8月号目次
閻魔帳
迷走する「Go To」トラブルの愚策/段 勲
特集/衆院選に向けて準備に入った創価学会の悪あがき
都知事選を通して見える「公明党=創価学会」のいつもながらのコウモリ飛行ぶり/古川利明
「立正安国の闘争」にむけて「師弟不二」イデオロギーを強調する創価学会/乙骨正生
トピックス
「麻原彰晃の正しさ」をアピールし始めたひかりの輪・上祐史浩/藤倉善郎
トピックス
公明党が推奨した成年後見制度は問題山積/橋本征雄
- 連載
信濃町探偵団──創価学会最新動向
「公明党と創価学会」を考える(第10回)
前尾衆議院議長と公明党(1)/平野貞夫
ナニワの虫眼鏡(第14回)
現代版「大坂の陣」 繰り返される歴史は悲劇の予感/吉富有治
新・現代の眼(第48回)
人、木石に非ず/菅野 完
ヨーロッパ・カルト事情(268)
権力犯罪への『彼我(仏・日)の差』考/広岡裕児
執筆者紹介 編集後記
編集後記から
小生前号の「編集後記」末尾で、「コロナは収束の傾向を見せていますが」と書きましたが、とんでもない。7月31日には東京都で一日の感染者数が400人を超えるとともに、感染者が0だった岩手県でも感染者が出るなど、全国各地で過去最高の感染者数を更新する厳しい状態が続いています。
「まず、徹底検査」と安倍晋三首相も、PCR検査を増やすと発言していたにもかかわらず、7月28日現在、世界各国のコロナ関連の統計を集計しているアメリアのウェブサイトによれば、100万人当たりの検査数で日本は、世界215カ国・地域の中でなんと159位という体たらく。いまだに感染を疑われる人が、主治医を通じてPCR検査を要望しても、検査を受けられない事態が続いているのですから、驚くしかありません。
そんな後手後手で、医療面・経済面ともに「遅い・少ない」と批判されている政府のコロナウイルス対策ですが、連立政権を組む公明党の組織母体の創価学会の首脳は、機関紙『聖教新聞』の座談会記事で「新型コロナ 専門家会議は公明が提言」(7月16日付)、「コロナ対策 公明、ワクチン確保へ緊急提言」などと、公明党がコロナ対策の最前線で尽力しているかのような大宣伝を続けています。
特に一人10万円の特別給付金を、山口那津男代表が安倍首相に「直談判」して決めたことを、「公明党のおかげで家計が本当に助かった」などと絶賛しています。
すでに公明党は7月2日に次期衆院選の第二次公認候補(小選挙区8人・比例区4人)を発表、創価学会もまた、これを受けて戸田城聖二代会長(治安維持法違反容疑)と池田大作三代会長(公選法違反容疑)が、逮捕・拘留された際の「出・入獄」の記念日である7月3日に、公認候補を掲載し、選挙態勢に突入しました。
過去の衆院総選挙をめぐる経緯からは、公明党が公認候補を発表し、創価学会が本格的に動きだすと必ず数カ月以内に総選挙が実施されたと言われていますし、創価学会としては来年7月の都議選から半年以内の総選挙は避けたいはずですから、今秋から来年初頭にかけて総選挙は必至の情勢です。創価学会票が金権・河井案里被告を当選させた事実は小誌前号で特集しましたが、創価学会による日本の政治の劣化には、今後とも厳しく警鐘を鳴らしていく所存です。
特集/衆院選に向けて準備に入った創価学会の悪あがき
都知事選を通して見える「公明党=創価学会」のいつもながらのコウモリ飛行ぶり
古川利明
ジャーナリスト
「争点ぼかし」を踏襲した小池戦略
