2005-9-15

特集/創価学会・公明党の選挙戦――衆院選挙の現場から

「法戦」に協力する日本国首相

乙骨正生 ジャーナリスト

 本誌発行時にはすでに結果が出ているが、8月30日公示、9月11日投票の衆議院総選挙を、創価学会は「創価学会創立75周年」を勝利で飾るための「法戦」と位置づけている。
 公示当日の8月30日付「聖教新聞」に掲載された「きょう衆院選公示 無事故で堂々と支援を」と題する秋谷栄之助会長の談話には、そうした創価学会の本音が赤裸々なまでに現れているので紹介しよう。ちなみに秋谷談話のタイトルは「“勇気の民衆”の大金字塔を!」。
 「創立75周年完勝の最高峰へ、新たな登攀が始まった。広宣流布は、つねに権力の魔性との闘争である。戦いが、どんなに熾烈であっても民衆を見下す悪党には、断じて勝たねばならない。そうでなければ、民衆勝利の夜明けは来ない。
 今日の隆々たる創価の民衆の大城は、池田先生の『師弟不二』の戦いによって築かれた。師弟に徹すれば、無限の力がわく。不可能を可能にできることを、池田先生が厳然と証明している。
 我々は『絶対勝つ』との一念をさらに固め、『次の50年』への大発展の勝利の因を刻んでまいりたい。(中略)
 勝負を決するのは勢いである。猛然と立ち上がった『一人』が勢いを生むのである。そのためには、徹して目の前の一人を味方にしていくことである。『祈り』と『執念』が、すべての勝利の突破口を開く。
 一人一人が獅子となって、学会創立75周年を、勇気みなぎる民衆の勝利の金字塔で飾ろうではないか」
 十年いや二十年一日ともいえる「会長談話」の基本的なトーンは、選挙の勝利が創価学会の勝利=広宣流布の進展ということである。衆議院の解散以後、秋谷会長は、小選挙区に公明党候補の立つ東京12区、神奈川6区などの地元組織の諸会合に出席。「執念の祈りで最後まで攻め抜け」(足立)「勢いを増しながら勝利に結実する戦いを」(神戸)などと、学会員に檄を飛ばし続けている。

 「攻めろ」と檄飛ばす池田氏

 そして創価学会の「永遠の指導者」(創価学会会則)である池田大作名誉会長もまた、「聖教新聞」に連日掲載される「わが友に贈る」などのコラムや、幹部研修などのスピーチ、そして随筆などを通じて、学会員に対して「完勝」を訴えている。その一例として池田氏が「攻めろ」「勝て」と叫び続ける9月1日から7日までの「わが友に贈る」を紹介しよう。
 「『賢者はよろこび 愚者は退く』 打って出よ! 広宣流布のため! 自身の勝利のために! 9月1日」
 「『臆病にては 叶うべからず』 強く!強く! もっと強く! 声の力で攻め抜け! 9月2日」
 「創価の青年よ! 広布の英雄たれ! 最高無二の青春を 堂々と生き抜け! 君の勝ち戦を祈る! 9月3日」
 「完勝の頂へ 大攻勢の 指揮を執れ! 目標を明快に! 勝利へ突進せよ! 9月4日」
 「邪悪を圧倒する 正義の獅子吼を! 我らの戦いは いよいよこれからだ! 攻めまくれ! 9月5日」
 「厳しき天候のなか 奮闘する皆様! どうぞ健康で! どうか無事故で! 妙法の智慧で勝て! 9月6日」
 「『強敵を伏して 始めて力士を知る』 獅子奮迅の力で 壁を破れ! 信心は無敵の勇気だ! 9月7日」
 創価学会にあって池田氏は宗教上の最高指導者と位置づけられている。その池田氏の言は学会員にとって絶対的な意味をもつ。それゆえ学会員は、こうした池田氏の檄に応えるべく猛暑の中、あるいは台風の中、公明党候補の勝利=創立75周年の勝利のために駆けずりまわるのである。
 その池田氏が、公示当日の秋谷談話同様、今回の衆議院選挙を、創価学会創立75周年の勝利を飾るための「山」だと強調している「随筆」があるので紹介しよう。問題の記事は、衆議院が解散されてから6日後の8月14日付「聖教新聞」に「随筆 人間世紀の光 山本伸一(筆者注=「人間革命」における池田大作氏の登場人物名)」として掲載された「いざ創立75周年の大山へ!」「すべての勝利が広宣流布のため」と題する一文である。それは以下のように綴られている。
 「創立七十五周年の栄光へ、わが創価学会が、また一つ、広宣流布の大きい、大きい山を登る時が来た。
 『勝利は、わが迅速果敢な行動にあり』
 これは、かのナポレオンが結論した戦闘哲学である。
 人生は勝負だ。仏法もまた勝負だ。ゆえに、この一生、断じて勝たねばならない。
 勝てば幸福であり、負ければ不幸である。
 すべての勝利は、広宣流布のためにある。
 友よ、断じて勝て!
 友よ、断じて負けるな!
 私は、懸命に祈り、必死に呼びかけながら、次の五十年の完勝への指揮を執っている」
 突然の衆院解散による総選挙を「広宣流布の大きい山への登攀」と位置付ける池田氏。これにより、本来、内政・外交の諸問題についての選択を行うべき選挙は、宗教的次元へと置換され、選挙に勝つことがあたかも宗教的勝利であるかのように学会員は錯覚する。
 選挙の勝利が宗教的勝利である以上、勝たねばならない。池田氏はその手法として「迅速果敢な行動」をアピール。その上で、再度、選挙の勝利は「広宣流布のため」だと念押ししつつ、「勝てば幸福・負ければ不幸」と、選挙の勝敗が、自らの人生における幸・不幸に直結するかのように強調、「法戦」への決起を煽り立てている。
 冷静に考えれば、本来異質なものである選挙活動と宗教活動が結びつくはずもなく、池田氏のレトリックが牽強付会なものであることは容易に分かるはずなのだが、池田氏を宗教的絶対者として崇拝している学会員にとっては、池田氏のメッセージは絶対的指示となり、熾烈な選挙闘争へと身を委ねることになってしまう。

