Forum21

Read Article

4月号目次

4月号目次

 

閻魔帳

オウム真理教事件=「死刑」で幕引きにしてはいけない/柿田睦夫

 

特集/亡国安倍政権を支える創価・公明の大罪

 

世俗化・退化示した3・16──政権の補完勢力として延命図る愚劣/溝口 敦

「森友学園事件」に「創価学会正史」──その改竄の本質にある事実の隠蔽/古川利明

揺れ動く安倍政権を支える創価学会・公明党の虚しさ/段 勲

隠蔽・改竄が示す安倍政権と創価・公明の親和性/乙骨正生

 

トピックス

死刑執行か回避か オウム死刑囚移送で噴出する死刑論争/藤倉善郎

 

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

新・現代の眼(第20回)

言葉の虐殺/菅野 完

ヨーロッパ・カルト事情241

国会報告「健康の分野におけるセクト的性格の運動の影響」(8)/広岡裕児

執筆者紹介  編集後記

 

 

 

編集後記から

「新・現代の眼」で菅野完氏も触れていますが、財務省による森友問題の公文書改竄事件は、日本の国家・政府がジョージ・オーウェルの書いた『一九八四年』さながらの異常な国家に変質していることを如実に示したといえましょう。

3月29日付『東京新聞』夕刊の「論壇時評」で、中島岳志東工大教授は、財務省による「公文書改ざん問題」について、「思考を奪う言葉の操作」と題して、『一九八四年』を引いて厳しく批判しています。小誌の読者にはすでに既知のことかもしれませんが、1949年に出版された『一九八四年』は、高度な全体主義国家をテーマにした近未来小説です。中島教授は、その内容を次のように紹介しています。

「主人公のウィンストン・スミスは、真理省の役人で、過去の記録の改ざん作業を行うことが仕事だった。『過去は現在の状況に合致するように変えられる』。党が発表する内容がすべて正しくなるように文書が改ざんされ、破棄される。過去が刻々と改変され、破壊されるのだ。権力者は、国民の論理的思考能力を低下させ、国家への反対を抑えるために、『ニュースピーク』という言語体系を導入する。これは語彙を制限・消去し、単語の意味を極度にシンプルにした言語で、普及の暁には反体制的な思考そのものが不可能になるという。言葉をコントロールすることによって、政府にとって不都合な現実を、存在しないものにしてしまうのだ」

その上で、安保法制論議における言葉の置換や労働法制論議における安倍首相の発言をとりあげ、「安倍内閣の本質は、言葉の支配と操作にある。人間は言葉の動物だ。言葉によって存在や認識が規定されている。言葉が世界を作り、構成する。その言葉を権力者が恣意的にコントロールすると、私たちは世界を奪われる」と剔抉(てっけつ)しています。

宗教法人法の改正が議論された1993年前後、創価学会の政権参画を危惧した人々、例えば「四月会」や「憲法二十条を考える会」に参加した宗教者や学者・政治家などの間では、この『一九八四年』が話題となり、創価学会・公明党の政権参画は、『一九八四年』的国家・社会を招来する危険があると認識されていました。

あれから25年。現下の日本の政治は極めて危険な状況にありますが、安倍自公政権にも創価学会にも大きな綻びが見えています。議会制民主主義を守るために小誌は今後とも足掻き続ける所存です。

特集/亡国安倍政権を支える創価・公明の大罪

 

世俗化・退化示した3・16──政権の補完勢力として延命図る愚劣

溝口 敦

ノンフィクション作家

 

 

岸信介に忠誠誓った戸田城聖

創価学会の二代会長・戸田城聖は60年前の1958年3月16日、静岡県富士宮市の大石寺境内に青年部員6000人を整列させて、当時の首相・岸信介の来臨を待った。

この年3月1日、創価学会信者による寄付4億円で大石寺内に法華本門大講堂を落成し、創価学会は大法要を計画した。この大法要には東京都知事・安井誠一郎などが出席したが、招待した岸信介や文相・松永東などは欠席し、代わりに祝辞だけを寄せた。

戸田はそのまま本山に滞在して16日に備えた。この間、学会員20万人が慶祝登山した。

戸田は16日、男子部幹部25人が担う、池田大作の考案になるという車駕に乗って「広宣流布の儀式の模擬試験」と意義づけた岸首相歓迎大会に臨んだ。岸を時の「最高権力者」になぞらえたのだろう。再度、岸を招待したが、岸はいったん招待を受けたものの、池田正之輔(自由民主党衆院議員)に反対されて急に出席をとりやめ、代理として夫人、子息・安倍晋太郎を出席させた。

