Forum21

Read Article

3月号

3月号

3月号目次

閻魔帳

創刊15周年に寄せて 自壊・自滅の道を歩む創価学会を定点観測したことの意味/乙骨正生

特集/共謀罪に手を貸す公明党&創価学会の自己否定

“御身大切”で共謀罪に賛成する創価・公明/溝口 敦

「究極の悪法」こと共謀罪創設法案の成立に手を貸す「公明党=創価学会」の大罪/古川利明

戦争をする国へ安倍政権の総仕上げ 対米「朝貢外交」と「共謀罪」のゴリ押し/川﨑泰資

トピックス

カルト報道の明暗 幸福の科学とワールドメイト/藤倉善郎

トピックス

統一教会(家庭連合)を放置し続けた行政機関への国賠訴訟、東京地裁は棄却の判断/鈴木エイト

●連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

新・現代の眼(第7回)

“森友学園”から見える大・小の問題/菅野 完

ヨーロッパ・カルト事情(229)

テロ対策にセクト警戒機関が関与する理由/広岡裕児

執筆者紹介  編集後記

編集後記から

 巻頭の「閻魔帳」でも触れましたが、少誌は、今号をもって創刊満15年を迎えました。創刊当初、連立政権に参画した創価学会・公明党は、国家権力をバックボーンに、自らに対する批判勢力・抵抗勢力に暴力的牙を剥き出しにし、熾烈な攻撃を繰り返していただけに、少誌や小誌発行人もその対象として、激しい誹謗中傷を浴びるとともに、名誉毀損に基づく民事・刑事での提訴・告訴や、創価学会関係者による携帯電話の通話記録の引き出しなどの被害にさらされました。

 しかし15年の歳月の過程で、「永遠の指導者」として組織に独裁的に君臨してきた池田大作名誉会長は、事実上の「生ける屍」となり、また矢野絢也元公明党委員長の造反や、本尊教義の変更と平和主義の放擲などの政治的主張の変遷などにより、宗教的・社会的レゾンデートルが崩壊し、いまや創価学会の組織勢力は下り坂。自壊・自滅に向けて坂道を転げ落ち始めているといっても過言ではありません。

 そうした組織実態を糊塗するために創価学会・公明党は、国政では自民党にすり寄り、軍国主義や国家主義に反対し、憲法9条の厳護を訴えていたにもかかわらず、改憲を掲げる安倍自民党に媚び諂い、牧口・戸田両会長を獄に繋いだ治安維持法の再来といわれる共謀罪にも賛成する体たらく。その一方で、東京都議会では小池都知事にすり寄り、来る都議選で現有23議席を確保すべく腐心するという無様な醜態をさらしています。

 残念ながら小誌は、創価学会という宗教的ファシズム勢力と自民党の右翼ファシズム勢力が連携し、議会制民主主義の危機を招く事態を防ぎたいという創刊の動機・目的を果たすことはできませんでしたが、創価・公明という異常な宗教政治集団が、日本社会にいかなる弊害をもたらしたかという事実を、後世に伝える定点観測者としての役割だけは果たせたものと自負しています。

 安倍自公政権が、「内心の自由」を侵害する共謀罪の成立を図ろうとするいま、小誌はもう少し「カナリヤの囀り」を続ける必要があるのかなと考えています。

 どうか今後とも、よろしくご支援ご協力のほど、お願いいたします。

カテゴリー: 最新目次 | コメントは受け付けていません。

特集

特集/共謀罪に手を貸す公明党&創価学会の自己否定

“御身大切”で共謀罪に賛成する創価・公明

溝口 敦

ノンフィクション作家

危険性を承知で成立に寄与

 安倍政権は過去3度廃案になった「共謀罪」法案を「テロ等準備罪」と名を変え、3月10日にも閣議決定して上程、成立させようとしている。

 安倍首相は1月24日の衆院本会議で「これを共謀罪と呼ぶのは全く誤りであります」と強弁した。その理由として、今回のテロ等準備罪法案は対象を「組織的犯罪集団」に限っていること。また「犯罪の準備行為が行われたとき」と限定して、初めて処罰の対象となること──を挙げた。