 首相を上回る浜四津氏への声援

 今回の総選挙で公明党は小選挙区に9人の候補を擁立した。このうち学会本部があることから「本陣・東京」と呼ばれる東京では、北区と足立区西部を選挙区とする東京12区に、創価学会の男子部長・青年部長を歴任した太田昭宏氏が立候補した。周知のようにこの選挙区では、自・公の候補者調整が失敗し、最終的に郵政民営化造反議員の八代英太氏が無所属で立候補。自民票をあてにしていた公明党・創価学会の目算が狂った。それだけに公明党・創価学会は東京12区を最重点区として、 眦 を決して太田当選のために尽力した。
 自民党も候補者調整の失敗をカバーすべく東京12区には、武部勤幹事長、安倍晋三幹事長代理、竹中平蔵郵政担当相、小池百合子環境相などが続々と応援に入り、9月4日午後には、小泉純一郎首相が東京12区に足を運んだ。
 JR赤羽駅東口の駅前広場に小泉首相、浜四津敏子公明党代表代行、太田候補を迎えての街頭演説会は、9月4日の午後12時45分から行われたが、それは一種、異様な演説会であり、今回の総選挙に挺身する学会員のエトスとでもいうべきものが凝縮している演説会だった。
 通常、小泉首相が応援に入ると、小泉首相見たさに集まった群衆からは小泉首相への声援が引きも切らないのだが、ここ赤羽駅東口に集まった群衆の雰囲気は、他の選挙区の群衆とは明らかに異質だった。なぜなら警備の警察官が「2年前とは比べものにならない」と口にするほどの大群衆の多くが歓呼で迎え、熱い声援を送ったのは、小泉首相よりも、浜四津代表代行、太田候補の方だったからである。
 「浜四津さーん、浜四津さーん」
 「太田さーん、太田さーん」
 黄色い声をはりあげ、浜四津代表代行に対してちぎれんばかりに手を振る婦人たち。彼女らが小泉首相に声援と拍手を送るのは、小泉首相が太田候補と公明党を持ち上げ、浜四津代表代行と太田候補の手をとって、太田候補への投票を呼びかける時だけだった。
 おそらく彼女らにとっては郵政民営化も構造改革も、どうでもいいのである。彼女らにとって重要なのは、日本国の総理大臣が、広宣流布のための法戦に協力しているという事実だけなのだ。小泉首相が浜四津代表代行と太田候補の手を取って公明党支援を訴える時、それを見る彼女らの面には、満足感と優越感、そして充足感が滲み出ていた。
 同様にいま自民党の小選挙区候補の実に82%が公明党の推薦を受け、「比例は公明」を連呼している。否、自民党候補ばかりではない、郵政民営化法案に反対したいわゆる造反議員として無所属で立候補した野田聖子氏が、陣営の看板ポスターに神崎武法代表のポスターを