式で戸田はこう語っている。

「日本の政権を保って、社会党と共産党をおさえて行ける人は岸先生しかいないということを、あの人が幹事長の時に心から深く思って、尊敬していたんです。

今度も1日の落慶法要には来れないって云うから、そのあとはどうだと云ったら、16日なら行くちゅうので、今日は楽しみにしておったが……。

……しかし、お嬢さんと坊ちゃんと奥様と、その他自分がこの人と頼む人々をですね、さしむけて本山へよこされたその誠意というものは、私は心から嬉しく思う。

……岸先生がこれからどんな立場になってもわしは悪い人だとは思いません。それが友人のまごころじゃないでしょうか(拍手)。君らも、そういう心で、岸先生とつき合って下さい。

……私は宗教団体の王様なんだから(拍手)岸先生は政治団体の王様なんだ」(「聖教新聞」58年3月21日付)

戸田のこうした言葉にうかがえるのは日本のエスタブリッシュメントに公認されたい、エスタブリッシュメントの仲間に加わりたいという強烈な願望である。それが達成されて初めて広宣流布なのだ。当時の戸田の頭の中では「時の最高権力者」は天皇でもなく、まして戸田本人でもなく、内閣総理大臣だったろうから、岸の出席は欠かせない要素だった。岸の出席を見越していたからこそ、この式典を「広宣流布の模擬試験」と呼んだはずである。

戸田演説からは戸田の持つ反革新思想、保守思考も目につく。この3年後、岸信介は新安保条約の調印と採決を強行し、反安保闘争を激化させて退陣をよぎなくされる。それでも戸田が岸信介を支持しただろうことは容易に想像がつく。

それから60年がたって今、法華本門大講堂に学会員が立ち入ることはできない。「3・16広宣流布記念の日」60周年は大石寺ではなく、宗教的な意義を持ちようがない八王子の創価大学記念講堂で開かれた。法華本門大講堂は現存するが、妙観講の月例御講などに使われ、創価学会との縁はすっかり切れている。創価学会は大講堂ばかりか、大石寺全域から排除され、学会員は日蓮正宗の信者でさえない。宗門に破門されたのだから当然のことだろう。

つまり「広宣流布の模擬試験」は宗教的な意義をあらかた失って、単に青年部の式典に堕した。国政選挙でも創価学会=公明党の集票は頭打ちで、むしろ下降線をたどっているから、もはや広宣流布などあり得る道理がない。宗教的意義と併せ、政治的意義も失われている。

60年間の時間経過の中で現れた変化はすべて世俗化と退化である。公明党は自民党に付着する形で政権与党の一角を占め、共謀罪や安保法制(周辺事態法)、年金改悪法、健康保険法改悪など、憲法改悪のための地均しや準備工作を進めることで安倍首相に協調、安倍政権を支えている。

安倍の子分として、また自民党の補完勢力として日本維新の会や希望の党なども手を挙げ始めた。公明党としてはウカウカできない状態だが、今のところは長年の腐れ縁が生きて自民党、もしくは安倍晋三の一の子分であり続けている。

子分の身ごなしは難しく、たまには創価学会婦人部の意向とやらを尊重する振りもしなければならない。ありもしない良識をあるように見せたり、安倍からやや距離を取ってみせたり、演出は欠かせないが、それでも本質は自民党の別働隊である。戸田が岸に忠誠を誓ったように、公明党はおおよそ自民党のよきポチとして反革新的な政治行動を続けている。

 

議会制民主主義・立憲民主主義を破壊する創公

かつては池田大作を守るため自民党に媚びへつらったが、今は自分たちの議員生活を守るためどこまで行っても「ゲタの雪行動」に固執している。公明党議員は支持基盤である学会員大衆の利益を裏切ってはならないはずだが、学会員大衆は上層部が指示するまま惰性的に公明党に投票し、F活動を展開する投票マシーンだから、学会員の利害得失を神経質に考える必要はない。「庶民の党」の真逆が公明党の政策なのだ。

