1月号目次
閻魔帳
「たそがれの公明党」は再生できるのか/段 勲
特集/2025年――迷走が予想される創価・公明
池田3回忌に向かう「法戦」を率いる「95%は自民党の血」の公明党代表/乙骨正生
「ヒロシマ選出のシン・老代表」を前面に党勢回復へともがく「公明党=創価学会」/古川利明
公明党新代表斎藤鉄夫氏の下での今後の公明党の動向/福本潤一
トピックス
反ワク陰謀論で党内を荒らしまくる原口一博を立民は処分しろ/藤倉善郎
トピックス
蘇る反ユダヤ主義 イスラエルは生き残れるのか!?/橋本征雄
- 連載
信濃町探偵団──創価学会最新動向
「日本の議会政治」を考える(9)
「カルト政治」の淵源──住専国会と「密会ビデオ」(1)/平野貞夫
ナニワの虫眼鏡(第67回)
どこへ向かうのか吉村維新 “3足のわらじ”どころか1足も履けず!?/吉富有治
ヨーロッパ・カルト事情(316)
選挙に使われるIT時代のセクト的手法広岡裕児
執筆者紹介 編集後記
編集後記から
昭和100年、敗戦・被爆80年となる今年2025(令和7)年の年明けは、元日早々に能登半島地震が発生した昨年と異なり、比較的穏やかなものとなりました。
しかし、おだやかな年明けとは裏腹に、21世紀当初の四半世紀の節目を迎えんとする今年も、内外ともに多難な年になると予想されています。というのも世界に目を転ずれば、早くも4年目を迎えるウクライナ戦争、そして2年になるイスラエルのガザ侵攻は停戦が見通せず、不安定要素としてのトランプ米大統領の再登板により、世界はますます混乱と分断が加速すると危惧されているからです。
同様に円安に伴う物価高や、気候変動に基づく各種の災害に見舞われている国内でも、政治的には昨年10月の衆院総選挙で自公が敗北し少数与党となったことで、自公による国会軽視の強権政治が是正される兆しが表れていますが、SNSを中心とした陰謀論やニセ情報の拡散などによる選挙の紊乱という新たな不安定要素が拡大しており、今夏実施の参院選・東京都議選でも政治的混乱は続くのではと見られています。
そうした政治状況下で、昨秋の衆院選で惨敗した公明党が、参院選と東京都議選の勝利を目指して斎藤鉄夫新代表の下、足掻いています。その“キモ”は自民党との距離感の演出と独自性の発揮であり、斎藤代表は就任以来、選択的夫婦別姓の議論の促進に核禁条約締約国会議への日本政府のオブザーバー参加、予算案の修正などに言及し、自民党との政策・政治的立場の違いを強調しています。
斎藤代表がここにきて俄かに自民党との距離感の演出に腐心しているのは、昨秋の衆院選の敗因を、裏金議員を推薦したことで自民党と「同じ穴のムジナ」視されたことだと分析しているからに他なりません。
もっとも公明党そして創価学会は、自公政権が崩壊した場合の生き残りも視野に入れていると見え、今年に入るや斎藤代表は、元日放送のラジオ番組で、「(野党との)大連立の障害となるのは今の選挙制度だ。大きな合意のくくりができるような制度を考える時期に来ているのではないか」と発言し、1月24日召集予定の通常国会を視野に入れて「合意形成の要となり、頑張りたい。結果的に大連立につながるような合意形成が図られる役割の先頭に立つ」と発言しました。
かつて公明党・創価学会は、非自民連立政権そして新進党で政治のイニシアチブを把握しようと図った経緯があります。当時と今日では政治状況は異なりますが、その動静を看過することはできません。小誌は今年も宗教と政治・社会の動静を監視し続けます。
特集/2025年――迷走が予想される創価・公明
「ヒロシマ選出のシン・老代表」を前面に党勢回復へともがく「公明党=創価学会」
古川利明
ジャーナリスト
締約国会議「オブザーバー参加」の欺瞞
2024年のノーベル平和賞に選ばれた「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」への授賞式が、日本時間で昨年12月10日夜、ノルウェーの首都・オスロで開かれ、長崎で被爆した代表委員の田中熙巳(92歳)が演説で「人類が核兵器で自滅することがないように」と訴えたことで、この問題に対する関心が高まっている。なお、その被団協に対する同賞の授与が発表されたのは、ちょうど衆院解散から2日後のことで、「核兵器廃絶」ということに関しては、公明党創立者の今は亡き池田大作が、生前にSGI提言などで口やかましいくらいに唱えていたこともあって、とりわけ、その衆院選で公明党(=創価学会)は、比例600万票割れの惨敗を喫し、24議席にまで落としていただけに、今後の党勢回復に向けて「これ」をテコに、いつものこととは言え、さらに猛烈に“平和の党”のアピールに余念がない。
