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2024年8月号

8月号目次

 

閻魔帳

米大統領選で懸念される日本の陰謀論情勢/藤倉善郎

 

特集/公明党支援の意義を確認し各種選挙に備える創価の意図

 

選挙は「信心」で勝て!と言う創価学会・公明党の本性/段 勲

公明党「結党60年」と政教分離 変わらぬ「欺瞞」と「横取り」体質/柿田睦夫

混沌とする永田町を横目に「衆・参・都議トリプル選」の準備に入った「公明党=創価学会」/古川利明

“宗教団体の政治参加の内在的限界”示す原田発言/乙骨正生

 

トピックス

念書裁判で最高裁が画期的判断 解散命令審理への影響は/鈴木エイト

 

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「日本の議会政治」を考える(7)

「議会開設運動」の始まり(7)平野貞夫

ナニワの虫眼鏡(第62回)

人気薄の万博と迷走する維新 コケるのはどちらが先か/吉富有治

ヨーロッパ・カルト事情(311)

「カルト批判」を非難するイタリア宗教学者の迷妄/広岡裕児

執筆者紹介 編集後記

 

 

編集後記から

地球温暖化の影響なのでしょう、異常な猛暑が続いています。どうぞ十分にお気をつけください。

そんな猛暑の最中、フランスのパリでオリンピック夏季大会が開催され、連日、テレビでは日本選手の活躍・奮闘ぶりが放映されています。

もとより選手個々の努力には敬意を表しますが、3年前の東京オリンピックをめぐる醜悪な汚職事件や不祥事も記憶に新しいところであり、商業主義に毒される金儲けとこれに群がるメディアの過剰な演出と感激の押し売りにはウンザリさせられます。

それにしてもオリンピックといえば「平和の祭典」。IOCの提唱によって「オリンピック休戦」が国連で決議され、オリンピック開幕の7日前からパラリンピック閉幕の7日後までが休戦期間として設定されることが慣例となっています。

これは都市国家ポリスが互いに争っていた古代ギリシャで、オリンピック開催期間中は戦闘を中断してオリンピックに参加する「エンケケイリア(聖なる休戦)」がなされていたことに由来します。

今回のパリオリンピックに際しても、昨年11月の国連総会で休戦決議が賛成118票・棄権2票で採択され、7月19日から9月15日までが休戦期間に設定されています。しかしウクライナ戦争は停戦することなく今も続いています。またイスラエルによるガザ攻撃は、国際司法裁判所で「ジェノサイド」だと認定され厳しく断罪されましたが、イスラエルは停戦にはいっさい応じず激しい攻撃を継続し、イスラエルのハマス幹部の殺害によって戦火はさらに拡大する危機を迎えています。

ところでパリオリンピックでは、戦争の当事国としてロシアは招待されてないにもかかわらずイスラエルは招待されており、IOCのダブルスタンダードが批判されていますが、8月6日に広島で開催される原爆慰霊平和式典でも同様のことが起こっています。

岸田文雄首相の地元である広島は、戦争当事国としてロシアを招待しない一方、なぜかイスラエルは招待。しかし長崎は、ロシアだけでなくイスラエルも平和祈念式典に招待しませんでした。

岸田首相同様、公明党の斎藤鉄夫国土交通大臣も広島市を地盤とする小選挙区から選出されており、創価学会は斎藤氏を小選挙区から擁立した際、国土浄化を意味する「三変土(さんぺんど)田(でん)」を強調しましたが、反戦平和を宗教的理念や党是とする創価学会と公明党は、このダブルスタンダードをどう考えているのでしょうか。

小誌は社会・宗教と政治に関する事実と真実を追究し続けます。

特集/公明党支援の意義を確認し各種選挙に備える創価の意図

選挙は「信心」で勝て!と言う創価学会・公明党の本性

段 勲

ジャーナリスト

 

「同じ穴のむじな」と見られたくない

パー券問題に端を発し、政治資金規正法が改定される渦中に、自民党議員たちの間から、「政治はカネがかかる」という声が流れてきた。追って、「民主主義にはどうしてもコストがかかる」(麻生太郎副総裁)と、全く根拠のない発言もかぶさる。これら身勝手な政治家の口上に、果たして何パーセントの国民が「いいね」と評価しただろうか。

夜な夜な、超高級ホテルのバーで酒を飲み、庶民が生涯味わえない一流の料亭で、ネクタイゆるめて会食を楽しむ。他方、議員の当選を支える秘書たちは地元選挙区を回り、無差別に香典をバラまく。これではカネもかかるだろう。しかも、自らの議員報酬から工面するポケットマネーならまだしも、源は国民の税金である。

