1月号目次
閻魔帳
平成の終わりに軍拡推し進める自公政権/乙骨正生
特集/民主政治・議会制民主主義の破壊進める安倍自公・創価の罪
低水準な政治招いた“凡庸な悪”/有田芳生
安倍による日本の民主主義の「死」 先導・協力する公明・創価学会の大罪/川﨑泰資
暴走する安倍ファッショ政権と片棒を担ぐ学会流「現世利益」/柿田睦夫
議会主義・民主主義を破壊してきた自公政権/段 勲
トピックス
統一地方選を前に問われる公明党議員の資質
老人会での不正経理が露見した公明党元東村山市議会副議長/本誌編集部
トピックス
アフリカへ進出する統一教会
国家元首や自民党国会議員の関与も/鈴木エイト
- 連載
信濃町探偵団──創価学会最新動向
新・現代の眼(第29回)
名正しからざれば則ち言したがわず/菅野 完
ヨーロッパ・カルト事情(249)
「黄色いベスト」と日の丸/広岡裕児
執筆者紹介 編集後記
編集後記から
平成最後の年が明けました。
今年は4月30日で今上天皇が退位し、5月1日に皇太子が新天皇に即位することから、4月までが平成、5月からが新元号となります。そのため4月の統一地方選挙は平成時代に、7月の参院選は新元号の時代に実施となります。
二つの元号にまたがる選挙に早くも眦(まなじり)を決して臨むべく組織を引き締めている創価学会ですが、新年勤行会に出席した学会員によれば、会合は盛り上がらず低調であり、創価学会の衰退が顕著に見えるものだったようです。
というのも、創価学会の新年勤行会は、かつては三が日にわたって9回から12回程度開かれていたようですが、いまでは元日と2日、なかには元日しか開催されない地域もあるとのこと。しかも参加者は高齢者ばかりで、青年部は数えるほど。創価学会の少子高齢化のスピードは世間一般のそれを大きく上回っていると見られています。
そうした厳しい状況下であるにもかかわらず、創価学会執行部は統一地方選・参院選の「完全勝利」「連続勝利」を目指して学会員の尻をたたき続けています。このうち「完全勝利」は全員当選を、「連続勝利」は統一・参院両選挙の勝利を意味しますが、そもそも統一地方選では確実に勝てる数しか候補を立てないのですから全員当選は当たり前のことでした。
ところが、前回(平成27年)・前々回(23年)と、2回連続で公明党=創価学会は全員当選を逃しています。それだけに今回は立候補者数をさらにしぼり、確実に全員当選を果たした上で、「完勝」だの「上げ潮」だのと士気を鼓舞して、参院選の選挙闘争になだれ込む腹積もりでいることでしょう。
その参院選では、選挙区候補の全員当選と、「広宣流布のバロメーター」である比例区票で、一昨年の衆院選の697万票を上回る700万票台への回復を図るつもりでしょうが、厳しい情勢です。ちなみに平成元年の参院選での公明党の比例区票は609万票ですが、現在の組織実態は当時を下回っていると見られることから、500万票台へ転落する可能性も少なくありません。
平成が幕を閉じるとともに、平成11年に成立した自公政権が終焉する、そんな場面を今年行われる二つの選挙を契機に、ぜひ目の当たりにしたいものです。
特集/民主政治・議会制民主主義の破壊進める安倍自公・創価の罪
低水準な政治招いた“凡庸な悪”
有田芳生
参議院議員 ジャーナリスト
明治維新以来最低の国会
2018年12月10日に臨時国会が終わった。自民党の参議院幹事長だった脇雅史氏(政界引退)はこの国会を「明治維新以来、最低の国会」と「サンデー毎日」(18年12月23日号)で酷評した。わたしもその渦中にいたひとりとして、安倍政権の傍若無人さを経験したが、新しい年の政治を判断するうえで、その歴史的意味についてデッサンしておきたい。脇氏のコメントを紹介する。
「明治維新以来、最低の国会だ。政治家が自分の言葉に責任を持たなくなり、言論の府が成り立っていない。森友・加計問題でも、責任を取ると言いながら責任を取らない安倍首相の姿勢が、その典型例だ」。