共産党委員長の志位和夫は都議選を前にした昨年6月のツイッターで、こう指摘した。

「(演説で)公明党は共産党の悪口を言って歩いてる。人の悪口を言う前に、自分の胸に手を当てて反省するのが先ではないか。石原・猪瀬・舛添3代知事が出した5020の議案のうち公明党は5019に賛成、賛成率は99・98%。知事と二人三脚で都政の闇を作ってきた張本人が公明党ではないか」

この数字にウソはなかろう。いかに公明党が時の政権に無批判に随従しているか、如実に示している。あたかも自分の頭で考える力がないかのようである。

事情は国政でも同じである。2017年1月から6月までの第193回通常国会では内閣提出法案が66本、うち3本が閉会中審査になったが、残り63本はすべて成立した。このうち公明党は63本すべてに賛成し、実に賛成率は100%。自民党にぴったりくっついて、まるで両者に差はない。政党の成立条件が国政に国民の声を反映することなら、公明党はなんら存続する価値がない政党だといって過言ではない。

公明党は国民に向けて言うことと、議会での行動が100%ちがう。「平和の党」も「福祉の党」も二枚舌でなければ嘘っぱちであり、実態は詐欺師の集団と言ってよかろう。

学会員の大多数は政治的に洗脳されており、現実政治を客観的、批判的に見る目を持っていない。条件反射的に反共に凝り固まり、政策の善し悪しを点検する習慣を持たない。公明党がやることは何をやっても黙認するのだ。そのため公明党は自民党と一緒になって自衛隊員を海外に派兵して米軍を助けることを内容とする集団的自衛権の行使を容認し、特定秘密保護法にも賛成した。自衛隊には学会員もいるだろうに、その男が海外で戦死しようと関心は持たない。

問題は公明党が単に悪法の成立に賛成して一般人の生活を住みにくくしているばかりか、それにともない安倍自公政権を支えるため、議会制民主主義や立憲主義の破壊に手を貸していることである。

学会員が公明党に投票して、その報いを受けるのは勝手だが、累は広く一般国民にも及ぶ。戦前の国粋主義的な軍国政治の再来を望む一般国民がどれほどいるというのか。学会員さえ、そのような社会が到来することを望まないだろうが、戸田城聖が岸信介首相の臨席を待ち望んだ「広宣流布儀式の模擬試験」の延長線上にあるのが今の公明党の醜い姿であり、学会員の奴隷のような投票行動と公明党に対する無批判な支持なのだ。

これほどハタ迷惑な仕掛けは今の日本にそうあるものではない。森友問題にしろ、公明党の石井啓一国交相が土地の鑑定価格から地中のゴミ撤去費8億2000万円を差し引く根拠を、先頭に立って示さなければならないはずだが、息をひそめて隠れ、わずかに不鮮明な現場写真を公開しただけである。森友、加計問題に対する公明党の基本態度は極力争点から遠ざかり、安倍の機嫌を損じる言動はとるまいということに尽きる。

健康を損ね廃人同様の池田大作だが、彼が次のようなメッセージを寄せたと聖教紙は白々しく伝えている(3月12日付)。

「今朝、私と妻は御本尊に向かい、ご報告しました。『牧口先生、戸田先生、わが後継の青年たちは、これほど立派に成長し、これほど大きな広がりとなりました。学会の未来は盤石です。一閻浮提の広宣流布は、末法万年尽未来際へ限りなく開かれています』と」

百害あって一利は創価学会=公明党の存続のみという存在はいい加減歴史から退場すべきだろう。

 

溝口 敦(みぞぐち・あつし)ノンフィクション作家。1942年生まれ。早稲田大学政経学部卒。出版社勤務などを経てフリーに。宗教関係をはじめ幅広く社会問題を扱う。『食肉の帝王』(講談社プラスα文庫)で第25回講談社ノンフィクション賞、日本ジャーナリスト会議賞、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞の3賞同時受賞。『堕ちた庶民の神』(三一書房)『歌舞伎町・ヤバさの真相』(文春新書)『パチンコ「30兆円の闇」』『生贄の祀り』『あぶない食品』(小学館文庫)『武富士 サラ金の帝王』『池田大作「権力者」の構造』『中国「黒社会」の掟』『細木数子 魔女の履歴書』(講談社プラスα文庫)『暴力団』『続・暴力団』『薬物とセックス』(新潮新書)『抗争』(小学館新書)『やくざの経営戦略』(文春新書)など著書多数。

