3月号目次
閻魔帳
「2馬力選挙」以上に公正公平な選挙の弊害となっている「比例は公明」/乙骨正生
特集/二つの宗教関連裁判から見えるもの
「長井秀和市議への恫喝訴訟」の根本にある「学会の言論出版妨害体質」をブッた斬る/古川利明
統一教会信者と鈴木エイト氏の訴訟に判決 N国も加わる“場外乱闘”/藤倉善郎
「長井裁判」が映し出す「東村山市議転落死事件」の闇の深さ/段 勲
トピックス
地方政治の暗部──公明党が仕切る一部事務組合議会の実態/朝木直子
トピックス
アメリカにおける反ユダヤ主義とキリスト教の関係/橋本征雄
- 連載
信濃町探偵団──創価学会最新動向
「日本の議会政治」を考える(11)
「カルト政治」の淵源──住専国会と「密会ビデオ」(3)/平野貞夫
ナニワの虫眼鏡(第69回)
まったく盛り上がらない開幕直前の大阪万博 原因の1つは万博協会の機能不全か?/吉富有治
ヨーロッパ・カルト事情(318)
セクト的逸脱対策法改正後の司法・内務省通達/広岡裕児
執筆者紹介&バックナンバー一覧 編集後記
編集後記から
1月24日に召集された通常国会は、昨秋の衆院選で自公が敗北し、少数与党となったことから、自公が安定多数を占めた安倍一強時代とは様相を一変し、自公の横暴に一定の歯止めがかかっていますが、その通常国会の冒頭、政界に大きな波紋を投げかけたのは、斎藤鉄夫公明党代表による「連立離脱発言」でした。
同発言は斎藤代表の単独インタビューとして1月29日付『朝日新聞』に掲載されたもので、その中で斎藤代表は先の衆院選での敗北は、「自民に寄りすぎ」たからとの認識を示し、「結党の原点に立ち返って、再スタートしたい」と発言。以下、自民党との違いを強調すべく自民党と意見の相違がある裏金問題や核兵器禁止条約への対応について次のように語りました。
「国民の信頼を回復するべく、自民党は実態解明にもう少し積極的であってほしい」
「核廃絶というのは我が党の原点。核兵器禁止条約の締約国会議に戦争被爆国としてのオブザーバー参加を実現したい」
同様に自民党右派の反対が強い「選択制夫婦別姓」の導入についても、「公明が最も大切にしている人間の尊厳に関わることであり、実現したい」と強調。「実現しなければ、連立離脱もあり得るのか」との質問に対して、
「『何があっても自公連立は崩しません』ということはない。我が党が譲れないもので意見が対立し、合意が得られなかった場合に連立離脱というのはあり得る」
と発言したのです。
同発言について政界やマスコミ界では、「結党の危機」である公明党が、東京都議選・参院選で勝利するための独自性と存在感発揮のパフォーマンス、あるいは自民党への条件闘争などと分析されていますが、元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏は、折衷案が見つからなかった場合は連立にヒビが入り、参院選で自民が敗北したら連立離脱に繋がる可能性があり、その場合に公明党は、「新たに野党連立政権を立ち上げるかもしれません」(『SmartFLASH』2月16日付)との見方を示しています。
もっとも朝日新聞インタビューで、「核廃絶というのは我が党の原点」「オブザーバー参加を実現したい」とまで話していたオブザーバー参加を政府が見送ったにもかかわらず、斎藤代表はこれを批判することはなく、「連立離脱」の「り」の字も口にすることはありません。
「立党の原点」を踏みにじられても「連立離脱」しない政党が口にする「連立離脱」の言葉に、どれほどの重みがあるかは明らかですが、公明党=創価学会が、生き残りを賭けて次なる政治戦略を模索している気配は濃厚です。
小誌は今号で通巻350号となりました。読者の皆様にご購読を感謝します。
特集/二つの宗教関連裁判から見えるもの
「長井秀和市議への恫喝訴訟」の根本にある「学会の言論出版妨害体質」をブッた斬る
古川利明
ジャーナリスト
恫喝訴訟が狙う口封じ、当選阻止、見せしめ…
お笑い芸人として「間違いなーい!」のフレーズで一世を風靡した元創価学会員2世の長井秀和が、無所属新人として立候補した西東京市議選(22年12月25日投開票、定数28)において3482票を獲得し、40人中、ぶっちぎりのトップ当選を果たしていた際の選挙演説で、東村山市議だった朝木明代の転落死事件(発生は95年9月1日夜、享年50)について触れたことに、創価学会が「事実無根の虚偽を提示されたことで名誉が毀損された」として長井を相手取り、1100万円の損害賠償を求めていた訴訟の判決が、2月19日に東京地裁民事第16部で言い渡され、裁判長の平井直也は、原告側の主張をほぼ丸飲みしたうえで、22万円の支払いを被告に命じた。
