2005-10-15

特集/韓国のテレビ局が報じた創価学会の真実

韓国SBSテレビは、なぜ創価学会問題を報じたのか

段 勲 ジャーナリスト

 機動隊4千人余りがSBS社屋の警戒に

 「南無妙法蓮華経 韓国SGIをどうみるか」
 去る8月27日、午後11時から1時間、韓国SBS(ソウル放送)テレビが、こんなタイトルで創価学会の検証番組を報じた。「SGI」とは創価学会インタナショナルの略称である。
 毎週土曜日、同局が夜の11時台に放送しているドキュメントタッチの「そこが知りたい」は、
 「SBSでも一定の評価を得ている報道番組で、視聴者からの信頼感も厚い」(「SBS放送」番組制作関係者)という人気番組。今回、韓国SGIを検証した放送でも、視聴率13%を獲得。全人口の10%、ざっと400万人強の韓国民が観た勘定になる。
 反響も凄かったようだ。「そこが知りたい」のインターネット掲示板には、視聴者から1千通からの書き込みがあり、放送中、抗議や賛同の声で同局の電話も鳴りっ放しであったという。
 一方、事前に「韓国SGI会員1万人が、テレビ局に押し寄せてくる」との物騒な情報が飛び交い、放送当日、機動隊45個中隊4千人余りがSBS社屋の警戒に当たった。まるで韓国の戒厳令時代を蘇らせるような物々しい雰囲気の中で、放送されたのである。
 番組は今年5月15日、ソウルのオリンピックスタジアムに10万人を結集させた韓国SGIによる「愛国大祝祭」の模様から始まった。以下、放送の中身については、本誌特集の別稿に譲るとして、同局が、韓国SGIを「そこが知りたい」で取り上げる直接の動機になったのは、5月に開催されるこの10万人結集の集会にあったようだ。
 日本という外国から入ってきた特定の宗教団体が、首都に会員、10万人も結集させようとする教勢力。同国には前例がなかった。いったい、韓国SGIとはどんな組織なのか、どこまで国内に浸透しているのか等、こうした報道姿勢に立って取材チームが組まれたようである。
 国内はもとより、今年の春先から取材スタッフたちは何度か訪日。韓国SGIの発祥の地である日本の創価学会周辺を飛び回っている。ただ同会の歴史や、内情についての予備知識が浅いため、取材には悪戦苦闘をしたようだが、ほぼ半年間の日数を重ね、ようやくオンエアにたどり着いている。
 1時間の検証放送で、中に“スクープ”(本誌・特集別稿参照)も報じるなど、なかなか気合が入った報道番組として完成している。
 ところで、SBSが、韓国SGIの取材を開始した頃、韓国の親しい大学関係者からこんな情報が寄せられていた。どこが司令塔か判らないが、韓国の有識者たちがグループを組み、「韓国SGI」に関して鋭意調査を行っているというのである。どんな趣旨の調査なのか。
 調査スタッフの一員が、
 「韓国SGIの組織は、公称会員数が100万人を超えたといわれている。どのような団体であれ、100万人を超えた大きな組織は注目に値し、その目的、動向を正確に把握しておかなければならない」
 と、真顔で語っていたというのだ。
 韓国のSGI組織に対し、同国の有識者たちが敏感になる背景を解くには、歴史を少し遡らなければいけない。

