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11月号目次

11月号目次

 

閻魔帳

岸田自公政権は、安倍・菅政権のみそぎを済ませたのか/段 勲

 

特集/政治的無関心が許す創価&自公政権の跳梁跋扈

長期的衰退を糊塗するお寒い“大勝利”アピール/乙骨正生

自公選挙協力の“底流”を示唆する池田大作と小針歴二の密接な関係/佐高 信

「相変わらずの低投票率」でまたもや命拾いした「公明党=創価学会」の10・31総選挙/古川利明

700万票復帰の裏に潜むハルマゲドン/溝口 敦

 

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「公明党と創価学会」を考える(第25回)

公明党の自立路線時代(11)/平野貞夫

ナニワの虫眼鏡(第29回)

衆院選前から大混乱 大阪で起こった「柳本の乱」/吉富有治

新・現代の眼(第62回)

玉の盃、底無きがごとし/菅野 完

ヨーロッパ・カルト事情(282)

カトリック教会における性暴力/広岡裕児

 

執筆者紹介 編集後記

 

 

編集後記から

それでも投票に行かないのか……。

10月31日投開票で行われた衆議院総選挙の投票率が、前々回・前回に次ぐ戦後3番目に低い55・93パーセントだったことが判明した時に感じた率直な思いです。

選挙結果は、自民党が15議席を減らしたものの261議席の絶対安定多数を獲得。公明党も低投票率と自民党との強力な選挙協力のおかげで比例区票で700万票台を回復し、3議席増の32議席と、両党合わせて293議席となったことから、自公連立政権が継続することとなりました。

その一方で、野党共通政策に合意し共闘を組んだ立憲民主・共産・社民・れいわ新選組は、れいわこそ3議席と善戦したものの、立民・共産は議席を減らし、与党でも野党でもない「ゆ(癒)党」と揶揄される日本維新の会が約4倍増の41議席と躍進しました。

この結果を見て、今年9月1日に亡くなった経済評論家の内橋克人氏の箴言を思い出しました。内橋氏は、常に社会的弱者の視点から、政治・経済・社会の矛盾や問題に鋭く切り込み、弱肉強食の新自由主義や市場原理主義を厳しく批判する評論家であり、貧困と格差を拡大した自公政権には批判的でした。

その内橋氏が2012年1月8日付『朝日新聞』掲載の「再生 日本政治」と題するインタビューで、日本社会に「貧困マジョリティー」が生まれていることに警鐘を鳴らしつつ、こんな発言をしています。

「米国はじめ国内外の最強の秩序形成者に抵抗する力もなく、生活に追われて政治的な難題に真正面から対峙するゆとりもない。同時に、精神のバランスを維持するために『うっぷん晴らし政治』を渇望する。政治の混乱を面白がり、自虐的に、極めて反射的に、表面的に評価して、選挙権を行使する。大阪市の橋下徹市長の『ハシズム現象』も貧困マジョリティーの心情的瞬発力に支えられている面が大きい」「『政治のリーダーシップ不足』と言われるが、民主政治を基盤とする国でのヒーロー待望論ほど異常なものはない。日本古来の『頂点同調主義』に加え、異議を唱える者を排除する『熱狂的等質化現象』が一体となる。『うっぷん晴らし政治』の渇望を満たそうとすれば、1930年代の政治が繰り返される。グローバリズムが生み出した『貧困ファシズム』の培地となりかねない」

内橋氏の指摘する「頂点同調主義」と、「熱狂的等質化現象」が融合した「貧困ファシズム」の危険性は、すでに創価学会に顕著なのでは。今後も日本の議会制民主主義を守るためにも、小誌は宗教と社会・宗教と政治の事実と真実を追究・報道し続けます。

特集/政治的無関心が許す創価&自公政権の跳梁跋扈

 

「相変わらずの低投票率」でまたもや命拾いした「公明党=創価学会」の10・31総選挙

古川利明

ジャーナリスト

 

「消費税減税」への半端な姿勢が立憲の敗因

「投げ出し退陣」した前任の菅義偉に代わり、首相に就いたばかりの岸田文雄によって、任期満了日のわずか1週間前に衆院が解散されたことに伴う総選挙は、戦後では最短の17日後の10月31日に投開票され、各党の獲得議席は自民261(276)、立民96(109)、維新41(11)、公明32(29)、国民11(8)、共産10(12)、無所属10(12)、れいわ3(1)、社民1(1)だった(カッコ内は公示前の議席数)。結果を見る限りでは、自民党は公示前より15議席落としたものの、すべての委員会で委員長ポストが独占できる絶対安定多数の261議席をクリアし、連立を組む公明党(=創価学会)も、3議席増の32議席と、ほぼ現状維持に終わった。