当該の演説は、西武新宿線田無駅北口で行われ、ここで長井は「東村山の朝木さんがね、謎の転落死をした。これはもう他殺ですよ。皮下出血があるということは何かしらの、要は人為的な圧力を加えなければ(右手で左上腕下部を触りながら)、ここに出血なんかできないんです」と指摘した後、「このようなことをですね、平気で行ってきたのが、創価学会でございます」と述べていた。恐らく、現場で「これ」を創価学会員が、その一部始終を監視し、動画撮影もしていたのだろうが、何とこの翌日の12月20日に、学会は即、訴訟を起こすとともに、この長井に対する刑事告訴もダブルで警視庁田無署に行っていたのである。本題に入る前に、この恫喝行為自体が、創価学会や公明党を批判しようとする人間に対して口封じを企図した、まさに「言論出版妨害」以外の何物でもなく、さらに言うなら、是が非でも「長井当選阻止」を狙った謀略活動の一環と捉えることもできる。あと、「元創価学会員2世」ということで、「脱会して、あの長井のマネなんかをした日には、いいか、こうなるんだぞ」との、内部統制のための見せしめの側面もあるだろう。
裁判で被告側は、当該の長井本人の発言について、その前段において、応援弁士である元プロボクサーのサルサ岩渕や武蔵村山市議の天目石要一郎の演説で触れていた「捜査機関や行政当局と創価学会の癒着による闇」から生み出されている、要は「デタラメ三昧の極み」を「平気で行ってきたのが創価学会である」と指摘したもので、「名誉毀損には当たらない」と反論し、全面的に争っていたが、裁判長は全く聴く耳を持たず、「原告側の実質全面勝訴」の判決を下していたのである。ただ、国を相手取った国賠訴訟において、原告側の訴えが認められることはめったになく、マトモに審理すらされずに門前払いもザラで、「裁判で真実が認められる」というのは、残念だが、そうあることではない。ましてや、参院では最高裁に影響力を陰に陽に行使できる法務委員長のポストを公明党(=創価学会)が握ったまま、絶対に手放さないことからも分かるように、「裁判所が創価学会におべっかを使っている」というのは「公知の事実」である。ただ、今回、裁判所は「被告による当該演説を実際に聴いていた人間は少数に止まり、また、原告側は、その被告に対する刑事告訴と併せて本件を提訴した際、それを否定する反論を行っている」として、賠償額を請求金額のわずか2%の22万円しか認定しなかったのは、昨年10月の衆院選での「自公過半数割れ」により、政治力が削がれていることが影響しているのではないだろうか。もし「自公過半数維持」だったら、半分の550万円とか、場合によっては、満額認めていた可能性がある。
「不当判決」を生み出した言論出版妨害体質
それで、この朝木市議の転落死事件だが、本誌23年3月号の拙稿でも触れたように、捜査当局は「自殺の可能性が濃厚で、犯罪性はない」として、早々に捜査を打ち切っているが(なお、東村山署の捜査を指揮した当時の東京地検八王子支部の支部長の吉村弘と担当検事の信田昌男は、双方ともバリバリの創価学会員だった)、そもそも、その「公明党・創価学会と行政の癒着」という「東村山の闇」についても、政教一致の問題と併せて、朝木市議は議会などで徹底的に追及していたため、信濃町からは目を付けられ、誹謗ビラを撒かれたり、自宅への放火未遂など、そこからと思われる嫌がらせを執拗に受けていた。それゆえ、少なくとも、周りの人間は皆、「彼女が自殺する動機は全くない」と口を揃えていたのである。
折しも、元参院議員の平野貞夫が本誌で連載中の「『公明党と創価学会』を考える」で取り上げている、かつて70年代に静岡県富士宮市で創価学会が計画していた墓苑建設を巡り、学会側から依頼を受けて反対派潰しに動いたことを機に、スブスブの腐れ縁が続いていた指定暴力団・山口組系後藤組組長の後藤忠政と、その今は亡き池田大作が創立した公明党の都議で、池田の御庭番でもあった藤井富雄による例の「密会ビデオ」だが、「これ」は朝木市議が転落死した直後の95年末に流出したもので、その中で藤井は後藤に対し「4人、もしくは5人の名前」を挙げ、「この人たちはためにならない」と、受け取りにようによっては殺害の依頼とも窺える発言があったという。なお、筆者が掴んでいる情報では、その名前とは「亀井静香、白川勝彦、朝木明代、乙骨正生(本誌発行編集人)」で、であれば、手練れの野中広務が「これ」で信濃町を脅し上げることで、「自公連立」へと持って行ったことと、話が繋がってくる。