 韓国でも創価学会はトラブルメーカーの宗教

 隣国の韓国にはこれまで、日本から伝わった主な宗教として「天理教」「創価学会」「世界救世教」「日蓮正宗」「立正佼成会」等がある。そのうち韓国でもっとも知名度が高い宗教団体は天理教である(99年、00年「日韓学生宗教意識調査」による)。
 天理市に本部を構える天理教は、早くから韓国のハンセン病患者に対するボランティア活動等に着手。活動実績が認められて、韓国から早々と法人格の認証を受けている。
 一方の創価学会(韓国SGI)は、その法人格の取得にしても話題騒然。申請する経過の中で金銭スキャンダルを呼び起こし、組織に内紛まで招く(本誌平成14年10月15日号既報)という足跡を残している。さらに歴史を遡ると、日本から韓国に進出した他の教団の中でも、「創価学会」はトラブルメーカーの宗教として、何かと衆目も集めてきていたのだ。
 韓国に創価学会が渡ったのは、1960年(昭和35年)の初頭の頃。日韓基本条約(65年)が成立し、日本と韓国の往来が開かれ、数多くの在日韓国人が里帰りを始めた時期と符合する。家族、親族を訪ねて帰国する在日韓国人の中に創価学会員がおり、そうした会員たちが中心になって母国で布教を開始したのである。
 戒厳令下の朴政権時代、韓国民がまだ貧困のどん底にあるなかで、「祈れば病気が治る、金持ちになる」と、ただ祈るだけで不幸から脱却できると説く日本の宗教、創価学会が、韓国全土に野火のようにあっという間に燃え広がったのである。
 都市部の地域によっては1日に50人、100人と信者が増えるに連れ、集会も活発になってきた。言論の自由もなく、人が集まる集会も禁じていた韓国政府・文教部(当時)の審議会は、急成長を遂げる創価学会に、「反国家的な民族宗教」のレッテルを貼り、布教や集会の自由を激しく取り締まるという事態が起こる。理由は、36年間も植民地の支配下に置き、憎悪の対象からまだ解けていない日本が生んだ宗教が、再び韓国に広まることに畏怖感を抱いたのである。
 また、学会の教義的な問題も韓国の反発を買った。毎日、朝晩に唱える信者のお経で、東を向いて唱える儀式がある。これはかつての植民地帝国・日本を向いて礼拝するのと同意と見られたのである。
 そのため、当時、韓国の組織リーダーの中には、韓国KCIAに、ひどい拷問を受けたケースもあった。だが、一度付いた信仰の火は、取り締まるといっても、簡単に消すことが出来なかったのである。結果、布教の最盛期にあった1970年代中ごろには、信者数はすでに100万人を超えていたと推定されている。
 日本の学会本部も手が出せないほど急速に信者が急増する一方で、都市、地方などバラバラになっている韓国の信者たちをまとめるリーダーがいない。1975年を前後して、韓国・学会組織(当時の名称は「韓国・日蓮正宗仏教会」)は、日本の学会本部と密に連絡を取り合うようになり、徐々に学会本部主導型の韓国・学会が形成されていくのだ。

 有識者に衝撃与えた大統領との「幻の会見」

 でも、それはそれでまた問題があった。日本と韓国の間には36年間に及ぶ不幸な時代があり、民族性にしても大いに異なる。そのため、日本から訪韓して信者を指導する学会幹部たちと、韓国組織のリーダー間でギクシャクすることも少なくなかったのだ。
 さらに本家の日本・創価学会が、信仰の対象にしてきた宗門と対立(第一次紛争=1978年)。続く、離反(第二次紛争=91年)といった複雑な信仰問題が生じるたびに、そっくり隣国の韓国組織にも飛び火したのである。
 日本で、本家が問題を起こすごとに韓国の信者たちも激しく動揺し、組織が分裂するなどして混乱を招き、国内のニュースにもなった。他国から来た幸せを主眼とする宗教が、国民の間で自らトラブルを起こすなど、国の安寧を願う政府にとっては迷惑以外なにものでもない。
 が、1991年、本家の創価学会が宗門と離反したのを期に、韓国の組織でも日蓮正宗の肩書を外し、あらためて「韓国SGI」の名称に固定する。
 ところが同年、日本の創価学会が発信源で、また韓国を驚かすようなニュースが伝わった。伝えたのは韓国の有力紙「東亜日報」(6月18日付)で、以下のような記事をスクープしたのである。
 「……池田会長(SGI会長)は、創価学会の韓国組織の日蓮正宗(※韓国SGI)の内部結束と、自分の指導的地位の強化のため、昨年より盧(泰愚)大統領及び、李御寧文化長官との会見を希望していた。その池田会長に、昨年末にチャンスが訪れてきた。昨年末、海部俊樹日本首相も盧大統領に、池田会長との会見を依頼する親書を送っていた。海部首相は小沢一郎、当時、自民党幹事長の要請によってこのような親書を送ったことを知らされている。海部首相、とくに小沢幹事長がこのように学会を配慮したのは、当時、主に湾岸戦争の多国籍軍に対する10億ドル追加支援を、衆議院に通過させるためだったという……」
 と書かれ、
 「大使館当局者は、もしこの会見が成立していた場合、盧大統領が受ける政治的ダメージを浮かべながら、“延期だけでもできてよかった”と、言っている」
 と、記事を結んでいる。
 実際、池田・SGI会長と、韓国、当時の盧泰愚大統領との会見は幻に終わった。だが、この一件は、韓国の有識者たちに大きな衝撃を与えたらしい。
 自ら主導する宗教団体のために池田大作・創価学会名誉会長は、自国の政府を動かすほどの権力を持ち、他国の大統領まで利用しようとした機密な裏工作。
 あれから10余年。会員を順調に増やし続けながら、組織拡大の渦中にある「韓国SGI」の教勢力。国内の有識者たちが、強い関心を抱いて調査に入るのも当然のことかもしれない。

段 勲(だん・いさお)フリージャーナリスト。1947年生まれ。週刊誌記者を経て、創価学会・公明党など宗教問題をはじめ社会・世相、医学・健康等をレポート。近著の『私はこうしてがんを克服した』(日本能率協会)『鍵師の仕事』(小学館)『宗教か詐欺か』『創価学会インタナショナルの実像』(共にリム出版)など著書多数。

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