今回も特筆すべきは投票率で、「55・93%」と過去最低だった14年の52・66%、2番目に低かった前回17年の53・68%に続いて、過去3番目に低かった。選挙は、何よりまず、「投票率」で、それに「風向きとその強さ」を加味しながら、俗に言う固定客である基礎票に、イチゲンの客である無党派層の票を積み重ねることで、各陣営は票読みを行うが、それで言うと、今回はじつに読みづらい選挙だった。

衆院選においては、現状だと、野党が自公を過半数割れに追い込み、政権交代に持っていくには、政権批判票を取り込む形で、イチゲンの客たる無党派層が決起することで、投票率が60%を超える必要がある。つまり、「与党の勝因」というよりは、「弱過ぎた野党の敗因」だが、とりわけ、公示前より13議席も減らした野党第一党である立憲民主党に「何が何でも自公をブッ壊して、政権交代を果たす」との熱気というか、オーラが全く感じられなかった。今、喫緊の課題は「このコロナ禍で解雇を始めとして、経済的困窮に陥ってる状況を何とか打開する」であり、それには、格差の拡大による貧困層増大の根本要因である「消費税」に手をつけなければ、「1億総中流社会を取り戻す」と言ったところで、所詮、絵に描いた餅でしかない。

確かに、立民は今回、共産党などと選挙協力を行うことで、全小選挙区の4分の3に当たる217で候補者の一本化を行いながら、214人を擁立し、見た目には「政権交代の受け皿」にはなり得たとは言うが、しかし、自民は今回、小選挙区289のうち、277で候補者を立てている。09年の総選挙で当時の民主党が政権を奪取したときのように、立民はピンで衆院の単独過半数(233)を取るだけの力量を示さなければだが、まだまだ、そこまで戻っていない。それと、立民は選挙戦で「消費税率を少なくとも3~5年程度、5%に引き下げる」と訴えてはいたが、決して前面には出しておらず、有権者の目には「選挙協力を行った共産党に付き合っている」という程度にしか映らなかった。それで言うと「消費税廃止」の一点突破で、3議席を獲得したれいわ新選組とは対照的で、ゆえに、立民は「消費税減税の是非」を最大争点化しなかったことが、致命的な敗因である。

 

低投票率でみるみる姿を現した「池の杭」

さて、そこで、公明党(=創価学会)である。

結論から言うと、事前に「苦戦」が伝えられながらも、史上2番目の低投票率(42・39%)によって何とか命拾いし、奇跡的にも全員当選(23議席)を果たした7月の東京都議選と同様、今度の衆院選でも、その史上3番目の低投票率のおかげで、「池の杭」たる学会票が弾き出した結果は、公示前より3議席増の32議席(小選挙区9、比例23)だった。まずは、集票力のバロメーターである比例だが、前回17年は697万票と、信濃町が「生命線」としている700万票を割り込み、19年7月の参院選では653万票と、「選挙のたびに激減する状況」が続いていたため、メンツに賭けて「700万票台回復」が至上命題だった。で、投票箱の蓋を開けてみると、今回は711万票と、何とか、持ち直したため、もし、公明党の創立者であり、創価学会名誉会長の池田大作が健在であれば、会長の原田稔は、池田から大目玉を食らわずに済んだだろう。

その理由として、集票目標を「800万票」と敢えて高く設定したことである。何事もそうだが、コトを遂行するにあたって、最初から目標を低くしていたら、ホンネでは「『政権交代』でなく、『与野党伯仲状態』に変えるだけで十分」だった立民の例を見れば分かるように、「それ以下の結果」しか出せない。それと、選挙戦では、票にならない憲法改正や外交・安全保障などはほとんどスルーし、例の「10万円相当の給付」を始めとする、現世利益の飴玉を有権者にバラ撒く主張に最も力を入れていた。その点、立民や共産党は、その「消費税5%減税」の主張よりも、「ジェンダー平等の実現」といった、要は「お花畑でポエムを詠む」類のキレイゴトの訴えにも力を入れていて、それで言うと、信濃町の方が「このコロナ禍で痛めつけられた有権者に何を訴えかけるのか」という切り込みにおいて、まだ、切実度があったと言えるだろう。

