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2025年9月号参政党に太刀打ちできない創価学会・信仰モデルの終焉

9月号目次

 

閻魔帳

終戦80年、選挙と教義の自家撞着が表面化 池田氏監修『教義要綱』後、減る票と議員/工藤信人

特集/識者が見た創価学会の現状と展望

参政党に太刀打ちできない創価学会・信仰モデルの終焉/島田裕巳

今後も“池田教”のままならば創価学会は沈没するしかない/小川寛大

“不戦と核廃絶”を謳う「終戦80年・原田談話」から透けて見える、その欺瞞をブッた斬る/古川利明

「平和団体」としての存在意義をアピールする創価学会の無責任体質/乙骨正生

 

トピックス

参政党を構成する保守思想、スピリチュアル、オカルト/藤倉善郎

  • 連載

信濃町探偵団──創価学会最新動向

「日本の議会政治」を考える(17)

「自民と公明によるカルト政治」――新進党の政策と崩壊への道(4)/平野貞夫

ナニワの虫眼鏡(第75回)

連立入りを射程においた維新 ただし石破政権のままなら実現は不可/吉富有治

ヨーロッパ・カルト事情(324)

国際的権威を利用して蠢動するカルト支持勢力/広岡裕児

執筆者紹介  編集後記

 

 

編集後記から

気象庁は、昭和100年・戦後80年の今年の夏(6月~8月)を、統計のある1898年以降、最も暑かった夏だったと発表しました。この“異常”な暑さの原因を研究者で構成する「極端気象アトリビューションセンター」(WAC)は、地球温暖化によるものと分析しています。

もはや人類の生存を脅かす重大な危険要因となっていることが明らかな地球温暖化ですが、その対策は遅々として進まないばかりか、いま国際情勢は自国第一主義をかかげるトランプ大統領の再登場以来、ますます混迷の度を深め、先の参院選での参政党の躍進に顕著なようにその影響は日本にも影を落としています。

その参政党から立候補して東京選挙区で当選した女性候補は、選挙期間中「核武装が最も安上がり」と発言し世間を驚かせました。その根拠を教えたのは元航空幕僚長の田母神俊雄氏だったことも明らかとなりましたが、こうした核兵器容認や核抑止力依存、さらには軍備増強に対して厳しい批判や反対の声があがっています。

そうした声の中には、創価学会の原田稔会長が8月1日に発表した「終戦80年に寄せて 『不戦の世紀へ時代変革の波を』」と題する「談話」や、公明党が8月15日に出した「終戦記念日アピール」もあります。しかし原田会長の「談話」は、創価学会の初代・2代・3代会長、なかんずく池田大作3代会長の平和活動を自画自賛するだけの空疎な作文に過ぎず、ほとんど説得力を持ちません。

これに対して80回目を迎えた広島原爆忌での湯崎英彦広島県知事の挨拶は、ひときわ輝いていました。湯崎知事は、「核抑止はフィクション」であると喝破するとともに、日本被団協のノーベル平和賞受賞式での被曝者・サーロ節子さんの挨拶の一節「諦めるな。押し続けろ。進み続けろ。光が見えるだろう。そこに向かって這っていけ」を引用しつつ、次のように訴えました。

「核兵器廃絶は決して遠くに見上げる北極星ではありません。被爆で崩壊した瓦礫に挟まれ身動きの取れなくなった被爆者が、暗闇の中、一筋の光に向かって一歩ずつ這い進み、最後は抜け出して生を摑んだように、実現しなければ死も意味し得る、現実的・具体的目標です。……這い出せず、あるいは苦痛の中で命を奪われた数多くの原爆犠牲者の無念を晴らすためにも、我々も決して諦めず、粘り強く、核兵器廃絶という光に向けて這い進み、人類の、地球の生と安全を勝ち取ろうではありませんか」

創価学会の平和アピールが、3大政治決戦で惨敗した勢力回復を図るための方便なのか、それとも真に平和団体としての存在感を示すものなのか。真贋をしかと見届けましょう。

特集/識者が見た創価学会の現状と展望

 

今後も“池田教”のままならば創価学会は沈没するしかない

小川寛大

『宗教問題』編集長

 

