10月号目次
閻魔帳
統一教会総裁の逮捕で、再考される宗教法人の在り方/段 勲
特集/岐路に立つ自創(公)連立体制――自民党総裁選と創価・公明
「禁じ手」解消の時/佐高 信
「石破電撃辞任」に慌てて「党存亡の危機」を謳う総括を吐き出した「公明党=創価学会」/古川利明
“野合”を解消し“教団維持”の政治闘争から撤退すべし/乙骨正生
トピックス
統一教会がSLAPP訴訟で完全敗訴! 日韓で追い込まれるカルト教団/鈴木エイト
トピックス
世界から孤立しつつあるユダヤ国家の行く末/橋本征雄
- 連載
信濃町探偵団──創価学会最新動向
「日本の議会政治」を考える(18)
「自民と公明によるカルト政治」――日本型カルト政治の形成(1)/平野貞夫
ナニワの虫眼鏡(第76回)
どうする野党との協力 自民党新総裁が抱える難題 /吉富有治
ヨーロッパ・カルト事情(325)
蠢動するカルト支持勢力 欧州人権裁判所判決の真実/広岡裕児
執筆者紹介&バックナンバー一覧 編集後記
編集後記から
小誌発行時点では自民党の新総裁が選出されており、次期政権の形がいかなるものになるかに関心が移っているものと思われます。そこで、今号では20年余にわたって続いてきた自民党と創価学会・公明党の連立体制の帰趨を、自民党総裁選とからめて特集しました。
その宗教と政治をめぐる重要なファクトとして注目されるのが、今年3月に東京地裁において解散命令が出た世界平和統一家庭連合(以下・統一教会)の韓鶴子総裁が、9月23日、韓国の特別検察に政治資金法および請託禁止法違反、業務上横領などの容疑で逮捕されたことです。
直接の容疑は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の妻・金建希(キム・ゴンヒ)被告や大統領の側近に対し、教団に便宜をはからせるための賄賂に韓総裁が関与したことなど。この逮捕を受けて多年にわたって統一教会問題に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会は9月23日、「この機会に我が国でも改めて国会などにおいて中立な第三者機関を設け、統一教会と政党、政治家との関係について徹底した調査を行うよう求める」との声明を発表しました。
全国弁連はまた、声明に先立つ記者会見で、統一教会と自民党の蜜月・癒着関係が白日の下になった際に岸田政権は、関係を断絶するとの国会答弁をしたものの、「同様の問題が繰り返されないようにするための実効性のある具体的な施策については何ら講じられていない」と批判。今回の自民党総裁選でも、統一教会との関係を争点とする候補はおらず、問題解決に取り組む姿勢もないと、政治と宗教の癒着の根の深さを指摘しています。
韓総裁は、安倍銃撃事件を契機に統一教会に対する解散問題が惹起した23年6月に、「今の日本の政治家たちは我々に何をしている? 家庭連合を迫害しているじゃないか。(中略)政治家たち、岸田をここに呼びつけて教育を受けさせなさい」と発言、独善的なカルトの政治介入の異常性を際立たせていますが、連立与党を構成する公明党の組織母体創価学会にも、国政に立候補する公明候補者に「創価学会」「池田大作会長」を守ることを誓約させていた事実があります。
自民党の総裁が交代する政治の節目に生じた、韓総裁の逮捕を宗教と政治の関係を見直す契機とする必要があります。そのための一助となるべく小誌は宗教と政治・社会の真実を追及し続けます。
特集/岐路に立つ自創(公)連立体制――自民党総裁選と創価・公明
「禁じ手」解消の時
佐高 信
評論家
野合の体質顕わな“平沢いじめ”
いま、緊急に『昭和20年生まれの群像』という本を書いている。私もそうなのだが、80歳になるわけで今年中に出版するべく大車輪で原稿を執筆中である。
自民党の政治家では谷垣禎一、平沢勝栄、そして亡くなった『新憲法代議士』(サイマル出版会)の白川勝彦が同い年。白川と平沢それに私は創価学会から“仏敵”扱いされていることで共通するが、白川と平沢は東大の文科一類で同じクラスだった。
1996年秋の衆院総選挙で自民党は創価学会を隠れ蓑にした新進党を徹底的に攻撃した。
それなのに98年夏の参院選で惨敗するや、掌を返して公明党との連立に走る。これは長く自民党を応援してきた支持者に対する裏切りだろう。
そして2000年の総選挙を自民党幹事長として指揮した野中広務は、公明党に気を遣い、公明党の山口那津男と選挙区がバッティングする平沢の公認をギリギリまで下ろさなかった。一度は平沢に比例にまわるよう命じたのである。それを蹴って平沢は立った。
野中の平沢に対する妨害も執拗だった。
総選挙前、東京は六本木の全日空ホテルで平沢が開いたセミナーの講師に予定した後藤田正晴に圧力をかけ、直前になって辞退させる。後藤田は平沢の警察庁時代の先輩だった。
「申し訳ないが、勘弁してくれ」
と謝る後藤田に、平沢が、
「どういうことですか」
と尋ねる。
「党から、絶対に行かないでくれといわれたんだ」
と答える後藤田に、
「野中広務さんでしょ」
