特集/迫る2016参院選―宗教と政治

宗教団体と政党の打算と思惑

日本会議、創価学会、統一教会(家庭連合)…参院選に向け安倍政権を支える各団体の思惑

鈴木エイト

ジャーナリスト

 7月の参院選を憲法改正のラストチャンスと捉え、ひた走る安倍政権。下支えする各団体の動向を追った。

『日本会議の研究』が明らかにした日本会議の正体

 改憲という目的の下で安倍政権と一体化してきたのが日本会議とそのフロント団体だ。

 全国の書店やAmazon4月末に発売後、即完売となったのが著述家・菅野完氏が記した書籍『日本会議の研究』(扶桑社新書)だ。同氏が2015年2月から扶桑社系のWebメディア/HARBOR BUSINESS Onlineで連載してきた『草の根保守の蠢動』をまとめたもので、安倍政権に強い影響力を持つ謎に満ちた組織:日本会議の成り立ちや理念、運動主体などその“正体”を的確に暴いている。同書はAmazonのベストセラーランキングで発売前から1位を更新し続け、現在も上位にランキングされている。扶桑社には、同書が発売されてすぐに日本会議の椛島有三・事務総長から出版停止を求める内容証明が届き、数日後には同書内で取り上げた「重要人物」の代理人から法的文書が届いているという。

 菅野氏は、日本会議を「生長の家原理主義という特殊な思想を奉じる市民運動体」と表現、「日本社会全体の右傾化」という“風潮”の背景には同団体の存在があると分析している。日本会議の萌芽は70年代初頭、右派の宗教団体・生長の家の学生信者による右翼学生運動に始まる。日本会議の中核を成すのが元右翼学生闘士の椛島有三〈日本会議事務総長/日本青年協議会〉と衛藤晟一(参議院議員/首相補佐官)であり、他にも集団的自衛権を合憲と主張する官邸御用達の憲法学者・百地章、安倍晋三の筆頭ブレーンである伊藤哲夫・日本政策研究センター所長、そして高橋史朗・明星大学教授という「一群の人々」が連なる。これら旧:生長の家関係者による「インナーサークル」は、今日の安倍政権に対する強い影響力を持つにまで至ったのだ。現に教育基本法改正などで、その提言を法制化してきた“実績”もある。菅野氏は、椛島有三の『日本青年協議会』と伊藤哲夫の『日本政策研究センター』そして教団グループによる『谷口雅春先生をしのぶ会』が、政権を陰で支える生長の家原理主義者による政治運動の3つのラインと見る。

 これら日本会議に連なる面々の悲願である憲法改正は、自分たちが育てた安倍晋三が総理在任中にこそ成し遂げ得るものだとして、参院選に向けラストスパートに入っている。菅野氏は、安倍晋三の総理総裁在任期間と憲法改正に必要な期間を計算、そのタイトな政治スケジュールから、安倍は今夏の参院選に合わせて衆議院を解散し衆参同日選挙にするのではないかと予想している。本原稿執筆時点(5月下旬)では、安倍総理は衆参同日選を見送る公算が高いとみられているが、菅野氏の分析は至極的を射ていると言えるであろう。

政権の小判鮫・公明党=創価学会

 公明党を携え一貫して安倍政権に追従する姿勢を崩していないのが創価学会だ。「平和の党」を自任する公明党だが、戦争法案と指摘され組織母体である創価学会の内部からも反対の声が上がった安全保障法制関連法案を押し通す自民党に追従するなど、その政権にぶら下がるだけの姿に世間の目は冷ややかだ。安倍政権の小判鮫と揶揄される創価学会=公明党は参院選でも婦人部を中心に“活躍”するであろう。憲法改正については慎重な姿勢も見せる公明党だが、参院選を睨んだポーズに過ぎないとの見方が大半だ。

政治家工作に励む家庭連合(旧:統一教会)

 関連団体である国際勝共連合・世界平和連合・世界平和女性などを駆使し、自民党議員に食い込んできたのが統一教会(昨年8月「家庭連合」に改称)だ。3年前の参院選では、安倍晋三の同郷の候補者・北村経夫(元産経新聞政治部長)を当選させるため、安倍が同教団の徳野英治会長との間に密約を交したとも噂された。密約の存在を裏付けるかのように、北村は菅官房長官の手配で選挙運動期間中、統一教会の地区教会2箇所を極秘に訪れ礼拝に参加し講演を行なった。統一教会は全国の信者に対し北村への期日前投票を指示、北村は統一教会信者の組織票約8万票の上積みを得て当選を果たしている。これは全国比例区候補の北村の得票数の半数を超える数だ。組織票での北村当選の見返りは、教団本部への家宅捜索を阻止させることだと信者は聞かされていた。もしそれが事実だとしたら、安倍晋三の総理在任中に同教団本部が摘発を受けることはなく、組織は安泰だ。

