を伝え、維持・発展していかなければならない。それが学会本部で禄を食んできた者のつとめと心得ている。
もちろん首脳間にリーダーシップをめぐる暗闘はあるだろう。原田という声で学会はまとまっていない。宗教団体であるだけに暗闘には教義や本尊がからみ、生臭く陰惨な戦いが展開しているはずである。
では、原田が創価学会を無事に受け継げたとして、どのような教団にしたいのか。おそらくは他の巨大教団並みの教団運営だろうと見当がつく。すでに池田に輪を掛けた野放図な野望を掲げられる時代ではない。創価学会は発展の時代をとうに過ぎ、自然減少する時代に入っている。
他の巨大教団並みとは、具体的にはどうなのか。①自前で礼拝の対象を持つ。②自前の教義を持つ。③自前の教団施設を持つ。④日本に本部と中心となる礼拝の対象を置き、日本と海外に布教する。海外の信者を催し事の都度、日本に集める。⑤可能なかぎり信者数を増大するか維持する。⑥信者を中心に各所にコミュニティをつくる。⑦祖父母、親、子、孫と世代を越えて伝わる教団にする──。
教団の志向としてはごく平凡なことだが、創価学会は過去、日蓮正宗との共存や対立、相剋を経験し、なにより自前の礼拝の対象や教義を持ちたいと願ってきた。組織を安定させるためには、二度と混乱を持ち込まないためには、教義的に問題があろうと、言うこととやることが矛盾していようと、本尊と教義が名目的に自前でなければならない。問題を内包している教義や本尊はもうたくさんなのだ。
政治路線縮小&既成教団化
会長・原田はなにより創価学会の安定を目指したい。つまりは伝統的な既成教団への道である。戦前の天理教や戦後の真如苑などがたどった道である。
しかし、創価学会に特徴的なのは公明党という政党を持ち、与党の一角に食い入っていることだが、そのメリットを当分の間、享受しつつも、近い将来、公明党が非力化することも原田は考慮していよう。先の衆院選では比例区で700万票を切る敗北を喫し、6議席も当選者数を減らした。
この衆院選結果は一時的な敗北ではなく、長期低落への初期段階と考えられる。
「いつもは知り合いの創価学会員から私のところにまで投票依頼の電話がある。が、今回は全然掛かってこなかった。知り合いの公明党参院議員に聞くと、婦人部が安倍一辺倒の公明党に嫌気がさし、動きが鈍いと言っていた」(自民党の元本部職員)
よくこうした声を聞くが、筆者は安倍がどうこう、公明党がどうこうと、学会員が現実政治を見た上での投票活動サボタージュではないと思う。池田あっての公明党であり、池田が死ねば公明党の議員数は衆参、地方議会とも縮減していこう。原田は今のところ池田ほど権力者でなく、外界でも通用する権力を望んでいないから、「俺を外護せよ、守るのが弟子のつとめだ」という欲求に乏しい。
外護する必要がなければ、公明党議員を多数当選させる必要性も薄まる。したがって過剰に学会員を選挙に動員し、活動嫌いにすることもない。学会員の選挙活動には宗教的な洗脳が不可欠だが、池田以後、その洗脳を維持できる人材がいない。
原田など現首脳部にはこうした現実的な判断があり、それが会憲の中身を決めていよう。会憲は会内の最高法規とされながら、選挙活動や公明党への規定がない。同様に創価学会会則にも選挙活動や公明党への規定がない。
規定はなくて当たり前、政教一体という批判を躱(かわ)すためには、宗教の方で政治に言及するわけにいかない、とはいえる。しかし、ポスト池田を律するはずの会憲に公明党や選挙への規定がないことは、会員たる者、池田が死ねば「選挙活動はしなくていい」と受け取りかねない。
つまり会憲が体現しているのは、会長・原田稔をはじめとする学会本部トップ層の現実路線だが、その現実路線は縮小再生産路線でもあるのだ。いかに衝撃少なく池田死後をやりすごすかという発想からは、拡大路線は生まれようがない。