解散・総選挙を始め、永田町の政局動向にも直結する東京都知事選が7月5日、投開票され、現職の小池百合子が366・1万票を獲得し、元日弁連会長の宇都宮健児(立民、共産、社民支援、獲得票数84・4万票)、元参院議員の山本太郎(れいわ公認、同65・7万票)、元熊本県副知事の小野泰輔(維新推薦、同61・2万票)らを降し、再選した。まずは投票率だが、前回16年より4・73ポイント下回り、55・00%だった。特に、選挙戦後半は、都内での新型コロナの感染者数が、連日100人台を突破したことを受け、東日本大震災の直後の11年に石原慎太郎が4選した際、「計画停電への対応など」で公務に専念し圧勝していたのを意識したのか、小池は「公務優先」ということで街頭演説は一切やらず、むしろ、記者会見で危機感を煽ることに徹した。このように小池が都庁に引きこもっていたこともあり、主要候補者同士の討論会は、6月27日のインターネット上でのリモート出演によるものと、翌28日に東京青年会議所が主催した対面方式の2回きりで、何と地上波のテレビ番組ではゼロだったのである。
まさに、これまでの国政選挙において、自公が「争点ぼかしによって投票率を下げる」べく、首相の安倍晋三が、選挙期間中に党首討論から逃げマクっているのを踏襲した格好で、これにはテレビや新聞も共犯として加担している。開票翌日付の毎日新聞朝刊は「コロナ禍もあって一堂に会した討論会は1回にとどまるなど政策論争は低調だった」とヌケヌケと書いているが、同紙も含めてメディアはどこも政策論争を高めるべく、「都知事選の争点」、つまり、「都政の問題点」を炙り出して深く抉る記事を選挙期間中に掲載していない。例えば、コロナ禍対策とリンクしている五輪開催だが、費用は1兆3500億円が見込まれ、うち都と大会組織委が各6千億円、国が1500億円負担することになっているが、その1年延期により追加費用が「数千億円」もかかるとみられている。であれば、メディアはその「数千億円」の積算根拠を提示したうえで、消費税10%増税による景気低迷とも合わせ、今後、税収減が予想されることから、「五輪開催の是非」について有権者がきちんと判断できる材料を提示しなければならなかったが、昨年7月の参院選でも「消費税10%増税の是非」についてスルーしたのと、全く同じ轍を踏んでいるのである。
こうした状況ゆえに、筆者は「今回は投票率が50%を切るのでは」と危ぶんでいたが、投票箱の蓋を開けてみたら、ジャスト55%で踏み止まっていたことを考えると、とりわけ、東京都は選挙戦の死命を常に制する無党派層の坩堝だが、「有権者はそれなりに政治に関心を持っている」ことが窺える。「コロナ禍による外出自粛ムード」の中で、それでも有権者が投票所に行って1票を投じたことの意味と重さを反芻しなければならない。
案里の買収資金を提供した自民、全面支援した公明
折しも、都知事選告示日の6月18日に、自民党公認・公明党推薦で昨年7月の参院選(広島選挙区、改選数2)で初当選していた河井案里の陣営による大がかりな買収事件で、夫で前法相の河井克行と案里の夫婦を東京地検特捜部は逮捕していたが、小池が敢えて今回、自民党も含めて「政党の推薦や支持は受けない」と明言していたのは、「これ」が影響していたものとみられる。それゆえ、自民党は「自主投票」としながらも、その一部は支援に回った一方で、池田大作を創立者とする公明党(=創価学会)は、このところ「過去の人」と化していた小池が、一連のコロナ禍対応で存在感を取り戻し始めると、さっそくスリ寄り、幹事長の斉藤鉄夫が7月2日の会見で「党内組織を使って(小池の支援を)徹底している」と明かしていたように、「実質支援」、すなわち、「推薦並みの態勢」で協力した。
その河井夫婦は、7月8日に起訴されたが、翌日の17時11分電子版掲載の共同通信によれば、「克行が昨年5月、首相の安倍との面会資料として、案里陣営内の予算や、案里を支援するために広島入りした首相秘書団の活動を報告する文書を作成していた」と報じている。当該文書は、安倍との面会の際に当然、手渡されていたとみるべきで、であれば、常識的には「買収は安倍の指示によるもの」とみるのが自然である。また、6月18日に放映されたBS日テレの番組で、溝手顕正が5選していた13年の参院選において、当時、幹事長だった石破茂は「このときも、首相は広島で2人立てたいという強い意向だったが、あそこは労組が強く、自民党から2人当選させるのは極めて難しい」と反対したため、このときは「2人目の擁立を断念していた」と明かしている。