 統一教会の保守への傾倒は、教祖・文鮮明が北朝鮮に抑留されていたことへの個人的恨みが根底にある。その恨みが反共産主義に特化し国際勝共連合の結成に至ったのだ。同連合の設立には安倍晋三の祖父である岸信介が深く関わっており、その系譜は安倍晋太郎~安倍晋三へ連綿と繋がっている。統一教会=国際勝共連合の反共主義路線は多くの政治家を取り込んできた。しかしながら教団内に於いて、天皇役の幹部信者が教祖・文鮮明に傅く儀式があることを統一教会系新聞「世界日報」の元編集長長・副島嘉和らが暴露し、同教団や関連組織を反共の同志と思っていた保守界隈から総スカンを食らったこともある。

 永田町周辺に於いては、勝共連合の政治家対策の担当者が美人秘書を連れて衆参両議員会館を練り歩く姿が目撃されている。世界平和連合は地方議員の後援会を結成し、事務所スタッフとして入り込むことで政治家を擁立してきた、その流れで国会議員にまで登りつめた者も少なくない。政治家にしてみれば選挙時に運動員や選挙事務所スタッフ、そして秘書まで無償で派遣してくれる統一教会は有り難い存在だ。キブアンドテイク、これら政治家とカルト教団は、互いの利益のため利用し合っているという構図だ。

 昨年8月、文化庁が長年拒んできた統一教会の名称変更を認可した背景には、同庁を所管する文部科学省の下村博文大臣(当時/現在は党総裁補佐)からの圧力があったとされる。「世界日報」には2013年から2014年にかけて3回も下村のインタビューや対談記事が掲載されている。同教団の名称変更認可当時、文部科学政務官だった山本朋広代議士も国際勝共連合や世界平和連合との関係が指摘されており、昨年10月に幕張で開催された名称変更式典には、文部科学委員を務める自民党の工藤彰三代議士が来賓出席し祝辞を述べている。

 2010年に勝共連合による支援指示文書が流出した山谷えり子(国家公安委員会委員長/内閣府特命担当大臣)も、やはり夫婦別姓に反対する国会議員として2001年、「世界日報」にインタビュー記事が掲載された。他にも稲田朋美(政調会長)、衛藤晟一(首相補佐官)、萩生田光一(総裁特別補佐/内閣官房副長官)、中川雅治(政調副会長/参議院運営委員長)など、安倍晋三に近しい複数の政治家が教団や関連組織のイベントで講演や来賓挨拶をするなどしており、安倍晋三や菅官房長官と親しげに写真に納まる教団関係者の姿もSNS等で確認されている。

「世界日報」や国際勝共連合の「思想新聞」などで展開される「ジェンダーフリー」「夫婦別姓反対」などの論調は安倍政権・日本会議という右派の主張と全く同一だ。但し、統一教会によるこれら主張の根底には、純潔教育から合同結婚式という歪な宗教教化への道程が潜んでいることを忘れてはならない。

メディアへの介入・干渉を許すな

 右傾化という同じ大きな流れの源流を成すこれら諸団体にはそれぞれの思惑があり、現政権の暴走を抑えるためには、これら諸勢力の真の狙いを見極め的確に批判し追及していくことが必要だ。

 安倍晋三ら右派政治家によるNHKへの番組改変問題。更に昨今の高市早苗総務相による放送法を曲解した歪かつ違法なメディア介入発言や、自民党の若手衆院議員大西英男によるマスコミ懲らしめ発言など、安倍晋三の周辺ではメディアに対し高慢な態度を採る政治家が目立つ。これら権力のあからさまなメディアへの介入を許してはならない。有権者の投票判断に際し適切な情報が行き届くようメディア関係者は襟を正すべきである。              (文中・一部敬称略)

鈴木エイト(すずき・えいと)ジャーナリスト。ニュースブログ「やや日刊カルト新聞」主筆。2002年から街頭でカルト団体の勧誘阻止パトロール活動を行っている。

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