と返すと、
「訊かないでくれ」
と言われた。
公認が下りない理由は「野中さんは、いわば公明党の幹事長になっている」とか、「自民党の悪口を言っている」など、平沢の発言に対してのものばかりで苦笑するしかない。
ようやく解散日当日に公認が来たが、自民党公認候補のドンジリだった。平沢の後援会は、万が一公認を出さなかったら脱党するとまで口にしていたので、渋々出したのだろう。平沢は選挙演説で訴えた。
「いま自民党のことを一番思っているのは、わたしだ。野中幹事長から『自民党の悪口をいうなら出ていけ』といわれたが、なぜわたしが出なければいけないのか。公明党のいいなりになっている野中幹事長が、公明党にいけばいいじゃないか。わたしは地元の自民党支持者から、出ていけ、といわれたなら出ていく。しかし、自民党支持者のみなさんは応援してくれている。みなさんが応援してくれているのに、なぜわたしが出なければいけないのか」
聴衆からは大きな拍手が湧き起こったが、平沢が公明党(創価学会)の仕業と思っている嫌がらせはすさまじいものがあった。
車を尾行されたり、ポスターを焼かれたり…。街頭で聴衆と握手をしている時、いきなり胸ぐらをつかまれる暴行も受けた。以来、警察は平沢にボディガードをつける。平沢の選挙区の家庭すべてに怪文書もバラまかれた。深夜1~2時の間である。
この違法行為を誰かの指示で一斉にやれる組織が行ったのだろう、と平沢は思った。
テレビ朝日の報道番組『ニュースステーション』が、ある時、平沢の立っている東京17区を取り上げた。
対立候補の山口が「平沢候補者は、金をばらまいて、それで票を買っている」と演説する。悪質な選挙妨害と激怒した平沢は弁護士を通じてテレビ朝日に抗議し、『ニュースステーション』は後日、それを紹介した。
山口にも内容証明郵便を送る。
「金をばらまいて票を買っていたとは、どういう意味か」
山口側からは「週刊誌に、その種の記事が出ていた。また町内会行事の時に、金を包んだことが新聞に書かれてあった」とかのアヤフヤな答えが返ってきたので、平沢は納得せず、また内容証明を送った。
「あなた方の考えはわかった。週刊誌などに書かれたことが事実だというなら、週刊誌には、創価学会の池田大作さんのことも書かれている。これも、すべて事実だということでいっていいのか。
また町内会行事に金を包んだことが問題だというが、秘書とともに行き、ごちそうになったのに、ただで帰るわけにはいかない。対価としておかしいとは思わない。
さらに、わたしよりも山口候補のほうが数多くの場所で出している。町会の出納簿に記録が残っている。これについては、どう答えるのか」
まもなく回答が届いたが、「あなたが、金権であることは間違いない」というムチャクチャなものだった。
この選挙戦最終日、平沢はJR小岩駅前に立った。
「今回の選挙で、自民党からはだれも応援に来てくれませんでした。むしろ、来てくれなくてもいいんです。今のように腐りきった自民党なら、応援に来てくれなくていい。野中さんからも、さんざんいじめられました。私の応援に来たいという人は、みんな野中さんがストップをかけた。この腐りきった自民党を直します」
結果は山口に2万票余りの差をつけて平沢の勝利だった。
政党の原理原則を歪める野合
自民党の公認候補の中には、公明党の票欲しさに「比例区は公明党へ」と訴えた者が多かった。事務所に公明党のパンフレットを置いた者もいる。しかし、それらの多くは落選した。野合と呼ぶしかない自公連立は政党の原理原則を歪めていったのである。
元警視庁防犯部長で岡山県警本部長をやった平沢は、1999年9月24日に放送されたテレビ朝日系の『朝まで生テレビ!』では、「創価学会・公明党は交通違反のもみ消しどころか刑事事件のもみ消しまで依頼してくる」と発言した。
2023年秋に出た大下英治著『孤高奮戦変革の人 平沢勝栄』(さくら舎)という本がある。そこに前回の衆院選で平沢のところに公明党から推薦の打診があったと書かれている。水面下でらしい。
「公明党から『ご希望であれば推薦する』という申し出があったので、わたしの後援会の皆さんに公明党と話をしてもらいました」
こう語る平沢は支持者から次のように言われて推薦を断った。
「応援をもらうとなると、今までの主張と違ってくるので、我々が頑張りますから、今まで通りやりましょう」
衆院の小選挙区では公明党はおよそ2万票前後の票を持っている。そんなに固い票を持っている組織はないので、候補者はノドから手が出るほど欲しい。しかし、それに頼りすぎると、本人の活動や地力が落ちてしまうのである。そもそも別の政党である自民党と公明党が一緒に選挙を戦うことに違和感を持っている平沢の次の指摘は忘れてはならないものだろう。
「有権者には、世襲の二世議員や三世議員に抵抗を持つ人も多いですが、それは公平であるべき選挙が世襲議員にとって有利になっていると思うからです。ですが、わたしは、世襲がけしからんと言われることよりも、公明党からの支援のほうがおかしいと思っています。選挙は本来、苦しいものを乗り越えていくものですが、公明党から簡単に2万票がくるというのは普通ありえないこと。わたしも多くの団体の応援をもらっています。その応援をもらうためにはそれこそ血が出る苦労をしていますが、一団体あたりは何百票の単位です」