一方、日本維新の会が「身を切る改革」をスローガンにした。身のどこを切っているのか。米国のケネディ元大統領が、「最も尊敬する日本人」として山形米沢藩の9代目藩主・上杉鷹山の名前を挙げたことがある。賄賂を蛇蝎し、自ら年間の生活費を6~7割減らし、「民の父母」として藩の財政を立て直した。私腹を肥やすことは上手でも、鷹山のように国民の父母になる政治家が、現今の政権与党には見当たらない。それなら、政治に直接にはカネのかからない「信心」ならどうだろうか――。

政権の一翼を担う公明党が最近、「公明党結党60年記念号」と謳う50ページほどの小冊子を発行した。公明党の支持母体、創価学会員は1冊100円という同冊子を知人、友人などの有権者に配布している。近づく衆参大型選挙の勝利に向けた党の宣伝誌だ。

ページを開くと、「結党60年―公明党こそ希望の存在」のタイトルで、西田亮介・日本大学教授、山口那津男・公明党代表、学会員で俳優の柴田理恵の3氏が笑顔で対談。「政治の信頼を取り戻す」「政治改革は“政治家”改革から」「皆が元気に暮らせる社会つくる」等をテーマに意見を交換している。自民党の議員や野党の訴えと遜色のない中身だ。

ただ、柴田理恵が、

「公明党まで改革に後ろ向きだとする報道もあり、メディアは偏見が過ぎると思います。公明党は自ら起こした問題でもないのに、『政治とカネ』の問題を解決し、政治の信頼を取り戻そうと努力している側です」

と、不満の言葉を述べていた。でも公明党も自民党と連立を組む政権与党の同じ穴の“むじな”であることが、すっぽりと抜け落ちていた。さらに同冊子は、「公明党が日本の政治を変えた」と自己宣伝し、次期、小選挙区に立候補予定の11人を紹介している。埼玉14区から立候補予定されている石井啓一幹事長を筆頭に、維新の攻勢が著しい大阪圏内(兵庫2人を含む6人)でも、党議員候補者たち当選の危機的状況下にあり、創価学会・公明党は必死の構えなのだ。

 

公明党支援の意義は“立正安国の挑戦”

創価学会は選挙ごとに、「会員が政治活動をして何が悪い。憲法に定めた政教分離の原則に違反していない」と、胸を張る。確かにそうで、特定の宗教に心酔する信者(会員)たちが支持、支援したい政党のために、衷心から選挙活動に参加することは禁じられていない。それでも学会の機関紙「聖教新聞」や、最高幹部の発言を見聞していると、政教分離の原則からほど遠い。要するに極めてグレーなのだ。

例えば「聖教新聞」6月29日付に、「総県長会議」に登壇した原田稔会長の指導(要旨)が掲載されていた。

総県長会議とは、都道府県の男女最高幹部を一同に集め、学会組織の活動指針を伝える重要な行事だ。席上、トップの原田会長はこう指導している。少し長くなるが紹介してみよう。

見出しは、「立正安国の挑戦は功徳、和楽、歓喜に」である。略称「安国論」は、学会が教義の根本にする日蓮(同会では日蓮大聖人と呼称)が1260年に著した遺文(御書)の一つである。

「ここで公明党結党60周年に当たり、改めて支援活動の意義を再確認したい。創価学会の根本目的は、どこまでも民衆の幸福の実現である。そのために政治・経済・教育・平和運動など、あらゆる活動を展開している。……かつて池田先生は、戸田先生の指導を踏まえて、立正安国に挑戦する三つの意義を教えてくださいました」

とし、以下の3点を力説している。指導全体の文脈からして、「立正安国の挑戦」とは、公明党への選挙支援に他ならない。

第1は、「多くの人々と仏縁を結んで、自他共に功徳を広げる」である。分かりやすく言うと、公明党の選挙活動は即、現世利益を広げることで、

「立正安国の行進に、多くの人を連ねようと祈り、動くことで、自他共に功徳が広がる。また社会に寄与する活動だからこそ、理解と共感が深まる。私たちは、どこまでも信心を根本に、『功徳』の体験を積み重ねてまいりたい」

と、訴えているのだ。平たく言うと、信心を根本に選挙活動に励もうということ。パンフにあったように、公明党は結党60年である。衆参選挙や地方選挙の支援活動に、60年間も心血を注いできた学会員は、相応の功徳を積み重ねていることになる。

「第2は、戦いを通して組織の隅々まで力を漲らせ、異体同心のスクラムを強くする……多くの方に『広布の主体者』の自覚を促すことで、異体同心にスクラムは強くなる。徹底して一人を励まし、皆が喜び勇んで信心に励める」

見方によっては、宗教組織の結束に、選挙活動を利用しているような構図だ。

「第3は、各人が、『自分らしく悔いなく戦い切った』と歴史を残し、勝利の喜びをつかめる」

と、会員に説いていた。

 

