特集戦争法案の衆院強行採決・成立に手を貸した創価勢力の罪深さ

 

戦争法案強行─学会員と国民の思いを見誤った公明党に終わりが始まる

 

溝口 敦

ノンフィクション作家

 

「学会員も反対デモ参加」は苦肉のガス抜き策

 戦争法案(安保法案)に反対する国民の声は日増しに高まっている。デモや反対集会は東京だけでなく、地方にも広がり、若者から高齢者までデモや集会に参加し、反対の声を挙げ始めた。

 創価学会本部の最寄り駅である東京・信濃町駅前でも戦争法案廃案の宣伝・署名活動が731日に行われたが、「創価学会員」と名乗る女性らが次々と署名に応じたという(「しんぶん赤旗」82日付)。

 この宣伝・署名活動は共産党系と目される新日本婦人の会東京都本部のメンバーらが行ったが、同本部の()(はら)通江(ゆきえ)事務局は次のように感想を語ったという。

「各地から創価学会本部に来られた方々だと思いますが、予想以上の反応でした。創価学会のなかにも法案反対の声があることが分かりました。各地で自民、公明の支持者にも署名のお願いや、廃案への共同を申し入れていきたい」(同紙)

 719日、「大阪で行われた安保法案反対デモには多くの学会員が参加し、『バイバイ公明党』『仏罰→公明党』と書いたプラカードを掲げていました」(「日刊ゲンダイ」727日付)と伝えている。

 毎日新聞といえば、創価学会に頭を押さえられた新聞として知られるが、驚くべきことにその727日付は「安保法案:公明離れの学会員次々……自民と協調に『失望』」と見出しを立て、次のように報じている。

自民と足並みをそろえる公明党の足元で、地方議員や支持母体の創価学会員たちの反発や離反が起きている。(略)

 愛知県武豊町の本村強町議(62)は創価学会員だが、公明党を離れ10カ月になる。『失望しました。平和の看板を掲げてきたのになぜだ、と』

 まだ党にいた昨年6月、集団的自衛権に反対する意見書を共産党議員らとともに議会に提出し、自民系議員らを説得し、1票差で可決させた。これが後に反党的だと問題視されたが、信念を貫き離党。今春、町議選に無所属で出た。学会関係者に『あなたの個人票は(学会票の)2%だ』と警告されたが前回並みの得票で3選された。一部の学会員も陰で応援してくれたという。

 和歌山県岩出市の創価学会員、春村徳龍さん(53)は19日、大阪での安保法案反対デモに家族で参加した。『法案は平和を求める学会の教えにそぐわない。「自民の歯止めになる」と公明党への投票を呼びかけてきたが裏切られた思いだ』

 デモ行進では、学会のシンボルの三色旗に『バイバイ公明党』などとプリントしたプラカードを掲げた。別の学会員がデザインし、ツイッターで配布していたものという。(以下略)」

 毎日新聞のことだから、創価学会本部の許諾を得た上でこうした記事が掲出されたものと見られる。つまり創価学会は公明党が自民党に同調して衆院で戦争法案を強行採決し、いずれ参院でも強行採決に加わり、法案の成立に手を貸す。このことで一部の心ある学会員を失望落胆させ、公明党、ひいては創価学会からも離反させかねない。こうした事態をあらかじめ見越し、学会員に「反対の声を挙げたのだから」「学会はデモへの参加を認めてくれたのだから」と弁明と慰め、ガス抜きの機会を与えたい。あくまでも道を外れたのは公明党であって、学会ではない。学会は池田先生の意を体して「平和」路線を守ったが、公明党の堕落した議員たちが勝手に自民党に同調、学会と学会員を裏切った、と思わせたい。あくまでも苦肉の策であり、創価学会がにわかに平和と良識路線に立ち戻ったわけではあるまい。

 池田大作が生ける屍と化した現在、創価学会内には路線をめぐる対立もあるだろうが、路線以上に創価学会の幹部たちにとっては、学会員の学会離れ阻止の方が喫緊の課題である。安保法案の扱いをめぐって学会員に愛想づかしをされてはならない。何とか引き留めて現有会員数を維持しなくてはならないというのが彼らの至上命題だろう。

 もちろん創価学会の幹部にとって、会員の反対デモへの参加や他党との共闘などを認めることは危険極まりない方策である。公明党得票数のさらなる減少をもたらすことは当然として、創価学会にさえ亀裂を走らせかねない。それを承知の上で一部学会員による戦争法案反対の声を認めることは、逆にいえば、創価学会がそれだけ危機的状況にあることの追認だろう。間違っても、創価学会が平和愛好の宗教団体などと錯覚してはならない。ただし平和愛好教団と錯覚している学会員が存在することは事実だが、そうした学会員が創価学会を現実に動かすことはない。

