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10月号目次

 

閻魔帳

自公政権による政治と民主主義の劣化/柿田睦夫

 

特集/池田時代終焉──沖縄県知事選&『新・人間革命』終了

池田大作「沖縄返還」提言への背信と「造反有理」/乙骨正生

─沖縄県知事選挙の現場から 勝利した沖縄県民のアイデンティティ/有田芳生

「沖縄県知事選敗北」の根幹にある『新・人間革命』の連載終了/古川利明

沖縄の新知事に辺野古基地建設反対の玉城氏

安倍政権を脅かす知事選大敗と無謀な改造/川﨑泰資

沖縄県知事選と「人間革命」の完結/段 勲

 

トピックス

台湾慰安婦像キック問題にみる幸福の科学の宗教的「嫌中論」/藤倉善郎

 

  • 連載
  • 信濃町探偵団──創価学会最新動向

新・現代の眼(第26回)

渇して井を穿ち、闘ひて錐を鋳るが如し/菅野 完

ヨーロッパ・カルト事情246

イスラム過激派がセクト(有害カルト)である理由/広岡裕児

執筆者紹介  編集後記

 

編集後記から

自民党総裁選挙や沖縄県知事選挙の陰に隠れて、一般社会ではまったく注目されませんでしたが、9月30日、公明党が都内で全国大会を開催しました。

自民党総裁選には、安倍一強体制下の猛烈な締め付けにもかかわらず石破茂元幹事長が立候補したことで、まがりなりにも選挙となり、地方票の45%が石破氏に集まるなど、多くの自民党員・党友が、安倍一強体制に批判的であることがわかりました。

これに対して公明党では、山口那津男代表が改選を迎えましたが、対立候補が立たずあいかわらずの無投票で、山口代表の6選が決まりました。

公明党全国大会には、自民党総裁に3選されたばかりの安倍首相が出席し、挨拶しましたが、その中で安倍首相は、「現職首相・総裁が挑戦されるのは15年ぶりだ。まだまだ精進が足りないと反省している」(9月30日付「時事ドットコム」)と、無投票で6選された山口代表に比べ、対立候補が出た自分は、「まだまだ」だと、山口代表を持ち上げて笑いを取ったと報じられていますが、悪い冗談としかいいようがありません。

創価学会という特異な宗教政治集団の政治部として発足。創価学会の支配下にあった公明党には、党内民主主義などなく、委員長人事は公明党創立者の池田大作創価学会名誉会長の胸三寸だったことは、竹入義勝・矢野絢也の2代にわたる委員長をはじめ、多くの元公明党議員が明らかにしている通りです。そうした構造に変化がないことは、山口代表の無投票6選という事実からも窺うことが可能です。

全国大会の挨拶で安倍首相は、「政権を奪還し、5回連続で国政選挙に勝利した。山口那津男公明党代表は私にとって必勝のパートナーだ」(同)と語り、山口代表も「新たな任期の2年間は、日本の未来を切り開く正念場だ。与党・公明党が果たすべき使命と役割は限りなく重い。引き続き自公連立政権の一翼として、日本の未来に責任感を共有し、緊張感を持って国民の負託に強く応えていく」(10月1日付『公明新聞』)と強調し、来年の党一地方戦・参院選での必勝を呼び掛けました。

しかしその出鼻をくじくかのように、全国大会当日に行われた沖縄県知事選で、自公推薦の佐喜真候補は大敗しました。この知事選に創価学会は全国の組織あげて取り組み、原田会長は今年4回も沖縄入りしましたが、多くの沖縄の学会員は学会本部の指示に反して辺野古新基地建設反対を掲げる玉城候補に投票したのです。沖縄の学会員の「造反有理」が今後、創価学会・公明に、そして政界にいかなる影響を及ぼすのか。詳しくは特集をご覧ください。

特集/池田時代終焉──沖縄県知事選&『新・人間革命』終了

「沖縄県知事選敗北」の根幹にある『新・人間革命』の連載終了

古川利明

ジャーナリスト

 