とはいえ、今回は「投票率の上昇」が予想されたことから、彼らの危機感は凄まじく、公明新聞(10月18日付)では、小選挙区で擁立した9人のうち、最も苦戦が予想された稲津久(北海道10区)を1面トップで「危うし」と派手に書き立てていた。が、あに図らんや、稲津の得票数は9万6843票で、比例重複により復活当選した次点の立民の神谷裕に1万4千票も差をつけた。しかし、よくよく見ると、北海道は投票率が前回より1・51ポイントも下がって58・79%で、立民が政権批判票の受け皿になり得ていなかったこととも相まって、まさに「池の杭」がみるみると姿を現したと言える。

 

新聞が加担した「消費税争点化の回避」

これまで公明党の国政選挙での比例計の最高得票数は、05年衆院選の898万票で、比例で23、小選挙区での8と合わせて獲得議席は31で(当時の定数は480)、今回の獲得32議席を下回っているのも不思議だが、根本要因は、時の首相だった小泉純一郎が「郵政民営化、是か非か、解散で信を問いたい」と、発狂さながらに総選挙になだれ込んだことで異様に盛り上がり、投票率が67・51%にまで上昇したためである。衆参いずれも比例は、ドント方式によって議席を振り分けるため、投票率や他党の獲得票数とのバランス、すなわち、得票率で決まる。投票率が上がれば、基本的に他党の票数も増えるため、05年は今回より180万票余りも公明党は上乗せしていながら、獲得議席ではほとんど変わらないという珍妙な現象も、学会票がまさに「投票率」という名の水面で浮沈する「池の杭」であることの証左である。

今回、れいわは比例計で社民党の倍以上の221万票を獲得し、国民の259万票に肉薄する221万票で、うち、比例東海で27万票を取り、本来であれば1議席が与えられるはずだった。ところが、小選挙区と重複していたれいわの候補者の得票率が10%に達していなかったため、公選法の規定により当選できず、次点だった公明党の比例東海(獲得78万票)で単独3位だった中川康洋に当選が転がり込むというオマケも付いた。

そこで、これは公明党(=創価学会)というより、結果的には、与党である自公の勝因になるが、れいわが最も果敢に斬り込んだ、最大争点だったはずの「消費税減税の是非」について、マスメディアの中でも、とりわけ、新聞がまた完全に無視を決め込んだことである。例えば、朝日新聞(10月21日付朝刊)の世論調査では、「投票先を決める際に最も重視するテーマ」から「消費税」を外す一方で、これについては別に「消費税をどのようにするのがよいと思いますか。10%のまま維持する方がよいと思いますか。一時的にも引き下げる方がよいと思いますか」と尋ねた結果を受け、「消費税『10%維持』57%」の見出しを大きく掲げていたが、まさしく、誘導尋問である。

じつを言うと、新聞は89年の消費税導入時から、こぞって反対を主張し、特に朝日はその急先鋒だった。ゆえに、民主党政権の首相だった菅直人を議長とする検討会議に、内閣府と財務省による2~3%ずつ段階的に引き上げる案が提出された際、同紙(11年5月31日付朝刊)は「消費税は、所得の低い人ほど負担が重いという『逆進性』がある」と、記事の中でちゃんと指摘していた。分水嶺は、15年12月に与党税調が新年度の税制改正大綱を取りまとめた際、「新聞にも軽減税率を適用する」と明記したことで、これで新聞は雪崩を打って消費税増税賛成に舵を切ったのだが、この言い出しっぺが公明党(=創価学会)だったのである。それで言えば、新聞は今回、「消費税の争点化回避」に加担したことで、「自公を勝たせてやった」わけで、呆れるよりほかない。いずれにせよ、暗黒の自公体制は今後も続くため、そのキャスティングボートを握って、キモとなっている「公明党=創価学会」に対する監視を、我々心あるジャーナリズムはさらに強める必要がある。(文中・敬称略)

 

古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』最新刊『「自民党“公明派”」20年目の大失敗』(いずれも第三書館刊)など著書多数。