「夢を語れない」公明党のジレンマ

2025年にもなって、やっと“20世紀”が終わろうとしているのか――。今年7月の参議院議員選挙の結果からまず思わされたのは、そういうことだった。

この選挙において、新宗教団体・創価学会を母体とする公明党は6議席減となって大敗。同党は今年6月の東京都議会議員選挙、昨年10月の衆議院議員選挙でも振るわず、その党勢の衰退が各方面から指摘されている。

そして同時に現在、そんな公明党に勝るとも劣らない勢いで選挙に負け続けているのが、日本共産党だ。7月の参院選では改選議席7のうち、4を落とした。石破茂政権に大変な逆風の吹くなかで迎えた、「野党有利の選挙」と言われた戦いでこれなのだから(そして実際に躍進した新興政党もあったことなどと考え合わせれば)、すでに共産党は民衆から見放されていると言っても過言でないのではないか。

これはいったいなぜなのか。すでに各種のメディアで、識者らがさまざまな分析を行っている。そしてそれらの多くは共通して、「共産党の組織の高齢化」という問題を指摘している。すなわち、熱心な共産党員の多くが後期高齢者などの年代になっていて、体力面からも選挙運動の熱量が低下。また鬼籍に入る人も多くなり、党自体の規模も縮小しているというのである。そしてこれはほとんどそのまま、「なぜ最近の公明党には元気がないのか」との問いへの答としても、同じように指摘されている問題だ。

それではなぜ、共産党の組織はそこまで高齢化しているのだろうか。これも決して、そう難しい問いではあるまい。共産党とはつまり、共産主義革命を行うために存在している政治団体である。しかしソビエト連邦が崩壊してからすでに30年超。この令和、21世紀の日本社会で、共産党の主導する“革命”が起こりうると、本気で信じている日本人はどれだけいるのだろうか。率直に言うが今や共産党員ですら、革命の到来を思想を本気で信じている向きは少数派だろう。すなわち、共産主義の“賞味期限”はすでに切れているわけであって、そうなれば共産党に票が集まらないのは当然だ。共産党の党勢が落ちているのは、つまりはそういう歴史的必然である。

それでは翻って、創価学会・公明党の“賞味期限”とは、今現在どうなっているものなのだろうか。

参院選直後の7月27日、公明党がインターネット動画投稿サイトのYouTubeで運営している「公明党のサブチャンネル」に選挙プランナーの松田馨氏が出演し、現在落選中の公明党前衆議院議員・伊佐進一氏と「『公明党は負けて当然‼』選挙プランナー松田馨が公明党の敗因を徹底追求‼」というテーマで語り合う番組が投稿された。タイトルから見ても、公明党のオフィシャルな情報発信としては非常に勇気のある構成の内容であり、YouTube上で誰もが無料で視聴できるものであるから、興味のある方はぜひ視聴してほしい。

松田氏はこの番組のなかで選挙プランナーという立場から、今回の参院選における公明党の公約をいろいろと分析しているのだが、それらを「何がしたいかよくわからなかった」とバッサリ切り捨てている。そして松田氏は、公明党の公約はそれなりに練られてはいて、興味深いものも多々あるとはしながら、一方で総じて「優等生的」であり、「響かない」と指摘。それに対して伊佐氏も「(公明党は)夢を語れていない」と応じて、松田氏の指摘を率直に認めている。

純粋な選挙戦術上の分析として、この松田氏の動画は今回の参院選における公明党の敗因を、極めて的確に読み解いているものだ。もっとも公明党に限らず、与党サイドの公約というものは、どうしても総花的で優等生的になってしまいがちで、何かを鋭く衝くようなものにはなりがたい。しかしながら、今回の参院選で公明党が掲げた「やると言ったら、やり切る。」というスローガンが、例えば国民民主党の掲げた「手取りを増やす夏」や、また参政党の掲げた「日本人ファースト」といったものに比べ、明らかにインパクトのないものだったのは間違いないだろう。だいたい「やると言ったら、やり切る。」というが、公明党は具体的に何をやってくれるのか。もちろん、公約パンフレットを詳細に読み込めばいろいろなことが書かれているわけだが、スローガンひとつで“ガツン”と響く感じはしない。そこを松田氏や伊佐氏は「何がしたいかよくわからなかった」、「夢を語れていない」と総括したのだろう。そして、その総括自体は極めて真っ当だ。