ましてや、買収資金の出所は、自民党本部から渡された1億5千万円との疑いが極めて濃厚で、うち、1億2千万円は、国民の税金が原資となっている政党交付金である。こうした自民党本部のカネは、通常であれば、国会議員が務める幹事長や経理局長の決済で支出されるが、今回に関しては、総裁である安倍が、経理畑を長らく務めてきた事務方トップの事務総長の元宿仁に指示して出させていたとの情報がある(ちなみに、04年に東京地検特捜部が摘発した日歯連による橋本派への1億円闇献金事件で発覚した、国民政治協会を経由させる迂回献金の仕組みは、この元宿の発案だった)。
東京地検特捜部は、これだけ疑惑が噴出している以上、自民党本部や官邸も家宅捜索したうえで、真相解明のためには、元宿や安倍も逮捕しなければならない。しかし、「それ」を敢えてせずに、河井夫婦の線で事件を止めたというのは、法務検察は安倍官邸と手打ちしたとみるべきである。河井夫婦の起訴を受けて、公明党幹事長の斉藤は「政治不信を招いた責任は重大だ。議員辞職に値する」と述べていたが、その昨年の参院選では広島選挙区を担当し、案里を全面支援していたのが、衆院・比例中国ブロック選出のこの斉藤本人だったのだから、最早、これはマンガ以外の何物でもない。
活動を再開、臨戦態勢へ向かう創価学会
そこで、都知事選最中の7月2日、公明党は中央幹事会を開き、次期衆院選の2次公認の候補者(小選挙区8人、比例4人)を決め、発表した。とりわけ、小選挙区の方は、東京12区では太田昭宏(74歳)を外した後釜に、比例北関東ブロック選出の岡本三成(55歳)を充てることで1次公認を出していたのと合わせて、これで全小選挙区9人が決まったが、特筆されるのは、神奈川6区で、前回17年で唯一、落選だった上田勇(61歳)を引っ込めて、代わりに、18年の沖縄県知事選の際、野党が支援する元民主党衆院議員の玉城デニーを、自らのツイッターで「ゆくさー」(沖縄方言で「嘘つき」の意)呼ばわりしていた比例九州ブロック選出の遠山清彦(51歳)を、落下傘として持ってきたことである。
というのは、玉城が「県と市町村で決めるため、使途の自由度が高い一括交付金を民主党政権時代に自分が直談判して実現にこぎつけた」とフェイスブックで投稿していたが、10年から11年にかけて、玉城が内閣府の担当者と直談判したり、国会質問で取り上げたことで実現にこぎつけたのは、公知の事実である。閣議決定を経て関連法案の審議に入ったとき、何と、修正協議を行う与野党プロジェクトチームの交渉メンバーに玉城が入っていなかったことをもって、遠山は玉城のことを「嘘つき」呼ばわりしていたのである。なお、この一括交付金は第2次安倍自公政権下で年々削減され、20年度は過去最低の1014億円まで落ち込んでおり、これも含め、オキナワに対する「ゆくさー」は遠山の方なのである。
今回、小選挙区で候補者の差し替えを行ったのは、世代交代を進めるためで、というのは、公明党には「任期中に69歳を超えてはならず、在職も通算24年まで」との内規があるからである。しかし、じつは「特例による内規の適用除外」はいくらでも認められており、既に太田や斉藤(68歳)を始め、副代表の井上義久(72歳)、政調会長の石田祝稔(68歳)、幹事長代行の石井啓一(62歳、在職27年)と5人おり、今回の2次公認でも副代表の北側一雄(67歳)と選対委員長の佐藤茂樹(61歳、在職24年)も、さっそく特例の対象となっている。