さらには、この転落死事件について、映画監督の渡辺文樹が徹底取材を基に「朝木市議の転落死には後藤組が関与している」とのストーリーで、吉展ちゃん事件の犯人だった小原保ら学会員による犯罪をテーマに『阿鼻叫喚 大作の死』というタイトルの映画を既に03年に完成させているものの、朝木市議を演じた主演女優が「上映したら、殺す」と脅されたために、何とお蔵入りとなって、現在に至っている。ゆえに、この朝木市議の転落死とは「創価学会が藤井富雄を通じて後藤忠政に殺害を依頼し、それで実行に移してもらったのでは」との見立てや疑惑を招いている。もっと言うなら、「スラップ」とも称されている恫喝訴訟、つまり、「名誉毀損訴訟における賠償金の高額化」とは、自公で政権与党入りした公明党(=創価学会)が、01年の衆参の法務委員会で、答弁に立った最高裁の担当者をコテンパンに吊るし上げたことで、実現に至ったものである。であれば、今回の「長井秀和市議に対する恫喝訴訟であり、その不当判決」を生み出した根源にあるものとは、まさしく、自らに対する批判は絶対に許さない、この「創価学会=公明党」の独善そのものの言論出版妨害体質なのである。
「負けられない法戦」控え巧妙なコウモリ飛行
さて、「絶対に負けられない法戦」である東京都議と参院の時間差ダブル選を今夏に控えている公明党(=創価学会)だが、折からの物価高騰と自民党の裏金問題という強烈な逆風を政権与党として、モロに受けているため、風をよけるべく、その自民党を盾にしながら、とにかく、至上命題である「現有勢力の維持」を確保するために、いつもながらのコウモリ飛行にも、余念がない。そこで、公明党代表の斉藤鉄夫は、その自民党内で意見が割れている選択的夫婦別姓の導入について、党プロジェクトチームの初会合があった翌日の朝日新聞(1月29日付朝刊)のインタビューで、この法案の扱いについて「今国会で結論を出さなければいけない時が来ている」としたうえで、「我が党が譲れないもので意見が対立し、合意が得られなかった場合には連立離脱というのはあり得る」とまで言い切っている。ブラフとはいえ、敢えて「連立離脱」という言葉を出すこと自体、内閣支持率が好調であれば、まず、あり得ないので、極めて異例と言える。
しかし、その一方で、保守的なスタンスから選択的夫婦別姓に反対している産経新聞(2月15日付)の取材に応じた創価学会関係者による「女性部でも『選択的夫婦別姓を進めて欲しい』という意見は大勢ではない。他にもっとやるべきことがあるのではないか」や、さらに同幹部の「創価学会として公明に制度導入を働きかけているわけではない。会員同士でもほとんど話題になっていない」との話を書かせることで、そのコウモリ飛行ぶりも微に入り細を穿つほどの巧妙さで、サル芝居とは言いながら、最早、芸術の域に達している。
こうした中、この2月7日に「能動的サイバー防御」なるものを導入する関連法案が閣議決定され、国会に提出された。要するに「外国からのサイバー攻撃が頻発していることから、これを未然に防ぐため、航空や鉄道、ガス・電気・水道に金融といった基幹インフラを守るべく、官民が連携してネット空間において兆候を探り、それを察知した時点で警察と自衛隊が相手先のサーバーに侵入し、無害化措置が取れるようにする」というのが謳い文句で、傍目には何のことやら、さっぱり分からないが、とにかく、問題山積の法案であることだけは、間違いない。何はともあれ、これは「米国からの要請」によるもので、あのウクライナ戦争を始めとして、実際の戦闘と合わせ一本で、まさしく、先制攻撃に他ならないが、ウイルスを放り込むことで停電を引き起こすといったサイバー戦も、実は水面下では繰り広げられている。
であれば、本来であれば「軍事マター」の話なので、自衛隊が対応すればいいだけの話だが、今回の「能動的サイバー防御」においては、敢えて警察をかませているのが、ミソなのである。と言うのは、「サイバー攻撃の兆候を探る」という名目でネット空間を常時監視する際、まずは、警察が裁判所の令状なしに「ここ」を調べることができ、もちろん、憲法21条の通信の秘密に抵触する。だから、あの恫喝訴訟を駆使する我が国最大の「カルト」、すなわち、「宗教の仮面を被った全体主義結社」であるところの創価学会が完全にコントロールする公明党が、政権中枢に居座っているからこそ出てきている、実にキナ臭い法案であることについて、我々心あるジャーナリズムは警鐘を鳴らす必要がある。(文中・敬称略)