 

宗教的モットー喪失が衰退の一因

それでは公明党は現状を挽回するため、どんな「やりたいこと」や「夢」を有権者に訴えていけばいいのだろうか。

例えば日本共産党の場合、その答はあまりにも単純明快だ。「共産主義革命の貫徹」である。もちろんすでに述べたように、その思想が今日の日本人にどれだけ響くのかは不明だが、そもそも共産党とは革命をやるための前衛政党なのであって、人気があろうとなかろうと、その原点を離れて党は存続しえない。何とかその共産主義という思想を21世紀の社会に適合するよう再構築でもしながら、愚直に人々へ革命を訴えていく以外に道はないだろう。

そして創価学会・公明党の場合にも、それと同じくらいわかりやすい原点、すわなち「やりたいこと」や「夢」が、実はあるのだ。それはほかでもない、「一閻浮提広宣流布、王仏冥合、国立戒壇建立」である。創価学会の戸田城聖・第2代会長は、学会として政界進出をするにあたって「われらが政治に関心をもつゆえんは、三大秘法の南無妙法蓮華経の広宣流布にある。すなわち、国立戒壇の建設だけが目的なのである」とはっきり言っている。創価学会・公明党の原点は、是非はともかくそこにしかない。

もちろん創価学会の100年に近い歴史のなかで、例えば国立戒壇構想は取り下げられたことになっているし、現在の公明党は極力、政教一致的なニュアンスのある言葉は使わない形で政治活動を行うに至っている。しかし、今の創価学会に「一閻浮提広宣流布、王仏冥合、国立戒壇建立」に代わる、新しい宗教的な目標がわかりやすく掲げられているのかといえば、別にそんなことはない。また、池田大作名誉会長はその晩年まで、ノーベル平和賞受賞などを視野に入れた「天下取り」の構想に基づいた活動を、精力的に行っていた。そういう意味では、単に世間からの批判を避けるために政教一致的な文言を表看板から外したというだけの話で、創価学会・公明党は今なお、実質的には王仏冥合を目指し続けて活動していると見ることもできる。

ただ、それでも“表看板”から教学的な事柄が脱落してしまったことの影響は、小さくなかった。もともとの上部団体・日蓮正宗と決裂した1990年代以降、特に顕著な流れとなってはいるのだが、創価学会員に「あなたは何のために公明党を支援しているのですか」と問うても、「池田先生が喜ぶから」「(現世利益的な)功徳になるから」といった答しか返さない人が多数派であり、また選挙という問題を外しても、日ごろから精密に教学の研究に打ち込んでいるような学会員の数が、目に見えて減ってきた(ここでも「では、あなたは何のために創価学会員をやっているのですか」と問うたら、返ってくる多くの答は「池田先生が喜ぶから」といった言葉だ)。これぞ、「今の創価学会は日蓮仏法から離れた“池田教”でしかない」という批判が出てくる土壌になっているものである。

そういう流れのなかで池田名誉会長まで死去してしまった現在、「創価学会という宗教」はいったい何をモットーとして存在しているのか、ますますわからなくなってしまった結果として、公明党の党勢も振るわなくなってしまっているのではないか。

そういう意味で今の創価学会が取り組むべきは、“池田教”や“公明党のための集票マシーン”といった姿から脱した、“きちんとした宗教団体”としての再構築以外にないのではないか。特に国立戒壇構想などというものは、もともと日蓮正宗に富士戒壇論が存在したとはいえ、国柱会・田中智学の影響抜きには考えにくいものだ。また池田大作という人物も、まさに田中角栄を彷彿とさせるような“昭和のリーダー”的人物であり、そういう意味でも“20世紀”の価値観に引っ張られ続けてきたのが、この創価学会の100年だったと見ることはできる。つまり今こそなすべきは、“きちんとした宗教団体”としての再構築の上に、新しい創価学会の100年へ踏み出していくことなのだろう。