 だが、これらは06年の共謀罪の修正案にすでに盛り込まれていたことが判明している。安倍首相のウソは簡単に露呈したし、だいたい共謀罪で逮捕されるのは「組織的犯罪集団」のメンバーに限らず、一般国民全てが法の対象にされる。安倍首相は二重三重にウソをつき、果ては「法案を整備しなければ東京オリンピックをできないと言っても過言ではない」とテキ屋の口上よろしくまくし立てた。

 だが、公明党はこの危険きわまる法案に賛成している。共謀罪の危険性は十分承知しているはずだが、安倍の寵を競う維新という競争相手が登場した以上、あえて反対を唱えて、安倍にソデにされたくはない。しかし、政党としての見てくれも顧慮せざるを得ず、苦肉の策として法案は「犯罪対象が多すぎる」と注文をつけた。政府はこれを受けて667罪を277罪に削って、5つに分類した。

 内訳は、①テロの実行に関する犯罪──組織的な殺人や現住建造物放火、ハイジャック、拳銃などの発射、サリンなどの発散、流通食品への毒物混入など110罪。

②薬物関連──覚せい剤やコカイン、大麻などの輸出入・譲渡など29罪。

③人身に関する搾取関連──人身売買や臓器売買、集団密航者の不法入国、強制労働など28罪。

④その他資金源関連──組織的詐欺など101罪。

⑤司法妨害関連──偽証や逃走援助、組織的犯罪の証拠隠滅など9罪。

 と、並べている。

 一見もっともらしい外見だが、2月27日、衆院予算委員会ですぐ共謀罪法案の化けの皮が剝がれた。金田勝年法務大臣が、もともとどのような性質の団体であっても、犯罪を目的とする団体に「一変」した場合には、適用対象の「組織的犯罪集団」になり得るとの見解を示したのだ。

 民進党の山尾志桜里代議士が宗教法人やNPO法人、草野球チーム、同窓会のメーリングリスト、「ライン」グループを例に挙げ、性質が一変したと見なされれば、「組織的犯罪集団」になるのかと質した。金田法相は「もとの団体の性質は関係なく、(犯罪目的の団体に)一変した場合ということでとらえる」、「一変したと判断するのは捜査機関だ」と認めた。

 また通信傍受法の対象に「ライン」やフェイスブックなどのSNS全般が含まれると答弁、たとえ絵文字であっても共謀の合意は成立し得る、手段は限定して考えないと認めた。

 テロ等準備罪は老若男女を問わず、全国民を対象とする。全国民が共謀罪に問われかねない危険性が日を追うごとに明確化している。

 よく知られたことだが、創価学会の初代・牧口常三郎、二代・戸田城聖は昭和18年7月、警察に逮捕され、8月牧口は巣鴨拘置所に移された。同年11月、治安維持法違反と神社に対する不敬罪で予審請求を東京地裁に出された。

 その折の検察調書は牧口の罪状に関し、次のように結論している。

「謗法の罪をまねがれんが為には、皇大神宮の大麻を始め、家庭に奉祀する一切の神符を廃棄する要ある旨強調指導し、同人等をして何れも皇大神宮の大麻を焼却するに至らしめ、以て神宮の尊厳を冒瀆し奉る所為をなしたる等、諸般の活動をなし、以て神宮の尊厳を冒瀆すべき事項を流布することを目的とする前記結社の指導者たる任務に従事したるとともに神宮に対して不敬の行為をなしたるものなり」

 牧口、戸田は戦争に反対したから、治安維持法に問われたのではない。単に伊勢神宮の神札を焼いたからにすぎない。それだけが、治安維持法第7条「国体を否定し又は神宮若は皇室の尊厳を冒瀆すべき事項を流布することを目的として結社を組織したる者又は結社の役員其の他指導者たる任務に従事したる者は無期又は4年以上の懲役に処し」、及び神社に対する不敬罪に相当する行為だったのだ。