かつて二代会長・戸田城聖は言った。
「私は選挙運動が毎年あったらいいと思っているのですよ。ないから残念です。そのわけは、選挙をやるという一つの目的を立てると、みな応援する気になります。そこでしっかり信心させなければならん。(略)そうすると、幹部が夢中になって班長君でも地区部長君でも、信心の指導を真剣にやってくれると思うのです。
そうすると、いままで稼がない人が、広宣流布のために、これは立ってやらなければならん時がきたから、まあ皆、目の色変えてかせぐ。ふだんやらんことをやるから支部がピーンとしまってくる。選挙は、支部や学会の信心をしめるために使える。まことに、これは、けっこうなことではないですか」
組織に活を入れるための選挙が今やシシュポスの神話のように、運び上げる度、岩が山頂から転がり落ちる段階に入った。戸田時代とは様変わりして、組織と選挙が逆回転を始めた。組織を守るために選挙は手加減せざるを得ない。それが現実的なのだが、その現実は創価学会をチマッと小さくまとめていく可能性が高い。戸田ではないが、「まことに、これは、日本社会のため、けっこうなことではないですか」と言いたくなる。池田死後、創価学会と公明党が社会に流す害毒は少なくなるかもしれない。(文中・敬称略)
溝口 敦(みぞぐち・あつし)ノンフィクション作家。1942年生まれ。早稲田大学政経学部卒。出版社勤務などを経てフリーに。宗教関係をはじめ幅広く社会問題を扱う。『食肉の帝王』(講談社プラスα文庫)で第25回講談社ノンフィクション賞、日本ジャーナリスト会議賞、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞の3賞同時受賞。『堕ちた庶民の神』(三一書房)『歌舞伎町・ヤバさの真相』(文春新書)『パチンコ「30兆円の闇」』『生贄の祀り』『あぶない食品』(小学館文庫)『武富士 サラ金の帝王』『池田大作「権力者」の構造』『中国「黒社会」の掟』『細木数子 魔女の履歴書』(講談社プラスα文庫)『暴力団』『続・暴力団』(新潮新書)『抗争』(小学館新書)『やくざの経営戦略』(文春新書)『山口組三代目』(講談社庫)など著書多数。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- ローマ教皇を後ろ盾に!?
・11月11日付『聖教新聞』「SGI訪問団ローマ教皇と謁見」「バチカンで核兵器廃絶国際会議に出席」
「ローマ教皇庁にある人間開発促進省(仮訳)が主催する、核兵器のない世界への展望を巡る国際会議が10日午前(現地時間)、バチカン市国で開幕した。これには、協力団体として同会議を支援したSGIを代表して、池田博正SGI副会長らSGI訪問団が参加している。
会議参加者は同日正午(同)、バチカン宮殿内の『クレメンティーナの広間』で、ローマ教皇フランシスコとの謁見に臨んだ。スピーチを終えた教皇は、SGI副会長ら列席者にあいさつ。副会長は、今回の会議に参画したことへの感謝を伝えた」
・11月15日付『聖教新聞』「バチカンで国際会議」「国連、各国政府、市民社会の代表らが出席 SGIが仏教団体として参画」「SGI訪問団 ローマ教皇と謁見」
「核兵器のない世界への展望を巡る国際会議が、10、11の両日、ローマ教皇庁・人間開発促進省(仮訳)が主催し、バチカン市国で開かれた(中略)。会議初日には、参加者らがフランシスコ教皇と謁見。SGI副会長が会議の協力団体として招へいを受けた感謝と、池田大作先生からの伝言を伝えると、フランシスコ教皇は笑顔で応じた。また11日には、SGI副会長が『人間精神の変革』をテーマに登壇した」