選挙活動は、学会組織を高揚することが目的

学会の草創期、会員を急増させていた時代に、会員たちは目で確認でき、組織の発展を自覚させる事象がたくさんあった。月々の折伏(布教)世帯数を競わせて「聖教新聞」に成果を公表し、あるいは数万人を集めた文化祭、体育祭の開催。または、毎月、登山(総本山参拝)数の増減を争わせるなど、周囲にはいつも元気な“同志”であふれ、会員が高揚を体感できる組織活動が日常茶飯事だった。

しかし現在、組織首脳たちから会員数が増えているとか、「聖教新聞」の部数が増加したと報告されても実体感が少しもわかない。歓喜する体験がないのである。残されているのは、選挙で票数を獲得する組織活動ぐらいになった。

7月15日付「聖教新聞」、創立100周年へ 新時代の暁鐘」ぺージに、「清潔な政治を目指す公明党」の見出しで、こんな記事もあった。

「西方(青年部長)匿名性が高かった政治資金パーティー購入者の公開基準も、(公明党は)20万円超から寄付と同じ5万円超に引き下げ、口座振り込みに限定しています。九州大学の薮野祐三名誉教授は『清潔な政治をめざす公明党らしい主張が実った結果』と指摘しています」

と、公明党を礼賛し、原田稔会長は、

「公明党は一丸になって、『皆が希望を持って、元気になれる社会』をつくってもらいたい」

とアピールし、学会員に、公明党を支援する重要性をこれでもかと喧伝している。

「信心」と「選挙」の係わりについて、原田稔会長の格好な指導をもう1点紹介しよう。2カ月前の5月下旬、沖縄県議選(6月16日投開票)があった。投票日半月前に沖縄(沖縄市、浦添市、那覇市=公明党候補者の選挙区)を訪ねた原田会長は、会員にこう檄を飛ばしている。

「『信心で勝つ!』と思い定めれば、勇気と智慧と無敵の突破口がほとばしります。沖縄の皆さんは不撓不屈の闘魂を燃え上がらせ、楽土建設へまい進しています。私たち共々に、対話拡大に打って出ていきましょう」

選挙活動への挑戦は功徳や福徳があり、広布をも推進させるという。国税で賄う選挙は伝統仏教信徒やキリスト教、無神論者なども含む不特定多数の国民が、政治に直接関与できる唯一のチャンスである。それを目下問題の統一教会のように、特定宗教の「広布」(布教活動)や組織維持のために、利用されることは適わない。

 

段 勲(だん・いさお)フリージャーナリスト。1947年生まれ。週刊誌記者を経て、創価学会・公明党など宗教問題をはじめ社会・世相、医学・健康等をレポート。『私はこうしてがんを克服した』(日本能率協会)『宗教か詐欺か』『創価学会インタナショナルの実像』(共にリム出版)『定ときみ江 「差別の病」を生きる』(九天社)『鍵師の仕事』『高額懸賞金付き!未解決凶悪事件ファイル』(共に小学館文庫)『「人間革命」の黄昏 創価学会に踊った男の人生』(花伝社)など著書多数。

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

  • 創立95周年の立正安国の戦い(衆院選・参院選・東京都議選)を強調

・7月27日付『聖教新聞』「学会創立95周年へ 師恩に報いる勝利の旗を」

「全国最高協議会が25、26の両日、総本部の学会別館で開かれた。(原田会長は)リーダーは自らが法のため、社会のために尽くし抜く広布の闘将になることが師恩に報いる道であると心に決め、創立95周年への連続闘争に挑み、立正安国と広宣流布の勝利の旗を断じて打ち立てようと呼びかけた」

 

※創価学会が年内にも行われる可能性がある衆院総選挙と、来年夏に予定されている参院選・東京都議選を視野に入れ選挙闘争のボルテージを上げている。

7月25・26の両日、創価学会総本部で開催の全国最高協議会で原田稔会長は、来年が学会創立95周年であることを強調、2030年の創立100年を展望しつつ、幹部・活動家が「闘将」となって「創立95周年への連続闘争」、すなわち衆院選から参院選・都議選と続く連続選挙の必勝を檄した。

この発言を前にした7月15日付『聖教新聞』掲載の座談会記事では、「このほど、公明党結党60年を記念する『公明ハンドブック2024』が発刊されました。かばんから取り出しやすいコンパクトサイズで、イラストやグラフが多く、見やすい内容となっています」「『公明党が日本の政治を変えた』と題する特集では、教育や福祉、医療、防災・減災など幅広い分野で公明党が積み重ねてきた実績が、分かり易く紹介されていますね」などと、公明党が座談会記事掲載当日の7月15日に1部100円で発刊・販売をはじめた「公明ハンドブック2024」を大絶賛し、活用を促している。仮に幹部・活動家100万人が1部購入すれば1億円の売り上げだが、当然、友人・知人にも渡そうということになるから一人で5部、10部と買うだろう。5部なら5億円、10部なら10億円になるのだからいい商売である。