そこで、昨年9月28日の党大会で公明党の新代表に就任しながらも、直後の衆院選(昨年10月27日投開票)で落選した石井啓一(埼玉14区、66歳)が引責辞任させられたことに伴い、その後任として副代表から昇格となった斉藤鉄夫(広島3区、72歳)は、「11月の就任以来、被爆地・ヒロシマ選出の国会議員として核廃絶への強い思いを語り続けている」(昨年12月18日付公明新聞)ということで、今年3月にニューヨークの国連本部で核兵器禁止条約(21年1月22日発効)の第3回締約国会議が開かれることに伴い、これも池田が生前にSGI提言で繰り返していたことだが、斉藤は昨年11月27日、首相の石破茂に「被爆80年を目前にした緊急要請」なるものを手渡し、「核保有国と非保有国との橋渡し役を果たすべく、締約国会議への日本のオブザーバー参加」を求めている。
この「オブザーバー」とは、英語で「立会人、観察者」の意で、要は「発言権はあるが、議決権を持たない」ため、「会議を円滑に進行させ、議論を盛り上げる」というサクラ以上にはなり得ない。「原爆投下により、筆舌に尽くし難いまでの未曾有の被害を被った唯一の被爆国である日本だからこそ、核廃絶に邁進する」のであれば、もちろん、被爆者らは最初から求め続けているが、日本は核禁条約の調印・批准によって、「議決権のある正式メンバーとして関わる」のが筋であって、所詮、「オブザーバー参加」など「核廃絶に向けて協力するフリ」を演じる欺瞞でしかない。日本が核禁条約に加盟しないのは、何よりもまず、「核の傘」を構築する日米安保体制に組み込まれているため、異様なまでに米国の顔色を窺って、おもねっているからに他ならない。そもそも、核兵器を保有する国連の常任理事国でもある米露英仏中の5カ国は、この核禁条約には未加盟どころか、ハナから相手にしておらず、その「核保有国と非保有国との橋渡し役に日本がなる」と言ったところで、「そんな米国の言いなりでしかないガキの使いに、一体、何ができるのか?」というレベルの話である。
「原発回帰」容認へ神風吹かせた公明党
折しも、昨年12月17日、経済産業省は概ね3年ごとに見直している電力需給に関する、今回で第7次となる「エネルギー基本計画(エネ基)」の原案を公表し、「3・11」こと11年の東日本大震災における福島第1原発の爆発事故以降、ずっと掲げてきた「原発依存度を可能な限り低減させる」との文言を削除するとともに、「原発の建て替え」についても、従来は23年2月策定の「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」で「廃炉を決めた同一原発の敷地内に限る」と打ち出していたところ、今回のエネ基の原案では、「同じ電力会社が保有する別の原発敷地内でもOK」と条件を緩和した。元々、1950年代半ばの黎明期から、日本は「原発推進」で突き進んできたのだが、今なお、収束が全く見えないあのフクイチの爆発事故によって、さすがに立ち止まっていたところ、また、ゾロゾロと「原発回帰」の姿勢がより鮮明になってきたと言える。
もちろん、このエネ基の策定にあたっては、事前に政権与党である自公とも擦り合わせを行っており、その経過について、毎日新聞(昨年12月18日付朝刊)が「原発推進 吹いた『神風』」「公明 建て替え条件軟化」の見出しで、何とも興味深い記事を載せている。表向きは、一応、「原発に依存しない社会」を掲げている公明党が、ちゃんと御墨付きをあらかじめ与えているがゆえに、こうやって経産省も公表にこぎつけているわけである。ちなみに、前回改定のあった21年の第6次エネ基においては、その公明党への配慮から「原発の建て替え」に関する明記が見送られた経緯があったが、今回は既にその議論が大詰めを迎えていた22年末の時点で、公明党は「原発の建て替えもOK」との方針転換の姿勢を伝えていたことで、内部では「神風が吹いた」と感嘆の声が上がっていたというのである。そこで、政府関係者によると、このとき、衆院の小選挙区定数の「10増10減」を巡り、「自公間で候補者調整が始まる」というタイミングだったことから、公明党(=創価学会)側は「党の方針と矛盾しないギリギリのラインで、山口(那津男)元代表も自民党の顔を立てる形で空気を読んだ」ためで、要するに「小選挙区の枠をウチに寄こせば、建て替えぐらい認めてやる」という裏取引の結果だったというのだが、「いかにもな話」である。