※カトリックの総本山・バチカンのシノドスホールで開催された核兵器廃絶を討議する国際会議に、SGI代表団が参加。池田大作SGI会長の長男である池田博正SGI副会長が、ローマ教皇フランシスコに謁見。さらには国際会議で「人間精神の変革」と題する発言を行ったと『聖教新聞』が、教皇と池田博正SGI副会長が握手する写真とともに、大々的に報じた。
今回の池田博正SGI副会長のローマ教皇謁見は、父親である池田大作SGI会長の死去を視野に入れての、SGI会長就任への布石であることはまず確実。また現在、創価学会は、会則変更で「日蓮世界宗」と称し、「会憲」を制定してSGIを「創価学会総本部」の傘下に組み入れたように、「世界宗教」「世界教団」であるとの体制を整備しようと画策中。そうした世界宗教化の路線の一環として、ローマ教皇との謁見を図ったのだろう。
平成3年に日蓮正宗から破門される以前は、日蓮正宗の宗教的権威を利用した創価学会。「日蓮世界宗」と自称し始めた今後は、バチカンの権威を利用する腹と見た。
- 創価学会会憲発効
・11月11日付『聖教新聞』「『創価学会会憲』署名式」「70カ国・地域の代表が広宣流布大誓堂に集い 各国のリーダー教師・准教師に任命」
「本年9月に制定された『創価学会会憲』への賛同と、世界広布への師弟の誓願を込めた署名式が、10日正午から東京・信濃町の広宣流布大誓堂・三代会長記念会議場で行われた。また同日午前、世界広布のリーダーである『教師』『准教師』の任命式が大誓堂で開催された。これには原田会長、長谷川理事長をはじめ、SGI秋季研修会で来日中の70カ国・地域の代表280人が参加した」
※今年9月、「世界教団としての体制を確立」するとして制定された「創価学会会憲」。87回目の創立記念日からの施行を前にした11月10日、世界各地のSGI代表を新宿区信濃町の広宣流布大誓堂に集めて署名式が行われた。
一部の情報では、創立87周年を慶祝する本部幹部会で、「日蓮世界宗」との名称の旗揚げを図りたかったが、創価学会内部と各国のSGIの中に反対の動きがあって実現できなかったとも。そもそも「会憲」の制定も、SGIを日本の「創価学会総本部」の下部に位置づけるものであったことから、台湾SGIの理事長らが反対するなどしたため、今年まで遅れたともいわれる。今回、わざわざ世界各国の代表を集めて盛大な署名式を挙行したのも、そうした経緯があってのこと。おそらく「広宣流布大誓堂」完成5周年の創立88周年の来年には、「日蓮世界宗」の旗揚げや、SGI会長の交代があるのかも。
- 集票活動の次は金集め
・11月11日付『聖教新聞』「総県長会議での原田会長の指導」「明年の『11・18』へ折伏・弘教の拡大」
「日蓮大聖人は、身延の山中に供養の品々を送った一人の門下の志をたたえ、『福田によきたねを下させ給うか、なみだもとどまらず』と仰せになられました。この御書を通して、先生は小説『新・人間革命』につづられています。
『広宣流布に尽くすことは、福田に善根の種を蒔くことである――これは、伸一が青春時代から、強く確信してきたことでもあった』世界広布の伸展を支える財務によって、福田に善根の種が植えられることは、間違いありません。この功徳は絶大です。絶対無事故で、福徳あふれる財務となりますよう、真剣に祈っていきたいと思います」
※東京都議選、衆院総選挙と集票活動に学会員を使役した創価学会が、今度は年末の財務、すなわち集金活動に学会員を駆り立てている。選挙闘争に際して創価学会は、「立正安国」の大闘争に「福徳」や「福運」などがあると強調したが、集金闘争にも「功徳は絶大」だとPRする。給与や賃金を支払うことなく、無償で会員を「財務(集金)」「選挙(集票)」「聖教啓蒙(新聞拡販)」「折伏(顧客獲得)」という営業活動に使役し、そのあがりで高給を食(は)む職業幹部。今年の財務の締めつけは弱いとの情報もあるが、執行部や職業幹部に対する一般会員の不信や不満が爆発するのも時間の問題だろう。