その内容は座談会でも語られているように、公明党の実績アピールと来たる衆院選に立てる候補者案内。特に激戦・苦戦が予想される小選挙区候補者が大きく取り上げられており、文字通りの衆院選事前パンフである。

以後、『聖教新聞』には、公明党が小選挙区に候補を立てる地域に檄を飛ばす座談会記事が相次いで掲載されている。以下に紹介しよう。

 

・7月25日付『聖教新聞』「師弟勝利の堅塁城 愛知 新たな歓喜の『この道』を勇進」

「津田(女性部副書記長)『堅塁・中部』の正義の走者たちは、師弟勝利の魂を受け継ぎ、時代に即応した新たな創価の民衆運動を走り広げています。

笈入(総愛知長)1967年8月、池田先生は、岐阜・高山から名古屋へ向かう途中犬山城のふもとに立ち寄り、“師弟の道に徹し、大福運を”と、地元の壮年部を激励されました。愛知堅塁総県の同志にとって忘れ得ぬ歴史です。

原田(会長)今こそ、『仏法と申すは道理なり。道理と申すは主に勝つものなり』の御聖訓のままに、堅塁城に師弟勝利の旗を打ち立てる時です。一層、力強く、友情と励ましの拡大を進めましょう。

 

※次期衆院選で公明党は小選挙区愛知16区から新人の犬飼明佳候補を擁立する。座談会記事では、選挙区となる犬山・小牧などが取り上げられ、「破邪顕正の魂で対話拡大」とのハッパがかけられている。

・7月29日付『聖教新聞』「埼玉『鉄桶の団結』の凱歌を!」

「姫野(総埼玉女性部長)『“私の勝利”が“埼玉の勝利”』 “埼玉の勝利”が“師弟の勝利” 共々に「鉄桶の団結」の凱歌を!!』をスローガンに掲げる埼玉は今、新たな立正安国の歴史を勝ち開こうと全力を尽くしています」

「永石(女性部長)『鉄桶の埼玉』の広宣流布、立正安国の先頭を走るのは、草加市、八潮市、三郷市からなる三郷県の友ですね」

「安倍(総埼玉長)『愛する埼玉』に、新たな『広布の旗』『勝利の旗』を翻すのが私たちの使命です。県歌にある通り、『勇み勇みて 手をつなぎ』、『獅子』の心で前進し、必ずや永遠の師匠・池田先生にお応えしてまいります!」

※座談会で「立正安国の先頭を走る」と表記されている草加・八潮・三郷は、衆院小選挙区埼玉14区を構成する。同小選挙区からは公明党の石井啓一幹事長が初めて小選挙区から出馬する。当選すれば山口那津男代表に代わっての代表就任も取り沙汰されるが、厳しい選挙となることは否定できない。そのためだろう座談会記事では、昨年11月に死去した池田大作三代会長が、闘病中の2019年8月4日に埼玉研修道場を訪問していたことを紹介。、その際、「埼玉といえば『鉄桶の団結』である。わが同志は、このモットーを掲げて半世紀、いつも一丸となって正義の大行進を続けてきた」と語ったとして、必勝を檄している。

・8月1日付『聖教新聞』「難攻不落の広布の大城 総東京」「立正安国の永遠なる基盤を」

「永石 東京の『不屈の王者・足立』も、地域広布の範を示し、連続勝利の凱歌を轟かせています」

「原田 『大難来りなば、強盛の信心いよいよ悦びをなすべし』と、創価の師弟は幾多の障魔を勝ち超えてきました。先生は、『難攻不落の広布の大東京城を築き上げてこそ、立正安国の永遠なる基盤が築かれる』とつづられました。一人一人が、広布の祈りと実践を貫き、『喜び勝たなん 力あり』と、誇り高き本陣の大使命を果たそうではありませんか」

 

※東京を「立正安国の永遠なる基盤」とすべく戦えとアピールする座談会記事で取り上げられている足立と荒川は、岡本三成候補が立候補する衆院小選挙区東京29区を構成する。創価大卒でいわゆるハゲタカなどと呼ばれるアメリカのゴールドマンサックス出身の岡本候補は、貸金業法違反で有罪となり政界を去ったやはり創価大OBの遠山清彦元公明党代議士とともに若手のホープと位置づけられ、大田昭宏元代表の地盤を継いだ。しかし小選挙区の地域割り変更で厳しい選挙が予想される。それだけに創価学会も必死なのだ。

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