ところが、公明党総合エネルギー対策本部長の赤羽一嘉は、昨年12月13日に「『総基数は増やさない』『廃炉が条件』『地元住民の理解を得る』などの縛りがある」として、「従来の我が党の政策と何の変わりはない」と報道陣に力説する一方、代表の斉藤も同17日の会見で、2040年度における電源構成割合が「原発の比率は2割程度」と、現在の第6次エネ基にある「30年度における原発の比率は20~22%」と変わらないことを引き合いに「これまでの我々の主張と整合性が取れている」述べていたが、これは「原発維持」に他ならず、まさに詭弁もいいところである。なお、この第7次エネ基の原案は、パブコメ(意見公募)と自公間でのさらなる検討を踏まえ、今年3月末までの閣議決定を目指すが、この過程で「『原発依存度の低減』の文言復活を求める必要はない」と斉藤は断言しており、開いた口が塞がらない。
「私の血の95%が自民党」と広言の公明新代表
拙著『核と原発 ヒロシマ・ナガサキ、ビキニ、そしてフクシマを繋ぐ悲劇の誕生』(アメージング出版)で詳述したように、実は「核兵器」と「原発」は表裏一体のものである。というのは、双方ともウランであり、プルトニウムの核分裂によるエネルギーを利用している点では、その仕組みは全く同じであり、第2次大戦中のマンハッタン計画において、原子炉で天然ウランを燃やす臨界実験を行った際、偶然にも、プルトニウムが生成できることを突き止めた。要するに、原発とは「プルトニウムの生産装置」であり、これだと、手のかかるややこしいウラン濃縮の作業は不要なため、実際に使われたウラン型原爆というのは、あのヒロシマが最初で最後で、その後、実用化されているのは、すべてナガサキ投下で実証されたプルトニウム型原爆なのである。つまり、日本が原発に固執する最大の理由は、「これ」を持ち続けることで、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する再処理などの「機微核技術」を維持することが目的で、まさに「これ」こそが外務省が「ポテンシャル」という隠語で呼んでいる「潜在的核武装」なのである。
話を戻して、そのヒロシマ選出の公明党新代表・斉藤だが、元々は衆院の比例中国ブロック単独での出馬だったが、21年10月の総選挙において、その2年前の参院選での妻・案里に絡む公選法違反(買収)事件で逮捕、起訴されたことで辞職に追い込まれた河井克行の地盤だった広島3区(広島市安佐南・安佐北区、安芸高田市、山県郡)を乗っ取る形で鞍替えしており、実は地元の自民党広島県連は、同県議(広島市安佐南区選出)の石橋林太郎を河井の後釜として擁立すべく党本部に直談判を求めていた。ところが、首相に就任したばかりの岸田文雄(広島1区)は、「これ」が全国での自公協力にヒビが入ることをひたすら恐れ、この石橋を比例単独候補に回すことで、決着を図っていたのである。こうしたスッタモンダがあったため、解散翌日の夕方、広島市安佐南区の区民ホールで開かれた石橋の決起大会に来賓として招かれていた斉藤は「親父はバリバリの自民党員の村会議員でした。私の血の95%が自民党です」とあいさつし、膝に頭が付くほど深くお辞儀をしたところ、会場からは笑いが漏れ、ピーンと張り詰めていた空気が一瞬、和らいだ。
そこで、島根県邑智郡羽須美村(現・邑南町)で生まれた斉藤は、中学に入って広島市に引っ越し、私立修道高校2年のときに創価学会に入信している。東工大院の修士課程(応用物理学)を修了後、ゼネコンの清水建設に主任研究員として入社しており、岸田内閣の発足に伴い、信濃町が斉藤を、この自公政権下でほぼ一貫して独占し続けている、都市計画や道路整備、災害対策に交通と、巨額の公共事業予算を管轄する「国土交通省の大臣」として捻じ込むことで箔付けをし、選挙戦を有利に戦うべく持って行ったことの機微には、こうした斉藤の経歴もあるだろう。それで言うと、前代表で安倍内閣で国交大臣だった石井も、東大工学部(土木工学)卒で建設省技官の出身だが、その「10増10減」を巡って、幹事長時代の23年5月25日、「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」とまで言い切っていたため、そこは「人間は『感情の動物』である」がゆえ、自民党の特に現場レベルではカチンと来るものがあったのだろう。あの石井のコワモテぶりというか、見た感じの陰キャラは、学会婦人部(現・女性部)のウケもイマイチだったようで、この度の大逆風の選挙戦においては、これが相当堪えたがゆえの結果だったと思われる。 (文中・敬称略)