古川利明(ふるかわ・としあき)1965年生まれ。慶応義塾大学文学部卒。毎日新聞、東京新聞(中日新聞東京本社)記者を経て、フリージャーナリスト。『システムとしての創価学会=公明党』『シンジケートとしての創価学会=公明党』『カルトとしての創価学会=池田大作』『デジタル・ヘル サイバー化監視社会の闇』『日本の裏金(上、下)』『ウラ金 権力の味』『「自民党“公明派”」10年の功罪』『「自民党“公明派”」15年目の大罪』最新刊『「自民党“公明派”」20年目の大失敗』(いずれも第三書館刊)『核と原発 ヒロシマ・ナガサキ、ビキニ、そしてフクシマを繋ぐ悲劇の誕生』(アメージング出版)など著書多数。
信濃町探偵団──創価学会最新動向
- 長井秀和西東京市議に対する名誉棄損訴訟関連報道
・2月20日付『デマ演説で学会の名誉を依存 長井秀和氏に賠償命令 東京地裁』
「東京地方裁判所(平井直也裁判長)は19日、悪質な虚偽の発言で創価学会の名誉を毀損した長井秀和氏に対し、22万円の損害賠償の支払いを命ずる判決を下した」
・2月24日付『聖教新聞』「座談会 師と共に歓喜の舞」「虚偽の発言に断罪」
「板子(男子部大学校事務局長)2022年の西東京市議選の街頭演説で、1995年の東村山市議の転落死は学会による他殺であると虚偽の発言をし、学会の名誉を毀損した長井秀和氏に19日東京地裁から賠償命令が下されました。マスコミ各社も『長井秀和氏が敗訴』(毎日)などと速報していました。
金久保(牙城会委員長)この転落死は、他殺を窺わせる証拠がないことから、東京地検が『事件性はない』として、25年以上前に捜査を終結させたものです。それは今回の判決でも記されています。
須藤(創価班委員長)にもかかわらず、長井氏は街頭で事実無根の発言をしたわけです。裁判では、その追及から逃れるためか、“市議の殺害に学会が関与したと発言したわけではない”と苦し紛れの弁解をしましたが、『被告の主張は採用できない』と排斥されました。
原田(会長)日蓮大聖人は五濁悪世の只中で、『跡形も無き虚言』の誹謗を弾呵されました。私たちは人権を守るため、民主主義を守るため、真実と正義の言論をさらに展開していきたい」
※2022年12月の西東京市議会議員選挙に立候補しトップ当選した創価学会2世の長井秀和氏が、選挙期間中の12月19日に西武新宿線田無駅前で行った演説で、創価学会問題や朝木明代東村山市議転落死事件に言及したところ、創価学会が名誉棄損にあたるとして、1100万円の損害賠償を求め提訴していた裁判で、東京地裁民事16部(平井直也裁判長)は、2月19日に原告・創価学会の主張を認め、賠償金22万円を被告・長井氏に支払うよう命じる判決を言い渡した。
同日午後3時から司法記者クラブで長井氏らは記者会見。その席上、被告代理人の大山勇一弁護士や笹山尚人弁護士は、「残念ながら不当判決」と述べるとともに、「選挙期間中の演説は、通常の言論よりも保護される必要性が高い」にもかかわらず、1100万円もの高額の請求訴訟を提起してくること自体、「政治的な言論の弾圧を目的としたスラップ訴訟」であると批判。その上で裁判所は被告の主張を認めなかったが、1100万円の請求に対して22万円の損害額しか認めなかったことは、「名誉毀損訴訟としても非常に少ない損害額しか認定しなかったのは、ある意味、この訴訟の本質を表している」と、提訴の背景にある政治性や不当性を示唆している旨、指摘した。
記者会見に同席した朝木明代市議の遺族である朝木直子東村山市議も、「選挙演説とは時間に追われ、原稿もない状況で行うもの」であると、長井発言が行われた状況を踏まえつつ、「断片的な片言隻句をつかまえて訴えること自体にスラップ性を感じる」と発言。また母親である朝木明代市議転落死事件では、事件を担当した東京地検八王子支部の担当検事と支部長検事がともに創価学会員だった点を指摘し、「オウム事件の捜査をオウム信者の検事が担当していたら大問題」となったはずだが、朝木市議転落死事件では、創価学会を批判する市議の事件を創価学会員検事が担当していたにもかかわらず、司法はもとよりマスコミや政治もその点を等閑視したと、事件の異常さに言及した。
長井氏本人は「創価学会を糾弾する政治的言論活動をしてきたが、訴訟はこれを封じようとするもの」と批判。判決内容についても、弱者の人権を尊重すべき司法が、政権与党のバックボーンである巨大宗教団体に忖度する「強者の立場に立ったものであり不当だと思う」とし、「今回の判決によって被害を受けている宗教2世の方々が、声をあげることを躊躇してしまうのではと、不安を抱いている」と強調した。
長井氏は判決を不服として東京高裁に控訴した。