2004-11-15

特集/権力志向・無責任―二つの顔見せた公明党大会

先送りされた2つの課題―世代交代と「番犬」からの脱皮

山村明義(ジャーナリスト)
 
 創価学会人事が「若返り」を阻む

 先月30日、公明党は第5回党大会を開いた。大会で挨拶に立った神崎武法代表は、公明党を「日本政治に責任を担う第3党」と自負し、当面は「基本的に今後2年間は小泉政権で行く」と自民党との連立政権を続ける方向性を示したのである。
 有明の東京ビッグサイトで開かれた今回の党大会で、公明党は次第に「普通の政党」を目指しているように映る。しかし、この政党の異色さは随所で見られた。
 まず、今回の公明党の隠されたテーマは、「若返り」であった。すでに神崎―冬柴体制は4期目を迎える。これだけでも十分異常なのだが、「修羅場を行ってきた我々が引っ張る」と、神崎―冬柴のコンビが再任されたのである。新聞報道によれば、神崎と冬柴は8月下旬、こんなやり取りをしているという。
 「冬柴さんは続投してほしい。私はもうそろそろ……」
 「何を言うてるんですか。あなたは私よりずっと若いんですよ。そんなの許されません。あなたと私、2人が一緒に頑張らないといけません」
 「世代交代は必要です。でもこんなときは、なった人がかえってかわいそうだ」
 こんな理由で冬柴は、辞任に歩みかけた神崎を押しとどめ、公明党は異例の続投体制に走ったというのである。
 ハッキリ言ってこの判断は間違いであった。日本では歴史的に時代の転換期や修羅場であればあるほど、世代交代を行って困難期を乗り切ってきた。明治維新しかり、太平洋戦争後のGHQによる戦犯のパージしかりである。逆にいえば困難期であればあるほど、若手を抜擢しないと、組織や社会は活性化せず、後世に禍根を残すものである。神崎、冬柴の2人は、「若手を登場させるとかえってかわいそうだ」という大義名分から、体良く自らの延命を図っただけなのである。
 なぜこのような事態が生まれ得たのか。実は今年夏、こんな情報が公明党・創価学会内部に飛び交っていた。

 「池田大作名誉会長は昨年11月に行われた総選挙や今年7月の参議院選の結果を評価しておられる。神崎―冬柴体制でいいというお考えだ」
 池田が総選挙や参議院選の結果を評価していたというのは本当の話だった。ところが問題は、この話が広がるにつれ、神崎―冬柴という2人の「旧体制勢力」が生き残りを図ったと見られたことである。
 公明党関係者はこう語る。
 「昨年の総選挙後には、すでにポスト神崎―冬柴体制の青写真が固まっていました。それは太田昭宏幹事長代理を将来の代表含みで幹事長に昇格させ、代表には浜四津敏子など女性を据えておく予定でした。今年に入ってからも参議院選前後に公明党中央幹事の漆原良夫衆議院議員や、北側一雄現国土交通省大臣の名前が上がっては消え、結局、神崎―冬柴体制の続投となったのです」
 神崎61歳、冬柴68歳に対し、太田昭宏は現在59歳。一般社会の常識では太田を「若手」と呼ぶには無理があるのだが、公明党にとっては、太田の起用そのものが「世代交代」と見られていたのは間違いない。ところが、この人事構想には、問題があった。公明党の支援組織である創価学会の人事が大きく影響することになったのだ。
 「昨年、池田大作名誉会長に健康不安説が出たとき、創価学会内部に若返り論が台頭してきたのです。創価学会の次の会長のポストに正木正明副会長や谷川佳樹副会長の抜擢説でした。同時に池田名誉会長の長男の博正、3男の尊弘の世襲説、組織をまとめるためにあえて内局から登用する説が飛び交い、そうこうしているうちに池田氏が健康不安を回復し、後継者がほとんど論じられなくなった。しかしあの時は間違いなく、学会内部と公明党内部の双方で正木氏や谷川氏の若手起用論と公明党の太田氏の抜擢論がセットで論じられていました」(学会関係者)
 すなわち、池田名誉会長が健康を回復したとき、公明党内部まで人事構想に影響を与え、変化を生じさせたと思われるのだ。

 本来なら、1000万票を目標とし国民に公言していた参議院選比例区で、862万票しか獲得できずに、旧体制が続投するというのはおかしな話である。連立政権に入ってからはすでに6年目であり、年々公明党と自民党の違いがなくなっている。自民党をかばい続けてばかりの公明党に対し、民主党からは、「そこまで言うのだったら、一緒になればいい」と突き放される始末だ。その意味で今回の党大会は世代交代を行う良いきっかけだったといえるだろう。
 