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

  • 衆院総選挙――小選挙区重点区に見る宗教的扇動

①北海道10区(空知総合振興局・留萌振興局管内)―稲津久候補

・10月23日付『聖教新聞』「三代城に大勝旗を高々と 北海道大空知県、札幌5総県・太平洋総県 原田会長と共に請願の代表幹部会」

「日下北海道長、小松同女性部長が、執念と勢いで障魔を敢然と打ち破り、立正安国の大誓願を果たしゆこうと呼び掛けた。原田会長は、逆境をはねのける要諦は『勇気』の二字であると力説。『大悪は大善の来るべき瑞相なり』を拝しつつ、苦難の時こそ『今が広宣流布の絶好機!』と確信し、勇敢なる信心で三代城・北海道の底力を満天下に示そうと望んだ」

②東京12区(北区全域・足立区西部・豊島区東部・板橋区北部)―岡本三成候補

・10月27日付『聖教新聞』「本陣東京の底力を 原田会長が出席 板橋の壮年・男子・学生部大会」

「異体同心の団結で、今こそ広布の本陣・東京の底力を!――板橋総区の壮年・男子・学生部合同の大会が26日、板橋文化会館で意気高く開催された」「橋元総区長は相手の心を揺さぶる大誠実の声を一層強く放ち、今再びの東京凱歌を満天下に示そうと訴えた。原田会長は、立正安国の途上にあって逆境をはね返す勢いを生む鍵は、あらゆる障魔に対して攻めの姿勢を貫く“男の戦い”であると強調。強盛な祈りと執念の行動で、師恩報いる自分史上最高の拡大の歴史をと呼び掛けた」

10月28日付『聖教新聞』「感激の同志に恐れなし 原田会長が激励 東京北総区の支部長会」

「幾多の激闘を勝ち越えてきた感激の同志に恐れなし!――東京・北総区の支部長・女性部長会が27日、北平和会館で開催された。

萩本総東京長が、相手の心を揺り動かす対話に、自信満々に挑戦していこうと力説。柏原総区長、田口同女性部長が、題目の音声を響かせながら攻めの姿勢を貫き、縁する全ての人を味方にする正義の言論戦をと訴えた。

原田会長は、『譬えば鎌倉より京へは十二日の道なり、それを十一日余り歩をはこびて今一日に成りて歩をさしをきては何として都の月をば詠め候べき』を拝し、油断や慢心を打ち破る強き祈りと行動の重要性を強調。今こそ鉄壁の団結で勇気の拡大に徹し抜き、断じて立正安国の大道を開こうと呼び掛けた」

③広島3区(広島市安佐南区・安佐北区・安芸高田市・安芸太田町・北広島町)―斉藤鉄夫候補

10月25日付『聖教新聞』「燃え上がる開拓魂 原田会長が出席 広島戸田総県が大会」

「広島戸田総県の代表幹部会が24日、広島市の広島池田平和記念会館で開催された。」「友の心には“今こそ師弟直結の開拓魂で三変土田の歴史を!”との誓願の炎が燃え上がる。会合では、日高総県長、碓氷同女性部長が対話拡大に徹し抜き、新たな栄光の共戦譜をと力説」「塩出総広島長は、不屈の前進と拡大を貫き、広島の天地に民衆の凱歌をと訴えた。原田会長は、『なにの兵法よりも法華経の兵法をもちひ給うべし』を拝し、どのような困難の壁が立ちはだかろうとも、強盛な信心、団結、勇気があれば必ず乗り越えられると強調。“師弟勝利のバトンを受け継ぐのは我ら!”との誓いを胸に、断じて戦い抜こうと語った」

 

※東京都議選直後の本部幹部会で原田稔会長は、創価学会の選挙闘争を創価学会の「永遠性」を確立するための重要な宗教活動、「仏」と「魔」との陣取り合戦と表明しただけに、衆院選で公明党が最重点区とする小選挙区北海道10区・東京12区・広島3区を組織範囲とする創価学会の会合での発言も、宗教的アジテーションに満ち満ちていた。

