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特集/参議院選挙総括──罪深き宗教の政治容喙

宗教的呪縛と欺惘で選挙闘争を煽った創価学会

乙骨正生

ジャーナリスト

選挙の勝利で正当性を証明

 7月10日投開票で実施された第24回参議院選挙。参院選は、原則的には議員の任期切れ前日から30日の間に実施するとなっており、第1回と第3回を除いては6月ないし7月の日曜日を投票日として、昭和61年の第14回以降は、7月の日曜日投票で行われている。

 その7月を創価学会は、「立正安国の月」「師弟の月」などと呼び、「末法の御本仏」(会則)と仰ぐ「日蓮大聖人」や、「永遠の師匠」(会則)に祀り上げた池田大作名誉会長との特別な意義をもつ重要な月、それも参院選との因縁浅からぬ重要な月と位置づけて、熾烈な選挙闘争を繰り返してきた歴史をもつ。

 今回の参院選でも、従来の参院選同様、否むしろ従来の参院選以上に創価学会は、そうした意義と因縁を強調して、幹部・活動家を選挙闘争に駆り立てるべく尻を叩いた。参院選を目前にした機関紙「聖教新聞」掲載の「師弟勝利の旗高く」と題する座談会記事には、そうした首脳幹部らの発言がてんこ盛り。その一部を紹介しよう。

原田(会長)いよいよ明日から7月。日蓮大聖人が諫暁の書『立正安国論』を提出され、創価三代の師弟が、権力の魔性と、不惜身命で戦い抜かれた月です」(6月30日付)

清水(女子部長)本年は、『大阪の戦い』から60年です。小説『人間革命』第10巻『険路』の章には、6月12日の朝の出陣の様子が綴られています。『この日から、山本伸一は、御本尊への祈りに、新たな一つの祈念を加えた。それは、大阪のいかなる人であれ、このたびの戦列に加わって、味方となることであった』と。(中略)

 原田 法華経の文に『魔民及び魔民有りと雖も皆仏法を護る』とあります。どんな人でも味方にしていく。敵を味方に変えていく――この祈りこそ、広布拡大の鉄則です。私たちは、師匠と心を合わせた祈りと戦いで、新たな広布の金字塔を、断固と朗らかに打ち立てていきたい。

 長谷川(理事長)師弟勝利の7月へ、一人一人が自身の壁を破り、過去最高の友好拡大を成し遂げ、世界広布新時代の“まさかが実現”を達成していきましょう」(6月23日付)

 ここに言う「立正安国論」とは、「日蓮大聖人」が、文応元(1260)年7月16日に鎌倉幕府(得宗・北条時頼)に国家諫暁の書を提出したことで、創価学会はこれを宗教者の政治活動の先蹤(せんしょう)と位置付け、自らの政治活動・選挙闘争の正当性の根拠としている。また「大阪の戦い」とは、創価学会が初めて国政選挙に挑んだ昭和31年の第4回参議院選挙(7月8日投票)での大阪地方区の選挙闘争のこと。同選挙で大阪地方区に創価学会は、白木義一郎大阪支部長を擁立。白木候補は泡沫扱いされていたが、池田大作参謀室長(当時)の指揮のもと、「まさかが実現」の奇跡の当選を果たしたとされる(同選挙では多数の学会員が選挙違反容疑で逮捕され、有罪となっているが、その事実に創価学会はいっさい言及しない)。

 今回の参院選で執行部は、こうした7月の意義を強調して、「世界広布新時代」すなわちポスト池田体制を視野に入れた現執行部体制において、「大阪の戦い」の再来である「まさかが実現」を果たそうと会員の尻を叩いたのである。

 執行部がこれほど躍起となった背景には、本誌で繰り返し指摘してきた宗教的・社会的レーゾンデートル崩壊の危機があるからにほかならない。本尊・教義を変更するとともに、従来の平和主義の主張に抵触する集団的自衛権の行使容認や安保関連法制の成立に手を貸した執行部に対しては、創価学会内部からも疑念や不信、批判の声があがっている。こうした批判に対して執行部は、原田会長を「私の信頼する直弟子」とする池田メッセージを「聖教新聞」に掲載するなど、「永遠の師匠」の権威を借りて自己正当化、保身を図ったが、一連の決定そのものの正当性を証明するためには、参院選の勝利を必要としたのである。

 なぜなら選挙の勝利を宗教的勝利と位置づける創価学会の理屈に従えば、参院選の勝利は、本尊・教義変更の正当性の証明となり、集団的自衛権の行使容認・安保関連法制への賛成も、社会的に支持されたと強弁することが可能となるからだ。

 それだけに改選議席を5議席上回るとともに、「広宣流布のバロメーター」(秋谷栄之助会長)である比例区票が、たとえ1万票だったとはいえ前回を上回ったことに、執行部は「完勝」「大勝利」と大喜びしているのである。7月14日付「聖教新聞」掲載の座談会記事にはこうある。

永石(婦人部長)選挙区と比例区を合わせると、改選議席から5議席も増やす大躍進で、計14人の当選は、公明党の参院選の結果として、過去最高に並ぶ大勝利です。

 清水(女子部長)非改選議席を加えると、参議院で25議席となり、現在の定数(242)になってからの過去最高であり、1割を占めることにもなります」

選挙闘争には「無量無辺」の大福運

 当然、執行部の意向に従って選挙闘争に挺身した学会員には、それなりの果報・利益を与えなくてはならない。上述の座談会記事で、原田会長はこう大盤振る舞いしている。もっとも単なる口舌でありその保証はないが。

