特集

特集民主主義の危機──改憲・共謀罪に加担する創価・公明

“テロの温床”への視座欠くテロ等準備罪議論

広岡裕児

国際ジャーナリスト パリ在住

 イタリアのG7が終わった。記念写真を見て思った。果たして日本の首相はここにいる資格があるのだろうか? 経済だけの先進国なのではないか。トランプ大統領も疑問符が付くが、アメリカという国そのものではしっかりと民主主義が機能している。

ファヴォリティズムに該当する公算大

 加計(かけ)学園問題について内閣府の最高レベルの意向を証明する文書が確かに存在すると文科省の前川前事務次官が名乗りを上げた。これに対して、「民間人が言ったことだから」信ぴょう性がないという発言が相次いでいる。カルト問題でもよく言われるが、元関係者でもいまは外部の人だからというのは理由にならない。それに、公務員の場合、現役の人間が言ったら、守秘義務違反になってしまうから内部からは絶対に出ない。だからこそ外の人間や情報源を絶対明かさないマスコミの役割が大切だ。

 先に終わったフランス大統領選挙で最有力候補とされていた共和党のフィヨン元首相の落選の原因となった家族の架空雇用疑惑もきっかけはマスコミの報道で、捜査当局が動いたのだった。サルコジ大統領のリビア・ゲートでもそうだし、アメリカのニクソンのウオーター・ゲート事件でもそうだった。

 情報源は命を狙われる危険さえあるから、是が非でも隠さなければならない。だから、当局はマスコミで情報源が公開されていなくても捜査に入るのだ。もちろん捜査でも守秘されることはいうまでもない。

 こういうとき、たとえ大統領、政府高官であろうとマスコミに「情報源を明かせ」などとは絶対言わない。そんなことを言えば、見識が疑われ支持率が落ちるだけだ。次の選挙でも不利になる。いや、場合によっては罷免されるかもしれない。

 フランスに「ファヴォリティズム」という罪がある。

依怙(えこ)贔屓(ひいき)」ということで、正確には「不当な優遇罪」という。役人や政治家などが、公共調達や公共事業の民間委託などで、ある特定の者を優遇することを罰するものである。贈収賄とは違って、金品の受け渡しは必要ない。ただ優遇をしたという事実だけで十分である。破毀院(最高裁)の判例によって建設やサービス運営だけではなく、あらゆる公共がかかわる市場取引に関係するとされている。

 加計学園のケースは、フランスであればこの罪に該当する公算が大である。もし該当しなくても、マスコミの集中砲火を浴びることは必至で、世論も動き、次の選挙に大きく影響することは間違いない。

 森友学園は、公開入札をしなかったこと自体で不当な優遇とみなされ、さらに、価格の疑惑まであるのだから、確実にひっかかる。最終的に起訴されるかどうかは別として、トップの逮捕も十分にありうる。また、このあからさまな異常を調査しなかった会計検査院も共犯になる。実際、7年前、パリから50㎞ほど離れたC市にある国有地払い下げについて、公開入札を行わず相場よりもかなり安く売却することを許可したということで大臣秘書が逮捕されたという例がある。

 ところで、森友学園や加計学園の問題について、さかんに「忖度(そんたく)」といわれるが、おかしい。忖度とは、他人の心を推しはかることである。だが、これらの事件では、検討案件の背後に何らかの大きな影が見えており、その無言の圧力に屈したのではないだろうか。「忖度」ではなく、「影響力の行使」ではないのか。「忖度」は権力者に都合のいい言葉である。「影響力」なら主語は影の権力者だが、「忖度」だと決定を下した当事者だ。だから役人の勝手な行為として、トカゲの尻尾切りで終わらせることができるのである。

「ファヴォリティズム」は、汚職の横行に対して従来の収賄罪では不十分なので90年代に作られた罪である。同じように、日本の共謀罪も従来の法律では十分な対策ができないからといって作られた。だが、その性格は正反対である。前者は権力者を束縛規制するのに対して、後者の対象は国民である。前者では権力は制限され、後者では拡大する。