自縄自縛となる可能性大

 現在の創価学会・公明党は政権に服従し、世の大勢に従うだろうから、現在の治安維持法である共謀罪に引っ掛けられることはないと彼らは安心しているかもしれない。しかし、山尾志桜里代議士の挙げた例に宗教法人が含まれているように、創価学会という組織やその幹部をかつてのオウム真理教に準ずる「組織的犯罪集団」、あるいはメンバーとみなして、共謀罪で罪に落とすことはきわめて簡単だ。

 教団施設内に第三者を入れない徹底した秘密主義、教団施設で選挙など政党活動を行っている政教一体ぶり、海外への目に余る組織展開、池田大作氏の名誉あさりを意図した海外送金など、創価学会を国際的テロ支援組織と疑うことは決して不可能ではない。

 まして公明党は7月の都議選では自民党との連携を離れ、小池百合子都知事にすり寄っている。安倍自民党が公明党を裏切りと離反のヌエと考え、いずれ罰を与えようと考えたとしても不思議はない。

 にもかかわらず創価学会・公明党は戦前に犯した愚を性懲りもなく、もう一度繰り返そうとしている。それも法の成立に積極的に関与する形でだ。

 山口那津男・公明党代表は2月15日、衛星放送で都議選について聞かれ、軽い調子を装って次のように答えた。

「公明党は本来、歴史的には地方議会から始まった。その要である首都東京、都議会公明党は公明党の魂、原点といってもいいくらい重要な位置を持っている。絶対に勝たないといけないと言い聞かせている。23人を公認しているので全員当選を目指したい。小池知事側と選挙調整をしているわけでは今ないと思う。小池さんがいったいどこにどれだけお立てになるのか分からないので。ただ、競合してまずい結果にならないように、それは必要に応じて考えたいと思う」

 山口党代表がいかに冷静を装おうとも、公明党が今重大な岐路に立っていることは間違いない。創価学会・公明党は単に「現有組織勢力」を守る、自分が今占める地位を守る──に徹しているのだが、たまたま共謀罪と小池都知事の登場で中央では安倍政権、東京都では小池知事という股裂き状態に陥った。

 彼らの眼中に一般国民の姿はない。たとえ共謀罪で引っ括られようと、それこそ「わが亡き後に洪水よ来たれ」で彼らの知ったことではない。自分だけが大事な自分党だから、力を持つ者におべっかも使うし、すり寄って鼻毛のチリも払う。たとえ池田大作名誉会長が健在であっても、この事情は変わるまい。池田氏自身が御身の安全と安泰を第一に考える自分党だからだ。

 彼らにはこれさえあればという強力な武器がある。判断を創価学会・公明党の幹部たちに預け、たとえ共謀罪の成立を加速させようと、おとなしく従い続ける学会員大衆という羊の群れが武器なのだ。羊は自分の判断力を持たないが、選挙で投票できる一票は持っている。よく言うことを聞くこの一票さえあれば、幹部たちは股裂き状態になっても、何とか凌ぎ切れる。落ち目になっても、自分たちを高く売ることが可能なのだ。

 人が頭の中で考えていることを罰するのが共謀罪だが、創価学会・公明党の幹部たちは会員が頭の中で考えていることを思いやる想像力さえ切り捨てている。学会員はもともとどの政党に投票するか、どの候補者に投票するか、自分で判断する習慣を持たないのだから、「内心の自由」など無用の長物と考えているのだろうか。人間性の荒廃が極まって「日本死ね!」という状態は改まりそうにない。