広宣流布のため、立正安国のための大闘争の苦労は、全て無量無辺の大福運に変わります。奔走してくださった方々の人生に、『“まさか”が実現』の勝利の大果報が、厳然と現れてゆくことは、間違いありません」

 こうした宗教的呪縛とともに、今回の参院選で創価学会が繰り返したのが、政権与党と軌を一にした争点隠しと、虚偽を含む誇大宣伝。例えば6月22日の公示日に「聖教新聞」に載った「理事長談話」は、今回の参院選の最大の争点が改憲であることや、公明党が集団的自衛権の行使容認や安保関連法制に賛成したことには一言も触れていない。その一方で自公政権に経済再生や外交で大きな成果があったかのごとき宣伝だけは抜かりなくアピールしている。

 前出の「師弟勝利の旗高く」と題する座談会記事でも、「立正安国」や「大阪の戦い」を強調するとともに、公明党そして自公政権の成果を、「公明は豊富な実績を語りぬけ」「対話で平和外交進める公明党」「人間主義の公明党に期待の声」などの見出しで猛アピール。公明党を評価する識者の声を例示している。

「自民党との連立体制を長年にわたって続ける中、官僚集団の中に『公明党と一緒にやれば仕事ができる』という認識が根づいてきた」(御厨貴東大名誉教授・7月7日付)

「公明党が自民党のブレーキ役を果たしているのは確かだ」(大嶽秀夫京大名誉教授・同)

「『与党内野党』としての公明党がいるからこそ、日本の政治は安定が保たれている」(吉村作治早大名誉教授・同)

 オバマ大統領の広島訪問も、公明党・創価学会の功績だとするのは、昨今、すっかり創価学会の代言人化している佐藤優氏。

「公明党は平和を維持するために重要な役割を果たしています。オバマ大統領の広島訪問は、以前から核廃絶を訴えている公明党と支持母体の創価学会の主張に日本政府が感化されて実現したと見ています。現実的な平和を守る、こうした努力を今後も続けてほしいと思います」(6月30日付)

 もっとも執行部が「大勝利」と強調する今回の参院選の結果だが、選挙結果を仔細に分析すると、順当で手堅い結果ではあっても、「大勝利」などと大騒ぎするほどのものではなく、創価学会の集票力には翳りが出ていることが浮き彫りになってくる。

 まず選挙区7議席の獲得だが、これは従来から議席を獲得している東京・埼玉・神奈川・大阪の4選挙区に、一票の格差是正により定員増となった愛知・兵庫・福岡の3選挙区に再び候補を擁立したものであり、確実に当選する選挙区にしか候補を立てないという創価学会・公明党の選挙戦術からすれば7人当選は順当なところ。

 そして比例区だが、今回の参院選から選挙権年齢が18歳に引き下げられた。当然のことだが、公明党には創価学会の男子部・女子部・学生部・高等部の18歳・19歳の会員票が上積みされることとなる。また今回の参院選では、32ある一人区で野党共闘が成立し、統一候補が擁立されたため、自民党は以前にも増して公明党すなわち創価学会へ強力な支援を要請した。その見返りとして自民党や一人区に擁立された自民党候補は、比例区での公明党票の上積みに協力した。

 一昨年来の集団的自衛権の行使容認、安保関連法制への賛成によって、公明党に平和勢力としての役割を期待していたシンパやF票が目減りすることは避けられないとしても、18歳選挙権と自民党との強力な選挙協力によって、創価学会は悪くても700万票台は確保できると目論んでいただろう。700万票台を確保できれば、少なくとも6議席、順当であれば7議席の確保は固い。結果、獲得議席は1214となる。

 もっとも国政選挙比例区における公明党の最高得票は、平成17年の小泉郵政選挙(衆院選)における898万票。参院選の得票数では平成16年の第20回の862万票が最高で、以下、818万票(平成13)、776万票(平成19)、763万票(平成22)と減り続け、前回が756万票、そして今回が757万票だった。繰り返しになるが18歳選挙権と自民党との選挙協力があってなお1万票の増加しかなかったことは、組織の集票力に翳りがさしていることを物語っている。

 前号で筆者は、宗教法人・生長の家が、「宗教者の純粋性の表現」と「国の進む方向を誤らせないために」、安倍自公政権と改憲ならびに集団的自衛権の行使容認と安保関連法制に賛成した政党と候補者を支持しないとの声明を出したことを紹介した。戦後、ウルトラ右翼として自民党を支え続けてきた生長の家が、過去を総括して反省と責任を明示しつつ、自公両党をはじめとする改憲勢力への不支持を表明した姿勢と、宗教的呪縛と欺瞞的な宣伝で会員を欺惘して、公明党・自民党への投票を促し、結果的に改憲勢力3分の2に協力した創価学会の姿勢はまさに対照的。

 戦後社会で、政治運動に手を染めた宗教団体は数多あるが、その悪質さという点で創価学会に勝るものはないことが、今回の参院選からも明らかとなった。

乙骨正生(おっこつ・まさお)フリージャーナリスト。1955年生まれ。創価中学・創価大学法学部卒。宗教・政治・社会分野などを取材、週刊誌・月刊誌を中心に執筆。著書に『怪死』(教育資料出版会)『公明党=創価学会の野望』『公明党=創価学会の真実』『司法に断罪された創価学会』(かもがわ出版)など。

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