安倍首相のこの姿勢は年が改まったからといって変わるものではない。第2次安倍政権から6年間、国会で見る首相の姿は、巨大な権力を後ろ盾にして、どんどん傲慢さが表に現れるようになってきた。言葉を大切にする姿勢などまったくない。得意だと思っている分野で責められると異様に興奮し、「指をさすな」と質問者を攻撃しながら、総理席からヤジを飛ばしながら、自分で相手を指さす。まったくもって支離滅裂なのだ。いつまでこんな低水準な日本政治が続くのだろうか。
ネット上で匿名に隠れて他人を攻撃することが常態化したのも、とくに2012年12月に第2次安倍政権が生まれてからのことである。政権が自民党に戻る前の総選挙を思い出す。自民党本部前にやってきた安倍晋三総裁を歓呼の声で迎えたなかに、差別と煽動の団体である在特会の中心メンバーが多かった。政権交代とともに彼らの行動がエスカレートしたことは客観的な事実だ。東京の新大久保で、大阪の鶴橋で醜悪な差別デモが頻発したピークが2013年2月、3月のことである。歴史修正主義や排外主義を社会に拡大させた政治的環境が安倍政権の存在なのである。
いつの時代でも強権に従属して「主流派意識」が蔓延していく。時代精神といってもよい。そこに善良か邪悪であるとかの個性的差異は関係がない。いまやよく知られるようになった「悪の凡庸さ」(ハンナ・アーレント)だ。「世界最大の悪は、ごく平凡な人間が行う悪です」。ヘイトスピーチの現場に立ち、あるいは匿名性に隠れて攻撃してきた人物の「素顔」を垣間見るに、アーレントの指摘が時代を超えて正しいことを実感として確信する。「ごく平凡な人間が行う悪」が社会に広がっていくとき、選ばれた官僚や国会議員にも同質の意識が浸透していく。
この日本においてわたしたちはその姿を同時代に進行する事実としてこの眼で見てきた。日銀や最高裁まで安倍政権の首相官邸に「隷属」してきたのは、「恐怖による統治が増幅した」からだと雑誌「選択」(19年1月号)は喝破した。しかしこの恐怖支配は有権者には意外に知られていない。日銀でいえば、総裁、副総裁(2人)、政策委員会の審議委員6人の合計9人は内閣の任命により、国会での同意人事の対象だ。官僚の人事も内閣人事局でコントロールされている。いまや内閣の方針に疑問を呈したり、反対の意向を示したりすれば左遷されることを官僚たちはよく知っている。これが安倍政権6年の現実なのである。文科省の事務次官だった前川喜平氏が反旗を翻したとき、行動確認(尾行)の「成果」としてスキャンダルもどきが読売新聞にリークされ、それを政権に従属する「ジャーナリスト」や「評論家」たちが増幅したことを思いかえせばよい。
臨時国会で対決法案となった外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案の背景にも、官邸の強い意思が働いていた。わたしは参議院法務委員会の野党筆頭理事として与党と交渉してきた。本来ならどのように日本に外国人労働者を受け入れるかは、「対決法案」ではなく、与野党を超えて議論する課題であった。ところが「がらんどう」な法案であっては、外国人にとっても不幸な内容になってしまう。実際に政府が出してきた法案は、必要な措置は「法務省令」で決めるという内容だった。「省令」で内容を定めるということは、国会での議論を経ないということを意味している。質問をしても「検討中」の繰り返しだったのは、まともに示せる内容がないからだ。法務官僚が「準備不足」を嘆くのも無理のないことだった。何が何でも19年4月施行が官邸の至上命令だ。そのためには中身のない法案でも数をたのみに強行する。これが安倍政権の強権体質であり、そこに唯々諾々と従うだけの公明党の役割をも鮮明に浮き彫りにしたのが臨時国会だった。
亥年選挙を起点に政権交代を
新たに受け入れる外国人労働者を「特定技能一号」(14業種。相当程度の知識または経験)「特定技能二号」(「建設」と「造船・舶用工業」。熟練した技能)に分け、前者は在留期間は上限5年(延長不可)、家族の帯同は許されず、後者は在留期間の更新可能で家族の帯同は許されるという制度だ。この区別を見ても、あるいはすでに行われている技能実習制度の実態を見ても、外国人労働者問題の基礎には人権問題がある。臨時国会で問題となった重要な課題のひとつはここにあった。