溝口 敦(みぞぐち・あつし)ノンフィクション作家。1942年生まれ。早稲田大学政経学部卒。出版社勤務などを経てフリーに。宗教関係をはじめ幅広く社会問題を扱う。『食肉の帝王』(講談社プラスα文庫)で第25回講談社ノンフィクション賞、日本ジャーナリスト会議賞、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞の3賞同時受賞。『堕ちた庶民の神』(三一書房)『歌舞伎町・ヤバさの真相』(文春新書)『パチンコ「30兆円の闇」』『生贄の祀り』『あぶない食品』(小学館文庫)『武富士 サラ金の帝王』『池田大作「権力者」の構造』『中国「黒社会」の掟』『細木数子 魔女の履歴書』(講談社プラスα文庫)『暴力団』『続・暴力団』『薬物とセックス』(新潮新書)『抗争』(小学館新書)『やくざの経営戦略』(文春新書)など著書多数。

カテゴリー: 特集記事 | コメントは受け付けていません。

信濃町探偵団

信濃町探偵団──創価学会最新動向

●写真はなくとも元気??

・1月1日付「聖教新聞」「世界広布新時代 青年拡大の年が開幕」

「新年の歌 池田大作」「勝ちにけり 師弟の大山 揺るぎなく 不動の信心は 万代までも」

・同「新春あいさつ 婦人部長 永石貴美子」

●東京都議会議員選挙に突き進む創価学会

 ――選挙の勝利は「創価学会仏」の正当性の証明&「池田先生のご入信70周年」慶祝のため

・1月9日付「聖教新聞」「先駆の黄金柱 北九州で壮年大会 原田会長が激励」

「総福岡・北九州総県で8日、壮年部の大会が盛大に開かれ、原田会長が出席した。(中略)原田会長は、限界の壁、困難の波浪に襲われた時に男の真価が問われると強調。逆境を飛躍のばねに変え、壮年の底力で、広宣勝利の旗を満天下に示そうと呼び掛けた」

・1月10日付「聖教新聞」「大東京に栄光の凱歌を 原田会長は目黒 北へ 葛飾は総会」

「大東京が栄光の凱歌を轟かせながら、“青年拡大の年”を前進!原田会長は9日、目黒総区と北総区の集いへ。両会合で会長は、いざ勝負という時に人間の真価が問われると強調。『今まで生きて有りつるは此の事にあはん為なりけり』を拝読し、『断じてやり遂げるとの一念で、愛する地域を、共感の輪と人材の連帯が広がる寂光土に』と念願した」

・1月13日付「聖教新聞」「世界広布新時代第23回本部幹部会から(要旨) 『決意』と『実行』こそ学会の伝統 原田稔会長」

「世界広布新時代第23回本部幹部会の開催、誠におめでとうございます。(中略)池田先生は会長就任5周年の本部総会で、5年間における学会の見事なる前進を振り返られました。小説『新・人間革命』第10巻『言論城』の章には、こうつづられています。

『この聖業を成し遂げた創価学会は、まさしく、仏の御金言通りの、信心を骨髄にし、慈悲を血管にした一大和合僧の、仏の生命体であります。そして、鉄壁の団結をもって、民衆救済に進む、この姿、この力こそ、世界最高の、平和の大不沈戦艦であり、これを私は、“異体同心丸”と名づけたいのであります』との大確信の宣言であります。すなわち『創価学会仏』の生命は、わが『異体同心の団結』の一念にこそ脈打つ――この一点を、私たちは深く銘記していきたい。そして、広宣流布大誓堂の完成5周年へ、ますます鉄壁の団結で、広布を阻まんとする嫉妬の魔性を打ち倒しながら、全世界の民衆救済という大海原へと船出していきたい。破竹のスタートダッシュで、まずは上半期、全ての戦いを完全勝利で飾り、『8・24』池田先生のご入信70周年を、門下一同、盛大にお祝いしていきましょう」

