特集都議会公明党とSGI提言に見る創価・公明の特異な属性

小池都知事スリ寄りが示す深刻な組織力低下

森 功

ノンフィクション作家

公明党“抱き込み作戦”

 7月22日の任期に伴う注目の東京都議会選挙が、6月23日告示、7月2日投開票に決まった。小池百合子が都知事になっておよそ1年、〝小池新党〟がどこまで勢力を伸ばすか。新聞やテレビは、ここぞとばかりに囃し立てている。

 彼女の率いる政治団体「都民ファーストの会」を運営する小池政治塾「希望の塾」では1月に入り、都議選に向けた候補者選定の試験を実施。昨年4000人が集まったと話題になった塾生のうち、1600人が受験。この先、300人の合格者を対象に「都議選対策講座」を開き、そこから3040人の候補者に絞り込んで都議選に出馬させるという。

 ちなみに新党結成については、中央政党なら5人以上の国会議員が必要などといった条件があるが、いわゆる地域政党は単なる政治団体と同じ扱いである。つまり政治団体「都民ファーストの会」は結成時から〝小池新党〟ともいえ、都議会の候補者はそこから出馬すればいいだけの話だ。

 言うまでもなく、これらは橋下徹の「維新政治塾」や「大阪維新の会」(現・日本維新の会)を真似たものだろうが、彼女はいずれ地方政党ではなく、中央の「新党」を結成するのではないか、とも囁かれる。その代表には元みんなの党の渡辺喜美が就くのではないか、という怪情報まで飛び交っている。

 くだんの「都民ファーストの会」では、すでに現職都議3人と豊島区議の計4人を第1次公認候補とすると発表。4人は先の知事選で小池支持に回った元自民党所属議員で、いずれも自民党から離れている。3人の都議は離党にあたり新会派「かがやけ Tokyo」を結成し、そこから除名処分を受けた豊島区議とともに改めて「都民ファーストの会」に合流した。

 4人は来る都議選において、小池新党から自民党幹部相手の刺客として送り込まれる。たとえば音喜多駿は「都民ファーストの会」の東京都議団幹事長として、都議会自民党幹事長の高木啓と北区でぶつかる、

「会派を代表して争う象徴的な選挙区になる」

 音喜多は記者会見でそう気勢をあげ、高木と定数3の議席を争う。その都議選で最も注目されているのは、やはり前自民党都連幹事長のドン・内田茂の千代田区に誰を刺客として送り込むか、だ。

「テレ朝の人気アナウンサーだった龍円愛梨が最有力」

「いやお笑い芸人のエド・はるみだ」

 といった調子で小池サイドはボルテージがあがる。

 いっときは引退が囁かれた内田自身も真っ向から受けて立つ構えで、こうした小池新党の挑発に対し、自民党幹事長の二階俊博もさすがにはらわたが煮えくり返っている様子だ。記者団の囲み取材に対し、「全面対決がお好みならば受けて立つ」と早くも臨戦態勢に入っている。

 そして、そんな都議選において、勝敗のカギを握るといわれているのが、公明党の動向である。小池百合子は自民党と敵対しながら、公明党に秋波を送り、その〝抱き込み作戦〟が成功しつつあるともいえる。

刺客に怖気づく公明党

 3人の造反議員が出たとはいえ、定数127の東京都議会における現在の最大会派は、いうまでもなく57議席を有する自民党である。22人(注・1月に現職一人死去)の都議を擁する第二会派「都議会公明党」を合わせれば、80議席となり、余裕で過半数を超える。

 ただし、公明が小池新党と連立するようになれば、過半数に近づく。万が一小池新党の候補者の40人が当選したら63議席という計算だ。

 実際、都議選の23人全員当選を目指す公明は、小池新党に刺客を立てられたら大変だ、とばかり小池にすり寄っている。昨年12月には、都議会自民党との連立解消を宣言。表向きの理由は、議員報酬の削減を巡る意見の対立とされるが、まさに前代未聞だ。来る都議選に向け、小池人気に怖気づき、刺客を送り込まれる事態を避けたかったからなのは疑いようがない。

 もっともそこには都議会だけでなく、永田町の思惑が絡むので、ことはそう単純にはいかない。中央政界での公明党は「下駄の雪」と皮肉られながら、安保やカジノなど政策の違いがあっても、決して自民から離れない。

 ところがそれが一転、都議会では都知事にすり寄り、〝決別〟を表明したのだから、とうぜんそこには仕掛け人がいる、とある公明党の関係者が裏事情を打ち明ける。

「都議会公明が小池都知事と手を組むように働きかけたのが、前公明党代表の太田昭宏さん。太田さんと小池さんは、池袋のある有力後援者のつながりで、親密な間柄です。もともとこの後援者は鳥取出身で、タニマチとして同郷の石破茂を応援してきた。石破さんが自民党総裁選に出馬したとき、小池さんが石破さんについたのもそこから。東京12区(北区)を地盤としてきた関係から、太田さんも彼と親しくなり、今回、小池さんを都議会公明と結びつけたのだといわれています」