しかし、現職は知名度があるうえ、咋今の高齢化の進展で70歳超えても現役バリバリはいくらでもおり、事実、自民党幹事長の二階俊博は81歳で、今後、太田らの処遇をどうするか、信濃町も頭が痛いだろう。秋以降、年内に解散・総選挙があるかどうかは、現時点では全く分からないが、創価学会としては、コロナ禍から、この7月10日に活動再開をしたばかりで、「できればなるべく先送りにしたい」との思いだろう。しかし、「一寸先は闇」の政局は何が起こるか分からないため、臨戦態勢は整えたということであり、それで言うと、いつもながらのコウモリ飛行を見せている。(文中・敬称略)
古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』(いずれも第三書館刊)など著書多数。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- 総選挙に向け活動再開した創価学会
・7月16日付『聖教新聞』「座談会 皆が前進!皆が人材!」「立正安国の精神で」「命を守り抜く政治」
「長谷川(理事長)こうした実践例を具体的に示したのが政府の専門家会議です。実は、この専門家会議は、今年2月14日、公明党が政府に設置を提案したものです。(中略)
永石(婦人部長)感染状況の分析や対策の取りまとめを科学的知見に基づいて行う組織が設置されたことで、多くの国民が信頼して政府の外出自粛要請などにも対応できたのだと思います。
長谷川 同会議はその後、発展的に移行し、7月から新型インフルエンザ等対策有識者会議の分科会として重要な役割を担っています。分科会への移行に際して西村担当相が、公明党が専門家会議設置を『最初に提言された』と、語ったことも話題になりました。
西方(男子部長)このことがきっかけで、専門家会議の設置が、公明党の提言によるものだったことを初めて知った人も多かったようです。ネット上で、支持者ではない人たちからも公明党への評価の声が相次ぎました」
7月23日付『聖教新聞』「座談会 皆が前進!皆が人材!」
「大串 コロナウイルス感染症への経済対策としての1人『10万円』の特別定額給付金について、受け取った世帯が7月15日までに総世帯数の90%を超えました。
永石 公明党の山口代表が安倍首相に直談判して実現した、この給付金について『公明党のおかげで家計が本当に助かった』との喜びの声を各地で聞きます。
原田 京都大学IPS細胞研究所の山中伸弥所長も『まさにパンデミックの状況に求められるリーダーシップの表われ』と高く評価していましたね。(中略)
原田 今、政治に求められるのは、国民の声を聞き、国民と一緒に乗り越えていこうという姿勢です。“大衆とともに”との永遠の原点を持つ公明党は、命と暮らしを守る政治をさらに進めてもらいたい」
※コロナウイルス対策で、公明党が最前線に立って活躍しているとアピールする創価学会首脳たち。医療面・経済面ともに「遅い」「少ない」と、安倍自公政権のコロナ対策の無策・不毛ぶりが厳しい批判を浴びているにもかかわらず、一人10万円だった特別給付金を、さも国民が助かったかのように大喧伝。また政府の専門家会議も公明党が設置を提言したものだと大見得を切っている。
だがその一方で、PCR検査の検査数が7月28日現在で世界215カ国中159位という惨憺たるあり様である事実や、悪評ふんぷんの「Go Toトラベルキャンペーン」については、一切言及なし。都合の悪いことには頬被りを続けている。
公明党は7月2日に衆院選の第2次公認候補(小選挙区8人・比例区4人)を発表。翌3日には『聖教新聞』が写真付きで候補を掲載した。
「師弟の日」に小選挙区候補を中心とする第二次候補を掲載した創価学会。熾烈な選挙闘争が展開されることは間違いない。