北海道10区を組織範囲とする空知県等の会合では、「減劫御書」と言われる日蓮遺文の「大悪は大善の来るべき瑞相なり」を引用し、厳しい政治状況は勝利の前提であるかのように強調して士気を鼓舞。北区・板橋区などの東京12区の会合では、「新池御書」と呼称される日蓮遺文を引いているが、この「鎌倉より京へは十二日の道なり……云々」との遺文を創価学会は、選挙の度に常用している。例えば2012年12月16日投開票の衆院総選挙では、投票日直前の13日付『聖教新聞』掲載の池田名誉会長の「同志への指針」でこの遺文を取り上げ、「あの『大阪の戦い(注・1956年参院選のこと)』で、関西の不二の同志と命に刻んだ御文である。いかなる戦いも、『勝つ』と決めて、最後の最後まで進み抜いた方が勝つ。いざという時に戦い切れば、永遠に崩れない常楽我浄の軌道を開くことができる。題目の師子吼を響かせながら、今日一日、断固として勇猛精進を!」と、最後の檄を飛ばしていた。今回、やはり投票日3日前にこの遺文を引用した原田会長の意図も同様だろう。

そして広島3区の会合では、法華経の見宝塔品に説かれる「三変土田」の原理と、「四条金吾殿御返事(法華経兵法事)」なる遺文を引用し、勝利を檄している。「三変土田」とは、法華経を説いた釈尊が、三度にわたって国土を浄化することで、19年参院選での悪質な買収で有罪となった河井克行元法相の選挙区という自民党の牙城を、公明党の斉藤鉄夫国交相が当選して奪い取ることが、金権選挙区を浄化する「三変土田」に通ずるといいたいのだろう。手前勝手な解釈で宗教的正当性を強調しているのだ。

そして「なにの兵法よりも……云々」の遺文も、創価学会が各種選挙のたびに使用する常套句であり、先述の56年参院選大阪選挙区での池田氏の闘争をメインテーマとする小説『人間革命』第10巻の「あらすじ」にも、次のようにこの遺文は引用されている。

「昭和31年初頭、伸一は一人、深い決意を秘めて大阪に向かう。学会は7月の参院選に推薦候補6人を決定し、大阪地方区は春木征一郎が立つことになった。大阪の学会世帯数は少なく、常識的には敗北必至の情勢であった。戸田は、その最高責任者として、伸一を派遣したのである。『なにの兵法よりも法華経の兵法をもちひ給うべし』――伸一には、『信心で勝つ』との強い一念があった。強盛な祈りと最高の作戦・行動に徹した彼の激闘は、関西に『不可能を可能にする』勢いを生む。そして5月には折伏11,111世帯の不滅の金字塔を打ち立て、参院選でも奇跡的な当選を実現させた。これが“常勝関西”の源流となる」

この遺文で「まさかが実現」したという「大阪の戦い」の再来を期そうとする創価学会。そこでは日蓮遺文をご都合主義的に解釈した宗教的レトリックが恒常的にくり返されているのである。

 

  • 「永遠の師匠」の必勝祈願

・10月29日付『聖教新聞』「池田先生ご夫妻『創立の月』を前に恩師記念会館で勤行 全同志の福徳と勝利を祈念」

「池田大作先生ご夫妻は『創立の月』を前にした28日、総本部の創価学会恩師記念会館を訪れ、勤行・唱題した。今年の11月は、三代の会長の誓願であり学会の使命である世界広宣流布へ、池田先生が本格的な反転攻勢の激励行を開始して40周年、宗門から“魂の独立”を果たして30周年の意義ある時を刻む。先生ご夫妻は、『大いなる広布の山』を越えゆかんと力走する全国・全世界の同志の福徳と健康、大勝利を心から祈念した」

 

※今夏7月の東京都議選の際も創価学会は、投票日2日前に池田大作夫妻が総本部・恩師記念会館を訪問し、勤行・唱題して「全国の同志の勝利と福徳と健康を心から祈念した」と、『聖教新聞』(7月3日付)で報道。今回の衆院選では、「勝負の3日間」と位置づける投票日3日前の10月28日に池田夫妻が「大勝利」を祈念して勤行・唱題したと報道した。

相変わらずの「困った時の神頼み」ならぬ「池田頼み」。御輿である「永遠の師匠」(会憲)を担ぎ出すことで、幹部・活動家の尻を叩き、「立正安国」の「法戦」と位置づける選挙闘争の最後のムチを入れたのである。すでに池田氏が大衆の前から姿を消して11年余。それでも創価学会は“十年一日”の如くに使い古された手法を繰り返し続ける。この構図は池田氏が死去するまで続くことだろう。

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