公明党の支援はメリットだけではないと、平沢は付言する。
「自民党の中には、公明党の支援をプラスと考えている議員も多いけど、実際には両面あり、マイナスもある。例としては、他の宗教団体の支持が離れること。立正佼成会などは立憲民主党を応援していますから」
自民党だけでなく政党が宗教政党と連立することを「禁じ手」だと言ったのは平沢が秘書を務めた後藤田正晴だった。自民党にとっても公明党にとっても「禁じ手」解消の時が来たのだろう。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- 惨敗した都議選・参議院の選挙闘争を「功徳」と強弁し金集めへと移行する創価の厚顔
・9月6日付『聖教新聞』「総県長会議での原田会長の指導(要旨)」
「はじめに6月の都議選、7月の参院選と、12年に1度というダブル選挙の支援活動に、死力を尽くして戦い抜いてくださった全国の同志の皆さまの大奮闘に、改めて心からの感謝と御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
酷暑の中、広宣流布と立正安国を推進する尊い実践に、大きな功徳が積まれたことは間違いありません。その上で、仏法は本因妙であるからこそ今回の戦いを次なる勝利へとつなげていくことが重要です」
・9月8日付『聖教新聞「座談会 師と共に歓喜の舞』「広布部員の福徳を真剣に祈念」
「那須(女性部長)残暑厳しい中、各地で広布部員の申し込みを進めてくださる方々に、心から感謝申し上げます。
原田(会長)日蓮大聖人は、門下へのお手紙の中に、必ずといってよいほど、御供養の品々の名を記され、最大の礼を尽くして讃嘆されました。(中略)
原田 先生は、『広布へ進む尊き同志に、最敬礼する思いで尽くしていくことだ。全同志が功徳を受けて裕福になるよう、一切無事故で前進できるよう、リーダーは真剣に祈ってまいりたい』と指導されました。
那須 『この心で進んできたから、学会はここまで大発展したのだ。それを絶対に忘れてはならない』とも言われています。
原田 広布部員の皆さま全員が、財務の喜びを感じ、大きく福徳の花を咲かせ、幸福境涯を開いていかれるよう、さらに真剣に祈念してまいります」
※昨年秋の衆院選に続いて、今夏の東京都議選・参院選でも惨敗した創価学会が、熾烈な票集めに続いて会員を金集めへと駆り立てている。
今年6月の都議選を目前にした4月の本部幹部会で原田稔会長は、「結党60周年を迎えた公明党にとって今という時は、一切を変毒為薬し、『青年・公明党』へ生まれ変わるチャンスであります。『第2の草創期』の幕開けともいえます」(4・20付聖教)と、都議選・参院選を新たな公明党を築く変革のチャンスと位置づけた上で、「逆風、烈風こそ正義の証であり、人間革命のバネであります。私たちは不死鳥のごとく、何があろうとも一歩も退くことなく戦い抜き、大風が吹けば吹くほど境涯を拡大しながら、断じて勝利していこうではありませんか」(同)などと会員の尻を叩いていた。
だが結果は大惨敗。本来ならば公明党の執行部ならびに会員を選挙闘争に駆り立てた創価学会の執行部は責任を取らなければならない立場。ところが創価学会の執行部は、大惨敗の責任をとるどころか、「広宣流布と立正安国を推進する尊い実践」である選挙闘争への参画には、「大きな功徳」があったと強弁。さらには法華経に説かれる凡夫成道の因としての修業の実践の必要性を意味する「本因妙」なる宗教用語で敗北や責任を煙にまき、次なる闘争での勝利を檄する厚かましさを見せている。
そして次なる闘争と位置付けているのが「財務(広布部員)」すなわち金集めである。
9月8日付『聖教新聞』掲載の座談会記事で原田会長らは、9月から全国の創価学会組織で始まった「財務の戦い」に挺身する幹部・活動家に感謝の意を表するとともに、「財務」に応じる「広布部員」に金を出すことの喜びを感じ、幸福になれるよう祈りますなどと語っているが無責任も甚だしい。というのも国民の一部を構成する創価学会員の多くも、自公政権すなわち公明党が加担する政権による失政の結果、異常な米価高騰に象徴される激しい物価高で厳しい生活苦に見舞われているからだ。
その会員らに金集めを強い、“金を出す喜びを感じられるよう、金を出して幸せになれるように祈ってます”とは、もはや無責任というよりアコギな金儲け集団としかいいようがない。
都議選・参院選で惨敗した後、原田会長や谷川佳樹SGI理事長らは、韓国・マレーシア・シンガポール・オーストラリアなどに出かけている。もちろん名目は指導だの宗教行事への出席だが、要は体のいい選挙の疲れを癒すための夏休みの海外旅行。創価学会は移動手段の明細を明らかにしないが原田会長らがエコノミークラスで移動するとは考えられない。もちろんその原資は「財務」であろう。