古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』最新刊『「自民党“公明派”」20年目の大失敗』(いずれも第三書館刊)『核と原発 ヒロシマ・ナガサキ、ビキニ、そしてフクシマを繋ぐ悲劇の誕生』(アメージング出版)など著書多数。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- 池田3回忌を勝利で―北九州市議選・東京都議選・参院選に向け公明党の存在感アピール
・1月4日付『聖教新聞』「『世界青年学会 飛翔の年』を出発 全国・全世界で新年勤行会」
「『世界青年学会 飛翔の年』の開幕を告げる新年勤行会が1日を中心に、日本全国、全世界で晴れやかに開催された。総本部の広宣流布大誓堂(1日、東京・信濃町)では、勤行・唱題に続き、西方青年部長が『十字御書』の一節を拝読し、池田大作先生の三回忌を勝利で飾る決意を披歴した。(中略)原田会長は、学会創立100周年の2030年、そして2050年の勝利を決する重要な一年を、一人一人が自身の一歩前進の実証で飾ろうと強調。『受くるはやすく、持つはかたし。さるあいだ、成仏は持つにあり』との御書の一節を通して、御本尊への祈りと師弟誓願を貫くことが勝利の直道であると述べ、共々に大いなる飛翔を果たそうと呼びかけた」
・1月1日付『公明新聞』「2025新春抱負 西田実仁幹事長にインタビュー 参院選、都議選に断じて勝つ」
「西田実仁幹事長 まずは今月、北九州市議選など大型の統一外地方選が行われます。全員当選を果たし、その上げ潮の中で夏の東京都議選、参院選を勝ち抜いてまいります。(中略)参院選は埼玉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡の7選挙区の全員当選と、比例区では改選の現有7議席以上の獲得をめざします。新人6人を擁立する都議選も激戦必至です。政治の安定を確保し、改革を断行していくためには、この政治決戦の勝利が不可欠です。断じて勝ち抜いてまいります」
※昨年10月の衆院選で惨敗した公明党は、斎藤鉄夫新代表を立てて巻き返しを図っており、1月1日付『公明新聞』インタビューで西田実仁幹事長は、北九州市議選から都議選、そして参院選の必勝をアピールした。
従来から公明党そして創価学会は、北九州市議選と都議選そして参院選が重なる年は、北九州をホップ、都議選をステップ、そして参院選をジャンプとなぞらえる三段跳び作戦で、各種選挙に勝利することを学会員に檄してきた。
今回も創価学会はその伝で選挙戦にのぞむ心算と見え、昨年12月11日には「先駆」の戦いの勝利を誓う北九州総県の総会を開催。その席上、原田稔会長は、「『先駆の中の先駆』の使命を担う北九州から世界広布の新たな拡大の突破口」(12月12日付聖教)をと、拡大勝利をアピール。続いて12月15日には総東京の総会を開催。出席した原田会長は、「目の前の一人への大誠実の振る舞いから、新たな仏縁が広がると強調」(12月16日付聖教)するなど、事実上の出陣式を行っている。
こうした創価学会の動向と軌を一にして、斎藤公明党代表も公明党の存在感のアピールに腐心。1月2日に東京の池袋駅頭での新春恒例の街頭演説で斎藤代表は、「巳(み)年の意味は変化と成長。結党60年を過ぎ、再生の道をスタートした。新しい党の最初の戦いとして、どうか何としても押し上げていただきたい」(1月3日付『時事ドットコム』)と声を張り上げるとともに、選択的夫婦別姓制度導入やノーベル平和賞を受賞した日本被団協幹部との面会を石破茂首相に直談判。さらには野党との大連立を可能とする選挙制度改革の議論の実施を訴えるなど、自民党との距離感を演出している。
党勢回復と生き残りを懸けて足掻く公明党と創価学会。その賭けは吉と出るか凶と出るか。