 このタニマチ、実は昨年の週刊新潮で「闇金業者」と報じられたご仁だ。同誌では、小池が昨年8月ブラジルのリオ五輪閉会式に参加したとき、身に着けていた和服がタニマチの愛人のものだったと報じている。

 一方、太田は09年の衆院選で落選(比例復活)して党の代表を山口那津男に譲ったあと、自公政権が復活した1212月の第二次安倍政権で国土交通大臣に抜擢された。公明党内の運輸・建設族議員として地位を不動のものとし、国交省や東京都、さらにゼネコンに睨みを利かせてきた実力者だ。

 くだんのタニマチはその太田や石破をはじめ、とにかく自公に顔が広い。先の公明党関係者は次のような話までする。

「彼は福島第一原発事故のあとの除染事業にも首を突っ込んでいました。ゼネコンの下請けとして、ある会社が組合組織をつくって参入したのですが、それを後押ししたのが、このタニマチであり太田さんだといわれていました。そこには、自民党都連会長の下村博文(幹事長代行)の名前も取り沙汰されていた。タニマチを中心に、小池、太田、石破、下村という人脈が築かれていたのだと思います。それもあって小池さんは公明との関係づくりをうまく運べたのではないでしょうか」

 東京大改革なる旗を掲げ、清新なイメージを振りまいて新党ブームを仕掛ける小池百合子都知事。改革を標榜する割に、政策は目新しくもなく、さほど成果は上がっていない。が、豊洲市場や東京五輪に待ったをかけ、思うようにいかないと見るや、あの手この手を繰り出す。それが公明や民進党との連携だ。

自主投票の背景にあるもの

 その小池にとって、都議選に向けた最初の試金石が、2月の千代田区長選となる。

〈公明党は26日の中央幹事会で、東京都千代田区長選(29日告示、2月5日投開票)について、自主投票とすることを決めた〉

 1月27日の読売新聞ウェブ版にはこうある。公明党はこの数年、微妙な選挙になると、党としての態度を曖昧にする戦法をとってきた。千代田区長選でも本音は小池の応援する現職の石川雅己区長側につきたいところはやまやまだろう。だが、その反面、石川の対抗馬として出馬する与謝野信には自民党本部がついている。そこにも気遣う要があるので、自主投票といういかにも中途半端な形をとっている。

 これは大阪都構想の住民投票や大阪府知事と大阪市長のダブル選挙のときと同じやり方だ。衆院選で自ら公明党の刺客として出馬すると公言したおおさか維新の会(現日本維新の会)の橋下徹に恐れをなし、自主投票を決めた。実はそれを働きかけたのが、維新の会、公明党に気脈を通じる官房長官の菅義偉だった。

 しかし、今回の千代田区長選では、菅官房長官が与謝野を強力に応援し、小池と対峙する構えを見せている。石川優位が伝えられるなか、万が一にも与謝野が勝てば公明は立場がない。公明にとってはそこも怖い。

 小池人気がどこまで続くか、それが来る都議選の焦点なのは間違いない。が、その実、もともと彼女が選挙に強いか、といえばそうではない。

 圧勝に終わった1年前の都知事選を振り返ってみると、実はタナボタ勝利だ。舛添要一の失脚に慌てた自民党都連がタレントパパの擁立に失敗した挙句、地味な元総務官僚を担ぎ出すしかなかった。一方、チャンスだったはずの民進党は、出馬すれば当選間違いなしとされた現在の党首が渋り、代わりに野党共闘候補として有名ジャーナリストを立てたが、あまりの勉強不足で失速。その間隙をぬって旋風を巻き起こしたのが、小池都知事だ。

 したがって固い選挙基盤や支援母体があるわけでもない。浮動票頼みだから、常に話題づくりをし、人気を保たなければならない。そこに各党が振り回されているのだが、なかでも翻弄されているのが公明党である。区長選で勝敗のカギを握るといわれるものの、上層部のそんな中途半端な態度や迷走ぶりが支持母体の創価学会にも伝わり、組織が揺れている。

 従来、東京や大阪では創価学会の青年部や婦人部をフル活用して選挙戦を戦ってきたが、この数年、組織選挙の強みが揺らいでいる。それが顕著に表れたのが、今度の千代田区長選であり、来る都議会選挙である。(文中・敬称略)

森 功(もり・いさお)ノンフィクション作家。1961年生まれ。新聞、出版社勤務等を経て2001年、ノンフィクション作家に。『黒い看護婦』『ヤメ検』(ともに新潮文庫)『同和と銀行』(講談社+α文庫)『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』(文春文庫)など著書多数。最新刊は『総理の影 菅義偉の正体』(小学館)。

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