 

歯止め役ではなく強力に後押しした公明党

 公明党は自民党と選挙協力し、与党に加わるなかで戦争法案に対する学会員と国民の思いを完全に見誤った。もちろん公明党には自民党と連立を組み、政権の一角にあるからこそ、池田先生を守れるという自負と理屈がある。公明党は創価学会のための防波堤なのだから、政権参加こそ党の存立理由なのだ、と。

 そうだからこそ公明党は安保法制の実現に固執している安倍首相に対し、もっともらしく北側一雄副代表による「北側3原則」を案出、公明党が「歯止め」であることを喧伝した。連立の一角にある以上、突っ込み役を買って出て、劇を盛り上げる工夫ぐらいしなければならない。

 安倍首相は自衛隊の活動領域を戦前の日本軍並みに拡大したい。すなわち尖閣諸島に中国の武装勢力が上陸するなど、警察だけでは対応できない戦争一歩手前の「グレーゾーン事態」、中近東などで米軍の補給、輸送などを助ける「後方支援」、日本の存立が脅かされる明白な危険に対し、自衛隊が出動して米軍を守る「集団的自衛権」の行使などを実現したい。

 北側はこれに対し、自衛隊の派遣にはおのずと制限があるとして、①例外なき国会の事前承認、②国際法上の正当性、③自衛隊員の安全保障──などをぶつけてみせた。歯止めなどではなく、単に安倍が強調する粗雑で性急な必要論に対し、集団的自衛権を国会と国民に飲ませるためにはどのような論理と外見が必要か、智恵をつけたにすぎない。いわばオブラートに包むことの提案であり、真率な論議が行われているように見せるちょっとした差異の演出である。

 北側3原則などを参考に自民党と公明党は新規に3要件を決めた。①密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある(存立危機事態)、②日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない、③必要最小限度の実力行使に留まる──である。

 こうした経緯を見れば、公明党が安全保障法案で歯止め役を果たしたのではなく、むしろ法案の実現に向け、強力に後押ししたことが明らかになる。公明党は国民レベルの感覚が麻痺し、いかに日本国民が戦争放棄の憲法9条を信奉しているか、見誤った。同党は安全保障法制は法技術的にごまかしが利く、国民に飲ませられると考えていた。だが、各種の世論調査で明らかなように日本国民の過半は戦争そのものが嫌なのだ。戦争を手段として他国に侵攻すること自体に嫌悪感と警戒感を抱いている。

 だが、ここまで国民の声が分かっても、参院の公明党議員は戦争法案で自民党に同調、賛成票を投じ、60日ルールを待つまでもなく、成立させるにちがいない。どう転んでも最終的に衆院で成立するなら、参院が造反し、自民党に憎まれるのは損と考えるからだ。

 だが、戦争法案が一度は成立しても、国民には再び押し戻す力があるはずだ。憲法改正なしの砂上の楼閣のような法制であり、国政選挙で反対派議員を多数派にすれば簡単にひっくり返せる話である。

 そしてこの時点から公明党と創価学会の絶対的な危機が始まる。彼らは危機に遭遇すると、ことさら分身の術を使い、悪いのは公明党、創価学会は健全と言い立てるだろうが、国民はもちろん、少数学会員の良識派も騙されまい。両者は同根の政教一体組織なのだ。まして池田はほぼ生体としての活動を止め、日ごとにカリスマ性もリーダーシップも、会員統合の結節点であることも止めている。組織的にガタが来ている上に、今回の戦争法案での醜い役回りは学会票が離れるに十分な理由になる。公明党に終わりが始まり、創価学会に「普通の新興宗教団体」への道が開け始める。(文中・敬称略)

 

溝口 敦(みぞぐち・あつし)ノンフィクション作家、フリージャーナリスト。1942年生まれ。早稲田大学政経学部卒。出版社勤務などを経てフリーに。宗教関係をはじめ幅広く社会問題を扱う。『食肉の帝王』(講談社プラスα文庫)で第25回講談社ノンフィクション賞、日本ジャーナリスト会議賞、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞の3賞同時受賞。『堕ちた庶民の神』(三一書房)『歌舞伎町・ヤバさの真相』(文春新書)『パチンコ「30兆円の闇」』『生贄の祀り』『あぶない食品』(小学館文庫)『武富士 サラ金の帝王』『池田大作「権力者」の構造』『中国「黒社会」の掟』『細木数子 魔女の履歴書』(講談社プラスα文庫)『暴力団』『続・暴力団』(新潮新書)『抗争』(小学館新書)『やくざの経営戦略』(文春新書)など著書多数。

カテゴリー: 特集記事   パーマリンク

コメントは受け付けていません。