公明が全力投球も玉城氏が過去最多得票で圧勝

首相の安倍晋三が自民党総裁の3選を決めてから、わずか10日後の9月30日に、「米軍・普天間基地の辺野古移設の是非」を最大争点にした沖縄県知事選が投開票され、前自由党衆院議員の玉城デニーが、安倍自公政権が全面支援した前宜野湾市長の佐喜真淳を破り、初当選を果たした。投票率は、前回14年より0・89ポイント下がって63・24%だったが、無党派層の大半の支持を得た玉城が、過去最多の39・6万票を獲得し、佐喜真に8万票の大差をつける圧勝だった。

とりわけ、今回、官房長官の菅義偉や自民党幹事長の二階俊博は、何度も現地入りし、テコ入れに奔走するなど、まさに「国政選挙そのもの」の対応だった。それは、前回の自主投票から一転して、今回は、自民党と二人三脚で推薦に踏み切った公明党(=創価学会)も同様で、産経新聞(9月25日付朝刊)によれば、九州を中心とした公明党の市町村議らが大挙して沖縄入りし、地元の建設業者に「毎日のように入れ代わり立ち代わり公明党が来る」と驚かせる一方、自民党との合同選対会議では「きめ細かさが足りない」と叱り飛ばす有り様だったという。また、朝日新聞(9月25日付朝刊)も、「那覇市の会社員、知念昌光(75歳)の話」として、創価学会会長の原田稔が、9月10日に恩納村で(記事中で場所は明示されてないが、「沖縄研修道場」と思われる)、「佐喜真さんを応援しよう」と話していたことを紹介している。

この他にも、選挙期間中、「公明党本部」が作成したという「沖縄県知事選挙 対話のポイント」と題するチラシの画像が、ネット上には拡散していた。内容は「玉城デニーは、14年の衆院選直前に、辺野古基地の工事を落札した建設会社から献金をもらう一方、玉城が『政治の師匠』と公言し、側近として仕える小沢一郎は、辺野古に近い宜野座村に超豪華別荘を建築している」との、攻撃文書である。推測するに、これは創価学会員の活動家が、外部のF(フレンド)票を獲得する際の“折伏マニュアル”とみられ、今回の知事選では、敢えて佐喜真に「推薦」を出したとあって、身内である公明党公認候補に対する集票活動と同様、「学会員による票回し」だけでなく、そこからさらに「外部のF票取り」にまで踏み込んだ、まさに「国政選挙そのもの」だったことが窺える。

思い起こしてもらいたい。「自公の始まり」は、ちょうど20年前の98年7月の参院選で、自民党が壊滅的な惨敗を喫し、過半数割れの状態がさらに拡大したことを受け、続く同年11月に行われた沖縄県知事選で、「米軍基地の2015年までの、3段階での全面返還」を公約に掲げていた現職・大田昌秀の3選を阻止すべく、自民党が担ぎ出した稲嶺恵一に、それまで「革新共闘」の側にいた公明党(=創価学会)が、例の7千億円分の商品券構想を自民党に丸飲みさせたことで、初めて「自公共闘」に踏み切ったことからである。それゆえ「『自公』はオキナワから始まった」と言っても過言ではない。

 

なぜか告示直前に終了した『新・人間革命』

折しも、沖縄県知事選告示5日前の9月8日付の聖教新聞をもって、「法悟空」というペンネームで、池田大作が執筆していたということになっていた連載小説『新・人間革命』が、最終回を迎えた。もっとも、連載終了については、今年2月11日付同紙で「第30巻をもって完結し、同巻は上・下の2分冊となり、上巻は6月、下巻は11月に刊行する」と告知してあったため、規定路線ではあった。この告知によれば、93年の執筆開始にあたり、池田は「完結までに30巻を予定している」と語っていたというが、ただ、このくだりは『新・人間革命』第1巻のあとがきに記載はないため、恐らく、内輪の限られた人間だけに喋っていたことを、会長の原田が愚直に実行に移したものと思われる。