・1月18日付「聖教新聞」「全国で躍進の一年誓う座談会 原田会長は東京・足立へ」

「創価家族が躍進の一年を誓う、学会伝統の座談会が、全国各地ではつらつと行われている。原田会長は17日、東京・足立総区千住池田区の春風地区の集いへ。(中略)原田会長は、世界の各界の識者が池田先生の思想と行動に深く共感を寄せている模様を紹介。師と共に広布の大道を歩む誇りを胸に、偉大な勝利の人生をと激励した」

・1月20日付「聖教新聞」「座談会は勇気の泉 原田会長が東京豊島へ」

「勇気の心あふれる座談会が、各地で行われている。原田会長は19日、東京・豊島総区の千川支部高松地区へ。(中略)原田会長は、異体同心の団結こそ広布伸展の要諦であると訴え、心を合わせて地域広布にまい進しようと呼び掛けた」

・1月22日付「聖教新聞」「“喜び多き”座談会 原田会長は東京・北総区へ」

「原田会長は21日、東京・北総区の東田端支部喜多地区へ。(中略)原田会長は、『建設は死闘』との師の指針を胸に刻み、広布と人生の勝利を目指し、獅子奮迅の勢いで前進をと呼び掛けた」

・1月23日付「聖教新聞」「東京 中野が勇気の行進」

「『東京凱歌』の先駆を担う中野総区の総会が22日、原田会長が出席して東京戸田記念講堂で盛大に開かれた。(中略)原田会長は、『嵐に不動の信心』こそ学会精神の根幹であるとし、ほとばしる奔流のような勢いで、あらゆる困難を乗り越えて、『中野が勝てば東京が、全国が勝つ』という信仰勝利の実証を示そうと励ました」

※創価学会の本部幹部会での会長発言では、これまで「お元気な池田先生とともに」というフレーズが枕詞になっていた。だが、今年初めての本部幹部会での原田発言を報じる「聖教新聞」記事からは、この枕詞が消えていた。「聖教新聞」元日号や1月4日号に池田大作名誉会長の近影写真が掲載されなかったことを含めて、池田氏のXデーは確実に近づいているのかもしれない。

 その本部幹部会発言で原田会長は、小説『新・人間革命』第10巻の記述を引用し、「創価学会仏」は「異体同心の一念」に宿ると強調。その上で都議選に向けての「異体同心」での選挙闘争を呼びかけるとともに、「池田先生のご入信70周年を、門下一同、盛大にお祝い」するために「破竹のスタートダッシュで、まずは上半期、全ての戦いを完全勝利で飾」ろうと強調した。「全ての戦い」の中に8月の入信記念日直前の7月の都議選が含まれているのは当然である。

 その都議選の前哨戦と位置づける1月の北九州市議選、さらには大阪・茨木市議選、岡山・倉敷市議選、埼玉・戸田市議選で、創価学会は組織上げての選挙戦を展開した。原田会長が北九州や東京各地に率先して足を運び、都議選勝利に向けた「異体同心」での選挙闘争を煽るなどしたのだが、1月度本部幹部会の発言からは、その狙いが「創価学会仏」の正当性の証明と、池田氏の「入信70周年」を祝うためのものであることが読み取れる。

 かつて創価学会は、政界進出を「政界浄化」のためなどと強調、選挙闘争を「立正安国」のための法戦などと主張していたが、集団的自衛権の行使容認や安保法案への賛成、さらには稀代の悪法である「治安維持法の再来」とも批判される特定秘密保護法や共謀罪に賛成することで、従来の政治的主張を自壊させたことで、説得力を喪失した挙句、ついには選挙闘争のモチベーションとして、池田氏の「ご入信」を慶祝することを掲げるに至った。

 自分で物事を考えることを停止させる反知性主義の全体主義集団の帰結といえばそれまでだが、それが創価学会という教団内部の問題として自己完結するのではなく、選挙結果を通じて広く社会一般に悪影響を及ぼすだけに、看過できない。本誌が創価学会・公明党の政教一致・政教一体問題を、そして自公連立政権や地方議会における公明党の政治的影響力を問題視するゆえんである。