詐術的主張繰り返す公明

 公明党のサイトにあるQ&A「テロ等準備罪」法案(「公明新聞」2017年4月28日付の転載)は、次のように言う。

〈テロ等準備罪を新設する理由は、テロなどの組織的犯罪を未然に防ぐためです。(…中略…)世界各地でテロ事件が頻発する中、対策は喫緊の課題です。

 テロの未然防止には、情報交換や捜査協力など国際社会との連携が必要です。このため政府は、すでに187カ国・地域が締結している国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の早期締結をめざしています。〉

 政府も国際組織犯罪防止条約に入るために改正すると繰り返しているが、じつは、条約加盟には共謀罪は必要不可欠ではない。ほかならぬ先のQ&A「テロ等準備罪」法案がいみじくも言っている。

〈条約は、重大な犯罪(死刑・無期および長期4年以上の懲役・禁錮刑の罪)を行う「合意」、または組織的な犯罪集団の活動への「参加」の少なくとも一方を犯罪とするよう求めています。

 しかし、国内には「重大な犯罪の合意罪」に当たる罪は一部の犯罪にしか規定がなく、「参加罪」は存在しません。〉

 条約の原資料をたどってみても双方もたなくても、どちらか一方だけでいいと明記されている。共謀罪は「重大な犯罪の合意罪」にあたる。参加罪とは〈組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為 /a組織的な犯罪集団の犯罪活動 / b組織的な犯罪集団のその他の活動〉(外務省仮訳)である。共謀罪のように細かい例を出さなくても範囲は明確である。しかも「組織的な犯罪集団」とは、「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため」重大な犯罪や本条約で定めた犯罪をおこなうことを目的として「一体として行動するもの」に制限されている(この制限は合意罪でも同じだが日本ではなぜか無視された)。

 公明党も共謀罪に慎重だったことから、これまでは廃案になっていた。もし、条約加盟が目的なら、濫用予防のしやすい参加罪にすればよい。しかも加計学園・森友学園への対応にみられるように、権力の濫用を阻止するセーフガードは全く機能していないのだからなおさらである。

 ところが、そういう努力はせず、このほどテロ防止ということで共謀罪賛成に回った。だからこそ強行採決ができた。この点についてもしかるべき説明があるべきだが、Q&Aは、先の引用の次にいきなり〈そこで、どうしても「テロ等準備罪」の新設が必要です。〉と論理が飛躍してしまう。

 じつは「テロ等準備罪」はテロには全く効果がない。

 やはり公明党のサイトで、漆原良夫党中央幹事会会長が、「テロ等準備罪」法案の意義について誇らしげに次のように述べている。

〈「テロ等準備罪」の場合、まず、犯罪の主体が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」に限定されました。共謀罪の時は単なる「団体」でした。「組織的犯罪集団」とは存立の目的が重大犯罪を実行するための団体です。〉

 ただの「団体」であると、宗教団体も入ってしまう。その点が改良されたから公明党も賛成に回ることができたのだろう。日本では公認非公認をとわず宗教団体の存立の目的が重大犯罪の実行だなどということは想定されていない。フランスのように、信教の自由と切り離して、たとえ宗教を名乗っていても悪事を働くことについては罰するような制度にもなっていない。オウム真理教も地下鉄サリン事件を起こしたから問題になっているだけで、その前に重大犯罪を実行することを目的としているための組織だ、などと言ったら、信教の自由の侵害だと袋叩きにあった。現在でも状況はまったくかわっていない。テロリストは精神操作(マインドコントロール)を受けるが、まさに、宗教を名乗る団体がそれを行うことは明白な事実で、テロリストの温床になりうるが、まったく野放しである。そしてなにより、喫緊の課題になっているジハード主義・イスラム過激派はまさに全身全霊で宗教を主張しているのだ。

広岡裕児(ひろおか・ゆうじ)国際ジャーナリスト。1954年生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。パリ第3大学(ソルボンヌ・ヌーベル)留学後、フランス在住。パシフィカ総合研究所(PSK)主任研究員。著書に『プライベート・バンキング』(総合法令)『皇族』(読売新聞社)『エコノミストには絶対分からないEU危機』(文春新書)最新刊『EU騒乱』(新潮選書)など。

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