信濃町探偵団──創価学会最新動向

●佐川喚問の裏で首相と会食する公明党
・3月26日付「時事ドットコム」「安倍首相、公明若手と会食」
「安倍晋三首相は26日夜、公明党の衆院当選3回の議員らと東京都内のホテルで会食した。同党は首相が目指す憲法改正に慎重な姿勢を崩しておらず、若手との懇親には改憲への環境整備の狙いがありそうだ。会食には太田昭宏前代表も同席した」

※森友学園への国有地の不当払い下げ事件をめぐる財務省の公文書改竄問題で、佐川宣寿元財務省理財局長の国会証人喚問の前夜、公明党の若手国会議員が、都内のホテルで安倍首相と会食したと時事通信が伝えた。
時事通信は、会食には改憲に慎重な姿勢を崩す公明党対策の意味合いがあると解説するが、公文書改竄という国会を冒瀆し、議会制民主主義を踏みにじる蛮行についての国会証人喚問前夜に、森友問題・加計問題で、関与が疑われている当事者の首相と、のんきに会食する公明党の見識には驚くばかり。山口那津男代表は、佐川喚問終了後の記者会見で(以下、3・28付『公明新聞』)、
「一、(首相らの関与について)佐川氏は、指示はなかったと明確に否定した。指示や関与があった事実が裏付けをもって国会に出ているわけではない。なかったことを証明するのは、いわゆる『悪魔の証明』だ。あったことをどう証明するかが今後問われるだろう。
一、(首相夫人らの国会招致について)改ざんについて関係があったという事実は今のところ出てきていない。証人に呼ぶ必要があるか、きちんとした前提がないと難しいだろう。佐川氏は、(学園への国有地)売却や貸し付けの経緯についても、指示はなかったと否定している。この発言を踏まえて対応を考えるべきだ」
と、安倍首相擁護の姿勢を示し、安倍昭恵夫人らの証人喚問に消極的な姿勢を示したが、喚問前夜に前代表が首相と会食しているのだからそれも当然だろう。
「公明党50年史」には、政官の癒着の象徴である国有地の不当払い下げ問題の追及は、公明党の専売特許であるかのような記述があるが、森友・加計問題についての公明党の一連の対応は、これとは真逆の姿勢だ。

●除名の正当性を佐藤優講演で担保??
3月19日に創価学会埼玉審査会が、安保法制反対の声をあげ、安保法制に賛成した創価学会執行部を批判していた埼玉県在住の活動家に、「除名」を通知した。
創価学会埼玉文化会館での「審査会」への「出頭」(通知書)を求め、「取調」(通知書)を行った上での除名処分。「出頭」「取調」などの文言からも分かるとおり、創価学会の審査会の姿勢は、極めて高圧。これに対して多くの会員の間から、批判の声があがっている。そうした批判の高まりを恐れてか、埼玉県創価学会は、除名処分通知後初の日曜日である3月25日の夜、審査会を行った埼玉文化会館で総埼玉地区栄光長会を開催。創価学会・公明党を礼賛する作家の佐藤優氏に、処分の正当性をアピールする講演をしてもらっていたのだ。
参加者がインターネットに投稿した佐藤氏の講演要旨によれば、「執行部批判者への批判」は、概ね次のようなものだったらしい。
〈公明党が推進した安保法制への批判はおかしい。自分の批判を池田先生の名前とすり替えているに過ぎない。
最近、創価学会の中に新しい種類の人たちが増えている。これまでは外に出て批判していたが、中に残って批判して批判者を増やしている。 執行部批判者は外へ出て行ってもらった方がいい。内部にあって組織を崩す新種が現れている。悪が中に留まっている。原田会長、執行部の批判を始めているが、これは池田名誉会長の否定。これはキリスト教でもあった。分派と同じ。外へ出て貰った方が良い〉
講演内容が事実であるとすれば、キリスト教信仰者であることを公言して憚らない佐藤氏に、創価学会の批判者処分の正当性を担保してもらうかのような内容であることは明らか。審査員長の南晋三氏は、潮出版社の社長であることから、月刊誌『潮』の常連執筆者でもある佐藤氏を、埼玉県の会合に招いたのかもしれないが、創価学会内部の混乱と混迷が透けて見える話だ。

Return Top