 いつまで「創価学会の番犬」であり続けるのか

 日本の第3政党といっても、公明党はしょせん相変わらず「池田離れ」をしていないのではないか。だからこそ、人事を抜本的に変えられず、池田氏の動向に左右させられるのではないのだろうか。
 今回の公明党大会で、公明党は努めて「第3勢力」という言葉を使わないようにしていたようだ。民主党の勢力が強くなればなるほど日本は2大政党に近づいてくる。その場合第3勢力とは、しょせんどっちつかずの勢力であり、日本の最終決定には参加できなくなる。そこに公明党の最大のジレンマがある。
 最近の公明党は、政治資金収支報告の発表でもわかるように、自民党の議員とほとんど変わらないほど集金力を持つ議員が増えてきた。与党の立場でいるメリットを最大限に生かし、自民党では手が届かない部分で勢力を伸ばしていく手法はこれまでは通用したが、もはや限界にさしかかっている。
 「いま地方に行ってみるとわかるが、創価学会や公明党はどんどん勢力を伸ばしているが、地域が活性化しない。一昔前は地方の補助金で成り立っていた地方は、昔は農協や土木業者など自民党の支持組織の天下だったが、いまは介護施設か創価学会系列の会館ばかりが目立つ。彼らは“いまの自民党はだらしがない。かつての力が落ちた”と言いますが、小泉内閣の構造改革路線だけでなく、それに乗った創価学会・公明党が自民党の力を落とした部分も大きい。彼らに対する自民党の不満や批判はいまでもなくなっていないと思いますよ」(自民党関係者)
 まさに「公明党・創価学会栄えて、国家滅ぶ」の構図である。彼らは「与党の旨味」をそれだけ吸い尽くしたと言えるだろう。

 小泉政権の長期続投で、自民党内部は橋本派を始め、従来の支持基盤に支えられてきた旧体制がほとんど壊滅状態になっている。今後も郵政民営化や三位一体改革で、予算のしくみが変わり、今後も浮上のきっかけをつかめない。長引く不況のなか、国民の批判の目は公務員や議員、首長の給料の高さにも向いている。その中で公明党だけが躍進を遂げ、それゆえに多くの反発を集める可能性を秘めているのだ。
 今年夏、週刊「ダイヤモンド」誌が「創価学会の経済力」という特集を組み、創価学会の経済力が「総資産10兆円」はあることをはじき出した。創価学会だけでなく宗教法人全体に対する優遇税制がそれを後押ししてきたのだが、民間企業でも何でもない創価学会がなぜこのような莫大な資産を蓄え続けることが出来るのかという問題は、今後政府の方針との矛盾というかたちで出てくるだろう。
 現在、小泉内閣の行政改革推進事務局で公益法人制度の改革が進められているが、現在社団法人や財団法人、NPO法人などが対象になっている。一方、学校法人などは「三位一体改革」で補助金の削減が決まっている。いわば宗教法人だけが「聖域」として残っているだけだ。
 「公明党は9月の組閣でも北側一雄氏一人しか出さず、小泉内閣について行くかどうかで迷いが見られた。自衛隊のイラク派遣や憲法改正問題についても相変わらずその姿勢は中途半端なんです。公益法人改革の議論で国民全体が痛みを受けているなかで、創価学会だけが従来の特権を受け続けることが出来るのか、また政府の一員である公明党が創価学会だけを特別視することが出来るのか、という点が今後大きな問題になってくる。その意味で今回の公明党大会は、公明党が“創価学会離れ、池田大作離れ”を行う好機となるはずだった。公明党が真の“国民政党”になるなら、まず自らと創価学会との関係をどうするかという答えを出して欲しかった」と政府関係者の一人も語る。
 公明党は与党の一員として6年近くも過ごしてきた以上、いまや創価学会だけを特別視することはできないはずだ。ましてや公党としての人事が支持母体に影響されることなど、本来あっていいはずはない。
 日本全体の社会がここまで変わってきた以上、公明党は創価学会という一支持母体の「番犬」にあり続けてはならないのだ。
 いずれにせよ、公明党は小泉内閣を支持し、状況を見ながら小泉首相について行こうとしている。だが、この構造改革路線は、現在の自民党がそうであるように、従来の既得権益を壊す一方で、同時に自らの既得権益も壊さなければならないという自己矛盾に陥ることになる。公明党が本当に創価学会の利益よりも日本の国益を重視していく力量があるかどうか、国民はそれを冷静に見極めなければならないだろう。(文中・一部敬称略)

山村明義(やまむら・あきよし)1960年生まれ。早稲田大学卒。金融業界紙、週刊誌記者を経て、フリージャーナリスト。政治・経済・外交をテーマに幅広く執筆中。近著の『外務省 対中国、北朝鮮外交の歪められた真相』(光文社)をはじめ著書多数。

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