細かい数字は省くが、技能実習生に対しては、長時間労働(朝7時から深夜11時というケースもある。しかも年末年始は休んでいると管理組合に報告されていても、実際には働かされているケースもある)、最低賃金以下、暴力、セクハラの横行である。しかも平成29年度までの8年間に、174人が亡くなっていることも法務省の調査で明らかになった。死因はくも膜下出血、心疾患など過労死が疑われるものから、自殺、溺死、凍死まである。厚労省は平成29年度に亡くなった技能実習生の5人が労災認定されたとするが、これが法務省の確認した14人の死者のなかに含まれるかどうかは、確認できていないとする。
技能実習制度の総括なくして新しい制度への移行はなし。なぜなら「特定技能一号」には技能実習生の約5割が移行するからである。じつは技能実習生も日本人と同程度以上の賃金を約束されている。しかし実態はそうではない。新たな制度で働く外国人労働者も日本人と同程度以上の賃金だというのだが、その保証は何もない。政府は18年12月25日に基本方針と分野別運用方針を閣議決定したが、その特徴をひとことであらわせば「机上の空論」だ。言葉はあれど具体策が曖昧なままだからである。
1月28日から6月まで平成時代の終焉(5月1日に改元)を通過する通常国会が開かれる。おそらく「外国人労働者問題国会」となることだろう。4月には統一地方選挙が行われ、7月には参議院選挙が控えている。どんな1年になるのだろうか。「亥年」には波乱が起きることが歴史に刻まれている。関東大震災(1923年)、伊勢湾台風(1959年)、阪神・淡路大震災(1995年)も亥年だった。じつは自然災害だけでなく、政治においても亥年には大きな変動が起きていた。
「亥年現象」という言葉がある。とくに自民党周辺で使われてきたのは、そこに痛い教訓があるからだ。12年に一度巡ってくる亥年には、3年ごとに行われる参議院選挙と4年ごとの統一地方選挙が3か月ほどの近さで行われる。地方選挙の前半戦は4月7日投票、後半戦は4月21日投票だ。参議院選挙は7月21日の投開票が予定されている。自治体議員と候補者は、みずからの生き残りをかけて選挙戦を闘う。したがって、さらなる選挙戦に取り組む余力がないため、いきおい低調な選挙になるというのだ。
たとえば亥年選挙だった1995年。自民党の獲得議席は、改選126議席の過半数を大幅に下回る46議席だった。その次の亥年選挙は2007年。野党である民主党が60人の当選を出し、自民党の37議席を大きく上回る勝利を果たした。民主党は非改選議席と合わせて109議席、自民党は83議席である。このときの首相が安倍晋三で、体調悪化で政権を放り出すことになる。しかもこの参議院選挙の結果が、2年後の政権交代を準備する。そこから再び12年。奇しくも安倍政権で亥年選挙を迎えることになった。
6年前の参議院選挙で自民党は改選34議席に対して65議席を獲得、大勝した。その議席を争う19年参議院選挙は、前回の「勝ちすぎ」に加えて亥年選挙という難関を抱えているのだ。さらに安倍政権が7年目に入り、世論の飽きも広がりつつある。それを生んでいるのが安倍首相に象徴的に現れている乱暴な議会運営である。それが「明治維新以来、最低の国会」と評されるゆえんであった。
これほどまでに劣化した国政であるにもかかわらず、安倍政権の支持率は、低下傾向にあるとはいえ、なぜ4割台を維持できているのだろうか。それは自民党内で次を狙う有力な候補が抑え込まれていることに加えて、野党が弱いからである。政権交代を託すにふさわしい構想を国民に示して日常活動を進める野党が、いまはない。わたしは立憲民主党に所属をしているので、枝野幸男代表に政権構想委員会を設置するよう提案したことがある。枝野さんは「政権構想だとどの党といっしょになるのかが議論になるので、政権政策委員会ならありかもしれませんね」と答えた。それでいいと思う。政権を任せてもらえば、どんな政策でこの日本を変えていくのかが国民に示せる対抗軸を示すことだ。いまこそ「坂の上の雲」を具体的に明らかにして、すべての意欲ある政党が切磋琢磨をしていく。そうしなければ平成から新しい時代に移行をしても、政治は三流のまま漂流するだけである。