●前哨戦の結果に欣喜雀躍――だが組織力の低下は顕著

・1月31日付「聖教新聞」「公明党北九州市議選に完勝」「過去最高の13議席を獲得歴史的な大勝利」

「2017年政治決戦の前哨戦として注目を集めた29日の北九州市議選(総定数57)で、公明党は13候補全員が当選。2議席増で過去最高の13議席を獲得した。同日行われた埼玉県戸田市議選も全員当選となり、22日の大阪府茨木市議選、岡山県倉敷市議選と合わせて本年初頭の四つの大型市議選で公明党は完全勝利を飾り、今夏の東京都議選へ、大きな弾みをつけた」

※上述したように、東京都議選の前哨戦と創価学会が位置づける北九州市議選・戸田市議選・茨木市議選・倉敷市議選で、公明党候補全員が当選したことに創価学会が欣喜雀躍している。とくに北九州市議選では、議員定数が削減されたにもかかわらず、現有議席を2議席増やしたことに大喜び。得票数も北九州市議選では、前回比3567票増の75365票で、得票率も過去最高だったと創価学会は「完全勝利」を誇示している。

 しかし前々回平成21年の北九州市議選での公明党の得票数は84600票で、前々回比では9235票のマイナス。そして戸田市議選は前回比835票増だったが、茨木市議選は473票減、倉敷市議選は267票減となっており、18歳選挙権が導入されても創価学会の勢力や活動能力は低下していることが浮かび上がる。結局、北九州市議選の投票率が39・2%と40%にも達していない事実が示すように、一連の市議選での勝利は、低投票率の中で創価学会の組織票が有効に作用したということであり、投票率が上がれば創価学会・公明党の選挙は苦しくなる。小池知事の登場で注目が集まる都議選は投票率が上昇するものと考えられる。それだけに苦戦必至の創価学会・公明党は躍起となっている。

●都議会公明党新春賀詞交歓会

・1月7日付「聖教新聞」「公明党は地方政治の要 山口代表 都議選の大勝利を誓う 東京都本部賀詞交歓会」

「公明党東京都本部の新春賀詞交歓会が6日、東京・新宿区内で開催され、山口那津男代表、太田昭宏全国議員団会議議長らと共に、政界、経済界、労働界などから多数の来賓が出席した。

 高木陽介衆院議員(東京都本部代表)は本年の一大政治決戦となる夏の都議選について『予定候補23人の全員勝利へ、団結してまい進する』と力強く決意を語った。山口代表は『自公連立政権はこの4年余り、デフレ脱却を目指して着実な成果を挙げてきた。これかもしっかりと政権を支えていく』と力説。(中略)山口代表は『政治の安定を図るためには、地方政治がしっかりとした基盤を固めることが大事だ』と強調。その上で『改革と共に継続性が重要な都政において、長い間、安定を保つ要の役割を担ってきたのが都議会公明党である』と訴え、公明党が都議選で勝利し、都政改革を前に進めていくと力説した。

 一方、来賓の二階俊博自民党幹事長は『公明党と自民党が共に手を携えて協力してきた歴史が今の日本の政治の歩みだ。協力できるところは協力し、両党が責任を持ち対応したい』とあいさつ。小池百合子都知事は『これまでの信頼関係をベースにしながら、都民のための都政を確実なものにし、東京大改革を進めるため、共に歩んでいきたい』と語った」

※国政では自公連立政権を、都政では小池都知事との連携を模索する公明党&創価学会。山口代表の発言には、さながらぬえのような特異な宗教政治集団の本音がよく示されている。公明党東京都本部の新春賀詞交歓会での二階自民党幹事長、小池都知事の挨拶からは、この国の政治に創価学会という特異な宗教政治集団の政治的影響力が大きく影を落としていることが分かる。