もちろん、創価学会として、そんなことは誰に言われずともわかっていることなのだと思う。『創価学会教学要綱』の発行(2023年)など、彼らは明らかに、新しい段階への宗教的模索を始めている。しかし、それに対する内部からの批判は、無視できないほど大きいのだという。例えば『創価学会教学要綱』を批判する学会員らが異口同音に言うこととは、「こんなことを池田先生はおっしゃっていなかった」なる主張なのだそうだ。やはり創価学会は、“池田教”という“20世紀の姿”のまま沈没していくしかないのか。それとも――。

 

小川寛大(おがわ・かんだい)『宗教問題』編集長。1979年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。宗教業界紙『中外日報』記者を経て、2014年、宗教専門誌『宗教問題』編集委員、15 年に同誌編集長。著書に『神社本庁とは何か』(K&Kプレス)『南北戦争』(中央公論社)など。

 

信濃町探偵団──創価学会最新動向

 

  • 創価学会が2審も敗訴

――「SNS投稿」に関する著作権侵害訴訟で

・8月5日付『弁護士ドットコムニュース』「創価学会、聖教新聞の『SNS投稿』めぐり2審も敗訴…上告へ 著作権侵害訴訟」

〈聖教新聞の紙面を撮影し、ツイッター(現X)に投稿したのは著作権侵害にあたるとして、同紙を発行する宗教法人「創価学会」が投稿者に約419万円の損害賠償を求めた訴訟で、知財高裁は、創価学会側の控訴を棄却する判決を言い渡した。2024年9月の1審・東京地裁に続いて、創価学会側が敗訴したかたちだ。裁判所は、時事報道の公共性を重視し、報道に対する批判目的の引用を広く認める判断を示した。判決は7月31日付〉

 

※SNS上のツイッターに、聖教新聞掲載の写真や記事をスマートフォンで撮影し、記事内容を批判的に論評する投稿を、「七ツ星」とのハンドルネームで2018年10月から19年10月にかけて25回にわたって行っていた創価学会の男性会員に対して、創価学会が著作権侵害にあたるとして419万円の損害賠償を求めて提訴していた訴訟の控訴審で、東京知財高裁は、一審の東京地裁同様、創価学会の請求を棄却する創価学会敗訴、「七ツ星」氏勝訴の判決を言い渡した。

創価学会が敗訴した昨年9月26日の判決の中で東京地裁は、「七ツ星」氏側の投稿内容は著作権法が許容する「著作物の引用」との主張を認めていたが、知財高裁も一審判決を支持し、「七ツ星」氏の投稿は著作物の適正な引用にあたると認定。あわせて知財高裁は、「一般に、報道機関の記事や写真について、引用の必要性を厳格に要求することは相当ではなく、特に今回の訴訟のように、機関紙の読者が報道内容に言及し、批評する場合には表現活動の自由を保護する必要性が高いなどと指摘」(『弁護士ドットコムニュース』)した。

判決について「七ツ星」氏は、「たしかに私は批判的なことを投稿してきたが、引用が適正なものだったと裁判所に認められた。著作権侵害を理由とした訴えは、批判的な意見を持つ者への見せしめだったのではないかと感じる」(同)とコメントしている。

創価学会は自らに対する批判的言論を封じるために、名誉棄損と著作権侵害を根拠とする訴訟を濫発してきたが、今回の東京地裁に続く知財高裁の判決は、そうしたスラップ訴訟を組織防衛の手段としてきた創価学会にとって、厳しい司法判断となった。

 

  • 選挙敗北を糊塗――「世界宗教」の演出

・8月16日付『聖教新聞』「南アジア・韓国・日本合同研修会 ソウルの池田記念講堂で開講式」

・8月17日付『聖教新聞』「韓国が躍動の幹部会 南アジア・日本合同記念大会」「池田先生の初訪韓35周年を祝賀」

・8月25日付『聖教新聞』「マレーシア国際イスラム大学 思想・文明研究所で宗教間交流行事」「原田会長が招へいを受け記念講演」

 

※衆院選・東京都議選・参院選と、「立正安国」の「政治決戦」で3連敗した創価学会が、意気消沈する創価学会員の目を国内から海外に向けるためなのでもあろう、海外での行事を聖教紙面で大喧伝。御年83歳の原田会長も韓国・マレーシアに出張し指導・講演、「世界広布の推進」を唱えているが、「政治決戦」惨敗の総括は見られない。

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