6469回目となった最終回「誓願 百三十九」の末尾には、わざわざ、「二〇一八年(平成三十年)八月六日 長野研修道場にて脱稿」との添え書きがあるが、これは、聖教新聞(8月22日付)に掲載された、ちょうど、この脱稿したという日(=8月6日)に撮影された、電動カートのようなクルマの後部座席に、妻の香峯子とともに乗った池田が、長野研修道場の玄関前で、大勢の学会員に拍手で迎えられている動静写真と、辻褄を合わせたものと思われる。元創価学会本部職員の滝川清志、小平秀一、野口裕介による『実名告発 創価学会』(金曜日)に、「『新・人間革命』は聖教新聞社の中に作成するチームがあり、資料集めから原稿作成に至るまでを担当し、最終的に第一庶務がチェックして完成させている」とあるように、池田のような著名人がゴーストライターを使って原稿を書くケースは、他にもゴマンとあり、そのこと自体は、何も誹謗されることではない。

むしろ、問題は、この『新・人間革命』の連載を、沖縄県知事選の告示直前に、さながら「敵前逃亡」のような格好で終了させたことである。なぜなら、“善男善女”とも呼ばれる現場の熱心な学会員は、毎朝、「これ」をいの一番に目を通すことで、いやがうえにもテンションを高めて、「法戦」という名の集票活動に自らを駆り立てていくからである。ところが、「いよいよ本番」というタイミングで連載終了となっては、なかなか志気が上がらなかったであろうことは、容易に想像できる。仮に9月末まで連載を続けたところで、「11・18」に向けての単行本の最終巻刊行までには、十分な時間的余裕があり、余計、「なぜ、こんな中途半端な時期に打ち切ったのか?」と、筆者は訝るのである。

 

学会員の「佐喜真」支持は5割台、投票は71%

今回の沖縄県知事選では、その「辺野古移設」について、地元の公明党沖縄県本部は「反対」を掲げるという、傍目には何ともわかりにくい対応を見せていた。『人間革命』の方は、64年12月2日に、公明党の「創立者」である池田大作が、先の戦争では、唯一、日本国内で戦場となったために、多くの犠牲者を出した「沖縄」で書き始めたという縁の深さとも相まって、表向きは「反戦平和」を掲げている手前、「そこ」との辻褄合わせで、何とも苦しい対応に追い込まれていたと言える。

そうしたことも、今回、推薦を出したにもかかわらず、共同通信の電話世論調査(9月22、23日)で、「公明党支持層」というのは、「創価学会員」のことだが、「佐喜真支持」が、何と「5割台」に留まっていたことに象徴されている。朝日新聞(10月1日付朝刊)の出口調査でも、立憲、共産、社民の各党支持層の9割以上が玉城に投票していたのに対し、佐喜真への投票は自民党支持層で78%、そして、公明党支持層(=創価学会員)は、主要政党の中で最も低い「71%」だった。

朝日新聞(9月25日付朝刊)は、告示日に県庁前であった玉城の演説に、「おかしいと感じている学会員が自分の行動を見て声を上げられるよう、あえて三色旗を持ってきた」という浦添市の会社員、野原善正(58歳)を紹介しているが、そうした「辺野古移設」を巡る信濃町のコウモリ飛行ぶりが、このように公然と「玉城支持」に踏み切った学会員の行動を、強く後押ししたと言えるだろう。

奇しくも、沖縄県知事選と同じ日の9月30日、公明党大会が開かれ、既に無投票で6選を決めていた山口那津男を、正式に代表に選出した。64年11月の結党以来、一度も複数候補による選挙が行われたことのない異常さは、今回もさておき、来賓で出席した首相の安倍は、公明党役員が居並ぶ席を見ながら、「前の方々が難しい顔をしていますが、いろんな課題があるが誠実に、真摯に議論していきたい」と、「改憲」への協力を暗に求めた。これに対し、山口は出席者の質問に答える形で「憲法9条の改正が緊急になされるべきであるとは必ずしも言えない」と述べ、既に「佐喜真劣勢」の報が耳に入っていたせいか、とりあえずは、慎重なフリを見せている。

