特集/博打解禁を許し都知事にスリ寄る宗教政党の欺瞞

 

平和を安保で捨て、福祉をカジノで捨て 創価学会が「仏」になって公明党はどこへ行く

川﨑泰資

元・NHK記者

 

 

 都議会で公明党が議員報酬の引き下げ案を巡って自民党と対立、東村幹事長が「自公の信頼関係は崩れた」として自民党と決裂を表明した。今年の都議選を勝ち抜くためには小池知事の与党になる以外にないとはいえ、公明党の政治進出の原点ともいえる都議会での波乱は国政にも影響をするのか。

 国会では2015年、集団的自衛権の行使容認から安保法改正で、公明が創価学会の下部組織の婦人部などのはげしい批判を振り切って安倍政権に歩み寄った。しかし憲法学者が揃って「違憲」立法と言うこの「戦争法」への反対は根強く、創価大学、創価短期大学の職員が「法案に反対する有志の会」を立ち上げ、学会員が反対署名を集め、反対デモに加わるなど学会員の反乱が続いた。16年には臨時国会の終盤、突如自民党を中心に有志議員が提出したカジノ法案に公明党は賛否を表明できないまま自主投票に追い込まれ、山口代表、井上幹事長の党中枢が反対票を投じたものの、議員の多数は賛成に回った。例を見ない重要案件での分裂である。

 党の看板である「平和」を安保で捨て、「福祉」をカジノで捨てた事に他ならない。

 一体、公明党はどこへ行こうとしているのか。創価学会・公明党の政治路線はどうなるのか、国政での自公連立の実体を改めて問いなおすことが必要だ。

 

進むポスト「池田」の新体制

 創価学会・公明党の絶対的な指導者、池田大作が病に倒れ、10年5月以来、人前から姿を消し学会員を含めた大衆の前で言葉を発した事は確認されていない。学会は「池田は健在で執筆活動などに専心している」とあからさまな嘘をつき、それを大新聞社に流させるなど執拗な隠蔽工作を続けている。だが「集団指導体制」に移行している事を間接的には認めている。宣伝戦はともかく、池田が公けに姿を見せなくなって以来、池田の言葉や執筆物は全て幹部による「代作」であることは間違いない。既にポスト池田に向けての体制作りのただなかにある。

 15年の学会創立記念日を前に突如、発表された創価学会の新人事が「ポスト池田体制」の第一段であったことは明らかだ。原田会長の四選を決め、その原田が衆院小選挙区からの撤退と自公の全面的な選挙協力の見直しの「政治縮小路線」と言われた正木理事長を更迭し、逆に政治路線の強化を主張する谷川学会本部事務総長を事実上のナンバー2に据える新人事である。集団的自衛権の行使容認を柱とする安保法制を創価学会の反対や懸念を振り切って認めたのは、ポスト池田を巡る双璧とされた正木、谷川の選択で政治路線強化の谷川に軍配を上げた事を意味する。この結果、学会の婦人部などに信望の厚い正木は中枢から去り、学会・公明党の主流は政治重視路線に一本化された。安保で平和を捨てたと言われる由縁である。

 そして「ポスト池田」の第二弾が思いがけない「創価学会仏」という奇手である。16年の学会創立記念日を前に、今度は会則改正で会則の前文に「創価学会仏」という文言を付け加えた。何と創価学会という教団そのものが「仏様」になったというのだ。これでは学会員にすら何のことか分からない。あえて解釈すれば池田が本当に死去した時、カリスマ性の無い会長や執行部では会員の動揺が抑えきれないと見て、従来「生き仏」として機能してきた池田に代わって不動の「仏」を創価学会という教団そのものにするという苦肉の策ではないのか。こうすることによって学会が生みだす莫大な利権を散逸させずに済む。究極の組織防衛、自己保存体制の確立である。

 学会はポスト池田の二段階の措置によって池田死去後の体制を整えたと言える。

 

創価学会主導の政治路線

 政治報道では公明党の動静がまことしやかに伝えられるが,実態は創価学会という教団の言いなりに平和も福祉も自由に操られている。つまり言論出版妨害事件で反省し、捨てたはずの政教一致が今や完全に復活している。

 平和に関して公明党は、1992年自衛隊の初の海外派遣となったPKО協力法に賛成、03年自衛隊のイラク派遣への先導的役割、15年集団的自衛権行使容認に続く安保法改正に賛成と次第にエスカレートし、その延長に自衛隊の駆けつけ警護を認めるのでは最早「平和の党」とは言えない。福祉についてはそれなりの実績を残してきたものの、16年の臨時国会会期末でのカジノ法への賛成が公明党の半数を超えたことは、「大衆と共に生きる」池田の考えとも大幅に異なることは確かだ。反対の党議決定を出来ず、博打依存症の対策も無くカジノ法に多数が賛成したのは何故なのか。博打に賛成して福祉も無いものだ。カジノ法では、党の最高幹部の山口代表と井上幹事長が反対しているのに何故議員の多数が賛成したのか。ここに公明党の政治至上主義の落とし穴がある。