 その創価学会を組織母体とする公明党は、候補者23人の全員当選を目指すが、中野区と北区で定数が1議席削減されるなど厳しい情勢であることから、都議選勝利のために早々に都議会自民党と袂を分かち、小池知事の提唱する「東京大改革」の先兵的役割を演じることで、「完全勝利」を目指している。見え透いた蝙蝠こうもり飛行だが、その臆面のなさには呆れるしかない。

●『新・人間革命』の血肉化強調する池田博正主任副会長

・3月1日付「創価新報」「弟子の道 小説『新・人間革命』に学ぶ」「師と共に不二の道を歩み続ける」「インタビュー 池田博正主任副会長」「『精神の正史』ここに 弟子の実践で継承を」

「あの地この地で奮闘する友へ、先生は毎日、希望の指針を贈られています。2010年以降、先生が直接、会合に参加されないようになったことで、『新・人間革命』の意義は一層、大きくなりました。先生は小説で、創価学会の精神の正史と、自身の心境をつづられながら、『今』の読者に力強くメッセージを発信されているのです。

 時代が進めば、小説で描かれている当時のことを知る人は減っていきます。もちろん、その場に居合わせた人の証言は貴重ですが、『新・人間革命』がつづられることで、折々の広布史や学会精神が“先生の思いとともに”永続的に伝わっていく──ここが重要な点です。言い換えれば、『新・人間革命』は、後世の学会員の依処となる“文証”とも言えるでしょう。ゆえに、私たちが今しっかりと学んでいくことこそが、『学会の永遠性』の確立につながっていくのだと確信します」

「これからの時代は、完結に向かう『新・人間革命』を、弟子の立場でどう深め、実践していくかが鍵となります。いかに自分たちの血肉とし、後世に正しく伝えていくか。その意味で皆さんは、使命ある“新・人間革命世代”と言えるでしょう。

 また、新聞連載を読む上で、私は毎日の“切り抜き”も大事だと思います。前後のつながりを意識し、全体像を押さえていくことが大きな意味をなすからです。(中略)私は、いまだに『人間革命』第10巻の“切り抜き”を持っています。もう40年近く前のものですが、わが『青春の宝』です。

 きょうも小説『新・人間革命』が掲載された聖教新聞が届けられる。このかけがえのない一日一日を、池田先生と共に勝ち飾り、師弟共戦の金字塔を築いてまいりましょう」

※創価学会青年部の機関紙「創価新報」に池田大作氏の長男である池田博正主任副会長が登場。『新・人間革命』を学び、師匠である大作氏の意思を血肉化し継承することの重要性を強調している。

 父親である大作氏を「先生」と尊称する博正氏。子息である博正氏が、大作氏を「父」とは呼ばず「先生」と呼ぶことで、子息でさえ師弟の筋目・けじめをたてているとアピールしたいのだろう。が、それにしてもクサイ演出である。

 その冒頭で博正氏は、大作氏が2010年の5月以来、会合に出席しなくなったことから、『新・人間革命』の意義はさらに重要になったとし、大作氏が日々、全国各地で奮闘する会員に対して、「創価学会の精神の正史と、自身の心境をつづられながら、『今』の読者に力強くメッセージを発信」しているとアピールする。

 当然のことながら、この発言は『新・人間革命』を大作氏が日々執筆しているという前提に立っており、創価学会の首脳幹部である以上に、大作氏の子息である博正氏も大作氏が元気という「演出」、悪く言えば「虚構」を補強していることが分かる。

 それにしても「小説」すなわちフィクションだとしながら、『新・人間革命』は、「創価学会の精神の正史」であり、そこには大作氏の「心境がつづられ」ているとして熟読玩味、血肉化を図るために新聞の切り抜きまで推奨する博正氏。

 創価学会の次期会長は、谷川佳樹主任副会長が有力と見られているが、青年部に対して大作氏との「師弟の道」を説く博正氏が、お血筋もあることから、組織の安定と求心力の維持のために、案外、原田会長の次の会長、もしくはSGI会長に就任する日が近いのかもしれない。

Return Top