この公明党大会を報じた翌日付各紙朝刊の記事を見ると、ほぼ横並びで「支持母体の創価学会では、9条改憲には反対論が強い」と、また妙な解説を施している。彼らも「反戦平和」のタテマエがあるゆえ、表立っては「9条改憲賛成」とは言っていないが、しかし、こんなものは、風向き次第で、「一晩」どころか、「一瞬」で豹変する。まさに、それこそが「コウモリのコウモリたるゆえん」であり、今回の「沖縄県知事選の結果が突きつけた、安倍3選に対する不信任」を踏まえ、我々心あるジャーナリズムは、今後の信濃町の動向をさらに凝視していく必要がある。              (文中・敬称略)

 

 

古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』(いずれも第三書館刊)など著書多数。

 

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

  • 小説『新・人間革命』連載終了

・9月8日付『聖教新聞』「小説『新・人間革命』連載完結に寄せて 原田会長の談話」「命を削る『ペンの大闘争』に感謝」

「小説『新・人間革命』が本日、ついに連載完結を迎えました。1993年8月6日に、池田先生が長野の地で執筆を開始されてから25年。64年12月2日に沖縄で筆を起こされた小説『人間革命』から数えれば、半世紀以上という長きにわたる執筆となります。池田先生が命を削る思いで続けてこられた『ペンの大闘争』に、池田門下を代表して、満腔の感謝をささげるものです」

 

※池田大作会長(当時)が、ライフワークとして昭和42年に沖縄で執筆を開始したとされる『人間革命』。その続編として平成5年から連載が始まった『新・人間革命』が9月8日付『聖教新聞』掲載分で終了した。

前作の『人間革命』は、戦後、創価学会を再建した戸田城聖二代会長を主人公として描き、その死去までが綴られているが、戸田の後継として三代会長に就任した池田大作(山本伸一)を主人公とする『新・人間革命』は、二十一世紀すなわち2001年の11月の記述で終了した。すでに池田氏が大衆の前から姿を消して満8年。会憲の制定により、会長権限が強化されるなど、ポスト池田体制が整備された今日、これ以上、『新・人間革命』を続けるメリットはさほど高くないのだろう。

しかも『新・人間革命』がこのまま続けば、1999年の自公連立政権発足以後の池田氏と創価学会の歩みにも言及しなければならなくなる。いくら「小説」と銘打っているとはいえ、歴史的事実や、過去の言説との乖離・矛盾の糊塗には限界がある。かくして『新・人間革命』は終了したのだが、それは同時に池田大作時代の終焉を刻するピリオドと見ることができる。

蛇足だが、「談話」で原田会長が「『人間革命』『新・人間革命』を学び続ける限り、学会が永遠に勝ち栄えていけることは間違いありません」と語った直後の沖縄県知事選で、創価学会は大敗北。沖縄入りした原田会長は、『人間革命』『新・人間革命』を引用して選挙闘争の士気を煽っていただけに、面目は丸つぶれだ。

 

  • 池田提言50年――創価・公明が訪中団派遣

・9月7日付『公明新聞』「汪全国政協主席と会見 山口代表 人的交流加速を確認 習主席宛て、首相の親書託す」

・9月27日付『聖教新聞』「創価学会訪中団 友好の未来へ 王岐山国家副主席と会見」「王副主席 50年の歴史は国交正常化の遠見を証明」

 

※昭和42年9月の創価学会学生部総会で池田氏が、日中国交正常化提言を行ってから50年ということで、創価学会の訪中団が9月24日から中国を訪れ、25日は総団長の原田会長・団長の谷川主任副会長らが、王岐山国家副主席と会見したことを、『聖教新聞』が大々的に報道。1面には握手する王副主席と原田会長二人の大きな写真を掲載した。来年、4年の会長任期を迎える原田氏だが、王副主席と握手する写真からは、せっかく握った権力は渡さないとの固い意志のようなものが感じられる。まだ当分、我が世の春を謳歌する腹積もりなのでは。

 

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