 公明党議員は衆院選での自公協力によって当選している議員が多い。特に衆院の北側副代表ら関西の小選挙区での候補者が、日本維新の会から対立候補が出るのを学会と自民党の裏取引で押さえてもらったなどの因縁もあり、自民党に逆らえない関係になっている.これに対して参院の山口代表や、衆院でも比例の井上幹事長は選挙そのものには自民党に関係がなく強気だ。

 

公明は自民と維新の会の連立を警戒

 公明党にとって今の国政上の最大の関心は「自公連立」から「自民・維新」の連立への切り替えの懸念だ。維新の会は参院選でも一定の力を発揮し、事実上自民党の補完勢力としてだけでなく政治姿勢としては自民党より右寄りの政党として機能し始めている。安倍首相は維新前代表の橋下とは極めて親密で、特に憲法改正ではリベラル寄りの色彩のある公明より親近感があると言われる。それだけに自公連立を脅かす存在として維新の会を意識しているものとみられ、大阪万博誘致をはかり、カジノも大阪にと意気込む維新の会との距離感を測らざるを得ない。それが関西を主軸とする創価学会・公明党のカジノ法への煮え切らない態度に現われた結果ともいえる。

 ともあれ、自民党議員とも闘い当選した公明党の参議院議員は、自民との選挙協力や官邸筋の仲介で密約を交わして当選してきた衆議院議員とは違って筋を通す人が多い。山口代表は「政策が全て一致しなければ連立を組めないものではない」と、安保問題でいち早く政権離脱はあり得ないと肝心な武器を捨ててしまったが、維新の会が台頭して公明の存在を脅かす段階に入った今、党のかじ取りの悩みは深い。

 

学会主導で「政教一致」深まる

 学会は、公式には政治の問題は公明党が責任を持つと言うが実態は異なる。肝心の問題になると常に創価学会の幹部が直接、首相官邸なり自民党幹部と裏で折衝し、公明党がそれを受け入れる完全な政教一致である。公明党側の主役は自公連立派と目される北側副代表や漆原元国対委員長らの衆議院議員で、魚住、荒木などの筋の通った発言をする議員が目立つのは参議院議員である。しかしそうはいってもそれは程度の差であって、実質的に公明党の政治を支配しているのは創価学会の幹部だ。

 公明党は消費税の引き上げに伴い軽減税率の適用を強硬に主張し、財務省と自民党が決めた還付金制度案を公明が一旦は呑んだものの、これが表面化すると学会側はこんな案では参院選は戦えないと選挙協力の見直しを自民党に突きつけた。結局、食料品の8%据え置きの複数税率となる公明案を受け入れたのは、創価学会の佐藤副会長が官邸の菅官房長官と話をつけたと言われ、安倍は自民党の重鎮、野田税制会長を更迭する強硬策までとった。何のことはない、自民党の幹部も公明党の幹部も全て飛ばして、学会の幹部と首相官邸の直接の取引で決着したのだ。集団的自衛権の行使容認から安保法では自民の言い分を認めたのだから今度は言い分を聞け、さもなければ選挙協力を止めるという脅しは、公明党では出来る筈もなく完全に学会の主導だ。官邸がこれに呼応する。創価学会がポスト池田の新体制で政治重視の谷川を中心に選んだ以上、自公連立は続ける意図と見られる。衆院の小選挙区から撤退し比例だけにして、参院を主力にする一昔前の体制に戻すことは困難のようだが、平和・福祉の二枚看板を捨てた公明党はどこへ行こうとしているのか。

 自民党政権の右傾化を防ぎ軍事強化路線に歯止めをかけてきたのは公明党だと言う論者もいるが、ここ数年は自民党にブレーキをかけるどころかアクセルを踏んで軍国化に拍車をかけているのは創価学会・公明党だとする見方の方が有力ではないのか。自民党より右の維新の会が憲法改正で自民党と組む意向を明確にしている時、創価学会・公明党はこれまで通りで良いのか。

「仏」となった創価学会に従う政党では最早、国民の信頼を得ることはできない。政教分離を完全に実施し、政治路線の縮小以外に公明党の生きる道はない。

 

川㟢泰資(かわさき・やすし)元NHK記者。1934年生まれ。東京大学文学部社会学科卒。NHK政治部、ボン支局長、放送文化研究所主任研究員、甲府放送局長、会長室審議委員、大谷女子短大教授、椙山女学園大学教授等を歴任し、現在同学園理事。NPO法人マスコミ市民フォーラム理事長も務めている。著書に『NHKと政治─蝕まれた公共放送』(朝日文庫)『組織ジャーナリズムの敗北─続・NHKと朝日新聞』(岩波書店)など。

 

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