有田芳生(ありた・よしふ)参議院議員、ジャーナリスト。1952年生まれ。出版社勤務を経て、86年からフリーとなり『朝日ジャーナル』で霊感商法批判キャンペーンに参加。同誌休刊後は『週刊文春』などで統一教会報道。都はるみ、テレサ・テンなどの人物ノンフィクションを『AERA』『週刊朝日』『サンデー毎日』に執筆。2007年まで日本テレビ系の「ザ・ワイド」に出演。『現代公明党論』『(白石書店)『「幸福の科学」を科学する』(天山出版)『歌屋 都はるみ』(講談社、文春文庫)『有田芳生の対決!オウム真理教』(朝日新聞社)『「コメント力」を鍛える』(NHK新書)『ヘイトスピーチとたたかう!──日本版排外主義批判』(岩波書店)『私の家は山の向こう』(文藝春秋)など著書多数。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- 選挙闘争を自画自賛
・2018年12月21日付『聖教新聞』「創価学会は世界平和の柱」「『立正安国』の大闘争を勝ち進め」
「全国最高協議会が19、20日の両日、東京・新宿区の学会本部別館で開かれ、原田会長、長谷川理事長、永石婦人部長、全国の方面長・婦人部長、各部の代表者が出席した。
池田先生はメッセージを贈り、“見事に『栄え光る』一年となった”と、本年の全同志の奮闘に感謝。(中略)続いて『種種御振舞御書』の一節『日蓮によりて日本国の有無はあるべし、譬へば宅に柱なければ・たもたず人に魂なければ死人なり、日蓮は日本の人の魂なり』を拝読。この大聖人の大宣言のままに『立正安国』の大闘争を貫き通してきたゆえに、創価学会は日本と世界の『平和の柱』となり、民衆と青年の『正義の魂』となったと強調した。さらに『結句は勝負を決せざらん外は此の災難止み難かるべし』の御聖訓を拝し、我らが断固として勝ち進むことこそが、民衆の幸福と社会の繁栄、世界の平和に直結していることを、誇り高く自負したいと訴えた」
※昨年11月18日の創立記念本部幹部会で、新たな発表があると予想されていたにもかかわらず、なんら新機軸の発表がなかったことは本誌前号で紹介した通りだが、その背景についてこんな情報がもたらされた。実は、この日の本部幹部会で、池田大作SGI会長の勇退と長男である池田博正SGI副会長の会長昇格が発表される予定だったのだという。ところがその人事案を本部幹部会前日に池田SGI会長に提示したところ、一蹴されてしまい池田博正SGI会長の誕生が流れたとのこと。事実かどうか確認のしようもないが、本部幹部会参加者に正装が通達されていたこともあり、蓋然性はありそうだ。
その創価学会が統一地方選・参院選に向けてボルテージを高めている。11月の総県長会議では、公明党の宗教的意義が強調されたが、12月の最高協議会では、創価学会の選挙闘争そのものを「立正安国の大闘争」と、宗教的意義づけをアピールしている。最高協議会に寄せたメッセージ中で池田大作氏は、「立正安国の大闘争」すなわち選挙闘争を通じて創価学会は「日本と世界の『平和の柱』」となったと強調。創価学会の勝利が、「民衆の幸福と社会の繁栄、世界の平和に直結」しているとアピールしているが、冗談にもほどがある。
2013(平成25)年の「SGIの日記念提言」で池田氏は、「持続可能な未来のために世界の軍事費の半減達成を!」との見出しで、「2030年までに達成すべき目標として『世界全体の軍事費の半減(2010年の軍事費を基準とした比較)』を提案している。
だが安倍自公政権は、底が抜けたように防衛費=軍事費の増強を図っており、昨年12月18日に閣議決定した中期防衛力整備計画によれば、今後5年間で防衛費は総額27兆4700憶円の巨額にのぼっている。その一方で社会福祉予算は2013年からの7年で4兆2720憶円が削減される予定となっている。
いったい創価学会が「立正安国の大闘争」を推し進め、公明党の連立政権参画=創価学会の勝利を実現したことのどこが、民衆の幸福と社会の繁栄、そして世界の平和に結びつくというのだろうか。